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メモ:河出文庫版 [お楽しみはこれもなのじゃ] (著:みなもと太郎) 所引の「満州国国歌」

漫画家みなもと太郎に [お楽しみはこれもなのじゃ--漫画の名セリフ] と云う傑作がある。これは、映画評論画文集として著名な、そしてやはり傑作である和田誠の [お楽しみはこれからだ--映画の名セリフ] の鮮やかなパスティーシュである一方で漫画の評論としても十分に成立していると云う、アッパレとでも言うしかない放れ業なのだが、ここで、その内容を論ずる余裕はない (ただ、一言当てずっぽうを言っておくと、[お楽しみはこれもなのじゃ] の成功には、日本の漫画には映画評論と同じ手法による批評を受け入れる素地があることが関係しているのだろう)。

ここで書き止めておくのは、[お楽しみはこれもなのじゃ] 中、「上田とし子 [フイチンさん]」からの引用である次の一節とその脚註とへの注意である:

「レンミン三チェンワン♪ レンミン三チェンワン♬ ういーぷ」
 なんのことかわからないのも道理で、これは中国語の歌なのであります*

*読者の手紙によって、これは旧満州国国歌らしいことが判明した。「人民三億人」の字をあてるとか……。(み)
--河出文庫版 [お楽しみはこれもなのじゃ] (1997年4月。東京。河出書房。ISBN4-309-47325-3) p.331
ここで「(み)」とあるのは、「みなもと太郎」の略。

「レンミン」は勿論「人民」でよい ([人民日報] は、ピンインでは "Renmin Ribao" と表記される) が、「三チェンワン」は「三億人」にはならないだろう。ここはごく自然に「三千万」と解釈すべきだ。因みに、「チェン」の方は兎も角も、「万(萬)」を、中国語で「ワン」と読むことは、麻雀牌の中に「萬」の字を印したものを「ワンズ」と呼ぶことがあるから、知っている人も多いだろう。

それに、1930年代から1940年代にかけて、中国東北部の人口が「三億人」であったとは到底思えないから、その点からも「人民三億人」は本当らしくない。

そう思って、ネットを検索してみたら、簡単にウィキペディアの [満州国の国歌] と云う記事を見つけた。それによると、「満洲国の国歌は、国務院佈告として正式に制定された二曲があり、その前にも国歌の為に製作された一曲がある」そうだが、「正式に制定された二曲」のうちの一曲め (国務院佈告第4号により1933年2月24日制定) に「人民三千萬人民三千萬」と云うくだりがあるのだ。この「国歌」(作詞:鄭孝胥。作曲:高津敏・園山民平・村岡楽童) は、「軽快な旋律が中国的な印象を与え、日本語の歌詞がないにもかかわらず、日本人に親しまれた」由。

ついでに、検索していて見かけた記載中から、上記に関連する次項を補足すると、ウィキペディアの [満州国] によれば「1934年の初めの満洲国の人口は3088万人、1世帯あたりの平均人数は6.1人、男女比は122:100と推定されていた」とのこと。また、YouTube に音源「満州国国歌」がある。

なお、[お楽しみはこれもなのじゃ] には、私が持っている河出文庫版の他に、立風書房版 (1991年) と角川書店版 (2004年) があるらしいが、私は未見。

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