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み吉野の 吉野の鮎
鮎こそは 島辺もよき え苦しゑ
水葱の本 芹の本 吾は苦しゑ

作者:未確認又は該当情報なし 出典:[日本書紀27]天智紀10年12月
中公文庫版『日本語で一番大切なもの』p.50

「え苦しゑ」。感動詞「え」の用例。「吉野」の読みは「えしの」、「水葱」の読みは「なぎ」。

大野晋の解説によれば、これは、天武天皇が吉野に逃げ込んだ時のことを諷刺している。吉野に逃げ込んでいるのはとても苦しいことで、いずれ良くないことが起こるだろうと云う意味だろう。「鮎ならば水のほとりの島辺に押し込められてもいいだろうけれども、私は鮎ではないから、こんな水葱や芹のあるところに押し込められて苦しい」。

参考 ([日本書紀27]天智紀10年12月):
十二月(しはす)の癸亥(みづのとのゐ)の朔(ついたち)乙丑(きのとのうしのひ)に、天皇(すめらみこと)、近江宮(あふみのみや)に崩(かむあが)りましぬ。癸酉(みづのとのとりのひ)に、新宮(にひみや)に殯(もがり)す。時に、童謠(わざうた)して曰はく、
  み吉野の 吉野の鮎 鮎こそは 島傍(しまへ)も良(え)き え苦しゑ 水葱(なぎ)の下(もと) 芹(せり)の下(もと) 吾(あれ)は苦(くる)しゑ 其一
  臣(おみ)の子(こ)の 八重(やへ)の紐(ひも)解(と)く 一重(ひとへ)だに いまだ解(と)かねば 御子(みこ)の紐(ひも)解く 其二
  赤駒(あかごま)の い行(ゆ)き憚(はばか)る 真葛原(まくずはら) 何(なに)の伝言(つてこと) 直(ただ)にし良(え)けむ  其三

(岩波文庫『日本書紀(五)』p.64)

十二月癸亥朔乙丑、天皇崩于近江宮。癸酉、殯于新宮。于時、童謠曰、
  美曳之弩能、美曳之弩能阿喩、々々擧曾播、施麻倍母曳岐、愛倶流之衛、奈疑能母騰、制利能母騰、阿例播倶流之衛 其一
  於彌能古能、野陛能比母騰倶、比騰陛多爾、伊麻拕藤柯泥波、美古能比母騰矩 其二
  阿箇悟馬能、以喩企波々箇屡、麻矩儒播羅、奈爾能都底擧騰、多拕尼之曳雞武 其三

(岩波文庫『日本書紀(五)』p.390)

この記事は[nouse: 大野晋・丸谷才一『日本語で一番大切なもの』引用文索引 (改)] (2008年3月1日[土]) の一部をなすものである。


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