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君いし無くば痛きかも

作者:高田女王 出典:[万葉集4]537/540
中公文庫版『日本語で一番大切なもの』p.324

「いし」の使用例。『日本語で一番大切なもの』では「無くば」と引用されているが、文脈上も、また原文の万葉仮名が「者」であることからも、むしろ「無くは」ではないか。「痛き」の訓は「たへがたき」。
事清 甚毛莫言 一日太尓 君伊之哭者 痛寸敢物;言清くいともな言ひそ 一日だに 君いしなくは たへかたきかも (高田女王 [万葉集4]537/540)」『日本語で一番大切なもの』中に解釈は与えられていないが、仮に当てるとするなら「そんなにあっさり言わないでくださいな。あなたなしには一日だって堪えられないかも知れないのですから」

参考 ([万葉集4]537/540 から [万葉集4]542/545):
高田女王(たかたのおほきみ)、今城王(いまきのおほきみ)に贈る歌六首
言清くいともな言ひそ一日だに君いしなくはたへかたきかも (高田女王 [万葉集4]537/540)
人言を繁み言痛み逢はずありき心あるごとな思ひ我が背子 (高田女王 [万葉集4]538/541)
我が背子し遂げむと言はば人言は繁くありとも出でて逢はましを (高田女王 [万葉集4]539/542)
我が背子にまたは逢はじかと思へばか今朝の別れのすべなくありつる (高田女王 [万葉集4]540/543)
現世には人言繁し来む世にも逢はむ我が背子今にあらずとも (高田女王 [万葉集4]541/544)
常やまず通ひし君が使来ず今は逢はじとたゆたひぬらし (高田女王 [万葉集4]542/545)
これを、簡単に纏めると:
「そんなにあっさり言わないでください。あなたにあえないのは辛い」
「会わないでいるのは噂のせい。心変わりがしたのではありません」
「あなたが決心してくれれば、噂を気にしないで会うのに」
「もう会えないかもと思ったからかしら、今朝の別れは切なかった」
「この世では噂がひどいので、今でなくても来世で会いましょう」
「いつも来ていたあなたの使いが来ない。動揺して会わないでおこうと思っているみたい」

本記事は、極めて長文である [nouse: 大野晋・丸谷才一『日本語で一番大切なもの』引用文索引] (2008年3月1日[土]) から同一引用文に係る項目を分離独立させたもので、内容に実質的な変化はない。

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