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2012年4月の4件の記事

私家版 [周期表記憶法]

自分用に、周期表を記憶するための語呂合わせを作ってみた。所謂「定番」(「水兵リーベ・・・」など) と一括して記録しておく。なお、以下において、特定の地名・組織名その他の名称と一致又は類似する音の並びがあっても、他意はないので悪しからず。

本題に入る前に、「語呂合わせ」の前提として、周期表を掲げておく。

IA IIA IIIB IVB VB VIB VIIB VIII IB IIB IIIA IVA VA VIA VIIA 0
1 1
H
水素
2
He
ヘリウム
2 3
Li
リチウム
4
Be
ベリリウム
5
B
ホウ素
6
C
炭素
7
N
窒素
8
O
酸素
9
F
フッ素
10
Ne
ネオン
3 11
Na
ナトリウム
12
Mg
マグネシウム
13
Al
アルミニウム
14
Si
ケイ素
15
P
リン
16
S
硫黄
17
Cl
塩素
18
Ar
アルゴン
4 19
K
カリウム
20
Ca
カルシウム
21
Sc
スカンジウム
22
Ti
チタン
23
V
バナジウム
24
Cr
クロム
25
Mn
マンガン
26
Fe
27
Co
コバルト
28
Ni
ニッケル
29
Cu
30
Zn
亜鉛
31
Ga
ガリウム
32
Ge
ゲルマニウム
33
As
ヒ素
34
Se
セレン
35
Br
臭素
36
Kr
クリプトン
5 37
Rb
ルビジウム
38
Sr
ストロンチウム
39
Y
イットリウム
40
Zr
ジルコニウム
41
Nb
ニオブ
42
Mo
モリブデン
43
Tc
テクネチウム
44
Ru
ルテニウム
45
Rh
ロジウム
46
Pd
パラジウム
47
Ag
48
Cd
カドミウム
49
In
インジウム
50
Sn
スズ
51
Sb
アンチモン
52
Te
テルル
53
I
ヨウ素
54
Xe
キセノン
6 55
Cs
セシウム
56
Ba
バリウム
L
ランタノイド
72
Hf
ハフニウム
73
Ta
タンタル
74
W
タングステン
75
Re
レニウム
76
Os
オスミウム
77
Ir
イリジウム
78
Pt
白金
79
Au
80
Hg
水銀
81
Tl
タリウム
82
Pb
83
Bi
ビスマス
84
Po
ポロニウム
85
At
アスタチン
86
Rn
ラドン
7 87
Fr
フランシウム
88
Ra
ラジウム
A
アクチノイド
104
Rf
ラザホージウム
105
Db
ドブニウム
106
Sg
シーボーギウム
107
Bh
ボーリウム
108
Hs
ハッシウム
109
Mt
マイトネリウム
110
Ds
ダームスタチウム
111
Rg
レントゲニウム
112
Cn
コペルニシウム
113
Uut
ウンウントリウム
114
Uuq
ウンウンクアジウム
115
Uup
ウンウンペンチウム
116
Uuh
ウンウンヘキシウム
117
Uus
ウンウンセプチウム
118
Uuo
ウンウンオクチウム
L
ランタノイド
57
La
ランタン
58
Ce
セリウム
59
Pr
プラセオジム
60
Nd
ネオジム
61
Pm
プロメチウム
62
Sm
サマリウム
63
Eu
ユウロピウム
64
Gd
ガドリニウム
65
Tb
テルビウム
66
Dy
ジスプロジウム
67
Ho
ホルミウム
68
Er
エルビウム
69
Tm
ツリウム
70
Yb
イッテルビウム
71
Lu
ルテチウム
A
アクチノイド
89
Ac
アクチニウム
90
Th
トリウム
91
Pa
プロトアクチニウム
92
U
ウラン
93
Np
ネプツニウム
94
Pu
プルトニウム
95
Am
アメリシウム
96
Cm
キュリウム
97
Bk
バークリウム
98
Cf
カリホルニウム
99
Es
アインスタニウム
100
Fm
フェルミウム
101
Md
メンデレビウム
102
No
ノーベリウム
103
Lr
ローレンシウム

まず、横方向の並びの語呂合わせ。勿論、「水兵リーベ・・・」で始まっている。

第1巡-第3巡. (H)(He)(Li)(Be)(B,C)(N,O)(F,Ne)(Na)曲がる(Mg,Al)シップ(Si,P)(S)(Cl,Ar)入り。

  1. H: 水素 (hydrogen), He:ヘリウム。
  2. Li:リチウム, Be:ベリリウム, B:ホウ素 (boron), C:炭素 (carbon), N:窒素 (nitrogen), O:酸素 (oxygen), F:フッ素 (fluorine), Ne:ネオン
  3. Na: ナトリウム, Mg: マグネシウム, Al:アルミニウム, Si:ケイ素 (silicon), P:リン (phosphorus), S:硫黄 (sulfur), Cl:塩素 (chlorine), Ar:アルゴン

第4巡. (K)カァ(Ca)好かん(Sc)(Ti)(V)(Cr)マン(Mn)ジュウ、(Fe)(Co)(Ni)どう(Cu)? かん、くえん(Zn)! ガリ(Ga)っとしたのは。。。(Ge)!! (As,Se)臭い(Br)(Kr)

  1. K:カリウム, Ca:カルシウム, Sc:スカンジウム, Ti:チタン, V:バナジウム, Cr:クロム, Mn:マンガン, Fe:鉄 (ラテン語 ferrum), Co:コバルト, Ni:ニッケル, Cu:銅 (後期ラテン語 cuprum), Zn:亜鉛 (zinc), Ga:ガリウム, Ge:ゲルマニウム, As:ヒ素 (arsenic), Se:セレン, Br:臭素 (bromine), Kr:クリプトン

第5巡. 5丁目にあるビ(Rb)ストロ(Sr)「青い鳥(Y)」の青(Zr)臭う(Nb)盛り(Mo)、喰いてくねぇ(Tc)、帰るって(Ru)老人(Rh)、すきっ(Pd)(Ag)座の(Cd)イン(In)して、スズ(Sn)ラン(Sb)通りで遣ってる(Te)(I)食屋の季節(Xe)料理を食べた。

  1. Rb:ルビジウム, Sr:ストロンチウム, Y:イットリウム, Zr:ジルコニウム, Nb:ニオブ, Mo:モリブデン, Tc:テクネチウム, Ru:ルテニウム, Rh:ロジウム, Pd:パラジウム, Ag:銀 (ラテン語 argentum), Cd:カドミウム, In:インジウム, Sn:スズ (ラテン語 stannum), Sb:アンチモン (ラテン語 stibium), Te:テルル, I:ヨウ素 (iodine), Xe:キセノン

第6巡. せし(Cs)めた(Ba)かりのラー(L)メン、ハーフ(Hf)タン(Ta)タン(W)(Re)麺。お酢(Os)入れ(Ir)ても、はっきり(Pt,Au)(Hg)足り(Tl)(Pb)ビー(Bi)ルはサッポロ(Po)あと(At)コーラドン(Rn)ドン持ってきて。

  1. Cs:セシウム, Ba:バリウム, L:ランタノイド, Hf:ハフニウム, Ta:タンタル, W:タングステン (ドイツ語 Wolfram), Re:レニウム, Os:オスミウム, Ir:イリジウム, Pt:白金 (platinum), Au:金 (ラテン語 aurum), Hg:水銀 (近世ラテン語 hydrargyrum 但し古典時代に hydrargyrus と云う語形での使用例がある), Tl:タリウム, Pb:鉛 (ラテン語 plumbum), Bi:ビスマス, Po:ポロニウム, At:アスタチン, Rn:ラドン

第7巡. フランス(Fr)ラジ(Ra)コン、空き地(A)で飛ばす。ラフ(Rf)越え、ドブ(Db)すぐ(Sg)ボッ(Bh)チャン。ハッ(Hs)とした、参った(Mt)ダーッと取りに行ったが、ダだった、こし遅かっ(Da)。取れん(Rg)かった。腹ペコペ(Cn)コ。

  1. Fr:フランシウム, Ra:ラジウム, A:アクチノイド, Rf:ラザホージウム, Db:ドブニウム, Sg:シーボーギウム, Bh:ボーリウム, Hs:ハッシウム, Mt:マイトネリウム, Ds:ダームスタチウム, Rg:レントゲニウム, Cn:コペルニシウム

ランタノイド. (La)(Ce)プラッ(Pr)ネオ(Nd)プロメテウス(Pr)(Sm)登場。(Eu)(Gd)に遣ってる(Tb)。食事済(Dy)ませて、(Ho)エール(Er)釣り(Tm)行って(Yb)るって(Lu)

  • La:ランタン, Ce:セリウム, Pr:プラセオジム, Nd:ネオジム, Pm:プロメチウム, Sm:サマリウム, Eu:ユウロピウム, Gd:ガドリニウム, Tb:テルビウム, Dy:ジスプロシウム, Ho:ホルミウム, Er:エルビウム, Tm:ツリウム, Yb:イッテルビウム, Lu:ルテチウム

アクチノイド. (Ac)(Th)プロ(Pa)恨ん(U)(Np)。タップリ(Pu)儲かる(Am)(Cm)(Ba)かり(Cf)か、真似たアイ(Es)ドル増える(Fm)。なめん(Md)(No)やめ(Lr)

  • Ac:アクチニウム, Th:トリウム, Pa:プロトアクチニウム, U:ウラン, Np:ネプツニウム, Pu:プルトニウム, Am:アメリシウム, Cm:キュリウム, Bk:バークリウム, Cf:カリホルニウム, Es:アインスタイニウム, Fm:フェルミウム, Md:メンデレビウム, No:ノーベリウム, Lr:ローレンシウム

縦方向の語呂合わせは以下の通り。

第IA族. エッチ(H)リッチ(Li)(Na)カー(K)ちゃん、ルビー(Rb)せし(Cs)めてフランス(Fr)へ。

    H: 水素 (hydrogen), Li:リチウム, Na: ナトリウム, K:カリウム, Rb:ルビジウム, Cs:セシウム, Fr:フランシウム

第IIA族. ベリ(Be)ッと破ったマグ(Mg)カル(Ca)タ、洗って干すと(Sr)(Ba)(Ra)バラに。

    Be:ベリリウム, Mg: マグネシウム, Ca:カルシウム, Sr:ストロンチウム, Ba:バリウム, Ra:ラジウム

第IIIB族. スカ(Sc)(Y)ラーク(L,A)は3B階。

    Sc:スカンジウム, Y:イットリウム, L:ランタノイド, A:アクチノイド

第IVB族. 外人の(Ti)が混じっ(Zr)てるハーフ(Hf)のブラザホー(Rf)

    Ti:チタン, Zr:ジルコニウム, Hf:ハフニウム, Rf:ラザホージウム

第VB族. 鼻血(V)が出るほど匂う(Nb)(Ta)ドブ(Db)

    V:バナジウム, Nb:ニオブ, Ta:タンタル, Db:ドブニウム

第VIB族. (Cr)(Mo)天狗(W)死亡(Sg)

    Cr:クロム, Mo:モリブデン, W:タングステン, Sg:シーボーギウム

第VIIB族. (Mn)画家、テク無(Tc)(Re)載無(Bh)

    Mn:マンガン, Tc:テクネチウム, Re:レニウム, Bh:ボーリウム

第VII族-I. (Fe)を売るって(Ru)おっさ(Os)ハッス(Hs)ル。

    Fe:鉄, Ru:ルテニウム, Os:オスミウム, Hs:ハッシウム

第VIII族-II. 小林(Co)老人(Rh)炒り(Ir)卵うまい(Mt)

    Co:コバルト, Rh:ロジウム, Ir:イリジウム, Mt:マイトネリウム

第VIII族-III. (Ni)本のパラダ(Pd)イス、白金(Pt)のマダムスタチ(Ds)

    Ni:ニッケル, Pd:パラジウム, Pt:白金, Ds:ダームスタチウム

第IB族. (Cu)(Ag)(Au)れんと拳(Rg)骨よ。

    Cu:銅, Ag:銀, Au:金, Rg:レントゲニウム

第IIB族. 君に逢えな(Zn)い街(Cd)(Hg)コッペ(Cn)パン食べる。

    Zn:亜鉛, Cd:カドミウム, Hg:水銀, Cn:コペルニシウム

第IIIA族. 放送(B)ある(Al)(Ga)(In)たり(Tl)来ず。

    B:ホウ素, Al:アルミニウム, Ga:ガリウム, In:インジウム, Tl:タリウム

第IVA族. (C)(Si)ゲイ(Ge)すん(Sn)(Pb)

    C:炭素, Si:ケイ素, Ge:ゲルマニウム, Sn:スズ, Pb:鉛

第VA族. (N)(P)秘書(As)アンチ(Sb)(Bi)ジネス。

    N:窒素, P:リン, As:ヒ素, Sb:アンチモン, Bi:ビスマス

第VIA族. (O)代続く凄いおお(S)金持ちのセレ(Se)ブがやってる(Te)スポーツはポロ(Po)

    O:酸素, S:硫黄, Se:セレン, Te:テルル, Po:ポロニウム

第VIIA族. (F)漬け(Cl)っぱ臭い(Br)(I)アスタ(At)喰お。

    F:フッ素, Cl:塩素, Br:臭素, I:ヨウ素, At:アスタチン

第O族 (He)ネー(Ne)ちゃん、ある(Ar)クルッ(Kr)と回って奇声(Xe)あげたらドン(Rn)と打たれた。

    He:ヘリウム, Ne:ネオン, Ar:アルゴン, Kr:クリプトン, Xe:キセノン, Rn:ラドン

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メモ: 朝永振一郎 [新版 スピンはめぐる] 中の誤植

図書館で見かけた [新版 スピンはめぐる] (著者:朝永振一郎 注:江沢 洋 出版:みすず書房 2008年) が面白そうだったので、借りてきて読んだ (正確には、以前にも「図書館で見かけて面白そうだったので」借りたことがあるのだが、その時は、時間の繰り合わせがつかずに読みそこなっていたのだ。今回は、2度目か3度目である)。

実際、大変面白かった。ただ、「どう面白いか」説明しようとすると、色々と調べたり考えたりしなければならないことが山のように出てくるのが目に見えているので、それだけで辟易してしまう。

だから、気が付いた誤植だけ記録しておく (ただし、[第11話 再びトーマス因子について] と [附録] は、読み飛ばしたので、その部分はカバーしていない)。いずれも文脈上、誤植であることは明白で、ミスリードを引き起こすことは考えにくいから (そうした誤植でも編集時に見落とされことがあるのは、校正の経験者なら何の不思議も感じないだろう。だから「誰が悪い」とか言う話ではない。単に直せば、或いは直して読めば良いだけのことだ)、読むのに障害となるものではない。

  1. p.7 に掲げられている [表1 アルカリ類2重項の内部量子数] 中の第3段 (P流) の第3行の J_\mathrm{P}j_\mathrm{P} とすべきである。

  2. p.64 中の2番目の式 (式(II)と式(III)との間の式番号欠番の式) の左辺 (\mathbf{s}_{1}\cdot \mathbf{s}_{1})\psi(\mathbf{s}_{1}\cdot \mathbf{s}_{2})\psi とすべきである。

  3. p.102 第9行「固有値 E_{z=2}(n_{1},l_{1}), E_{z=2}(n_{2},l_{2})」は、「固有値 E_{Z=2}(n_{1},l_{1}), E_{Z=2}(n_{2},l_{2})」とすべきである。つまり添え字の小文字 "z" は、大文字の "Z" にしなければならない。

  4. p.167 中の式 (8-25) は、末尾を右パーレン "}" で閉じる必要がある。

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メモ: html での上付き文字と下付き文字の垂直アラインメント

[メモ:理科年表 [物理/化学部 旋光物質] における用語の誤りに就いて] (2012年4月8日[日) を書いた時に、普通に原稿を書くと、比旋光度の上付き文字と下付き文字が [α]20D と云うようにズレてしまうので、初め TeX で画像化する積もりだったが、「ナンダカメンドー」と思って、泥縄式で html の範囲内で処理した (もう誰かが既にヨリ優れたものを発表していると思う。ただ、チョット探したが見つからないので、自分で作っちゃった方が早そうだったのだ)。

私が現に使っている以外のシステムでは旨くいかないかもしれないし、ブラウザによっても表示がズレてしまう可能性があるが、今のところは私自身のモニタ上では、「コンナモンダロー」と云う結果が得られるので、使うことにした。

ついでに、度数単位の上付きの丸 "°" の後に出来る空白を詰めておいた。

備忘のため、処理方法を顕在化しておく。

  1. 未処理:コード [α]<sup>D</sup><sub>20</sub>/(&deg;) 結果 [α]D20/(°)

    処理済:コード [α]<sup>D</sup><sub style="margin-left:-0.7em">20</sub>/(<span style="letter-spacing:-0.7em">&deg;)</span> 結果 [α]D20/(°)

  2. 未処理:コード [α]<sup>22</sup><sub>D</sub> 結果 [α]22D

    処理済:コード [α]<sup>22</sup><sub style="margin-left:-1em">D</sub> 結果 [α]22D

margin-left や letter-spacing の値は、フォントによって微妙に変える必要が出てくるだろう。

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メモ:理科年表 [物理/化学部 旋光物質] における用語の誤りに就いて

平成24年度版 (第85冊) [理科年表] (丸善出版 東京 2011年) のノンブルで言うなら [物102(464)] にある表 [旋光物質] は、次のようになっている。

物  質   条 件 [α]D20/(°)
果糖 c = 10 -104 (溶解後 6m), -90 (溶解後 33m)
果糖 p = 2 -- 31 -91.9 - 0.11p (平衡に達した後)
ショ糖 c = 0 -- 65 +66.462 + 0.00870c - 0.000235c2
転化糖 p = 9 -- 68 -19.447 - 0.06068p + 0.000221p2
ブドウ糖(右旋) c = 9.1 +105.2 (溶解後 5.5m), +52.5 (溶解後 6h)
ブドウ糖(右旋) p = 1 -- 18 +52.50 + 0.0188p + 0.000517p2 (平衡に達した後)
ブドウ糖(左旋) p = 4 -94.4(溶解後 7m), -51.4(溶解後 7h)
酒石酸 p = 4.7 -- 18 +14.83 - 0.149p
酒石酸 p = 18 -- 36 +14.849 - 0.144p
酒石酸カリウム p = 9 -- 55 +27.62 + 0.1064p - 0.00108p2
ロシェル塩 -------- +29.73 - 0.0078c

問題は、[ブドウ糖] に関する3行、特に3行目だ。これは、[旋光物質] としての「ブドウ糖」に [右旋型] と [左旋型] との2種類あることが前提となっている記載だろう。実際、比旋光度 [α]D20/(°) も、それに対応した値になっている。「右旋性」の物質の比旋光度は正であり、「左旋性」の物質の比旋光度は負であるからだ。

しかし、[ブドウ糖] とは D-glucose つまり、「右旋型 のグルコース」だけを意味し、「左旋型のグルコース」は「ブドウ糖」とは呼ばないのだ。つまり、「ブドウ糖」と書かれているなら、それは、その文脈が [旋光] に関していようがいまいが [右旋型] の化合物なのだ。

「右旋型」は [d-] とか [(+)-] と云う記号を使って表わされることが多い。これに対し、その対比形である「左旋型」は [l-] とか [(-)-] と云う記号を使って表わされることが多い。ここで d は dextrorotatory (右旋性の) により、l は levorotary (左旋性の) によっている。しかし、IUPAC (International Union of Pure and Applied Chemistry/国際純正・応用化学連合) は右旋性・左旋性を表わすのに [d-]・[l-] を用いないように強く勧めているので、以下では、基本的には d /l 対比ではなく(+)/(-) 対比を用いることにする。

例えば、[東京化学同人] 発行の [化学大辞典] で、[ブドウ糖] の項 (p.2019) は [D-グルコース] (p.647) へのクロスリファレンスを与えている (辞書中 [D-グルコース] の項目の位置は [グルコース] に従っている)。

ちなみに [果糖] (p.453) は [D-フルクトース] (p.2048) をクロスリファレンスしているのだが、[D-グルコース] 及び [D-フルクトース] から関連箇所を引用すると:

D-グルコース [D-glucose]
1700年代の末ごろ, ハチ蜜から単離され, ギリシャ語の glykys (sweet) にちなみ命名され, 右旋性を示すのでデキストロース (dextrose), ブドウ汁に含まれるのでブドウ糖 (grape sugar) ともいわれる.

L-グルコースは天然から産出せず, L-アラビノースから合成され, 融点 146~147℃, [α]22D -53°(水, 終末値).
-- [化学大辞典] (東京化学同人 1989年) p.647,648

D-フルクトース [D-fructose]
1800年代の末, ハチ蜜から始めて結晶化され, 果汁に広く含まれるので, ラテン語の fructus (fruit) にちなみ命名された. 大きな左旋性を示すので, 右旋性の D-グルコースをデキストロースというのに対比し, レブロースともいわれる.
-- [化学大辞典] (東京化学同人 東京 1989年) p.2048

ここで、ラテン語に就いて補足しておくと、dextrose の元になったラテン語は「右側へ/右側の」を意味する dexter, 「レブロース (levulose)」の元になったラテン語は「左側へ/左側の」を意味する laevus である。

glykys のギリシャ語原綴は γλυκυς である。

なお、比旋光度をあらわす記号 [α]22D で、測定光と測定時温度の上付き・下付きが、[理科年表] における [α]D20/(°) と逆になっているが気にしないでおく。

ついでに [岩波理化学辞典第5版] からも引用しておこう:

グルコース
アルドヘキソースの1つ. D-グルコースはブドウ糖 (grape suger) またはデキストロースともいい, 代表的なアルドースである. 単糖のうちD-フルクトースとともに最も分布が広く, 遊離状態では甘い果実中に多量に存在し, また血液, 脳脊髄液, リンパ液中にも少量含まれ, 糖尿病患者の尿中には多量に存在する.

L-グルコースはコウマ(黄麻)やある種のキク科植物の葉の加水分解物中に存在すると報告されているが, L-アラビノースから炭素数を増やしてゆく反応で得られる.
-- [岩波理化学辞典第5版] (岩波書店 東京 1998年) p.384

フルクトース
ケトヘキソースの一種. D-フルクトースは果糖 (fruit suger), 左旋糖 (levulose, レブロース) ともいう.
-- [岩波理化学辞典第5版] (岩波書店 東京 1998年) p.1205

[東京化学同人] の [生化学辞典第2版] (1990年。私の手持ちは、この版しかない。現在は第4版である) からも引用しようと思ったがやめておく。引用すべき内容が、特に [D-グルコース] では、[岩波理化学辞典第5版] とほぼ同一だからだ (どちら辞典にたいしても、それを咎め立てているわけではない。為念)。

(炭水化物・糖類の構成単位である) 単糖や (タンパク質・ペプチドの構成単位である) アミノ酸 (それらの誘導体も含む) の鏡像異性体を持つ場合 (殆どの場合持っている訣だが、それはそれはして)、1対存在する鏡像異性体を対比的に区別するため、分子の立体構造の特定の一部分の相違点に着目した D/L 対比と、旋光性の相違 (鏡像異性体は必ず一対で存在し、その一方が右旋性なら他方は必ず左旋性になり、逆に左旋性でないなら右旋性になる) に着目した (+)/(-) 対比に就いて説明することは控えておくが (有機化学の教科書を適宜読んで下さい)、様ざまなところで注意されているように、この2種類の区分は、歴史的な経緯から紛らわしい記号 D/Ld /l が用いられることがあるとは言え、現在の我々の立場からするなら、独立した区分法であることは改めて強調しておくべきだろう。

実際、グルコースにもフルクトースにも D 異性体と L 異性体が存在するが、上述のようにグルコースの D 体は右旋型 ((+)型) であるのに対し、フルクトースのD 体は左旋型 ((-) 型) である。

そして、D-グルコース、つまり「ブドウ糖」と、D-フルクトース、つまり「果糖」は、それ自体、又は、化合物の構成要素として、自然界に広く、そして多量に存在するのに対し (大雑把に言うなら、D-グルコース1分子と D-フルクトース1分子とがグリコシド結合したものがショ糖1分子である)、それぞれの L 異性体は、天然に存在しないか、するにしても僅かでしかない (希少糖)。

生体内の代謝で主要な役割を果たすのは、D-グルコースである。例えば、生化学での解糖系の議論や、食品工業にあっては L-グルコースは無視可能なので、D-グルコースを単に「グルコース」と呼ぶことは普通である。従って、その文脈では「グルコース」は「ブドウ糖」と同義になる。

しかし、これはあくまでも「文脈から明らかであるので」と云う条件のもとでの「D-グルコース」の省略形としての「グルコース」であって、全ての場合に通用する訣ではない。

憶測だが [理科年表] の表 [旋光物質] の作成担当者は、[グルコース] と[ブドウ糖] が同一であると思いこんでいたのだろう。だから「ブドウ糖(左旋)」とあるのは、「左旋体のグルコース」、つまり「L-グルコース」の積もりだったのだろう。しかし、「L-グルコース」は、左旋体の「グルコース」であっても、それを「左旋体のブドウ糖」と呼ぶことはできない。上記のように「ブドウ糖」は「右旋体のグルコース」限定の呼称であるからだ。

この表のように、右旋体と左旋体を区別する場合には、「グルコース」と「ブドウ糖」の混同は、致命的な誤りと言える。。。と言うか、むしろ不思議なのは、[理科年表] のような国民的リファレンスブックにあって、このような初歩的な誤りが、校正者・校閲者・そして恐らくは、読者からも見過ごされていることだ。まぁ、私自身、最近調べものをしている際 ([デキストロース当量] に就いて補足的な記事を書こうとしたのだが、結局纏まらないままでいる) に見るまで気がつかなかったのだから、偉そうなことは言えないのだけれども。

「(右旋)」と「(左旋)」の注意書が必要なのはむしろ [酒石酸] の方だろう。酒石酸は右旋型 (L体) も左旋型 (D体) もともに「酒石酸」と呼ばれているからだ (もっとも、表 [旋光物質] では右旋型酒石酸しか示されていない)。さらに、酒石酸は、分子内の内部補償により鏡像対称性をもったメソ体 (mesoisomer) も、D体とL体の等量混合物であるラセミ体 (racemic modification. 記号 (±)- 又は dl- が付されることが多い) も存在する。ラセミ体の酒石酸は「ブドウ酸 (racemic acid)」とも呼ばれ、「ラセミ体」の名は、これに拠っている。

蛇足的な注意をしておくと、表 [旋光物質] では比旋光度 [α]D20/(°) が統一的に与えられているから、この記事において所謂「コットン効果 (旋光異常分散)」([円偏光二色性 - Wikipedia] 参照) の影響の可能性について考慮する必要は全くない。

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