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2018年2月の1件の記事

PHP研究所 [ABC予想入門] の誤植と微妙箇所

以前 (出版当時) に卒読した [ABC予想入門] (発行:株式会社PHP研究所/2013年4月1日。著者:黒川信重・小川信也) の誤植を纏めておく。瑕疵は後半 (第4章以降) に集中しており、表式上のケアレスミスばかりである。

内容は、「ABC予想」や関連する話題 (ファルマー予想・リーマン予想・ラマヌジャン予想・佐藤テイト予想・スピロ予想・カタラン予想。そして、「予想」の「整数版」と「多項式版」) に亘っており、充分面白かった。

[ABC予想入門] 正誤表
第4章第1節 p.124 第4行
a\left(\frac{c^{\prime}}{c}-\frac{a^{\prime}}{a}\right) = bc\left(\frac{b^{\prime}}{b}-\frac{c^{\prime}}{c}\right) a\left(\frac{c^{\prime}}{c}-\frac{a^{\prime}}{a}\right) = b\left(\frac{b^{\prime}}{b}-\frac{c^{\prime}}{c}\right)
備考:右辺の因子 $c$ は不要。
第4章第1節 p.125 第1行-第2行
\begin{align*}
 \frac{a}{b} &= \frac{\displaystyle\frac{c^{\prime}}{c}-\frac{a^{\prime}}{a}}{\displaystyle\frac{b^{\prime}}{b}-\frac{c^{\prime}}{c}}\\
&= \frac{\displaystyle\rad{abc}\left(\frac{c^{\prime}}{c}-\frac{a^{\prime}}{a}\right)}{\displaystyle\rad{abc}\left(\frac{b^{\prime}}{b}-\frac{c^{\prime}}{c}\right)}
\end{align*} \begin{align*}
 \frac{a}{b} &= \frac{\displaystyle\frac{b^{\prime}}{b}-\frac{c^{\prime}}{c}}{\displaystyle\frac{c^{\prime}}{c}-\frac{a^{\prime}}{a}}\\
&= \frac{\displaystyle\rad{abc}\left(\frac{b^{\prime}}{b}-\frac{c^{\prime}}{c}\right)}{\displaystyle\rad{abc}\left(\frac{c^{\prime}}{c}-\frac{a^{\prime}}{a}\right)}
\end{align*}
備考:中辺と右辺とで、分子・分母を交換する。左辺だけの分子・分母を交換しても正しい等式になるが、後続の議論が、本式で、中辺と右辺を補正した形のものに準じた表式になっているので、こちらの方が、全体としての訂正箇所が少なくなる。
第4章第1節 p.126 第8行
a\Bigm|\rad{abc}\!\left(\frac{c^{\prime}}{c}-\frac{a^{\prime}}{a}\right) a\Bigm|\rad{abc}\!\left(\frac{b^{\prime}}{b}-\frac{c^{\prime}}{c}\right)
備考:p.125 第2行での変更に合わせる。
第4章第1節 p.127 第1行
b\Bigm|\left(\frac{b^{\prime}}{b}-\frac{c^{\prime}}{c}\right) b\Bigm|\rad{abc}\!\left(\frac{c^{\prime}}{c}-\frac{a^{\prime}}{a}\right)
備考:p.125 第2行での変更に合わせ
\[
 \frac{b^{\prime}}{b}-\frac{c^{\prime}}{c}
\]

\[
 \frac{c^{\prime}}{c}-\frac{a^{\prime}}{a}
\]
に変更する。
さらに $\rad{abc}$ を補足する必要がある。
第5章第4節 p.179 第8行
\wp(z)^{2}=y^{2} \wp^{\prime}(z)^{2}=y^{2}
備考:ここでの ワイエルシュトラス (Weierstraß) の $\wp$ 函数 (ペー函数) は微分されていなければならない (p.174 での記述を参照)。
第5章第4節 p.186 第6行
\wp(z_{3}) \neq \wp(z_{2}) \wp(z_{3}) \neq \wp(z_{1})
備考:この式は $f(z_{3})=\wp(z_{3})-\wp(z_{1})\neq{0}$ から導かれたものである。
第6章第3節 p.207 第6行
c_{n+1}=a^{2}_{n} c_{n+1}=c^{2}_{n}
備考:p.209第7行には正しい式が示されている。
第6章第3節 p.208 第10行-第12行
\begin{align*}
 &a_{n}=3^{2n}\cos^{2}(2^{n-1}\theta)\\
 &b_{n}=3^{2n}\sin^{2}(2^{n-1}\theta)\\
 &c_{n}=3^{2n}\\
\end{align*} \begin{align*}
 &a_{n}=3^{2^{n}}\cos^{2}(2^{n-1}\theta)\\
 &b_{n}=3^{2^{n}}\sin^{2}(2^{n-1}\theta)\\
 &c_{n}=3^{2^{n}}\\
\end{align*}
備考:右辺の $3$ の指数は $2n$ ではなくて、$2^{n}$ にする必要がある。高校数学レベルの計算だが、確認しておこう (p.207 の $a_{n},b_{n},c_{n}$ の漸化式を参照されてたい)。
$n=1$ の時は
\begin{align*}
 &a_{1}=3^{2}\cos^{2}(\theta)=9*\left(\sqrt{\frac{8}{9}}\right)^{2}=8\\
 &b_{1}=3^{2}\sin^{2}(\theta)=9*\left(\sqrt{\frac{1}{9}}\right)^{2}=1\\
 &c_{1}=3^{2}=9
\end{align*}

$n\geq{2}$ では
\begin{align*}
&(a_{n}-b_{n})^{2}=\left(3^{2^{n}}\cos^{2}(2^{n-1}\theta)-3^{2^{n}}\sin^{2}(2^{n-1}\theta)\right)^{2}\\
&\qquad=\left(3^{2^{n}}\right)^{2}*\left(\cos^{2}(2^{n-1}\theta)-\sin^{2}(2^{n-1}\theta)\right)^{2}\\
&\qquad=\left(3^{2*(2^{n})}\right)*\left(\cos(2*(2^{n-1}\theta))\right)^{2}\\
&\qquad=3^{2^{(n+1)}}\cos^{2}(2^{n}\theta)\\
&4a_{n}b_{n}=4\left(3^{2^{n}}\cos^{2}(2^{n-1}\theta)\right)\left(3^{2^{n}}\sin^{2}(2^{n-1}\theta)\right)\\
&\qquad=\left(3^{2^{n}}\right)^{2}*\left(4\sin^{2}(2^{n-1}\theta)\cos^{2}(2^{n-1}\theta)\right)\\
&\qquad=\left(3^{2*(2^{n})}\right)*\left(2\sin(2^{n-1}\theta)\cos(2^{n-1}\theta)\right)^{2}\\
&\qquad=3^{2^{(n+1)}}\sin^{2}(2*2^{n-1}\theta)\\
&\qquad=3^{2^{(n+1)}}\sin^{2}(2^{n}\theta)\\
&c^{2}_{n}=\left(3^{2^{n}}\right)^{2} =3^{2*(2^{n})} = 3^{2^{(n+1)}}
\end{align*}
第6章第3節 p.209 第3行
S_{0}(a_{n+1},b_{n+1},c_{n+1})=\frac{(a_{n+1},b_{n+1},c_{n+1})^{\frac{1}{3}}}{\rad{a_{n+1},b_{n+1},c_{n+1}}} S_{0}(a_{n+1},b_{n+1},c_{n+1})=\frac{(a_{n+1}b_{n+1}c_{n+1})^{\frac{1}{3}}}{\rad{a_{n+1}b_{n+1}c_{n+1}}}
備考:p.206 における $S_{\varepsilon}(a,b,c)$$\varepsilon=0$ を当てはめた式に従う。

最後に、誤りとは言えないが、読んでいてビミョーな気分になった所を書いておこう。

「スピロ予想」に関連して、その条件 $\varepsilon>0$ を外して $\varepsilon=0$ とした時には「予想」が成立しなくなることを説明しているなかで、第6章第3節 p.209 第11行の「$a_{n},b_{n},c_{n}$ の中には必ず偶数がある・・・」と云う箇所がある。たしかに、これは、論理的には誤りではない。だが、この $c_{n}$ は蛇足である。何故なら、$c_{n}$ は必ず奇数 ($\displaystyle 3^{2^{n}}$) になるからだ。更に言うなら、

$n=1$ の時は $a_{1}$ が偶数 (定義により $8$) で、$b_{1}$ が奇数 (定義により $1$)。
$n\geq{2}$ では、$a_{n}$ は常に奇数で、$b_{n}$ は常に偶数になる。
全体としては、$a_{n}$ 又は $b_{n}$ のどちらかが必ず偶数になる (他方は必ず奇数)。これは $a_{n}+b_{n}=c_{n}$ と云う関係式が満たされていて、さらに $c_{n}$ が奇数なのだから当然である。

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