カテゴリー「ラテン語/lingua latina」の25件の記事

私家版 [周期表記憶法]

自分用に、周期表を記憶するための語呂合わせを作ってみた。所謂「定番」(「水兵リーベ・・・」など) と一括して記録しておく。なお、以下において、特定の地名・組織名その他の名称と一致又は類似する音の並びがあっても、他意はないので悪しからず。

本題に入る前に、「語呂合わせ」の前提として、周期表を掲げておく。

IA IIA IIIB IVB VB VIB VIIB VIII IB IIB IIIA IVA VA VIA VIIA 0
1 1
H
水素
2
He
ヘリウム
2 3
Li
リチウム
4
Be
ベリリウム
5
B
ホウ素
6
C
炭素
7
N
窒素
8
O
酸素
9
F
フッ素
10
Ne
ネオン
3 11
Na
ナトリウム
12
Mg
マグネシウム
13
Al
アルミニウム
14
Si
ケイ素
15
P
リン
16
S
硫黄
17
Cl
塩素
18
Ar
アルゴン
4 19
K
カリウム
20
Ca
カルシウム
21
Sc
スカンジウム
22
Ti
チタン
23
V
バナジウム
24
Cr
クロム
25
Mn
マンガン
26
Fe
27
Co
コバルト
28
Ni
ニッケル
29
Cu
30
Zn
亜鉛
31
Ga
ガリウム
32
Ge
ゲルマニウム
33
As
ヒ素
34
Se
セレン
35
Br
臭素
36
Kr
クリプトン
5 37
Rb
ルビジウム
38
Sr
ストロンチウム
39
Y
イットリウム
40
Zr
ジルコニウム
41
Nb
ニオブ
42
Mo
モリブデン
43
Tc
テクネチウム
44
Ru
ルテニウム
45
Rh
ロジウム
46
Pd
パラジウム
47
Ag
48
Cd
カドミウム
49
In
インジウム
50
Sn
スズ
51
Sb
アンチモン
52
Te
テルル
53
I
ヨウ素
54
Xe
キセノン
6 55
Cs
セシウム
56
Ba
バリウム
L
ランタノイド
72
Hf
ハフニウム
73
Ta
タンタル
74
W
タングステン
75
Re
レニウム
76
Os
オスミウム
77
Ir
イリジウム
78
Pt
白金
79
Au
80
Hg
水銀
81
Tl
タリウム
82
Pb
83
Bi
ビスマス
84
Po
ポロニウム
85
At
アスタチン
86
Rn
ラドン
7 87
Fr
フランシウム
88
Ra
ラジウム
A
アクチノイド
104
Rf
ラザホージウム
105
Db
ドブニウム
106
Sg
シーボーギウム
107
Bh
ボーリウム
108
Hs
ハッシウム
109
Mt
マイトネリウム
110
Ds
ダームスタチウム
111
Rg
レントゲニウム
112
Cn
コペルニシウム
113
Uut
ウンウントリウム
114
Uuq
ウンウンクアジウム
115
Uup
ウンウンペンチウム
116
Uuh
ウンウンヘキシウム
117
Uus
ウンウンセプチウム
118
Uuo
ウンウンオクチウム
L
ランタノイド
57
La
ランタン
58
Ce
セリウム
59
Pr
プラセオジム
60
Nd
ネオジム
61
Pm
プロメチウム
62
Sm
サマリウム
63
Eu
ユウロピウム
64
Gd
ガドリニウム
65
Tb
テルビウム
66
Dy
ジスプロジウム
67
Ho
ホルミウム
68
Er
エルビウム
69
Tm
ツリウム
70
Yb
イッテルビウム
71
Lu
ルテチウム
A
アクチノイド
89
Ac
アクチニウム
90
Th
トリウム
91
Pa
プロトアクチニウム
92
U
ウラン
93
Np
ネプツニウム
94
Pu
プルトニウム
95
Am
アメリシウム
96
Cm
キュリウム
97
Bk
バークリウム
98
Cf
カリホルニウム
99
Es
アインスタニウム
100
Fm
フェルミウム
101
Md
メンデレビウム
102
No
ノーベリウム
103
Lr
ローレンシウム

まず、横方向の並びの語呂合わせ。勿論、「水兵リーベ・・・」で始まっている。

第1巡-第3巡. (H)(He)(Li)(Be)(B,C)(N,O)(F,Ne)(Na)曲がる(Mg,Al)シップ(Si,P)(S)(Cl,Ar)入り。

  1. H: 水素 (hydrogen), He:ヘリウム。
  2. Li:リチウム, Be:ベリリウム, B:ホウ素 (boron), C:炭素 (carbon), N:窒素 (nitrogen), O:酸素 (oxygen), F:フッ素 (fluorine), Ne:ネオン
  3. Na: ナトリウム, Mg: マグネシウム, Al:アルミニウム, Si:ケイ素 (silicon), P:リン (phosphorus), S:硫黄 (sulfur), Cl:塩素 (chlorine), Ar:アルゴン

第4巡. (K)カァ(Ca)好かん(Sc)(Ti)(V)(Cr)マン(Mn)ジュウ、(Fe)(Co)(Ni)どう(Cu)? かん、くえん(Zn)! ガリ(Ga)っとしたのは。。。(Ge)!! (As,Se)臭い(Br)(Kr)

  1. K:カリウム, Ca:カルシウム, Sc:スカンジウム, Ti:チタン, V:バナジウム, Cr:クロム, Mn:マンガン, Fe:鉄 (ラテン語 ferrum), Co:コバルト, Ni:ニッケル, Cu:銅 (後期ラテン語 cuprum), Zn:亜鉛 (zinc), Ga:ガリウム, Ge:ゲルマニウム, As:ヒ素 (arsenic), Se:セレン, Br:臭素 (bromine), Kr:クリプトン

第5巡. 5丁目にあるビ(Rb)ストロ(Sr)「青い鳥(Y)」の青(Zr)臭う(Nb)盛り(Mo)、喰いてくねぇ(Tc)、帰るって(Ru)老人(Rh)、すきっ(Pd)(Ag)座の(Cd)イン(In)して、スズ(Sn)ラン(Sb)通りで遣ってる(Te)(I)食屋の季節(Xe)料理を食べた。

  1. Rb:ルビジウム, Sr:ストロンチウム, Y:イットリウム, Zr:ジルコニウム, Nb:ニオブ, Mo:モリブデン, Tc:テクネチウム, Ru:ルテニウム, Rh:ロジウム, Pd:パラジウム, Ag:銀 (ラテン語 argentum), Cd:カドミウム, In:インジウム, Sn:スズ (ラテン語 stannum), Sb:アンチモン (ラテン語 stibium), Te:テルル, I:ヨウ素 (iodine), Xe:キセノン

第6巡. せし(Cs)めた(Ba)かりのラー(L)メン、ハーフ(Hf)タン(Ta)タン(W)(Re)麺。お酢(Os)入れ(Ir)ても、はっきり(Pt,Au)(Hg)足り(Tl)(Pb)ビー(Bi)ルはサッポロ(Po)あと(At)コーラドン(Rn)ドン持ってきて。

  1. Cs:セシウム, Ba:バリウム, L:ランタノイド, Hf:ハフニウム, Ta:タンタル, W:タングステン (ドイツ語 Wolfram), Re:レニウム, Os:オスミウム, Ir:イリジウム, Pt:白金 (platinum), Au:金 (ラテン語 aurum), Hg:水銀 (近世ラテン語 hydrargyrum 但し古典時代に hydrargyrus と云う語形での使用例がある), Tl:タリウム, Pb:鉛 (ラテン語 plumbum), Bi:ビスマス, Po:ポロニウム, At:アスタチン, Rn:ラドン

第7巡. フランス(Fr)ラジ(Ra)コン、空き地(A)で飛ばす。ラフ(Rf)越え、ドブ(Db)すぐ(Sg)ボッ(Bh)チャン。ハッ(Hs)とした、参った(Mt)ダーッと取りに行ったが、ダだった、こし遅かっ(Da)。取れん(Rg)かった。腹ペコペ(Cn)コ。

  1. Fr:フランシウム, Ra:ラジウム, A:アクチノイド, Rf:ラザホージウム, Db:ドブニウム, Sg:シーボーギウム, Bh:ボーリウム, Hs:ハッシウム, Mt:マイトネリウム, Ds:ダームスタチウム, Rg:レントゲニウム, Cn:コペルニシウム

ランタノイド. (La)(Ce)プラッ(Pr)ネオ(Nd)プロメテウス(Pr)(Sm)登場。(Eu)(Gd)に遣ってる(Tb)。食事済(Dy)ませて、(Ho)エール(Er)釣り(Tm)行って(Yb)るって(Lu)

  • La:ランタン, Ce:セリウム, Pr:プラセオジム, Nd:ネオジム, Pm:プロメチウム, Sm:サマリウム, Eu:ユウロピウム, Gd:ガドリニウム, Tb:テルビウム, Dy:ジスプロシウム, Ho:ホルミウム, Er:エルビウム, Tm:ツリウム, Yb:イッテルビウム, Lu:ルテチウム

アクチノイド. (Ac)(Th)プロ(Pa)恨ん(U)(Np)。タップリ(Pu)儲かる(Am)(Cm)(Ba)かり(Cf)か、真似たアイ(Es)ドル増える(Fm)。なめん(Md)(No)やめ(Lr)

  • Ac:アクチニウム, Th:トリウム, Pa:プロトアクチニウム, U:ウラン, Np:ネプツニウム, Pu:プルトニウム, Am:アメリシウム, Cm:キュリウム, Bk:バークリウム, Cf:カリホルニウム, Es:アインスタイニウム, Fm:フェルミウム, Md:メンデレビウム, No:ノーベリウム, Lr:ローレンシウム

縦方向の語呂合わせは以下の通り。

第IA族. エッチ(H)リッチ(Li)(Na)カー(K)ちゃん、ルビー(Rb)せし(Cs)めてフランス(Fr)へ。

    H: 水素 (hydrogen), Li:リチウム, Na: ナトリウム, K:カリウム, Rb:ルビジウム, Cs:セシウム, Fr:フランシウム

第IIA族. ベリ(Be)ッと破ったマグ(Mg)カル(Ca)タ、洗って干すと(Sr)(Ba)(Ra)バラに。

    Be:ベリリウム, Mg: マグネシウム, Ca:カルシウム, Sr:ストロンチウム, Ba:バリウム, Ra:ラジウム

第IIIB族. スカ(Sc)(Y)ラーク(L,A)は3B階。

    Sc:スカンジウム, Y:イットリウム, L:ランタノイド, A:アクチノイド

第IVB族. 外人の(Ti)が混じっ(Zr)てるハーフ(Hf)のブラザホー(Rf)

    Ti:チタン, Zr:ジルコニウム, Hf:ハフニウム, Rf:ラザホージウム

第VB族. 鼻血(V)が出るほど匂う(Nb)(Ta)ドブ(Db)

    V:バナジウム, Nb:ニオブ, Ta:タンタル, Db:ドブニウム

第VIB族. (Cr)(Mo)天狗(W)死亡(Sg)

    Cr:クロム, Mo:モリブデン, W:タングステン, Sg:シーボーギウム

第VIIB族. (Mn)画家、テク無(Tc)(Re)載無(Bh)

    Mn:マンガン, Tc:テクネチウム, Re:レニウム, Bh:ボーリウム

第VII族-I. (Fe)を売るって(Ru)おっさ(Os)ハッス(Hs)ル。

    Fe:鉄, Ru:ルテニウム, Os:オスミウム, Hs:ハッシウム

第VIII族-II. 小林(Co)老人(Rh)炒り(Ir)卵うまい(Mt)

    Co:コバルト, Rh:ロジウム, Ir:イリジウム, Mt:マイトネリウム

第VIII族-III. (Ni)本のパラダ(Pd)イス、白金(Pt)のマダムスタチ(Ds)

    Ni:ニッケル, Pd:パラジウム, Pt:白金, Ds:ダームスタチウム

第IB族. (Cu)(Ag)(Au)れんと拳(Rg)骨よ。

    Cu:銅, Ag:銀, Au:金, Rg:レントゲニウム

第IIB族. 君に逢えな(Zn)い街(Cd)(Hg)コッペ(Cn)パン食べる。

    Zn:亜鉛, Cd:カドミウム, Hg:水銀, Cn:コペルニシウム

第IIIA族. 放送(B)ある(Al)(Ga)(In)たり(Tl)来ず。

    B:ホウ素, Al:アルミニウム, Ga:ガリウム, In:インジウム, Tl:タリウム

第IVA族. (C)(Si)ゲイ(Ge)すん(Sn)(Pb)

    C:炭素, Si:ケイ素, Ge:ゲルマニウム, Sn:スズ, Pb:鉛

第VA族. (N)(P)秘書(As)アンチ(Sb)(Bi)ジネス。

    N:窒素, P:リン, As:ヒ素, Sb:アンチモン, Bi:ビスマス

第VIA族. (O)代続く凄いおお(S)金持ちのセレ(Se)ブがやってる(Te)スポーツはポロ(Po)

    O:酸素, S:硫黄, Se:セレン, Te:テルル, Po:ポロニウム

第VIIA族. (F)漬け(Cl)っぱ臭い(Br)(I)アスタ(At)喰お。

    F:フッ素, Cl:塩素, Br:臭素, I:ヨウ素, At:アスタチン

第O族 (He)ネー(Ne)ちゃん、ある(Ar)クルッ(Kr)と回って奇声(Xe)あげたらドン(Rn)と打たれた。

    He:ヘリウム, Ne:ネオン, Ar:アルゴン, Kr:クリプトン, Xe:キセノン, Rn:ラドン

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メモ:理科年表 [物理/化学部 旋光物質] における用語の誤りに就いて

平成24年度版 (第85冊) [理科年表] (丸善出版 東京 2011年) のノンブルで言うなら [物102(464)] にある表 [旋光物質] は、次のようになっている。

物  質   条 件 [α]D20/(°)
果糖 c = 10 -104 (溶解後 6m), -90 (溶解後 33m)
果糖 p = 2 -- 31 -91.9 - 0.11p (平衡に達した後)
ショ糖 c = 0 -- 65 +66.462 + 0.00870c - 0.000235c2
転化糖 p = 9 -- 68 -19.447 - 0.06068p + 0.000221p2
ブドウ糖(右旋) c = 9.1 +105.2 (溶解後 5.5m), +52.5 (溶解後 6h)
ブドウ糖(右旋) p = 1 -- 18 +52.50 + 0.0188p + 0.000517p2 (平衡に達した後)
ブドウ糖(左旋) p = 4 -94.4(溶解後 7m), -51.4(溶解後 7h)
酒石酸 p = 4.7 -- 18 +14.83 - 0.149p
酒石酸 p = 18 -- 36 +14.849 - 0.144p
酒石酸カリウム p = 9 -- 55 +27.62 + 0.1064p - 0.00108p2
ロシェル塩 -------- +29.73 - 0.0078c

問題は、[ブドウ糖] に関する3行、特に3行目だ。これは、[旋光物質] としての「ブドウ糖」に [右旋型] と [左旋型] との2種類あることが前提となっている記載だろう。実際、比旋光度 [α]D20/(°) も、それに対応した値になっている。「右旋性」の物質の比旋光度は正であり、「左旋性」の物質の比旋光度は負であるからだ。

しかし、[ブドウ糖] とは D-glucose つまり、「右旋型 のグルコース」だけを意味し、「左旋型のグルコース」は「ブドウ糖」とは呼ばないのだ。つまり、「ブドウ糖」と書かれているなら、それは、その文脈が [旋光] に関していようがいまいが [右旋型] の化合物なのだ。

「右旋型」は [d-] とか [(+)-] と云う記号を使って表わされることが多い。これに対し、その対比形である「左旋型」は [l-] とか [(-)-] と云う記号を使って表わされることが多い。ここで d は dextrorotatory (右旋性の) により、l は levorotary (左旋性の) によっている。しかし、IUPAC (International Union of Pure and Applied Chemistry/国際純正・応用化学連合) は右旋性・左旋性を表わすのに [d-]・[l-] を用いないように強く勧めているので、以下では、基本的には d /l 対比ではなく(+)/(-) 対比を用いることにする。

例えば、[東京化学同人] 発行の [化学大辞典] で、[ブドウ糖] の項 (p.2019) は [D-グルコース] (p.647) へのクロスリファレンスを与えている (辞書中 [D-グルコース] の項目の位置は [グルコース] に従っている)。

ちなみに [果糖] (p.453) は [D-フルクトース] (p.2048) をクロスリファレンスしているのだが、[D-グルコース] 及び [D-フルクトース] から関連箇所を引用すると:

D-グルコース [D-glucose]
1700年代の末ごろ, ハチ蜜から単離され, ギリシャ語の glykys (sweet) にちなみ命名され, 右旋性を示すのでデキストロース (dextrose), ブドウ汁に含まれるのでブドウ糖 (grape sugar) ともいわれる.

L-グルコースは天然から産出せず, L-アラビノースから合成され, 融点 146~147℃, [α]22D -53°(水, 終末値).
-- [化学大辞典] (東京化学同人 1989年) p.647,648

D-フルクトース [D-fructose]
1800年代の末, ハチ蜜から始めて結晶化され, 果汁に広く含まれるので, ラテン語の fructus (fruit) にちなみ命名された. 大きな左旋性を示すので, 右旋性の D-グルコースをデキストロースというのに対比し, レブロースともいわれる.
-- [化学大辞典] (東京化学同人 東京 1989年) p.2048

ここで、ラテン語に就いて補足しておくと、dextrose の元になったラテン語は「右側へ/右側の」を意味する dexter, 「レブロース (levulose)」の元になったラテン語は「左側へ/左側の」を意味する laevus である。

glykys のギリシャ語原綴は γλυκυς である。

なお、比旋光度をあらわす記号 [α]22D で、測定光と測定時温度の上付き・下付きが、[理科年表] における [α]D20/(°) と逆になっているが気にしないでおく。

ついでに [岩波理化学辞典第5版] からも引用しておこう:

グルコース
アルドヘキソースの1つ. D-グルコースはブドウ糖 (grape suger) またはデキストロースともいい, 代表的なアルドースである. 単糖のうちD-フルクトースとともに最も分布が広く, 遊離状態では甘い果実中に多量に存在し, また血液, 脳脊髄液, リンパ液中にも少量含まれ, 糖尿病患者の尿中には多量に存在する.

L-グルコースはコウマ(黄麻)やある種のキク科植物の葉の加水分解物中に存在すると報告されているが, L-アラビノースから炭素数を増やしてゆく反応で得られる.
-- [岩波理化学辞典第5版] (岩波書店 東京 1998年) p.384

フルクトース
ケトヘキソースの一種. D-フルクトースは果糖 (fruit suger), 左旋糖 (levulose, レブロース) ともいう.
-- [岩波理化学辞典第5版] (岩波書店 東京 1998年) p.1205

[東京化学同人] の [生化学辞典第2版] (1990年。私の手持ちは、この版しかない。現在は第4版である) からも引用しようと思ったがやめておく。引用すべき内容が、特に [D-グルコース] では、[岩波理化学辞典第5版] とほぼ同一だからだ (どちら辞典にたいしても、それを咎め立てているわけではない。為念)。

(炭水化物・糖類の構成単位である) 単糖や (タンパク質・ペプチドの構成単位である) アミノ酸 (それらの誘導体も含む) の鏡像異性体を持つ場合 (殆どの場合持っている訣だが、それはそれはして)、1対存在する鏡像異性体を対比的に区別するため、分子の立体構造の特定の一部分の相違点に着目した D/L 対比と、旋光性の相違 (鏡像異性体は必ず一対で存在し、その一方が右旋性なら他方は必ず左旋性になり、逆に左旋性でないなら右旋性になる) に着目した (+)/(-) 対比に就いて説明することは控えておくが (有機化学の教科書を適宜読んで下さい)、様ざまなところで注意されているように、この2種類の区分は、歴史的な経緯から紛らわしい記号 D/Ld /l が用いられることがあるとは言え、現在の我々の立場からするなら、独立した区分法であることは改めて強調しておくべきだろう。

実際、グルコースにもフルクトースにも D 異性体と L 異性体が存在するが、上述のようにグルコースの D 体は右旋型 ((+)型) であるのに対し、フルクトースのD 体は左旋型 ((-) 型) である。

そして、D-グルコース、つまり「ブドウ糖」と、D-フルクトース、つまり「果糖」は、それ自体、又は、化合物の構成要素として、自然界に広く、そして多量に存在するのに対し (大雑把に言うなら、D-グルコース1分子と D-フルクトース1分子とがグリコシド結合したものがショ糖1分子である)、それぞれの L 異性体は、天然に存在しないか、するにしても僅かでしかない (希少糖)。

生体内の代謝で主要な役割を果たすのは、D-グルコースである。例えば、生化学での解糖系の議論や、食品工業にあっては L-グルコースは無視可能なので、D-グルコースを単に「グルコース」と呼ぶことは普通である。従って、その文脈では「グルコース」は「ブドウ糖」と同義になる。

しかし、これはあくまでも「文脈から明らかであるので」と云う条件のもとでの「D-グルコース」の省略形としての「グルコース」であって、全ての場合に通用する訣ではない。

憶測だが [理科年表] の表 [旋光物質] の作成担当者は、[グルコース] と[ブドウ糖] が同一であると思いこんでいたのだろう。だから「ブドウ糖(左旋)」とあるのは、「左旋体のグルコース」、つまり「L-グルコース」の積もりだったのだろう。しかし、「L-グルコース」は、左旋体の「グルコース」であっても、それを「左旋体のブドウ糖」と呼ぶことはできない。上記のように「ブドウ糖」は「右旋体のグルコース」限定の呼称であるからだ。

この表のように、右旋体と左旋体を区別する場合には、「グルコース」と「ブドウ糖」の混同は、致命的な誤りと言える。。。と言うか、むしろ不思議なのは、[理科年表] のような国民的リファレンスブックにあって、このような初歩的な誤りが、校正者・校閲者・そして恐らくは、読者からも見過ごされていることだ。まぁ、私自身、最近調べものをしている際 ([デキストロース当量] に就いて補足的な記事を書こうとしたのだが、結局纏まらないままでいる) に見るまで気がつかなかったのだから、偉そうなことは言えないのだけれども。

「(右旋)」と「(左旋)」の注意書が必要なのはむしろ [酒石酸] の方だろう。酒石酸は右旋型 (L体) も左旋型 (D体) もともに「酒石酸」と呼ばれているからだ (もっとも、表 [旋光物質] では右旋型酒石酸しか示されていない)。さらに、酒石酸は、分子内の内部補償により鏡像対称性をもったメソ体 (mesoisomer) も、D体とL体の等量混合物であるラセミ体 (racemic modification. 記号 (±)- 又は dl- が付されることが多い) も存在する。ラセミ体の酒石酸は「ブドウ酸 (racemic acid)」とも呼ばれ、「ラセミ体」の名は、これに拠っている。

蛇足的な注意をしておくと、表 [旋光物質] では比旋光度 [α]D20/(°) が統一的に与えられているから、この記事において所謂「コットン効果 (旋光異常分散)」([円偏光二色性 - Wikipedia] 参照) の影響の可能性について考慮する必要は全くない。

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「焼けた土」の「イタリア語訳」とイタリア語 "cottura" の意味

先程 (2012/02/06 09:25:36)、キーフレーズ [焼けた土 イタリア語訳] でこのサイトを訪問された方がいらしたようだ。

大きなお世話ながら、そして若干憶測になってしまうのだが、おそらくは、イタリア語 "terra cotta" 又は "terracotta" と云う単語をお探しだったのだろうと拝察する。

これは、「地球・大地・世界」の他に「土」を意味するイタリア語女性名詞 "la terra" に、「煮る・焼く・乾燥する」を意味するイタリア語動詞 "cuocere" の過去分詞 "cotto" が形容詞的に用いられて、女性単数形 "cotta" として後ろから "terra" を修飾している言葉である。

基本的には「素焼きの土器」を意味しており、「テラコッタ」と云う形で日本語化もしている (「タナグラ・テラコッタ」と云う言葉が「授業」で出てきたことを覚えている方も多いだろう)。

因みに、イタリア語動詞 "cuocere" は「煮る・焼く・揚げる・料理する」を意味するラテン語 "coquere" (辞書の見出しとしては "coquo" の方が探しやすいかもしれない) の派生形であり、同語源のイタリア語には「料理・料理法」を意味する女性名詞 "la cottura" がある。シバシバ、このサイトに [cottura イタリア語 意味] と云った類いのキーフレーズで訪問される方がいるので、合わせて書いておく。

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「東日本大震災」の文脈内での「避難所」・「避難者」・「避難者数」の英訳

いささか「時務」に亘る話柄なので、本ブログの趣意に悖るが、かなり頻繁に関連するアクセスがあるので、簡単に書いておく。

シバシバ日本人が書く英文において「避難」の英訳として用いられる "evacuation" は、その中心にあるのは「無人化」と云う概念であり、現在日本社会に馴染みやすい用語を使うなら「退避指示」又は「退避勧告」又は「立ち入り制限 (命令)」(本来「命令」と云う言葉を付けるべきなのだろうが、日本の行政は「命令」と云う言葉を使いたがらないようだ) が最も妥当することになるだろう。

今回の「東日本大震災」で実行されたかどうか寡聞にして知らないが、災害時の "evacuation" には、所謂「ペット」や家畜の "evacuation" もあり得る。この場合は「無人化」と云う用語は馴染まない訣だが、発想は「無『人』化」と同じである。なお、アメリカ合衆国ルイジアナ州農業・森林監理局 --Louisiana Department of Agriculture and Forestry-- のウェブページ "Animal Evacuation Information" を参照の事。

だから、福島の原子力発電所からの放射性物質噴出に伴う立ち入り制限区域のことを英文メディアは "evacuation zone" (Nature News Blog: High radiation levels outside Fukushima evacuation zone) とか "evacuation area" (Pro Nuclear Democrats: Fukushima I Nuclear Power Plant: The Facts So Far) と表現した訣だ (おそらく "evacuation zone" の方が英語としてこなれていると思う)。

従って、JIS の [標準案内図記号] の「広域避難場所」に "Safety evacuation area" と云う「英語」が付されているのは問題がある。英語のネイチブ・スピーカーが、本来とは逆の意味に取ってしまう可能性があるからだ。

では「避難所」はどう英訳すべきか?

[災害(地震)対策文書中の用語「避難所/避難場所」の英訳としての "evacuation area" に就いて] (2006年1月19日[木]) において、私は "refuge" を第一候補として挙げておいた。やや補足して "refuge zone" 又は "regional refuge" ぐらいにすると、「災害用語」らしくなると、後知恵ながら思いついたが、その時は、だからといって、補足修正しようと迄は考えなかった。

が、「東日本大震災及び広域的放射能汚染事件」後の現在は、事情が改まっている。 "refuge" では ("refuge zone" 又は "regional refuge" であっても) 一般的過ぎて、「発生するかもしれない災害を見越しての案内のための」と云う文脈には載りえても、「天災・人災を含めて具体的な災害の被害者のための」と云う文脈にはそぐわないからである。

かといって、別段私がしゃしゃり出てアレコレ述べたてるほどのことではないことであるだろうと、思っていた。少し調べれば解決が付くことだからだ。だから、[避難所 英語] と云うたぐいのキーフレーズで、このサイトを訪問される方が頻頻とあっても、無視してきた。しかし、本ブログへのそうしたアクセスが一向に治まりそうもないのだな。で、まぁ、こんなことを書いている訣だ。

そこで、まず「避難所」より「避難者」をどう訳すかが問題になる。新たの文脈では「避難所」とは現実に「避難者」が生活している場だからだ。

「避難者」は "refugee" (単数) と訳されることがある。しかし "refugee" が「亡命者」又は「政治難民」が中心語義であることが示すように、その含意には「迫害回避のための本来的帰属地からの自発的離脱」が基本にある ("refuge" 中の "fuge" は、「逃亡者」を意味する英語の "fugitive" や「逃亡」を意味し、音楽用語としては「遁走曲」と訳されることもあるイタリア語の "fuga" と同じく、「逃げる」を意味するラテン語の動詞 "fugere" が語源になっている)。

東日本大震災に起因して現在、所謂「避難所暮らしを余儀なくされている」人々は、むしろ "evacuee" (単数) と英訳されるべきなのだ (日本発のものを含めて、英文メディアでは普通に使われている)。特に、東京電力福島第一原子力発電所からの放射性物質噴出に起因する (何だか厭らしい言い方だが)「健康被害」を避けると云う名目の下で、"evacuation zone" から排除された人々はまさに "evacuees" (複数) と謂って良いだろう (ちなみに、1941年の日本軍による真珠湾攻撃の後、合衆国政府により収容所での生活を強制された日系米国人も "evacuees" と呼ばれる)。

そこで、この文脈における「避難所」は、どう訳すべきかと云うと、その規模や様態により、一様ではないような気がする。基本的に "evacuees" が入る訣だが "evacuees shelter", "evacuees center", "evacuees camp" (やや微妙だが"evacuees housing" もありうる) などと考えられる (細かいことを言うなら "evacuees" の後にアポストロフィを入れて "evacuees'" とすべきなのかもしれない)。

最後に「避難者数」はどうかと言うと "the evacuee population" ぐらいだろうが、勿論 "the number of evacuees" でも大丈夫だろう。

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メモ:2011年6月8日 (水曜) 朝日新聞朝刊 [天声人語] 中の「ゲーテの言葉」

日付が変わってしまったので、昨日の話になるが、先程、1日遅れでたまたま手にした「2011年6月8日 (水曜) 朝日新聞朝刊 (東京本社13版)」を流し読みした所、[天声人語] がこう始まっていた (現時点では、同内容の物がウェブ上の [asahi.com(朝日新聞社):天声人語 2011年6月8日(水)] で見ることができる)。

〈行き先を知らずして、遠くまで行けるものではない〉。ゲーテの言葉である。目的地が定まらないと足取りが重くなる。そんな意味だろう。逆に、確かな目標があれば急坂や回り道をしのぎ、転んでも起き上がり、大きな事を成せる
--2011年6月8日 (水曜) 朝日新聞朝刊 (東京本社13版) 第1面 [天声人語]

これを読んだ時の、私の感想は「ヤッチマッタナー」(© クールポコ) と云うものだった。箸にも棒にも掛からない詰まらないことを「したり顔」(最近は「ドヤ顔」と謂うらしいが) で書いてある。大体、「行き先を知らずして、遠くまで行けるものではない」では警句にならない。「当たり前」にさえなっていない。当たり前の日本語を使いたいなら、せめて「行き先を決めない限り、遠くまで行くことはできない」ぐらいにしろよ、と言いたい。

浩瀚なゲーテの著作の中の何処かで、そんなことも書かれているかもる知れないが、そして私はまことに無教養で無知蒙昧ではあるが、私の知っているゲーテは、「行き先を知らずして、遠くまで行けるものではない」とは言ってはいない。少なくとも、私が子どもの時に読んだ小辞典 (福音館書店刊であったか、昭文社刊であったかだと思う) の巻末についていた名言集では、そんなことを言っていなかった。うろ覚えだか、こんな感じだったのだ。

人は何処に行くか分からない時ほど遠く迄行くことはない。

(子どもだった私にも、これが「目的地が明確でないと、とんでもないところに彷徨っていくことになる」か、或いは「目的地に縛られない時こそが、もっとも遠くまで進むことができる」ぐらいの意味だと云うことが感じられた。)

取り敢えず、手持ちのバートレットの引用句辞典 ("Bartlett's Familiar Quotations" 16th ed.) で調べた所、英訳が採録されていた。

One never goes so far as when one doesn't know where one is going.
Letter to Karl Fiedrich Zelter [December 3, 1812]
--"Bartlett's Familiar Quotations" (16th ed. 1992) p.350

そして、滑稽と謂えるが、天声人語の英訳版 (asahi.com(朝日新聞社):VOX POPULI: Japan must see the big picture on energy policy - English) では、この "One never goes so far as when one doesn't know where one is going." が「ゲーテの言葉」として、そのまま使われているのだ。

"One never goes so far as when one doesn't know where one is going." The quote is attributed to the German writer Johann Wolfgang von Goethe (1749-1832). I think the idea is that when our destination is uncertain our steps become heavy. Conversely, as long as we have a clear goal, we can climb steep slopes, take all sorts of detours, get up when we fall down, and ultimately succeed in what we set out to do.
--asahi.com(朝日新聞社):VOX POPULI: Japan must see the big picture on energy policy - English

問題の [天声人語] 記事日本語版を書いた人物と、英語版を書いた人物が同一であるとは限らないが、それでも、当然の考え方をするなら、日本語版を英語版に「翻訳」したのだろう。だとすると、英語版の作成者は「行き先を知らずして、遠くまで行けるものではない」と "One never goes so far as when one doesn't know where one is going." とでは、意味が殆ど真逆であると云う高校生レベルの英語力があれば気が付くだろうことを見過ごした訣だ (下記に見られるように、"never goes so far as" はドイツ語の "geht nie weiter, als" の訳、特に、"as" は、ドイツ語 "als" の対応英語なのだが、ここは "never goes further than" と訳した方が、英語初学者には親切かもしれない)。

もし、英文ヘの翻訳者が日本語版作成者と別人であって、気が付いたけれども、日本語版作成者に指摘するのを「遠慮した」のであったとしたら、それはそれで組織として悲惨な事態だ。関節が外れたような政党や社会 (ホボ「会社」に等しい) の騒ぎを他人事のように喋喋している場合ではない。De te fabula narratur...

ちなみに、ドイツ語原文は次のようなものであるらしい:

man geht nie weiter, als wenn man nicht weiß, wohin man geht.
--Goethe, Johann Wolfgang, Briefe, 1812 - Zeno.org
--Johann Wolfgang von Goethe: Maximen und Reflektionen - Allgemeines, Ethisches, Literarisches - X.
--Man geht nie weiter, als wenn man nicht mehr ... - Johann Wolfgang von Goethe | Aphorismen-Archiv

なお、オリバー・クロムウェル(Oliver Cromwell, 1599年4月25日--1658年9月3日)が "A man never goes so far as when he doesn't know where he is going." と云う言葉を残したと云う話がネットで見られるが、出典は未確認。

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メモ:"Modus Ponens" その他

以下は、現在作成中の「例の tex ファイル」に脚註として組み込んだもの (最終稿に残るかどうか不明) に、若干の補足を付け加えたものである。

現代の数理論理学に生き残っている古典論理学の推論規則に "Modus Ponens" と云うものがある。「『AならばBである』が成り立っている時に、更に『Aである』が成り立っているなら『Bである』が成り立つ」と云うものだ。

三段論法ならぬ 1.5段論法ぐらいの基本的推論規則だが、この "Modus Ponens" ("MP" と約されることもある) は、ラテン語の "modus ponendo ponens" に拠っている。

そのうち、男性名詞 (単数主格形) "modus" は「尺度」の意味から「基準」・「規則」・「方法」・「様式」を意味するようになった言葉で、ここでは「方法」又は「様式」の意味だろう。英語の "mode" の語源。

"ponendo" は、「脇に置く」から「設置する」・「断言する」・「提言する」・「肯定する」を意味するようになった動詞 "pono" (能動相直説法現在単数形。不定形は "ponere"。英語 "position, positive" の語源) の Gerundium (大雑把に言えば「動名詞」) の単数奪格。奪格は、この場合「手段」を含意して「肯定することにより」ぐらいの色彩を帯びさせる。"ponens" は同じく動詞 "pono" の能動現在分詞で、"modus" を形容詞的に修飾して「肯定する方法」と云う意味を形作る。当然男性単数主格形。

全体の意味としては「(Aを) 肯定することにより (Bを) 肯定する方法」になる。

この外に、ラテン語で表わされる推論規則としては、"MT" と約されることがある "Modus Tollens" (詳しくは "modus tollendo tollens") もそうで、「『AならばBである』が成り立っている時に、更に『Bではない』が成り立っているなら『Aではない』が成り立つ」と云うないようである。

ここで "tollend" は、「持ち上げる」から、「受容する」・「載せる」の他に「取り消す」・「否定する」を意味する動詞 "tollo" (能動相直説法現在単数形。不定形は "tollere") のGerundiumの単数奪格で「否定することにより」ぐらいになる。 "tollens" は動詞 "tollo" の能動現在分詞 (男性単数主格形) で、やはり "modus" を形容詞的に修飾して「否定する方法」と云う意味になる

全体としては「(Bを) 否定することにより (Aを) 否定する方法」である。

ちなみに日本語版ウィキペディアの [モーダストレンス] の項で、「モーダストレンス(英: Modus ponendo tollens, MT)は・・・」としているは誤り。"Modus ponendo tollens" と "modus tollendo tollens" は別のものである。

では "Modus ponendo tollens" はどのようなものかと謂うと、「『Aであり、且つBである』ことがあり得ない時、更に『Aである』が成り立っているなら『Bではない』が成り立つ」と云う内容である。つまり「(Aを) 肯定することにより (Bを) 否定する方法」 である。

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イタリア語の「はくちょう座」

先程 (2010/10/15 21:05)、キーフレーズ [はくちょう座 イタリア語] でこのサイトを訪問された方がいらしたらしいことに気が付いてヤヤ慌てた。

[イタリア語で「夏の大三角」] (2009年7月18日[土]) で、『「はくちょう座/Cygnus」の主星デネブ』と書いたが、或いは、Cygnus がイタリア語で「はくちょう座」を意味する言葉だとミスリードする可能性があることに気がついたからだ。

しかし、"Cygnus" は学名であって、本来はラテン語である。

ちなみに本日 (2010年10月15日[金]) 現在の日本語版ウィキペディアの「はくちょう座」の項で、[はくちょう座] の学名を "Cygni" としているが、これは "Cygnus" の属格 (まぁ、大雑把に言えば「所有格」) である。従って、はくちょう座主星デネブの学術名としての "alpha Cygni" (alpha 自体はギリシャ語由来な訣でややこしいが...) などに使われることはあっても、はくちょう座単独を表わすには "Cygnus" とすべきである。

で、本題に戻って、「はくちょう座」をイタリア語で何と云うかと言うと、"Cigno" である (男性名詞。固有名詞なので語頭が大文字になる)。

ついでに書いておくと、イタリア語で「こと座」は "Lira" (女性名詞), 「わし座」は "Aquila" (女性名詞) である。

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「ラテン語ミサ」中の「回心の祈り」

昨日夜 (2010/06/13 22:55:30)、キーフレーズ [回心の祈り ラテン語 全文] で、このサイトを訪問された方がいらしたようだ。

恐らく、ラテン語ミサ中の "Confiteor" の下りのテキストをお探しなのではなかろうかと思える。

それならば、このサイトの [フランス語で「主の平和」] で引用した、所謂 [「トリエント・ミサ」におけるものの羅仏対訳版 "Ordinaire de la Messe selon le Rite de Saint Pie V: latin-francais" を見るなら、ある程度の事は知れるのではないかと思われる。

もっとも、この「対訳」は、スクリーン上ページが整序していないので、本当の「対訳」になっておらず、使いづらいかもしれない

そう思って、少しネット上を行き来していたら [Per Mariam Ad Deum. マリア様を通して神様へ/告白の祈りいろいろ] と云うウェブページを見つけて、参考になったので、ここに書いておく。

そこで引用されている「ローマ式 (Romanum) のコンフィテオル (主司式司祭に対する場合の)」を、「孫引き」すると

Confiteor Deo omnipotenti, beatae Mariae semper Virgini, beato Michaeli Archangelo, beato Joanni Baptista, sanctis Apostolis Petro et Paulo, omnibus Sanctis, et tibi, pater, quia peccavi nimis cogitatione, verbo et opere: mea culpa, mea culpa, mea maxima culpa. Ideo precor beatam Mariam semper Virginem, beatum Michaelem Archangelum, beatum Joannem Baptistam, sanctos Apostolos Petrum et Paulum, omnes Sanctos, et te, pater, orare pro me ad Dominum Deum nostrum.
--Per Mariam Ad Deum. マリア様を通して神様へ/告白の祈りいろいろ

ただし、上記ウェブページでは、この後に、"Misereatur vestri omnipotens Deus, et, dimissis peccatis vestris, perducat vos ad vitam aternam." と云う引用もあるが、これは [司祭が告白した罪への神の許しを願う] 信徒側の応唱。その後に司祭側の "Amen." が付く。また、上記ウェブページでは引用されていないようだが、この後に司祭と信徒とが「告白」と「神の許しの祈願」との立場を交換する。

私のような不信心な者には、"Deo" と "pater" が言い分けられているのが興味深かった。

現在では、[第2バチカン公会議] (1962年--1965年) に応じ1969年に発布された新しい典礼様式によるミサ ("Novus Ordo Missae" 或いは「パウロ六世のミサ」) の採用が進んでいて (勿論「守旧派」もいる。ただしトリエント・ミサが廃止されている訣ではなく、その存続がカトリック協会によって認められいる)、この場合は現地語でミサが唱えられるが許されている。そして実際に [現地語ミサ] の採用が広まっているらしいが、それでもラテン語版が正式とされている訣で、そこでも勿論「回心の祈り/告白の祈り」は存在する。

今回調べていて、一番興味深かったのが、所謂「新ミサ」においては司祭の「回心の祈り/告白の祈り」が削除されて、信徒団のものだけになっていたことだった (これに対しては「守旧派」の激しい反発があるらしい)。

Confiteor Deo omnipotens et vobis, fratres, quia peccavi nimis cogitatione, verbo, opere et omissione: mea culpa, mea culpa, mea maxima culpa. Ideo precor beatam Mariam semper Virginem, omnes Angelos et Sanctos, et vos, fratres, orare pro me ad Dominum Deum nostrum.
--Mass of the 1970 Missal (Ordo Missae) Liturgy of the Word

随分簡単になっている。これに対し司祭が次のように答える。

Misereatur nostri omnipotens Deus et, dimissis peccatis nostris, perducat nos ad vitam aeternam.
--Mass of the 1970 Missal (Ordo Missae) Liturgy of the Word

この部分は、殆ど変わっていないが、末尾近くで "vos" が "nos" に変わっているのは重要だろう。つまり「司祭」は「信徒団」の一人と云う格付けである訣だ。

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メモ: "Regiomonti" は「ケーニヒスベルク」(「カリーニングラート」)

先程、或るヨーロッパの古書の出版社情報を調べていたら、それらしき所に、"Regiomonti" と云う文字があった。

(固有名詞としての) 出版社名自体ではないらしい。何故なら、"Regiomonti" で検索してみたところ、確度を以って出版社名と推定できる文字列部分は変化していても、"Regiomonti" 部分は同じと云う例があるからだ。つまり「Regiomonti + (多分出版社名)」と云う形になっている。

"Regiomonti" には、(普通名詞としての)「出版社」、あるい「出版社所在地」と云った意味があるのだろうかと思ったりもしたが、"Regiomonti" を "regio monti" と分けるなら一応イタリア語として「王の山々」と解釈することができるから、イタリア系の家系名かもしれないと云う気もした。

もっとも "Regio monti" は(現代)イタリア語として少し奇妙で、普通なら順番が逆になるなどして "monti regi" だろう。単数形だと "monte regio"、一語にすると "monteregio" で、何処かで聞いたことがある言葉になる。

と云う訣で、少し行き詰まりかかったのだが、その後スグに解決してしまった。"Regiomonti" とはドイツ語名 Königsberg (ケーニヒスベルク) のことだ。ドイツ語で「王の山」を意味する (「王の山々」ではない) この都市は現在ロシア領になっていて Калининград, (カリーニングラート) と云う名称になっている ("Кёнигсберг" も参照)。

"Regiomonti" だけで検索しても、他の情報に紛れて見つけづらかったのだが、結局英文版ウィキペディア [Königsberg]の項に、次のように記載されていたのだ。

The later location of Königsberg was preceded by an Old Prussian fort known as Twangste (Tuwangste, Tvankste) as well as several Prussian settlements. During the conquest of the Prussian Sambians by the Teutonic Knights in 1255, Twangste was destroyed and replaced with a new fortress known as Conigsberg. Its name meant "King's Mountain" (Latin: castrum Koningsberg, Mons Regius, Regiomonti), honoring King Ottokar II of Bohemia, who paid for the erection of the first fortress there during the Prussian Crusade.
後にケーニヒスベルクとなる場所には、かって Twangste (Tuwangste, Tvankste) と云う古プロシア人の砦と、古プロシア人村落とが幾つかあった。ドイツ騎士団によるプロシア系サンビア氏族の征服中、1255年に Twangste は破壊されて、その跡には、新たに砦が建てられた。これが Conigsberg として知られているもので、その名は、「王の山」(ラテン名: castrum Koningsberg, Mons Regius, Regiomonti) を意味するが、これは北方十字軍のプロシア遠征中に、この地に最初の砦を建設したボヘミアのオタカル二世を讃えたのである。
--Wikipedia": Königsberg"

こうして見ると、"Regiomonti" はイタリア語として解釈するより、俗ラテン語として解釈すべきものなのだろうが、如何せん俗ラテン語に就いては全く不案内なので、確認のしようがない。

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ラスクの語源: 日本語版ウィキペディアと日経プラスワン記事に関連して

たまたま [日経プラスワン2010年1月30日 (土曜)] s7面の「ラスク化現象」と云うコラムを読んだのだが、そこに曰わく:

ラスクとは「2度焼く」という意味で、そもそもからして硬くなったパンを再利用した元祖ワケあり商品。
--[日経プラスワン2010年1月30日 (土曜)] s7面。title:ラスク化現象。author:福光 恵。

上記引用文で「意味」とは「語源」のことだろう。しかし、以前、私が少し調べた範囲では、rusk は、16世紀頃にスペイン語又はポルトガル語から英語に移入された言葉で、当時は「ネジパン」を意味していた rosca に由来する。ただし、現代では、rosca は、スペイン語でもポルトガル語でも「ドーナッツ」又は「ベーグル」状のものを意味する。また語形も現代スペイン語では指小形の Rosquilla の方が一般的らしい (Cf:"Rosca - Wikipedia, the free encyclopedia")

もっとも、「ネジパン」と書いたが、これは "twist of bread" を訳しただけのものである。ヨリ具体的な形状を確認したかったのだが、私には出来なかった。大体、「ネジパン」が「ドーナッツ/ベーグル」に変化する過程が、私には釈然としないままなのだ。

ちなみに rosca (本来は「ネジ」又は「螺旋」を意味する) の語源そのものは、ハッキリしないらしい。車輪を意味するラテン語 rota の俗ラテン語時代の (推定による) 指小形 *rotisca とする説があるらしいが確定的ではないようだ。

結局、「調査」と云うほどの事はできず、中断してしまったのだが、その際、「オイオイ」と思ったことがあった。日本語版ウィキペディアの「ラスク」の項に、次のような一節があったからだ。

もともとは「二度焼いたパン」を意味しており、固くなったパンを食べるために工夫されたもの。
--日本語版ウィキペディア [ラスク] (最終更新 2010年1月24日 [日] 04:00)
この引用自体は、現時点での最新版からのものだが、私が以前読んだものも、これと同一趣旨であった。以下同様。

しかし、「二度焼いた」が biscuit (ビスケット) の語源であるのは、英語の豆知識 (「トリビア」と言ったほうが良いか) の初級段階のものの一つだろう。実際、私が、これを知ったのは、高校生の時の参考書だか、所謂「英単語記憶術」のたぐいの有りがちハウトゥー本の中でだった。

わざわざ説明するのも気が引けるが、biscuit は、ラテン語から古フランス語経由で英語に移入されてきた言葉で、 bis + cuit と分解される。そして bis は「ニ度」を意味するラテン語副詞 (所謂「度数詞」又は「数副詞」) 由来の言葉。cuit はラテン語形では coctus で、これは、「調理する」を意味する動詞 coquere の過去分詞 (大雑把な意味での「ヨーロッパ文化」では「調理する」とは、「生」の素材に火を使って加熱することなのだ)。

日本語版ウィキペディアの記事が、如何してこんな「チョンボ」を犯したのかは不明だし、知りたくもないが、対応する英語版 Wikipedia の記載を読むと、嫌でも憶測ができてしまう。

A rusk is a rectangular, hard, dry biscuit or a twice-baked bread (zwieback, biscotte).
--Wikipedia "Rusk" (last modified on 23 January 2010 at 03:13)
「ラスク」とは、硬質で水分の少ないタイプの四角い「ビスケット」、つまり、二度焼きしたパンのことである (ドイツ語:zwieback フランス語:biscotte)。
(2010-02-05 [金] 補足)
訳文が不適切だったので若干改めた。これでも分かりづらいかもしれない。
つまり、ドイツ語の "zwieback" と、フランス語の "biscotte" は、"biscuit" と同様、「2度焼かれた」と云う語源を有するが、食品用語としては "rusk" の対応語なのである。
逆に言えば、食品としての "rusk" を示すドイツ語"zwieback" 及びフランス語 "biscotte" には「2度焼かれた」と云う意味があるが、英語としての "rusk" には「2度焼かれた」と云う意味はない。

ここで、"twice-baked bread" は biscuit と同格、つまり、言い換えなのだが (biscuit の語源を知らなかったとしても、他の解釈をするのは、ある程度英語になれた人間には難しい)、もし、rusk の言い換えだと勘違いしたなら、日本語版ウィキペディアのような誤解をしてしまう可能性は十分あるだろう。

そして、これも憶測だが、[日経プラスワン] のコラムは、日本語版ウィキペディアの記事を鵜呑みにしたのかもしれない。勿論、こんなことの事実を確認することには興味はないから、どうでもいいことなのだが。

ただ、いずれにしろ、rusk の語源説明から「2度焼く」と云う誤謬を排除する程度の知識は COD (Concise Oxford English Dictionary) レベルの辞典で簡単に調べられる。文を以って生業とするのなら、その程度のルーチンワークはしておくべきだっただろう。

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