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メモ:ヘブライ語で「神の賜物」を意味する人名

今朝程 (2010/05/05 04:45)、キーフレーズ [ヘブライ語で「神の齎すもの] で、このサイトを訪問された方がいらしたようだ。

これだけだと、条件が緩くて、何をお調べになっているのか忖度しかねるところがあるが、もしヘブライ語で「神の賜物」を意味する言葉をお探しであるというなら、人名化している筈だから、取り敢えずは、聖書中の人名を当たるのが基本なのではなかろうか。

ただ、よく知られているように、聖書では「神」の呼び方に2通りの流れがあって、(以下の話は、私の聞き齧り・読み齧りを、殆ど裏付けを取らないまま、書き流したものなので、その積もりで読んで戴きたい) その一つは、セム語族に共通して「神」を意味する言葉である、カタカナ語化すると「エル」や「イル」になる言葉 (אל)。ただし、聖書でイスラエル民族の「神」を指す時には、単数扱いながら強調の複数形が使われて אֱלהִים (エロイム) になる (英語聖書では "God" と訳されているようだ。対応して、日本語聖書中では「神」)。謂わば、普通名詞としての「神」だ (もっとも、本来は「エル」又は「イル」も、古代多神教時代の天空神の名前だったらしいが)。

もう一つは、モーセに尋ねられて、「神」が自ら明かしたとされる יהוה 、カタカナ語化すると「ヤハウェ」になる言葉 (こちらの方は、英語聖書では "the Lord" と訳されているようだ。対応して、日本語聖書中では「主」)。これは固有名詞としての神名といったところか (日本文化内だと「神」は、本質的には固有名詞としてしか存在しないので、唯一神を示す固有名詞と云うのは、概念上存在しえないから、説明しづらい)。

従って、「神の賜物」を意味するユダヤ人名は、「エル」系と「ヤハウェ」系がある。ただし,「ヤハウェ」系はそのママで使われることはなくて (だいたい、固有名詞としての神名は濫りに唱えてはならず、したがって、実際にはどのように発音されたかは実例らしいもの残っていないので、「ヤハウェ」と云うのも、現代の研究での推定によっている。以前は「ヱホバ」などとされていた) カタカナ語化すると「ヨハ」またはその類似音 (英語経由なら「ジョ」) が含まれる言葉になる。

で「賜物」の方は、(他にも言い方があるようだが) נָתָן (ナタン) あたりになる。この「ナタン」は独立して人名化していて、ゴットホルト・エフライム・レッシングの戯曲「賢人ナータン 」の主人公にもなっている。

と云う訣で、「神の賜物」は、取り敢えずは、「エル/ヨハ」と「ナタン」の組み合わせになる。(他にもあるらしいが面倒なので調べていない。)

したがって、「エル」系は נְתַנְאֵל (ナタニエル)。私なんぞが、最初に思いつくのはナタニエル・ホーソン (日本語版ウィキペディアでは「ナサニエル・ホーソーン」)。「緋文字」の小説家だが、読んだことはないな。

「ヤハウェ」系では「ヨナタン」。本来は יְהוֹנָתָן (ヤホナタン) 又は יְהוֹנָתָ (イェホナタン) と云う言葉だったらしい。英語なら Jonathan (ジョナサン) ですね。

聖書には登場しないようだが、אֱלִינָתָן (エリナタン) と云う人名もある由。これは「エル」系。

「エル」と云うのは国名としては「イスラエル」に含まれている。これは、聖書の記載上、もともとは「神」と相撲をしたヤコブに「神」が与えた名前で、聖書伝承上、ヤコブの十二人の (男性の) 子供の子孫である人々がイスラエル民族と呼ばれるようになり、それが国名になった訣だ。この「イスラエル」に就いて、[創世記]32:28 では「其人いひけるは汝の名は重ねてヤコブととなふべからずイスラエルととなふべし其は汝神と人とに力をあらそひて勝たればなりと」と説明されているが、これは、所謂「民間語源」であるらしく、とは言え、学問的にも微妙に疑義が残っているらしいのだが、「神は戦う」ぐらいの意味らしい。

新約聖書中でも「エル」系の言葉は表われる。ナザレのイエスが十字架上で最後に叫んだと云う「エリ、エリ、レマ、サバクタニ」がそれで、聖書自身の中で「わが神、わが神、なんぞ我を見棄て給ひし」と訳されている ([マタイ]27:46。[マルコ]15:34 では、少し異なる)。ただし、これはアラム語らしい。

「エル」又は「イル」は、同じセム語派に属するアラビア語でも使われている。ただし通常は定冠詞「アル」が付いているし、若干変形して、الله となる。カタカナ化すると「アッラー(フ)」(日本語としては「アラー」が普通だろう)。

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