カテゴリー「語義」の17件の記事

2009年8月22日 (土)

メモ:「泉声」の語義 (「百谷泉声」に関連して)

20日夜 (2009/08/20 22:18:31)、キーフレーズ [百谷泉声の意味] で、このサイトを訪問された方がいらしたようだ。

「百谷泉声」と云うと、素直に読み下すかぎり「百谷の泉声」として、その意味は「百の渓谷には泉から湧き出る水の音 (がする)」ぐらいだろうという気がしたが (勿論「百」は「数が多い」たとえ)、こうした文の「読み下し」と「意味」は、文脈によって可成異なってくるのは当然で、それどころか、私のように無学なものは、文脈をチェックしないと、トンでもない間違いをしでかしがちである。

と云う訣で、取り敢えず「"百谷泉声"」で google 検索してみると、書道教室の「お題」がらみで何件かヒットするのだが、その他に、中国語サイトで、[中华古诗文网] (中華古詩文網) 中の [全唐诗逸] のページがヒットした。

この [全唐詩逸] は日本国内の出版である。唐詩を網羅すべく編纂された [全唐詩] に、残念というべきだろうが、同時に当然ともいえる遺漏の詩句を、市河寛斎が全三巻に纏めたものだ。1804年 (文化元年) 刊。

この [中华古诗文网] によるなら「百谷泉声」は、[贺兰暹 (賀蘭暹)] 作の断片11句の内の一つ:

千峰黛色因晴出 百谷泉声欲暮寒

に含まれる。

元元は、「望太宝山」(「太宝山を望む」だろう) と云う詩の一句だそうな。

で、この読み下しなのだが、実は [全唐詩逸] は、その影印の pdf が、[うわづらをblogで] と云うブログサイトに掲載されている (全唐詩逸.pdf)。それに曰わく:

千峰黛色因晴出
百谷泉聲欲暮寒
千峰の黛色 晴に因って出で
百谷の泉聲 暮なんと欲して寒し

素直な読み下しで、私としても異論はない。これで、「一件落着」と思ったのだが、実は、そうではなかった。

一応、作者の [賀蘭暹] と、題にある [太宝山] の情報を補足しておこうと調べ始めたところ、いつものことながら、ジタバタ騒ぎをする羽目になったのだったのだ。

作者の [賀蘭暹] は、ネットを検索してもはかばかしいデータを得られなっかったが、彼は、氏名と詩断片とのみならば、日本で古くから知られていた詩人だったらしい。何故なら [和漢朗詠集] に、次の2句が見られるからだ (実は、この2句も [全唐詩逸] に収められている。と云うか、むしろ [全唐詩逸] の方が、[和漢朗詠集] から引用したのだろう):

黛色迥臨蒼海上。
泉声遥落白雲中。

(百丈山)
黛色迥(はる)かに 蒼海の上に臨み
泉声遥(はる)かに 白雲の中(うち)に落つ

--[和漢朗詠集 巻下]491「山」
秋水未鳴遊女佩。
寒雲空満望夫山。

(寄所思佳人)
秋水 未だ遊女の佩を鳴らさず
寒雲 空しく望夫の山に満つ

--[和漢朗詠集 巻下]718「遊女」

ここで、私は戸惑ってしまった。[百丈山] の句「黛色迥臨蒼海上。泉声遥落白雲中。」にも「泉声」の語句があるが、これは「泉から湧き出る水の音」と云う解釈には馴染まない(「[全唐詩逸] を覗いた時に気が付けよ」と、自分でも思うのだが、事ほど左様に私は迂闊だと云うことだとでも言うしかない)。

実際、[和漢朗詠集] の通常の注釈では、この「泉」を「滝」と解しているようだ。うーむ。「滝」....

「滝」と言っても、色色で、ナイアガラ瀑布と云ったものは、別範疇として除外するにしても、全てが [華厳の滝] や [那智の滝] のようなものばかりとは限るまいから、あまりこだわる必要はないのかもしれないのだが、「泉」を「滝」とするのにも抵抗を感じたのだ (勿論、ここで言う「滝」とは、日本語の「タキ」のことである。この「滝」を「タキ」の意味に使う用法は、日本独特らしい)。

つまり、私は、「泉声遥落白雲中」や、更に遡って「百谷泉声欲暮寒」の「泉」が、日本語で云う「イヅミ」と解釈するのには問題があることに気付いたものの、それを「タキ」と捉えることにも抵抗を感じたのだった。

「泉」の釈義は、ひとまず措いておくとして、改めて感じなおして見ると、私にとり、この「泉声」の情景としてしっくりするのは、川の最上流部で、流れが速く、水音が確かに聞こえてくると云うものだった (水量の多寡に就いては、どちらでもありうるだろうから、判断を保留しておく)。

と、ここまで考えて、日本語でも、少なくとも、古くは、そうした流れを「タキ」と呼んでいたことに気が付いた。「瀬を早み岩にせかるる滝川の」とは、まさにそうした情景である。コレまた迂闊なことではあった。

話の纏まりが悪くて申しわけない。混乱を避けるために言い直すと、「タキ」と云う表現や概念を排除しないものの、私には、この「泉」が、何よりも「(川の上流部の) 早瀬」のようなものに思えるのだ。

だから、王維の [過香積寺 (香積寺を過る)]
不知香積寺  知らず 香積寺(こうしゃくじ)
數里入雲峯  数里 雲峰に入る
古木無人徑  古木 人径無し
深山何處鐘  深山 何処の鐘ぞ
泉聲咽危石  泉声 危石に咽ぶ
日色冷青松  日色 青松に冷やかなり
薄暮空譚曲  薄暮 空譚の曲
安禪制毒龍  安禅 毒竜を制す
--王維 [過香積寺] (岩波文庫 [王維詩集] 岩波書店。東京 1972年。p.152)

においても、「泉聲咽危石」は「きりたつ岩にむせぶ泉の音」(岩波文庫 p.153) と解釈するより「切り立つ岩に早瀬が当たってむせんでいる」とした方が良いように思える。

こうした機微は、江戸時代の漢詩人には、皮膚感覚として理解されていたのかもしれない。管茶山が、其の死 (1827年) の数日前に詠じたという [病中即事] には

月露秋容嫩  月露 秋容嫩く
風軒暮色敷  風軒 暮色敷く
少間離病蓐  しばし病蓐を離れ
俄頃隠書梧  いささか書梧に隠(よ)る
幽澗泉声小  幽澗 泉声小にして
遙村火影孤  遙村 火影孤なり
従茲経幾日  これより幾日を経べし
転惜此宵徂  転た惜し 此の宵の徂くを
--病中即事

とあるそうだが、この「幽澗泉声小」は、人気(ひとけ)の無い谷川に水が音低く流れていることを描いているのだろう。

[太宝山] は未詳。所謂 [嵩山] は、かって [太宝山] と呼ばれたことがあったらしいが (「嵩山 (SongShan):中国五岳之一。春秋前称太宝山」--地理教師网)、賀蘭暹の詩との関係は何とも言えない。

一応、纏めるならば、「百谷泉聲」とは、「(太宝山の峰峰の合間あいまの)数多くの谷のそれぞれから聞こえてくる早瀬の水音」と謂ったところか。

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2009年3月31日 (火)

イタリア語で「つらら」は "ghiacciolo"

本日の午前2時過ぎ (2009/03/31 02:04:49) に、キーフレーズ [イタリア語 つらら] で、このサイトを訪問された方がいらしたようだ。リモートホスト名から推測するに、北海道札幌在住でいらっしゃるらしい。

こう云う場合は、日本語版ウィキペディアの [氷柱] を開いて、そこから対応イタリア語版の [Ghiacciolo] のページへ飛べば、「氷柱」はイタリア語で "ghiacciolo" であることが分かる (ちなみに男性名詞)。

その冒頭1センテンスは:

Un ghiacciolo è un cono appuntito di ghiaccio che si forma quando l'acqua che cade da un oggetto gela.
--Ghiacciolo (meteorologia) - Wikipedia

「つらら」とは、物体から落下しようとする水が氷結する場合に形成される先端の尖った円錐状の氷のことである。

カタカナ化するとしたら「ギァッチョーロ」ぐらいかな。なお、イタリア語 "ghiacciolo" には「アイスキャンディ」 の意味もある由。

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2009年3月 8日 (日)

1926年のシュレディンガー論文 "Quantisierung als Eigenwertproblem" (固有値問題としての量子化) に就いて: ファインマンの言及箇所探し

[nouse: アハラノフ・ボーム効果とその実証実験 (本ブログ「サニャック効果」関連記事の余談として)] (2009年3月1日[日]) で引用したリチャード・ファインマン (Richard Feynman) の物理学教科書 "The Feynman Lectures on Physics" の一節の冒頭に "The theory we have described was known from the beginning of quantum mechanics in 1926. The fact that the vector potential appears in the wave equation of quantum mechanics (called the Schrödinger equation) was obvious from the day it was written." 「上記に説明した理論は、量子力学の創成当初である1926年以来分っていたのだ。量子力学の波動方程式 (シュレディンガー方程式) が書き表されたその日から、そこには、明白な事実としてにベクトルポテンシャルが現れていた。」 とあるが、この「1926年 」とは、勿論、Erwin Schrödinger (エルヴィン・シュレディンガー) が、量子力学史上重要な "Quantisierung als Eigenwertproblem" (固有値問題としての量子化) 4部作を発表した年である (「重要な」などと書いたが、私はろくに読んだことはない):

  1. "Quantisierung als Eigenwertproblem (Erste Mitteilung)" Annalen der Physik, (4), 79, (1926), 361-376
  2. "Quantisierung als Eigenwertproblem (Zweite Mitteilung)" Annalen der Physik, (4), 79, (1926), 489-527
  3. "Quantisierung als Eigenwertproblem (Dritte Mitteilung: Störungstheorie, mit Anwendung auf den Starkeffekt der Balmerlinien)" Annalen der Physik, (4), 80, (1926), 437-490
  4. "Quantisierung als Eigenwertproblem (Vierte Mitteilung)" Annalen der Physik, (4), 81, (1926), 109-139

因みに、シュレディンガーは、第2論文と第3論文との間に、これもまた「重要な」"Über das Verhältnis der Heisenberg-Born-Jordanschen Quantenmechanik zu der meinen" (Annalen der Physik, (4), 79, (1926), 734-756) (ハイゼンベルクボルンヨルダンの量子力学の私の量子力学に対する関係に就いて) を発表している。

で、ファインマンが言及している、1926年に書かれたベクトル・ポテンシャルを含む波動方程式のことなのだが、やはり「固有値問題としての量子化」4部作中に含まれていると考えるべきだろう。そして、ザッと眺めたところ、ハミルトニアンから波動方程式を導いて、更に、それをクーロン・ポテンシャルでの2体問題 (ケプラー問題) に適用しているらしい第1論文や、作用関数やホイヘンスの原理から波動方程式を論じて、更に、ケプラー問題以外の例として、磁場の非存在下 (第514ページ) での1次元調和振動子等の簡単な系の量子化を扱っているらしい第2論文中には現れるとは思えない。

これに対して摂動論を扱っている第3論文には、期待が持てそうだと、所々を覗いてみたのだが、結局、スカラーポテンシャルについて、次の記述が見つかっただけだった:

Indem wir der Wellengleichung des Keplerproblems, Gleichung (5), S. 362, Bd. 79 dieser Annalen, eine potentielle Energie +eFz hinzufügen, wie es der Einwirkung eines elektrischen Felds in der positiven z-Richtung von des Stärke F auf ein negatives Elektron vom Ladungsbetrag e entspricht, erhalten wir folgende Wellengleichung für den Starkeffekt des Wasserstoffatoms

(32) \Delta\psi + \frac{8\pi^2m}{h^2}\left(E + \frac{e^2}{r} - eFz\right)\psi = 0

welche die Grundlage des restlichen Teiles dieser Abhandlung bildet.
--"Quantisierung als Eigenwertproblem (Dritte Mitteilung)" II. 3 ("Annalen der Physik" Vierte Folge, Band 80, S. 457)

本紀要第79巻第362ページの式 (5) として示されたケプラー問題の波動方程式に、強さ Fz 軸正方向に向かう電場による、電荷 e の負である電子への作用に相当するポテンシャル・エネルギー +eFz を付け加えることで、以後の議論の基礎となる水素原子のスタルク効果に対する次の波動方程式が得られる

(32) \Delta\psi + \frac{8\pi^2m}{h^2}\left(E + \frac{e^2}{r} - eFz\right)\psi = 0

--「固有値問題としての量子化 第3部」第2章/第3節 (「物理学紀要」第80巻第4号第457ページ)

    訳註:
  1. シュレディンガーが "ein negatives Elektron vom Ladungsbetrag e" と云う持って回った言い方をしているので「電荷 e の負である電子」と訳してあるが (言うまでもないが、この論文時点で、陽電子は発見は勿論、少なくとも一般的には、予想もされていない。従って、シュレディンガーは、「陽電子」との区別のために "negative" と云う限定を入れたのではない)、「負電荷 -e の電子」と云うことだろう。

しかし、ファインマンはハッキリ「ベクトル・ポテンシャル」と書いているから、彼が言及しているのは第4論文の次のような箇所だったのだろう (第4論文も摂動を扱っている。ただし、第3論文は時間に依存しない系が主題であるのに対し、第4論文は時間に依存する系が主題である)。

Die Hamiltonsche partielle Differentialgleichung für das Lorentzsche Eelektron läßt sich leicht in folgende Gestalt setzen

(34) <br />
\begin{equation*}<br />
\left\{<br />
\begin{split}<br />
\Bigl(\frac{1}{c}\partialdiff{W}{t} + \frac{e}{c}V\Bigr) &- \Bigl(\partialdiff{W}{x} - \frac{e}{c}\mathfrak{A}_x\Bigr) - \Bigl(\partialdiff{W}{y} - \frac{e}{c}\mathfrak{A}_y\Bigr)  \\<br />
 &- \Bigl(\partialdiff{W}{z} - \frac{e}{c}\mathfrak{A}_z\Bigr) - m^2c^2 = 0 <br />
\end{split}<br />
\right.<br />
\end{equation*}<br />

Hier sind e, m, c Ladung, Masse des Elektrons und Lichtgeschwindigkeit; V, \mathfrak{A} sind die elektromagnetischen Potentiale das äußeren elektromagnetischen Feldes am Elektronenort. W ist die Wirkungsfunktion.

Aus der klassischen (relativistischen) Gleichung (34) suche ich nun die Wellengleichung für das Elektron abzuleiten durch folgendes rein formale Verfahren, welches, wie man leicht überlegt, auf die Gleichungen (4'') führen würde, wenn es auf die Hamiltonsche Gleichung eines in beliebigem Kraftfeld bewegten Massenpunktes der gewöhnlichen (nichtrelativischen) Mechanik angewendet wird. -- Ich ersetze in (34) nachdem Ausquadrieren die Größen

(35) <br />
\begin{equation*}<br />
\left\{<br />
\begin{split}<br />
&\hspace{10mm} \partialdiff{W}{t}, \quad \partialdiff{W}{x}, \quad \partialdiff{W}{y}, \quad \partialdiff{W}{z}, \quad \\<br />
&\mathrm{bezw. \ durch \ die} \ \mathit{Operatoren} \\<br />
&\pm \frac{h}{2\pi i}\partialdiff{}{t}, \quad \pm \frac{h}{2\pi i}\partialdiff{}{x}, \quad \pm \frac{h}{2\pi i}\partialdiff{}{y}, \quad \pm \frac{h}{2\pi i}\partialdiff{}{z} \mbox{.}<br />
\end{split}<br />
\right.<br />
\end{equation*}<br />

Den so erhaltenen linearen Doppeloperator, ausgeübt an einer Wellenfunktion \psi setze ich gleich Null:

(36) <br />
\begin{equation*}<br />
\left\{<br />
\begin{split}<br />
\Delta\psi - \frac{1}{c^2}\partialdiffsecond{\psi}{t} \mp \frac{4\pi ie}{hc}\Bigr( \frac{V}{c}\partialdiff{\psi}{t} + \mathfrak{A}\,\grad{\psi} \Bigl) \\<br />
\hspace{10mm} + \frac{4\pi^2e^2}{h^2c^2} \Bigr( V^2 - \mathfrak{A}^2 - \frac{m^2c^4}{e^2} \Bigl)\psi = 0 \mbox{.}<br />
\end{split}<br />
\right.<br />
\end{equation*}<br />

(Die Zeichen \Delta und \mathrm{grad} haben hier die elementare dreidimensionaleuklidische Bedeutung.) Das Gleichungspaar (36) wäre die vermutete relativistisch-magnetische Verallgemeinerung von (4'') für den Fall eines einzigen Elektrons und zwar wäre es ebenfalls in dem Sinne zu verstehen, daß die komplexe Wellenfunktion entweder der einen oder der anderen Gleichung zu genügen hat.
--"Quantisierung als Eigenwertproblem (Vierte Mitteilung)" ("Annalen der Physik" Vierte Folge, Band 81, SS. 133-134)

ローレンツ電子に就いてのハミルトン偏微分方程式は、容易に次の形式に表わすことができる:

(34) <br />
\begin{equation*}<br />
\left\{<br />
\begin{split}<br />
\Bigl(\frac{1}{c}\partialdiff{W}{t} + \frac{e}{c}V\Bigr) &- \Bigl(\partialdiff{W}{x} - \frac{e}{c}\mathfrak{A}_x\Bigr) - \Bigl(\partialdiff{W}{y} - \frac{e}{c}\mathfrak{A}_y\Bigr)  \\<br />
 &- \Bigl(\partialdiff{W}{z} - \frac{e}{c}\mathfrak{A}_z\Bigr) - m^2c^2 = 0 <br />
\end{split}<br />
\right.<br />
\end{equation*}<br />

ここで e, m, c は、電子の電荷・質量と光速度であり、V, \mathfrak{A} は、電子の位置における、外部電磁場の電磁ポテンシャルであり、W は、作用関数である。

古典論的な (相対論的な) 方程式 (34) から、以下の純形式的な手続き (容易に分かるように、これを、任意の力場における通常の非相対論力学的な運動質点のハミルトン方程式に適用するなら方程式 (4') が得られる) により、電子の波動方程式を導き出してみよう。つまり (34) において、平方展開に、各項

(35) <br />
\begin{equation*}<br />
\left\{<br />
\begin{split}<br />
&\hspace{10mm} \partialdiff{W}{t}, \quad \partialdiff{W}{x}, \quad \partialdiff{W}{y}, \quad \partialdiff{W}{z}, \quad \\<br />
&\mbox{それぞれを、次の{\bf 作用素}} \\<br />
&\pm \frac{h}{2\pi i}\partialdiff{}{t}, \quad \pm \frac{h}{2\pi i}\partialdiff{}{x}, \quad \pm \frac{h}{2\pi i}\partialdiff{}{y}, \quad \pm \frac{h}{2\pi i}\partialdiff{}{z} \mbox{.}<br />
\end{split}<br />
\right.<br />
\end{equation*}<br />

に置換するのだ。こうして得られた線型2階作用素を、波動関数 \psi に適用したものをゼロに等しいとすると、次のようになる:

(36) <br />
\begin{equation*}<br />
\left\{<br />
\begin{split}<br />
\Delta\psi - \frac{1}{c^2}\partialdiffsecond{\psi}{t} \mp \frac{4\pi ie}{hc}\Bigr( \frac{V}{c}\partialdiff{\psi}{t} + \mathfrak{A}\,\grad{\psi} \Bigl) \\<br />
\hspace{10mm} + \frac{4\pi^2e^2}{h^2c^2} \Bigr( V^2 - \mathfrak{A}^2 - \frac{m^2c^4}{e^2} \Bigl)\psi = 0 \mbox{.}<br />
\end{split}<br />
\right.<br />
\end{equation*}<br />

(ここで、記号 \Delta 及び \mathrm{grad} は、初等的な3次元ユークリッド空間に対するものである)。対をなす方程式 (36) は、単一電子の場合に対する方程式 (4'') を相対論的磁場への一般化と措定して良いだろうが、このことの意味はつまり、複素波動関数は、上記方程式のどちらか一方を満足しなければならないと解釈されるべきだと云うことである。

--「固有値問題としての量子化 第部」第6節 (「物理学紀要」第81巻第4号第133-134ページ)

    訳註:
  1. やや余談に属するが、上記独文の翻訳には、主に小学館の [独和大辞典第2版 (コンパクト版)] を参考にしたが、そこには "Quantisierung" (量子化) と云う見出しが見られず、少々落胆した。まぁ、恐らくは、"Quantisierung" は、ブリティッシュ英語の動詞 "quantise" のドイツ語したものの更に派生名詞形と思われるから、と言うか、あるいは "quantisation" から直接造語したのかもしれないが、いずれにしろドイツ語にとっては「外来語」である可能性が大きいので、「ドイツ語」の辞典に収録するのに抵抗があるかもしれないことを認めるに吝かではない。しかし、逆に、だからこそ、利用者に一定の予備知識がないと、語義を推測しようがないことにも留意してほしかった。辞書への収録は、言葉の重要性との兼ね合いがあるのは、勿論だが、私に言わせれば "Quantisierung" は十分重要な単語である。
  2. "Ausquadrieren" も採録されていない。実は、この語義に就いては、私も若干不審なところがある。一応字面に合わせて「平方展開」と訳しておいたが、一般に「(式の) 展開」を意味する可能性が捨て切れない。
  3. 訳文中の式 (34) に就いて: 最近の Winshell は日本語に対応しているので、tex ファイル中に日本語が入っていても無事に dvi を作成出力する。しかし、そうした dvi ファイルを dvipng.exe で png 画像に変換しようとすると拒絶されてしまう。上記訳文中、式 (34) で使用した png ファイルは、モニター画面上に表示させた dvi 画像をキャプチャして png 形式で保存し、GIMP を使って、所要部分の切り取り、縮小、背景透明化を行なったものである。
  4. 一応、式の (4') がどのようなものか、下に紹介しておく:
    (4') \Bigr( \Delta - \frac{8\pi^2}{h^2}V + \frac{8\pi^2}{h^2}E \Big
l) \Bigr( \Delta - \frac{8\pi^2}{h^2}V - \frac{8\pi^2}{h^2}E \Bigl) \psi = 0

なお、私は未見だが (存在自体は承知していた)、以前共立出版から「シュレーディンガー選集」が出されたことがあって、その第1巻が [波動力学論文集] だった(1974年)。上記で引用した論文も、少なくとも一部は、当然収録されているだろう。

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2008年11月18日 (火)

フランス語 "faisceau" の読み方

昨夕 (2008/11/17 17:04:21)、キーフレーズ [faisceau 発音] で、このサイトを訪問された方がいらしたようだ。リモートホスト名を見ると、某大学の数学科の関係者ではないかと推察される。まぁ、要するに、「」の対応フランス語である "faisceau" の読み方をお調べになっていらっしゃたのでしょうね。

しかし、確かに取り敢えずネットで調べるのも良いけれど、この場合は、むしろ、適宜の仏和辞典を引く方が、遥かに簡単で確実だろうと云う気がするのだが、如何なものだろうか。そうすれば、そのものズバリで、発音表記 [fεso] が見つかる筈である。それがネット上となると、所望の情報がある、例えば、フランス語版の "Wiktionnaire" の "faisceau" の項に辿り着くだけでも難しいし、その上、その内容は当然フランス語で書いてあるので、どれが発音を表わしているかを見いだすのに、再び苦労することになるだろう。

勿論、オンライン版の仏和辞典も幾つかあるのだが、私が簡単に覗いた限りでは、発音までカヴァーしているものは見当たらなかった。語義そのものも、「単語帳」レベルの越えていないし...

しかし、小言ばかり言っても仕方がない。それに [faisceau 発音] など「カワイイ方」ともいえるのだ。なにしろ、かなり頻繁に [et フランス語 意味] と云う組み合わせの検索が見受けられるからだ。こうなると、もう [and 英語 意味] と云う検索が何時現れるか、私なぞは期待に胸を震わせてしまうことになる。

で、[fεso] に話を戻すと、これをカタカナにするとしたら「フェソ」ぐらいだろうか。大雑把な意味は「束」ですね。「茎 (stalks)」を束ねたものと云うイメージなのでしょう。因みに、フランス語 "faisceau" の対応イタリア語は "fascio" つまり「ファッショ」で、これも「束」が基本語義。

だから、数学用語としても "faisceau" も「束」と訳した方が素直なのでしょうが、残念ながら「束」は、代数用語のことはさておき、位相の範疇でも "fiber bundle" ("vector bundle" や "principal bundle") の "bundle" の訳語として使われていたので、別の訳語が当てられたのでしょう (これは私の推測)。

"faisceau" に「層」と云う訳語を当てたのは秋月康夫さんらしい。「輓近代数学の展望(続)」の註にご自身で書いていらっしゃる、その理由が奮っていて:

層という訳語の由来は仏語 Faisceau のあとの方の 'ソー' をとったというが一つの根拠である。Faisceau の元来の意味は束 (タバ) である。'群の束' (X 上に配置された) の意である。ところで、これを横に見ると地層のような層になる。そこで、垂直を水平におきかえて層と訳してみたのである。この訳がよいか、悪いか、わが国で定着しているかどうか知らないが、この訳語の発案者として、その由来を記しておく。
--秋月康夫「輓近代数学の展望」p.176 (1970年)。ダイヤモンド社。東京

こうした事情を知らなかった或る若手数学者が、当事御存命であった秋月先生の面前で、「層」と云う訳語は問題が有ると発言してしまったと云う話を聞いたことがあるが、事実かどうかは私は知らない。だが、とにかく「層」と云う数学用語は、日本に定着している。先生、以って瞑すべし。

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2008年6月 5日 (木)

ロシア語で「秋」(と「冬」、「春」、「夏」)

本日昼過ぎ (2008/06/05 13:13:14)、キーフレーズ [ロシア語で秋] で、このサイトを訪問された方がいらしたようだ。

同様なケースで、前にも書いたことがある筈だが、こう云う場合は、日本語版のウィキペディアで、問題の言葉 (今は []) の項目を開いて (なければ仕方がないが、この場合はある)、そのページ左側にある [他の言語] コラム中から、ターゲットとなる言語名 (ロシア語ならば "Русский") をクリックすると、対応ページ、つまり、今の場合はロシア語ウィキペディア中の、"Осень" に辿り着く。

このようにすれば、大抵の場合は、その項目名として、求める言葉が得られる筈。[秋] の場合も、例外ではなくて "осень" (女性名詞) が求めるものである。その証拠に、その内容を読んでみると、次のようになっている。

Осень — одно из четырёх времён года между летом и зимой. Состоит из трёх месяцев: в северном полушарии — сентября, октября и ноября, в южном — марта, апреля и мая.

В отличие от календарной, астрономическая осень наступает позже — во время осеннего равноденствия 22 или 23 сентября (в северном полушарии) или 20 или 21 марта (в южном полушарии) и продолжается до зимнего солнцестояния (21 или 22 декабря в северном полушарии, 20 или 21 июня в южном полушарии).
--Осень

秋 - 一年の四季中、夏と冬との間の季節。北半球では9月、10月、11月、南半球では3月、4月、5月の3か月からなる。

暦の上の場合とは異なり、天文学的には、秋の始まりは遅くなり、(北半球では) 9月22日又は23日、あるいは (南半球では) 3月20日又は21日の昼夜平分日に秋となり、冬至 (北半球では12月21日又は22日、南半球では6月20日又は21日) まで続く。

記載が簡単過ぎて、「季節」の文化的意味合いが不明だが、「秋」の説明以外の何ものでもあるまい。

ちなみに、ロシア語版ウィキペディアのこのページには、四季が列挙されていて、次のようになっている。

Зима | Весна | Лето | Осень

夫々、順に「冬」(女性)、「春」(女性)、「夏」(中性)、「秋」である。

余談。クアーズ (Coors) 社から "ZIMA" と云うアルコール飲料が販売されているが、これはロシア語の зима を踏まえた商標とのこと (英文版ウィキペディア "Zima" の項参照)。

ネット上で訳語を調べる同様な手段で、ウィクショナリー日本語版の該当項目を見ると言うものが有るが、[] の場合、現時点ではロシア語訳は記載されていないようだ。


英語を軸にして調べると云う手段もある。その場合、取り敢えず便利であるのが "Webster's Online Dictionary" である。この場合は、検索フォームに、例えば「秋」と入力して、"Non-English" 指定で検索すると、英訳語が現れる (元の日本語よっては現れないこともあるだろうが、その場合は諦める) から、その意味が適切であるならクリックして、該当ページを開けば、その中にターゲット言語への訳語が記載されている可能性が大きい。実際、「秋」の場合は、"Autumn" のページ中に "осень" が見いだせる。("Fall" のページ中にも "осень" が採録されているが "fall" 自体の意味が多岐に亘るので、その訳語も多種類になってしまっている。)

他にも「手管」はあるのだが、私の拙い説明で分かるような人は、もともと知っているか、あるいは私なぞが説明しなくても、自得できる人だろうから、多弁は弄すまい。

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2007年11月29日 (木)

Eglantier?

昨深更 (2007/11/28 23:52:25) キーフレーズ [Eglantier 和訳] で、このサイトを訪問された方がいらしたようだ。

yahoo japan の検索では、このサイトしかヒットしないようだから (google では、何もヒットしない)、いらしたのだろうが、その先に進められたか、若干心許ない気がする。

なぜなら、このサイトには当時 "Eglantier" と云う単語は含まれていなかったからで (現在では、この記事によって含まれることになったが...)、必要な情報を選り分けるのは大変だったかもしれない。

では、何故 jahoo がこのサイトを拾ったのかと云うと "églantier" と云う単語が、[nouse: フランスの古童謡 "Nous n'irons plus au bois"] 中に表れるからだろう。一応「野バラ」と訳しておいた。

ただし、églantierRosa canina であるが (所謂「ローズヒップ」は、主としてこの種のバラの実)、日本で言う「野バラ」は Rosa multiflora である。

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2007年11月18日 (日)

"gtoreq" の意味

時々、このサイトに "gtoreq" の意味を尋ねてと思われるアクセスがある。私自身の経験からいっても、文脈から簡単に分かる事なので、事々しく取り上げることもないとは思って無視していたが、アクセスが何回か繰り返されると、一言だけ書いて、後は忘れておこうと思い返した。

と云う訣で一言。

"gtoreq" とは "greater than or equal" つまり「以上 (≥)」の略である。

ちなみに、「以下」の方は、"less than or equal" だから "ltoreq" と云うのが対応する表現になる。

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2007年10月23日 (火)

"la primavera" はイタリア語で「春」

昨日、イタリア語 "la primavera" が「秋」を意味するのか確認することを意図すると思われる検索で、このサイトを訪問された方がいらしたようだが、「惜しい!」
"la primavera" は「春」なのだ。

『春』は、近年の修復の結果、オリジナルの華麗な色彩がよみがえり、従来、煤(すす)に覆われてはっきり見えなかった多くの草花が、ヴィーナス(ウェヌス)の立つ地面に描き込まれているのが見えるようになった。研究者によると、これらの草花のほとんどは、今でもフィレンツェ地方に自生しているという (「サンドロ・ボッティチェッリ」- Wikipedia)『春』は、近年の修復の結果、オリジナルの華麗な色彩がよみがえり、従来、煤(すす)に覆われてはっきり見えなかった多くの草花が、ヴィーナス(ウェヌス)の立つ地面に描き込まれているのが見えるようになった。研究者によると、これらの草花のほとんどは、今でもフィレンツェ地方に自生しているという ((サンドロ・ボッティチェッリ) - Wikipedia)
[nouse: 料理用語としてのイタリア語 "tagliare a rotelline"] に出てきているが、primavera, estate, autunno, inverno が、それぞれ春・夏・秋・冬になる (primavera と estate が女性名詞。autunno と inverno が男性名詞)。ちなみに 「季節」は "la stagione", 「四季」は "le quattro stagioni" になる。

と云う訣で、サンドロ・ボッティチェッリ (Sandro Botticelli) の代表作の絵画 (左上) も、アントニオ・ヴィヴァルディ (Antonio Vivaldi) の有名なヴァイオリン協奏曲 (下) も、イタリア語では、ともに "La Primavera" と呼ばれているのだ。

ヴィヴァルディの「春」の音声ファイルは、ウィキペディア・コモンズで入手した ogg フォーマットのものなので、ブラウザへのプラグイン内容によっては再生されないかもしれない。その場合は、悪しからず。

2008-01-18 [金] 補足:スペイン語でも春は "la primavera" ポルトガル語では定冠詞が違ってくるが、やはり "a primavera" である。

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2007年7月 8日 (日)

マルトデキストリンの構造式?

ときどき [maltodextrin (マルトデキストリン) 構造式] と云った類のキーフレーズで、このサイトを訪れる方がいらっしゃる。それを見ると、本当に大きなお世話だろうが、「一体、この人は、どの程度の情報を知りたがっているのだろう」と、首を傾げてしまうのだ。

変なサジェスチョンをすると、「そんな分かりきったことを調べているのではない」と叱られそうな気がする。その一方で、かなり初歩的なレベルで困っていらっしゃるのかも知れないと云う気もする。

最近も、そうした訪問者があった。勇を鼓して、変なサジェスチョンをしておこう。

まず話の土台を作るために、その物ずばりのタイトルであるドイツ語版ウィキペディア "Maltodextrin" (28. April 2007 um 14:38 Uhr) から少し訳出する:

Maltodextrin (Warenzeichen Maltrin) bezeichnet ein wasserlösliches Kohlenhydratgemisch, das durch Hydrolyse von Stärke (Poly-α-glucose) hergestellt wird (siehe modifizierte Stärke). Die Hydrolyse erfolgt teilweise durch Säure, teilweise auf enzymatischem Wege.
マルトデキストリン (商標名 "Maltrin") はデンプン (ポリ-α-グルコース) の加水分解により生産される水溶性炭水化物混合体のことである(ドイツ語版ウィキペディア "modifizierte Stärke" --化工デンプン-- の項を参照)。加水分解は、酸によって行なわれることも、酵素によって行なわれることもある。

Maltodextrin ist ein Gemisch aus Monomeren, Dimeren, Oligomeren und Polymeren der Glucose. Je nach Hydrolysegrad unterscheidet sich die prozentuale Zusammensetzung. Diese wird durch das Dextrose-Äquivalent beschrieben, das bei Maltodextrin zwischen 3 und 20 liegt.
マルトデキストリンは、グルコースの、モノマー、ダイマー、オリゴマーポリマーからなる混合物である。成分の割合は、加水分解の進み具合に応じて様様であるため、組成の記述にはデキストロース当量が用いられるが、その値は3乃至20である。

訳註:
1.「ダイマー」と「オリゴマー」との間に、「トリマー、...」を入れたくなるのだが、そのまま訳しておく。
2. デキストロース当量 (「ブドウ糖当量」とも謂う。或いは "DE" とも表記される。これは、英語 "Dextrose Equivalent" の略) とは、デンプンの加水分解物や糖が、同量のデキストロース(つまり「グルコース」、つまり「ブドウ糖」)の何%に相当する還元力を持っているかを示す値。従って、デンプンのデキストロース当量は0で、デキストロース(グルコース/ブドウ糖)のデキストロース当量は100になるのは当然だが、この他に例えばショ糖は非還元糖なのでは 0 になる。デキストロース当量は、デンプンの加水分解にあっては、還元糖までの分解がどの程度まで進んでいるかを示す目安になる。

Das Wort Maltodextrin leitet sich von Maltose und Dextrose ab: Maltose (= Malzzucker) ist das Dimer zweier Glucose-Moleküle, während Dextrose (= Glucose = Traubenzucker) ein Monomer darstellt.
マルトデキストリンと云う言葉は、マルトースとデキストロースに由来する。マルトース(麦芽糖)は、2個のグルコース分子のダイマーであるのに対し、デキストロース(つまりグルコース、つまりブドウ糖)は単糖である。

訳註:
1. "ab|leiten sich4 von et3": 「...に由来する」
2. この部分の記載に対して、私は眉に唾を付けざるをえない。字面を素直に読む限り、Maltodextrin は、麦芽(malt/モルト)中に形成される(のと同様な)デキストリンの意だろう。

Maltodextrin ist kaum süß und beinahe geschmacksneutral. Da es gerade noch wasserlöslich ist, wird es in der Diätetik eingesetzt, um Mahlzeiten mit Kohlenhydraten anzureichern. In Wasser bildet es eine klebende, trübe und viskose Masse.
マルトデキストリンには、殆ど甘味はなく、ほぼ無味である。水にはなんとか溶けるので、食事に炭水化物を補足する目的で、食餌療法において用いられる。水に溶けると、マルトデキストリンは、粘着性のある不透明な粘性な塊を形成する。

訳註:
1. "Diätetik" は「食餌療法」と訳しておいた。日本語の「ダイエット」は意味に偏りがありすぎるからである。

Maltodextrin hat die CAS-Nummer 9050-36-6.
マルトデキストリンの化学物質登録番号 (CAS Number) は9050-36-6である。

以上を読めば、お分かりになると思うが、「マルトデキストリン」の「化学物質」としての「立場」は、「ビミョー」なのだ。

まず、「マルトデキストリン」には、「デンプンの加水分解によって得られた」と云う製法依存の属性が付いている (つまり「マルトデキストリン」とは「デンプンの加水分解によって得られたデキストリン」と云うことだ)。従って、「マルトデキストリン」は化学的にはせいぜい「デキストリン」の下位概念にしかならないし、それどころか「工業的には意味があっても、化学的には独立した意味がない概念だ」と云う考え方もできるのだ。

その上、「デキストリン」そのものが、グルコースモノマーが基本になっているとは言え、様様な重合度の糖類が様様な割合で混合した一連の範囲の組成物の総称だから、議論によっては、構造式を云云すべきではないこともありうるだろう。

勿論、適用範囲に限界があることを十分念頭におくなら、英語版 Wikipedia の "Dextrin" の項 (あるいは、むしろ、Wikipedia が引用している "21 C.F.R. 184.1444 Maltodextrin") で示されているような、グルコース1分子から水1分子を落としたものを重合化したことを表わす ((C6H10O5)n が有用である場合もあるだろうけれども。

関連記事:
nouse: [nouse: マルトデキストリンの構造式?] 補足

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2007年6月 7日 (木)

一次信頼性理論?

キーワード [一次信頼性理論] で、当サイト (nouse) を訪問された方がいらしたようだが、あるいは、それは "一次近似信頼性手法" のことではあるまいか?

だとしたら日本語より英語で "first-order reliability method" (FORM) を検索した方が良いかもしれない。

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2007年5月23日 (水)

料理用語としてのイタリア語 "tagliare a rotelline"

イタリア語の料理レシピを眺めていると、"tagliare a rotelline" と云う表現にぶつかることがある(最初に出会ったケースに就いては、近近書くことになるだろう)。

勿論 "tagliare" の部分は、実例では文脈により tagliate, tagliarle, tagliarlo 等と色色で、また、"a rotelline" との間に数語が挟まることもある。

で、当初その意味が分からなかった(だからこそレシピを幾つも覗いてみたのだが)。

取り敢えず手掛かりになりそうなのは "la rotella" は「車輪」の意味だと云うことだけだった。"rotelline" と云うのは、その指小形の複数だろうことは推測がつく。これを念頭に置いて、フレーズ "tagliare a rotelline" を含むレシピを幾つか調べてみると、どうやら「輪切り」もしくは「小口切り」の意だろうと思えてきた。例えば:

Frittelle alla banana

Frittelle alla banana
バナナのフリッター

5 banane, un dl di Kirsch, zucchero
バナナ 5本。キルシュ 1デシリットル。砂糖。

Tagliare le banane a rotelline, dopo averlre sbucciate. Farle macerare nel Kirsch e nello zucchero, poi immergerle nella pastella. Farle dorare mettendo 4-5 frittelle per volta nell'olio bollente.
Sgocciolare, zuccherare e servire calde.
In ogni frittella si devono mettere numerose fettine di banana.
皮を剥いたバナナを輪切りにする。バナナをキルシュを漬け、砂糖をまぶしてから、フリッター用の衣 (pastella) を付ける。1回に4-5個づつを、油でキツネ色になるまで揚げる。
油を切り、砂糖をかけ、熱いうちに食卓に出す。
フリッターの一つ一つを、バナナの薄切りをまとめることで作ることもできる。


訳註:上記引用中、最後のセンテンスは、意味が取りづらいが、訳してみた通りのことなのだろうと思う。

HOBBY Section - cucina

Mele fritte
(primavera estate autunno inverno)
リンゴのフリッター
(春夏秋冬)

un uovo
175 gr di farina
1/2 bicchiere di latte
una punta di cucchiaio di lievito per dolci
un cucchiaio di zucchero
2 mele
卵。
小麦粉 175g。
牛乳 1/2カップ。
菓子用酵母 小匙に少々。
砂糖 小匙1杯。
リンゴ 2個。

Mescolare assieme la farina, il lievito e lo zucchero. Unire ed amalgamare bene al composto l'uovo ed infine aggiungere il latte. Sbucciare le mele, eliminare il torsolo e tagliarle a rotelline spesse 3 - 4 mm. Immergere le rotelline di mele nella pastella e friggere in abbondante olio caldo.
Sono ottime ancora tiepide, spolverate da un pizzico di zucchero o di cannella.
小麦粉、酵母、砂糖を混ぜ合わせる。均一になったら、卵を混ぜ合わせて、最後に牛乳を加える。リンゴの皮を剥き、芯を除き、3-4mm の厚さの輪切りにする。輪切りにしたリンゴを、フリッター用の衣に漬け、熱したタップリの量の油で揚げる。
砂糖とシナモンを一つまみ振りかけておくと、冷めても美味しい。

Ricette,Ricette di Cucina,Cucina

Penne Con Le Zucchine
ズッキーニのペンネ

Dosi per numero 4 persone
4人前

Ingredienti:
400 G Pasta Tipo Penne Rigate
400 G Zucchine
Olio D'oliva
30 G Formaggio Parmigiano
Prezzemolo
1 Spicchio Aglio
Sale
材料:
ペンネリガーテ(溝付きペンネ) 400g
ズッキーニ 400g
オリーブオイル
パルメザンチーズ 30g
パセリ
ニンニク 1片
食塩

Lavate e tagliate a rotelline le zucchine. Mettete in un tegame olio e aglio e quando l'aglio sarà rosso toglietelo, unite le zucchine e fatele insaporire un poco. Salate e aggiungete all'ultimo il prezzemolo tritato e concludete la cottura a tegame coperto. Fate cuocere le penne rigate in abbondante acqua salata, scolatele al dente e mettetele in una zuppiera condendole con le zucchine preparate. Ricordatevi che le zucchine dovranno essere ben impregnate di olio. Indi spolverizzate con abbondante parmigiano grattugiato e servite il tutto caldo.
ズッキーニを洗って輪切りにする。浅鍋にオリーブオイルとニンニクを入れ、ニンニクが色づいたら、それを取り出してから、ズッキーニを合わせて少し風味を付ける。塩を入れ、最後にみじん切りにしたパセリを加えて、鍋に蓋をしておく。ペンネリガーテをタップリの塩水で茹で、アルデンテになったら湯切りをして、スープ用の大鉢 (zuppiera) に入れ、それを調味済みのズッキーニで和えて味付けする。ズッキーニにはオリーブオイルが良く染みてあるよう気をつけること。その後で、擦りおろしたパルメザンチーズをタップリと振りかけ、熱熱のうちに食卓に出す。

余談だが、イタリア語サイトで "udon" のレシピもヒットした。「肉うどん」(Niku Udon, noodles giapponesi con carne - Cucina giapponese, ricette e piatti di cucina giapponese) と「月見うどん」(Demo dhtml - www.risorse.net)。

ともにネギを "tagliare a rotelline" (この通りではないが) すると云う表現がでてくる。前者はアジア全般を扱っているサイト中のブログで "Pubblicato da Daniele Bevivino e Yumie Sasaki" とクレジットされている。写真を見ると、ネギが大きそうで、「小口切り」とは言いにくい。

後者は、イタリア在住の「柔術家」Ms. Capaldini Mauro のサイト。" Tagliate la parte bianca dei porri a fettine diagonali, e quella verde a rotelline sottili. " (ネギの白いところは斜め切り、青いところは小口切りにする) と、藝が細かい。この場合は、"sottili" と云う限定も付いているし、「小口切り」で良いと思う。

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2006年12月18日 (月)

タップ密度と嵩密度(かさ密度)に就いて

このサイトのアクセス解析を見ていると、[タップ密度] をキーワードにして検索した結果訪問される方が多い。併せて、[嵩密度 (かさ密度)] が条件に入っている場合もある。

この二つの言葉が出てくる記事は [米国特許6599897(セロクエル)の要約・発明の背景・独立クレームの翻訳(再編集版)] (及び、その元の記事である [米国特許6599897(セロクエル)の要約・発明の背景・独立クレーム]) だ。何度も使われているが、その含意が幾らかでも書かれているのは、一箇所だけである。それを以下に引用しておく。

Bulk density is the density of a free flowing powder. Tap density is the density of the powder after it has been vibrated or tapped on a surface several times. Bulk density is determined by pouring a volume of 100 ml of powder into a graduated cylinder and measuring the weight of the powder. Tap density is determined by placing the same cylinder, containing the 100 ml of powder used to measure the bulk density, on a piece of equipment that raises and drops the cylinder 200 times (the amplitude of the raising and lowering in this standard test is 0.5 inches). The new volume of the powder is measured and since the weight of the powder is already known the tap density can be calculated.
嵩(かさ)密度とは、自由に流動する粉体としての密度である。タップ密度とは、振動を受けるか、又は、表面を何回か叩かれた後の粉体密度である。嵩密度は、体積 100 ml の粉体を、メスシリンダー内に注いでから粉体の重量を測定することで決定する。タップ密度を決定するには、嵩密度を測定するために用いて100 ml の粉体を収容しているメスシリンダーそのものを、一定の機器に装着して、200回持ち上げ・落下させる(持ち上げ・落下の幅は、本発明が用いた標準的試験では 0.5 インチである)。粉体の体積を改めて測定するなら、粉体重量は既知であるから、タップ密度が計算できる。

このサイトを訪問される大多数の方には、言わずもがなの知識だろうが、老婆心ながら補足しておくと、日本においては、[第十五改正日本薬局方] (厚生労働省「日本薬局方」ホームページ改正の概要の説明がある) 中に「粉体物性測定法: かさ密度及びタップ密度測定法」がある筈である(私は未見)。

残念ながら、上記厚生労働省の「日本薬局方」に関するウェブサイトでは [第十五改正日本薬局方] そのものは公表されていない。ただし、[第十四改正日本薬局方第一追補] 及び [第十四改正日本薬局方第二追補] は公表されており、それを見ることである程度の内容は把握できるのではないかと思う。

2007-11-07 (水)補正:
現在 [厚生労働省:「日本薬局方」ホームページ] において [第十五改正日本薬局方] の pdf ファイルが公開されている。その中の [3. 粉体物性測定法 3.01 かさ密度及びタップ密度測定法] (pdf ファイルとしての pp.113-114) には、日本薬局方が定める嵩密度(かさ密度)とタップ密度の測定法が説明されており、その内容は、上記特許中の記載と相応に異なっている。参照して頂きたい。

未見である以上、内容について私は云々するわけにはいかないが、[第十五改正日本薬局方 (大型本) 日本公定書協会(編集) 出版社:じほう (2006/05)] 及び [第十五改正日本薬局方 (大型本) 日本公定書協会(編集) 出版社:廣川書店 (2006/07)] と云うものもある。[3. 粉体物性測定法 3.01 かさ密度及びタップ密度測定法] は [第十五改正日本薬局方] の pp.61-62 に記載されている。一応情報として記しておく。

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2006年12月16日 (土)

『"net et vif" の "vif" は「快活に」と訳すべきか』に就いて補足

記事 [nouse: フランス語 "net et vif" に就いて] (2006年12月14日) で、Claude Debussy (クロード・ドビュッシー) のピアノ曲 Jardins sous la pluie (雨の庭) における曲想指定 "net et vif" の "vif" は、「快活に」とは訳しづらい旨の事を書きましたが、翻って考えてみるに、「快活」になりづらい曲だから、あえて、「快活に」演奏するよう注意を喚起した可能性があることに気がつきました。

後知恵になってしまいますが、補足しておきます(音楽史上、どのような判断がなされているかは、私の全く承知しないところです)。

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2006年12月14日 (木)

フランス語 "net et vif" に就いて

このサイト (nouse) のアクセス解析を見ていたら、[フランス語 net et vif] と云う検索フレーズで、来られた方がいらっしゃる。net, et, vif の3語は、一語一語としては、どれも極めて初歩的なフランス語だが、フレーズとして特別の意味があるかどうか、全く想像がつかなかった。大修館の [新スタンダード仏和辞典] にも、それらしいものは載っていない。うーむ。

ついネットで調べてしまった。フレーズとしてダブルクオートが付いた "net et vif" で google 検索してみると、(数え方にもよるが) 150 件ぐらいのサイトがヒットするのだが、多くは Claude Debussy (クロード・ドビュッシー) のピアノ曲集 Estampes (版画) 中の3曲目 Jardins sous la pluie (雨の庭) に付随する形で見いだされる。

さらに "Jardins sous la pluie" を避けて検索しても、40件ほどヒットするが、その中には、綴り間違い (日本のサイト Estampes: III. Jadins Sous La Pluie. Net et vif で間違えているのはともかく、フランス・アマゾンのサイト Estampes: Jardin Sous La Pluire (Net Et Vif) で間違えているのを見るのは、少し残念。フランスのアマゾンに引きずられてか、ドイツのアマゾンも間違えているし...) やロシア語形 Сады под дождем (Net Et Vif) (Эстампы) もあるので、"Jardins sous la pluie" の割合は、見かけより大きい。

つまり、"net et vif" は、取り敢えずは、ドビュッシーがピアノ曲 [雨の庭] に付けた、曲想指定と云うことになる。定訳があるかもしれないが、あえてここで翻訳するとなると、「鮮明かつ素ばやく」とか「鮮明かつ快活に」ぐらいだろうか。

ただ、ネット上にあった midi 音源で "Jardins sous la pluie" を聴いてみたが、窓越しに庭に落ちている雨脚を恨めしげに眺めている情景が浮かんでくるから、私としては「快活」とは言いにくい。それどころか、速めの演奏では、驟雨に降り籠められた感じで、軽い圧迫感すらある(最後になって、雨は小振りになり、空が明るくなる印象なんだが)。

これに関連して書いておくと、ウィキペディアの [映像 (音楽)] の項によれば、この曲は『いやな天気だから「もう森には行かない」の諸相(Quelques aspects de “Nous n'iron plus au bois” parce qu'il fait un temps insupportable)』を改作したものだと云う。なるほどね。

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2006年10月24日 (火)

メモ: 料理用語としてのイタリア語 "saltare" とフランス語 "sauter"(ついでにラテン語の諺2つ)

イタリア語の動詞 "saltare" の料理用語としての語義は、[小学館伊和中辞典] (1983年 東京 小学館。編者:池田 廉 他) に載っている。

フライパンでひっくり返しながら焼く,ソテーにする.

これで良いのだが、しかし、"saltare" はパスタ料理のレシピでも使われる言葉で、その場合の語義は、少し補足した方が解かりやすくなる。

このことは、define:saltare で Google 検索してみると、分かる。その結果は次の通り:

日本語 による saltare の定義は見つかりませんでした。
Web 上での イタリア語 による saltare の定義:

1) Per carni: cottura per rosolatura in padella;
2) Per paste alimentari: mettere la pasta in padella con la salsa e, con un particolare movimento della mano, rimuoverla affinchè assorba meglio il sugo;
3) Per verdure: procedere come sopra, saltando le verdure con burro o con un altro grasso.
www.whynat.it/terminologia/terminologia.php
1)肉に就いては: フライパンでキツネ色になるよう焼く料理法
2)パスタに就いては: パスタをソースと共にフライパンに入れ、ソースが吸収されやすいよう、独特な手の動きを使ってパスタを何度も動かすこと。
3)野菜に就いては: バターその他の油脂と共に野菜が跳ね上がるようにして、上記と同様な措置をすること。

Cuocere in padella o tegame basso, con un procedimento veloce ea calore vivo, pezzi di carne, con l'aiuto di materie grasse quali olio, burro o strutto.
www.lavinium.com/enciclopedia/enciclos.htm
フライパン又は浅鍋で、油・バター・ラード等の油脂を使って、肉の細片を強火で手早く調理すること。

"assorbire" ("assorba" は接続法現在形)だから「ソースが吸収され」と訳しておいたが、日本語のレシピとしては「ソースが絡み」とした方が良いかもしれない。


余談だが、フランス語での対応語 "sauter" に就いても、少し書いておく。

イタリア語 "saltare" もフランス語 "sauter" も、ともに「踊る」を意味するラテン語 "saltare" (不定法) に由来する訳だが、define:sauter でGoogle 検索して得られた結果から関係がありそうなところを引用すると:

日本語 による sauter の定義は見つかりませんでした。
Web 上での フランス語 による sauter の定義:

Cuire à découvert, sur un feu assez vif (l'ustensile approprié étant la sauteuse).
www.marmiton.org/recettes/lexique.cfm
素材をそのまま、十分な強火で加熱すること(適切な調理用具はソテー用浅鍋)。

cuire à feu moyen à vif dans une poêle à frire en remuant constamment.
www.lifescaneurope.com/befr/diabetique/recettes/terminologie/
フライパン内で、中火又は強火を使って常に動かしながら加熱すること。

Cuire à feu vif, sans mouiller et sans couvrir, dans des corps gras.
perso.wanadoo.fr/cuisinez/acceuil_termes.htm
水・スープ・ワイン等の液体を加えたり、蓋をしたりせずに、強火で脂肪と共に加熱すること。

Action de cuire de petites pièces de viandes, des poissons, des légumes, des oeufs..... dans très peu de corps gras chaud.
www.restocours.net/Anecdotes/glossaire%20technique1.htm
小さく切った肉・魚・野菜・卵を、極少量の熱い脂肪と共に加熱すること。

cuire dans une sauteuse avec un corps gras.
membres.lycos.fr/tambouilles/lexiq.htm
ソテー用浅鍋の中で脂肪と共に加熱すること。

faire rissoler un aliment dans un peu de gras, à feu vif.
www.cafa-rcat.on.ca/psa/glossaire.html
強火を使って、少量の脂肪で食品に焼き色を付けること。

Faire dorer dans une matière grasse des aliments.
www.cuisine-martine.com/technique/lexique-q-r-s.html
食品を脂肪と共にこんがりと焼くこと。

Cuire à feu vif des aliments dans la graisse chaude en agitant la casserole. Cuire dans une poêle avec peu de corps gras.
www.artculinaire.ch/voc/index.php4
強火を使って、シチュー鍋を揺すりながら、食品を熱い脂肪と共に加熱すること。フライパンの中で少量の脂肪と共に加熱すること。

Cuire un mets à feu vif avec une matière grasse, en le faisant sauter de temps à autre pour l'empêcher d'adhérer au récipient.
membres.lycos.fr/javelle9/glossaire.html
容器に貼りついてしまわないように食品を時々跳ね上げさせながら、強火を使って脂肪と共に加熱すること。

Faire cuire à feu vif avec un corps gras.
脂肪と共に強火で加熱すること。

当然かもしれないが、パスタに就いての特別なニュアンスが付いた語義は見られない。

なお、「ソテー」の語源として「フライパンで炒めると油が跳ね上がることから言われるようになった」と云う説があるらしいが(「語源由来辞典」)、上記の語釈を見るかぎり、首を傾げざるを得ない。素材を鍋の中で「躍らせる」ことを示していると解釈した方が素直だろう。Wiktionarysauté の項も参照のこと。


脱線ついでに、ラテン語 "saltare" が使われている例を2つ、引用しておく(両者ともオリジナルはギリシャ語だが、おそらくラテン語の表現の方が良く知られているだろう)。ともに、有名な正に「引用句」である。

まづ、「跳ぶ」として使われている例:

Hic Rhodos, hic salta 「ここがロードス島だ。ここで跳べ。」(イソップ)
αυτου γαρ και Ροδος και πηδημα

ネットを調べると分かることだが、"Rhodos" は "Rhodus" とも表記されることがある(他に "Rhodes" と表記されることがあるが、これは現代語なので、問題が別になる)。また、"salta" に就いては "saltus" と表記されている例もある。ただ、この話をしだすと、Desiderius Erasmus, G.W. Friedrich Hegel, Karl Marx と云った面面のラテン語やギリシャ語のリテラシの話をしなければならなく可能性が高い。鬱陶しそうなので、それなりの必要性にせまられるまで手を着ける気はない。

次は、「踊る」:

cecinimus vobis et non saltastis 「われら汝等のために笛吹きたれど汝ら踊らず」(マタイ 11-17)
ηυλησαμεν υμιν και ουκ ωρχησασθε

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2006年10月19日 (木)

メモ: 料理用語としてのイタリア語 "fare restringere"

イタリア語ネット上でレシピを眺めていると "fare restringere" ("fate restringere" その他の形のこともある)と云う表現が出てくる。私の手元にある伊和辞典([小学館伊和中辞典] 1983年 東京 小学館。編者:池田 廉 他)で "restringere" の項を引いて、掲載の語義を当て嵌めてみても、判り方がはかばかしくないのだが、ネット上での実例を幾つか眺めていると、大概 [煮詰める] と云う意味であろうことが推測できる。

その最も解かり易かった例を紹介しておく。ハタのラヴィオリ("ravioloni" だから「ラヴィオローニ」とすべきか)に和えるためハタのソースの調製法である。

Per il sugo
Tritare la cipollina e rosolarla con l' olio d' oliva vergine, aggiungere la cernia tagliata a dadini, i pomodori tagliati a filetti, vino, prezzemolo, capperi, peperoncino e allungare con l' acqua recuperata dalla cernia. Fare restringere il tutto in modo da ottenere un sugo denso per il condimento. --Ravioloni di Cernia in Salsa Paesana

ソースの作り方
小タマネギをみじん切りにし、エクストラバージン・オリーブオイルで炒め、これに、賽の目に切ったハタ、薄切りにしたトマト、ワイン、パセリ、ケーパー、唐辛子を加え、ハタが吸い取った分だけ水を足して補う。これを、調味に適する濃さソースが得られるまで煮詰める。

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2006年10月17日 (火)

メモ: 料理用語としてのイタリア語 "sfumare"


ある理由で(このことに就いては、近近書くつもり)、イタリア語の動詞 "sfumare" が料理用語としてどのような意味であるのか知りたくなった。しかし、手元にある[小学館伊和中辞典](1983年 東京 小学館。編者:池田 廉 他)には該当する語義が見当たらない。

白水社の辞典も持っていることは持っていて、いま家の中の何処かにはあるのだろうが、その何処にあるのかが分からないので仕方がない。また、同じく白水社から[イタリア料理用語辞典]が出版されているのは承知しているが、これは残念ながら所持していない。

と云う訣で、ネット上で語義の説明をしたものがないか、探してみた。しかし、これがなかなか見つからなかった。

用例は多数でてくる。そこから、"sfumare" が「酒蒸し」や「フランベ」に近い処理であることは想像が付く。しかし、あたかも説明不用の常用語の如く "sfumare" や "sfumate" が使われていて、その具体的な説明がない。

困った揚げ句に、期待していなかったため、当初すべきなのに省略していた [Google 検索 define:sfumare]を行なってみた。その結果:

日本語 による sfumare の定義は見つかりませんでした。
Web 上での イタリア語 による sfumare の定義:
Bagnare con un liquido un alimento molto caldo che per effetto del calore della pietanza bagnata tendera ad evaporare quasi subito. Le pietanze sfumate vengono poi ultimate nella cottura con l'aggiunta di un altro liquido. Per esempio si sfuma il riso.
www.whynat.it/terminologia/terminologia.php(define:sfumare - Google 検索)

この "www.whynat.it/terminologia/terminologia.php" はリンクが切れているようだ。ただし、同一内容が Glossario in cucinaVocabolario della cucina で見られる。

正に語義の説明である。「google め。愛い奴ぢゃ」と云う気分になったことは正直に認めておこう。

で、その意味なんだが、実は "alimento" と "pietanza" の含意が読み取れないので、釈然としない。しかし、一応訳を付けておく。

液体を、非常に熱い素材にかけ、その主菜の熱によって、液体がほぼ即座に蒸発するようにすること。主菜はその後、別の液体で調理されて完成する。例えば、米に対して行なわれる。

当然文脈に依存するのだが、"sfumare" は「風味付け」と訳すと収まりが良いだろうと云うのが、私の今のところの結論だ。

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