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本ブログ記事[等角速度円運動の旅行者における「双子のパラドクス」(2008年3月24日 [月])] 補足。あるいは、アインシュタインの「奇妙な結論」

本ブログの記事、[等角速度円運動の旅行者における「双子のパラドクス」] (2008年3月24日 [月]) に於いて、私は、表題その通りに、「等角速度円運動の旅行者」における「双子のパラドクス」を論じた。

実は、この時、私は重大な失態をしていた。それは、『等角速度円運動の旅行者における「双子のパラドクス」』の現象そのもの (当時としては、正確には、「現象の可能性」だが) は、「円」のみならず「一般の閉曲線上を等速度で移動させられる時計」の場合に就いて、アインシュタインが、"Zur Elektrodynamik bewegter Körper. In: Annalen der Physik und Chemie. 17, 1905, S.891–921" (「移動中の物体の電気力学」) で指摘していたのを言及しなかったのだ (ちなみに "bewegt" は、「運動する」と云う語感より「移動させられる」と云う語感だと思う)。

問題の箇所は、原論文では、第904頁第16行目 (式を含む) から第905頁第5行目である。岩波文庫「アインシュタイン・相対性理論」では第35頁下から2行目から第37頁第2行、ちくま学芸文庫「アインシュタイン論文選」では、第270頁下から4行目から第271頁第18行に相当する。

それも、言及するのを「失念していた」と云うレベルではなく、当の論文の該当箇所を漫然と読み流してしまったか、あるいは、もっと酷いことには、既知感覚に流されて、読み飛ばしてしまった (つまり、読まなかった) 可能性が高い。振り返ってみると、私は、アインシュタインの論文をどれ一つとして精読した記憶がない (この原稿を書いている時点での話である)。

私の告白を俟たないでも、「そんなことは気づいていた」と云う方々も多いだろうから、これ以上、結局弁解にしかならない懺悔話をするのは控えるが、そのこととは独立して、私にとって興味深い事実は、この「双子のパラドクス」を記述するに当たって、アインシュタインは、

Hieraus ergibt sich folgende eigentümliche Konsequenz.
--"Zur Elektrodynamik bewegter Körper" 第904頁第16行目
上に述べたことから, ここに次のような奇妙な結果が導かれる。
--岩波文庫「アインシュタイン・相対性理論」第35頁下から2行目
と云う一文で始めていることだ (ただし、この場合 "Konsequenz" は「結果」よりも「結論」の方が良いだろう)。

言うまでもないだろうが、"Zur Elektrodynamik bewegter Körper" (1905年) は、特殊相対論の第一論文であり、主論文である。しかし、「双子のパラドクス」は、一般相対論の相の下で解釈すべき現象であって、その一般相対論の完成と発表 は、10年程後のことになる。当然、アインシュタインは、と言うか、世界中の誰もが、一般相対論を知らなかった。従って、『「双子のパラドクス」は「加速度の発生に対応する重力ポテンシャルの差に従う固有時の進み方の違い」に起因する』と云う「正解」(知の大きな整合的体系の中の一齣としての描像) とは無縁であった。

それでも、アインシュタインは、後に「双子のパラドクス」と呼ばれるようになる現象が、「一般の閉曲線上を等速度で移動させられる時計」において発生する筈であることを正しく予言し、しかも、同時に、それが「奇妙な (eigentümlich)」ことだと感じている。「双子のパラドクス」が、特殊相対論の枠組みに収まり切れないものであることを感じ取っていたのだろう。

私には、ここで、後に一般相対論の創設に至るアインシュタインの物理的直観の凄みを見るべきか、あるいは、その逆に、アインシュタインが作り上げたばかりの特殊相対論の理論としての「筋の良さ」(極めて有効だが、自らの限界が何処にあるのかが明確になっている) を感じるべきか、到底判断がつかない。凡人としては「まぁ、両方なんでしょうね」とごまかすしかあるまい。

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