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メモ:2011年6月8日 (水曜) 朝日新聞朝刊 [天声人語] 中の「ゲーテの言葉」

日付が変わってしまったので、昨日の話になるが、先程、1日遅れでたまたま手にした「2011年6月8日 (水曜) 朝日新聞朝刊 (東京本社13版)」を流し読みした所、[天声人語] がこう始まっていた (現時点では、同内容の物がウェブ上の [asahi.com(朝日新聞社):天声人語 2011年6月8日(水)] で見ることができる)。

〈行き先を知らずして、遠くまで行けるものではない〉。ゲーテの言葉である。目的地が定まらないと足取りが重くなる。そんな意味だろう。逆に、確かな目標があれば急坂や回り道をしのぎ、転んでも起き上がり、大きな事を成せる
--2011年6月8日 (水曜) 朝日新聞朝刊 (東京本社13版) 第1面 [天声人語]

これを読んだ時の、私の感想は「ヤッチマッタナー」(© クールポコ) と云うものだった。箸にも棒にも掛からない詰まらないことを「したり顔」(最近は「ドヤ顔」と謂うらしいが) で書いてある。大体、「行き先を知らずして、遠くまで行けるものではない」では警句にならない。「当たり前」にさえなっていない。当たり前の日本語を使いたいなら、せめて「行き先を決めない限り、遠くまで行くことはできない」ぐらいにしろよ、と言いたい。

浩瀚なゲーテの著作の中の何処かで、そんなことも書かれているかもる知れないが、そして私はまことに無教養で無知蒙昧ではあるが、私の知っているゲーテは、「行き先を知らずして、遠くまで行けるものではない」とは言ってはいない。少なくとも、私が子どもの時に読んだ小辞典 (福音館書店刊であったか、昭文社刊であったかだと思う) の巻末についていた名言集では、そんなことを言っていなかった。うろ覚えだか、こんな感じだったのだ。

人は何処に行くか分からない時ほど遠く迄行くことはない。

(子どもだった私にも、これが「目的地が明確でないと、とんでもないところに彷徨っていくことになる」か、或いは「目的地に縛られない時こそが、もっとも遠くまで進むことができる」ぐらいの意味だと云うことが感じられた。)

取り敢えず、手持ちのバートレットの引用句辞典 ("Bartlett's Familiar Quotations" 16th ed.) で調べた所、英訳が採録されていた。

One never goes so far as when one doesn't know where one is going.
Letter to Karl Fiedrich Zelter [December 3, 1812]
--"Bartlett's Familiar Quotations" (16th ed. 1992) p.350

そして、滑稽と謂えるが、天声人語の英訳版 (asahi.com(朝日新聞社):VOX POPULI: Japan must see the big picture on energy policy - English) では、この "One never goes so far as when one doesn't know where one is going." が「ゲーテの言葉」として、そのまま使われているのだ。

"One never goes so far as when one doesn't know where one is going." The quote is attributed to the German writer Johann Wolfgang von Goethe (1749-1832). I think the idea is that when our destination is uncertain our steps become heavy. Conversely, as long as we have a clear goal, we can climb steep slopes, take all sorts of detours, get up when we fall down, and ultimately succeed in what we set out to do.
--asahi.com(朝日新聞社):VOX POPULI: Japan must see the big picture on energy policy - English

問題の [天声人語] 記事日本語版を書いた人物と、英語版を書いた人物が同一であるとは限らないが、それでも、当然の考え方をするなら、日本語版を英語版に「翻訳」したのだろう。だとすると、英語版の作成者は「行き先を知らずして、遠くまで行けるものではない」と "One never goes so far as when one doesn't know where one is going." とでは、意味が殆ど真逆であると云う高校生レベルの英語力があれば気が付くだろうことを見過ごした訣だ (下記に見られるように、"never goes so far as" はドイツ語の "geht nie weiter, als" の訳、特に、"as" は、ドイツ語 "als" の対応英語なのだが、ここは "never goes further than" と訳した方が、英語初学者には親切かもしれない)。

もし、英文ヘの翻訳者が日本語版作成者と別人であって、気が付いたけれども、日本語版作成者に指摘するのを「遠慮した」のであったとしたら、それはそれで組織として悲惨な事態だ。関節が外れたような政党や社会 (ホボ「会社」に等しい) の騒ぎを他人事のように喋喋している場合ではない。De te fabula narratur...

ちなみに、ドイツ語原文は次のようなものであるらしい:

man geht nie weiter, als wenn man nicht weiß, wohin man geht.
--Goethe, Johann Wolfgang, Briefe, 1812 - Zeno.org
--Johann Wolfgang von Goethe: Maximen und Reflektionen - Allgemeines, Ethisches, Literarisches - X.
--Man geht nie weiter, als wenn man nicht mehr ... - Johann Wolfgang von Goethe | Aphorismen-Archiv

なお、オリバー・クロムウェル(Oliver Cromwell, 1599年4月25日--1658年9月3日)が "A man never goes so far as when he doesn't know where he is going." と云う言葉を残したと云う話がネットで見られるが、出典は未確認。

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