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ゲーデルの所謂「不完全性定理論文」中の「関数・関係・性質」記号の「意味」

クルト・ゲーデル (Kurt Gödel) の、所謂「不完全性定理論文」(正しくは "Über formal unentscheidbare Sätze der Principia Mathematica und verwandter Systeme I" 「プリンキピア・マテマティカの体系並びに関連する体系での形式的に決定不能な命題について I」--Monatshefte für Mathematik und Physik 38: 173-98. 1931--) では議論の途上で46個の、所謂「数論的関数」(1個以上の順序を込めた自然数の組み合わせを1個の自然数に対応させる関数) 又は「数論的関係・性質」(数論的関数で表現される関係・性質) を定めている (岩波文庫 [ゲーデル 不完全性定理] では第31ページから第40ページ)。そして46個のうち45個目までは、現在「原始再帰的」と呼ばれているものである (ただし、ゲーデル自身は「再帰的/rekursive」と呼んでいる)。

勿論、それぞれの関数・関係・性質には記号が付されているのだが、その多くはドイツ語由来である為、原論文をそのまま読まない限り (つまり、岩波文庫版で読むような場合とかは) 記号に今ひとつ訴求力が無い。

[メモ:岩波文庫 [ゲーデル 不完全性定理] のある一節の微妙訳] で書いたように、これはイングリッシュ・スピーカーでも同様らしく、ドーヴァー版の英訳本 ("On Formally Undecidable Propositions of Principia Mathematica and Related Systems") には、主要なドイツ語由来の記号に就いて、元になったドイツ語とその英訳が付されている。

これに倣って、原論文の記号の由来であると思われるドイツ語 (不明なものもある) とその意味。更に、簡単なその内容をまとめてみた。

当初、TeX の作表の練習のつもりで、表の形で表現したものを完成させ、更にそれを画像化してブログのページに貼り付けることを予定していたのだが、どうしても「見栄え」のする表が出来なかったので、作表は諦めて、普通のリスト形式にまとめた。これでは画像化しても余り意味がないと思ったので、いっその事 pdf ファイルにしてリンクを張ることにした。それが、次のものである。

[所謂「ゲーデル不完全性定理論文」中の関数・関係・性質の名称の由来と内容の簡単な説明 (pdf)]
(補足: 2011-01-03 [月] 第13項及び第44項-第46項を訂正した。)

今でも見直す度にミスが見つかるので、他人様に見せるのは気が引けるが、年も押し詰まったので、"as it is" として公開することにした。後悔もしそうではある。

--2011-01-02 [日] 10:49
書き忘れていたので補足する。岩波文庫版 p.37 では第31項の説明中で「上で定義された【Subst】」と訳している部分は、原文が、オリジナル版では "der oben definierte Begriff Subst "、オックスフォード版では "der oben definierte Begriff Subst" なのだが問題が2つあって:

  1. "der oben definierte" は「上で定義された」になっている。この "oben" を「上で」としたのは、翻訳に不慣れだったと言わざるを得ない。翻訳技法上、言及されている部分が1ページ分ぐらい前以内にあるのが明白でない限り、このような場合は「前記の」と訳しておいた方が「地雷を踏む」可能性が少ない。そして実際、この場合も、言及されているのは10ページ以上前の p.23 (本文末尾3行) に記載されている「メタ数学的記号」なのである。
  2. Subst ("Subst") はゲーデル数化される前の述語論理上の概念であるから、訳文上【 】でくくるのは間違い。訳者は、ここだけ【と 】との間に「日本語 (つまり、ゲーデル数化された概念)」が入らず、【Subst】になってしまうことに違和感を感じなかったのだろうか? なお、これはオックスフォード版でもスモールキャピタル体になっていて、やはり間違い (欧文脈だと「違和感」を感じづらいのは確かだが、"Sb(xvy) is the notion SUBST a(vb) defined above." で「Sb(xvy) と云うゲーデル数化された概念は、実は以前言及した SUBST a(vb) と云うゲーデル数化された概念である」と云う含意になって、新たに記号を定義していくと云う話の流れにそぐわないことに気づくべきだった)。ゲーデルがオリジナル論文で、イタリックにしてあるのは、単に引用部分を強調しただけだろう。

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