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デカルトの正葉線の曲率

Folium of Descartes, or folium cartesii
デカルトの正葉線
Folium of Descartes (folium cartesii)

先日 (2009/05/22 17:22:28)、[デカルトの葉線 曲率] と言うキーフレーズでこのサイトを訪問された方がいらしたらしい。恐らくは、デカルトの葉線 (「デカルトの正葉線」とも言うが、要するに xy 平面上で、式 x^3 + y^3 - 3 a x y = 0 で表わされる曲線のことである。ちなみに、x + y + a = 0 が漸近線になる) の曲率の表示式をお探しだったのだろう。

[デカルトの葉線 曲率] では、デカルトの葉線の曲率表示式は、探しにくいかもしれないが、英語の "Folium of Descartes" や、或いは、ラテン語の "folium cartesii" を使うなら、なにも "curvature" を付けないでも、その検索結果 (Google 検索で "Folium of Descartes" 又は "folium cartesii") から、"Wolfram MathWorld" の "Folium of Descartes" のページに辿りつけて、そこで曲率の表示式を見つけることができる。ただし、その曲率の表示式では、パラメータ (t) が使われている。

「そもそも」と云うほど大げさなことではないが、少し遡って説明を補足するなら、デカルトの葉線は y = f(x) の陽関数で捉えようとすると、原点の近傍 (正確に言うなら、x が正の微小値である範囲内) では1価関数にならない。したがって、パラメータ (t とする) を使って、都合よく x = x(t),\ y = y(t) と表わすことができないかと考えて、葉線の形を見ると、原点を通る直線と葉線との原点以外の交点は、高々1つしかなく、また原点を通る直線の傾きが -1 以外なら、原点以外の交点が必ず1つ存在することが容易に確認できる。従って、 t = y/x をパラメータとするのが適当であると推測できるので、そのようにすると、x^3 + y^3 - 3 a x y = 0 から


\begin{eqnarray*}
x = \frac{3at}{1 + t^3} \\
y = \frac{3at^2}{1 + t^3}
\end{eqnarray*}

が簡単に得られる (ただし、t \ne -1)。従って、求める曲率もまた、このパラメータ t で表わすのが自然な流れとなる訣である。そして、それは "Wolfram MathWorld" の "Folium of Descartes" のページに書いてあるように、


k(t) = \frac{2(1 + t^3)^4}{3a(1 + 4t^2 - 4t^3 -4t^5 + 4t^6 + t^8)^{3/2}}

になる。

この曲率を計算するのは大学初年級の解析学の演習レベル (それどころか、高校生でも、「物好き」なら、この程度のことはするだろう) だから、くだくだしくは書かないが (つまり、書くと「くだくだしく」なる)、一言注意しておくと、平面曲線のパラメータ表記 x = x(t),\ y = y(t) による曲率の計算式


\[
\frac{x^\prime y^{\prime\prime} - y^\prime x^{\prime\prime}}{((x^\prime)^2 + (y^\prime)^2)^{3/2}}
\]

よりも、平面曲線の陰関数表示 F(x, y) = 0 からの曲率の計算式


-\frac{F_{xx}F_y{}^2 - 2F_{xy}F_xF_y + F_{yy}F_x{}^2}{(F_x{}^2 + F_y{}^2)^{3/2}}

を使って、曲率を一旦 x, y, a の式として表わしてから x = x(t),\ y = y(t) を代入した方が計算が若干簡単になる。

しかし、まぁ、こうしただけのことなら何も記事を書く必要はないのだ。放っておいても、自然にこの程度の結果は得られた筈だからだ (因みに、アクセスしてきたのは、数学とは非常に親近性のある技術系の大手メーカー内からである。相応のリソースが備わっていると信じてよいだろう)。

では、何故、今この記事を書いているのかと言うと、"Wolfram MathWorld" の"Folium of Descartes" のページを見たとき、最近 (2009年5月18日) 正式公開された検索エンジン "Wolfram|Alpha" のことを思い出したことから、話が始まる (そして、すぐ終わる)。

実は、"Wolfram|Alpha" の公開直後、一度試しに使ってみて、その「検索」の範囲が科学技術系に限定されているらしいことに気付き、そして反応が遅いことに落胆して、そのまま立ち去っていたのだった。私のように、ネット内を彷徨して知的冒険ならぬ知的遭難を繰り返しているような人間には、不向きな道具に思えたからである。

しかし、「デカルトの葉線の曲率」と云った明確な技術的課題を調べるには適切に思えた。

そこで、"Folium of Descartes" を "Wolfram|Alpha" を調べて見たのだが (私のシステムの場合、スクリプトの実行し続けるとコンピュータが反応しなくなる可能性があるとして、中止を示唆する警告が出るのだが、強いて続行したところ) 確かに、曲率の表示式を含む、幾つかの特徴が表示されたのだった。

しかし、その陰関数表示が x^3 + y^3 = 3xy となっていて、一般的な形式で書かれていなかったのだな。つまり、(やはりパラメータと呼ぶしかないのだが)パラメータの a --この記事の書き方でも、Wolfram|Alpha 内の書き方でも同じ記号 a が使われている-- が抜けいている。勿論、他の部分は a の存在を前提にした書き方をしているから、全体として不統一になってしまっている。

勿論、「検索エンジン」だから、内容のチェックをしていないと言われればそれまでなのだが、しかし、google 式の検索エンジンが、玉石混淆を、そのままブチまけるため、慣れた利用者には「石」の存在に耐性があるのに対し、「単一の答え」を提示する Wolfram|Alpha のスタイルでは、ここら辺で躓いてしまっては、早晩営業が苦しくなるのは目に見えている。

「デカルトの葉線」に就いて、デカルト (René Descartes) とフェルマー (Pierre de Fermat) とのメルセンヌ (Marin Mersenne) を介した応酬 (Cf.「The mathematical career of Pierre de Fermat, 1601-1665 - Google ブック検索」) や、デカルト自身は、「葉線」が第1象限と同じ図形が、第2象限・第3象限・第4象限で繰り返されている (つまり「四つ葉」風になっている) と信じていたらしいと云う話 ("La courbe possède une forme de nœud de ruban. Lors de leur étude, Descartes et Roberval se limitèrent à une boucle, ne considérant que les coordonnées positives (x>0,y>0) car ils pensaient que la boucle se répetait dans chaque quart de repère, à la manière des quatre pétales d'une fleur (d'où son nom de folium = feuille). "--フランス語版ウィキペディア"Folium de Descartes") の真偽などを調べて見たいのだが、今はその餘裕がない。後後の為に、参考になるかもしれないリンクを幾つか纏めて置くだけにする:

  1. Descartes - Œuvres, éd. Adam et Tannery, I.djvu
  2. Œuvres de Fermat - I
  3. persee.fr - Revue d'histoire des sciences, Annee 1998, Volume 51, Numero 51-2-3, pp. 355-362
  4. La géométrie by René Descartes - Project Gutenberg
  5. The mathematical career of Pierre de Fermat, 1601-1665 - Google ブック検索
  6. COMMENT L'HISTOIRE DE LA GEOMETRIE ANALYTIQUE PEUT AIDER LES ...
  7. Richard L. Amoroso Fe, Fi, Fo, Folium: A Discourse on Descartes’ Mathematical Curiosity
  8. Full text of "Oeuvres de Descartes"
  9. File:Folium of Descartes Curvature.svg - Wikimedia Commons

なお、「デカルトの葉線」はフランス語では "Folium de Descartes" だが "nœud de ruban" と呼ばれることもある (ドイツ語では "Kartesisches Blatt")。

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コメント

はじめまして。
wolframalphaに言及しておられ 漂着致しました.

http://www.wolframalpha.com/input/?i=Folium+of+Descartes
<--陰も陽も a入り曲率在り。

In[6]:=
dfolium
Timing[Simplify[Curvature[dfolium, t],
t > 0]]

Out[6]=
{(3*a*t)/(1 + t^3), (3*a*t^2)/(1 + t^3)}

Out[7]=
{0.*Second<--● ●, (2*a^2*(1 + t^3)^4)/
(3*(a^2*(1 + 4*t^2 - 4*t^3 - 4*t^5 +
4*t^6 + t^8))^(3/2))}

http://b4.spline.tv/mynb2/?command=GRPVIEW&num=240

http://www87.wolframalpha.com/input/?i=++Folium+of+Descartes+++curvature
------------------------------------------------------
http://www.wolframalpha.com/input/?i=Factor%5BGroebnerBasis%5B%7B-3*a*t+%2B+x+%2B+t%5E3*x%2C+-3*a*t%5E2+%2B+y+%2B+t%5E3*y%7D%2C+%7Bx%2C+y%7D%2C+%7Bt%7D%5D%5D
http://www.wolframalpha.com/input/?i=Eliminate%5B%7B-3*a*t+%2B+x+%2B+t%5E3*x%3D%3D0%2C+-3*a*t%5E2+%2B+y+%2B+t%5E3*y%3D%3D0%7D%2C+t%5D%5D

投稿: GB | 2009年8月28日 (金) 22:58

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