« 足柄の八重山越えていましなば誰をか君を見つつしのはむ | トップページ | あしひきの山桜戸を開けおきてわが待つ君を誰かとどむる »

蘆原の中つ国はいたく喧ぎてありなり

作者:太安万侶 出典:[古事記中]神武即位前東征
中公文庫版『日本語で一番大切なもの』p.246

伝聞の「なり」。「蘆原の中つ国はひどくざわついている音が聞こえます」。岩波文庫「古事記」p.81。

本記事は、極めて長文である [nouse: 大野晋・丸谷才一『日本語で一番大切なもの』引用文索引] (2008年3月1日[土]) から同一引用文に係る項目を分離独立させたもので、内容に実質的な変化はない。

補足 ([古事記中]神武即位前東征)
故、神倭伊波禮毘古命、其地 (そこ) より廻り幸でまして、熊野 (くまのの) 村に到りましし時、大熊 (おほくま) 髮 (ほの) かに出で入りて即ち失せき。ここに神倭伊波禮毘古命、倏忽 (には) かに惑 (を) えまし、また御軍 (みいくさ) も皆惑 (を) えて伏 (ふ) しき。この時熊野の高倉下 (たかくらじ) 、一 (ひと) ふりの横刀 (たち) 賷 (も) ちて、天つ神の御子の伏したまへる地 (ところ) に到りて獻りし時、天つ神の御子、すなはち寤 (さ) め起 (お) きて、「長く寢 (ね) つるかも。」と詔りたまひき。故、その横刀 (たち) を受け取りたまひし時、其の熊野の山の荒 (あら) ぶる神、自 (おのづか) ら皆切り仆 (たふ) さえき。ここにその惑 (を) え伏せる御軍、悉に寤 (さ) め起きき。故、天つ神の御子、その横刀 (たち) を獲 (え) し所由 (ゆゑ) を問ひたまへば、高倉下 (たかくらじ) 答へ曰 (まを) ししく、「己 (おの) が夢 (いめ) に、天照大神、高木神、二柱の神の命 (みこと) もちて、建御雷神を召 (よ) びて詔りたまひけらく、『葦原中國はいたく佐夜藝帝 (さやぎて) ありなり。我が御子等 (みこたち) 不平 (やくさ) みますらし。その葦原中國は、專 (もは) ら汝 (いまし) が言向 (ことむ) けし國なり。故、汝 (いまし) 建御雷神降るべし。』とのりたまひき。ここに答へ曰 (まを) ししく、『僕 (あ) は降らずとも、專ら其の國を平 (ことむ) けし横刀有れば、是の刀 (たち) を降すべし。[此の刀の名は、佐士布都神と云ひ、亦の名は甕布都神と云ひ、亦の名は布都御魂と云ふ。此の刀は石上神宮に坐す。] この刀を降さむ状 (さま) は、高倉下が倉の頂 (むね) を穿 (うか) ちて、其れより墮 (おと) し入れむ。故、朝目吉 (あさめよ) く汝 (なれ) 取り持ちて、天つ神の御子に獻れ。』とまをしたまひき。故、夢の教への如 (まにま) に、旦 (あした) に己が倉を見れば、信 (まこと) に横刀 (たち) ありき。故、この横刀をもちて獻りしにこそ。」とまをしき。ここにまた、高木大神の命もちて覺 (さと) し白 (まを) しけらく、「天つ神の御子をこれより奧つ方にな入り幸 (い) でまさしめそ。荒ぶる神甚 (いと) 多 (さは) なり。今、天 (あめ) より八咫烏 (やたがらす) を遣 (つか) はさむ。 故、その八咫烏引道 (みちび) きてむ。その立たむ後 (あと) より幸行 (い) でますべし。」とまをしたまひき。故、その教へ覺しの隨 (まにま) に、その八咫烏の後 (あと) より幸行 (い) でませば、吉野 (よしの) 河の河尻に到りましし時、筌 (うへ) を作 (ふ) せて魚 (うを) を取る人ありき。ここに天つ神の御子、「汝 (な) は誰ぞ。」と問ひたまへば、「僕 (あ) は國つ神、名は贄持 (にへもつ) の子と謂ふ。」と答へ曰 (まを) しき。[こは阿陀の鵜養の祖。] 其地 (そこ) より幸行 (い) でませば、尾 (を) 生 (あ) る人、井 (ゐ) より出で來りき。其の井に光ありき。ここに「汝は誰ぞ。」と問ひたまへば、「僕は國つ神、名は井氷鹿 (ゐひか) と謂ふ。」と答へ曰しき。[こは吉野首等の祖なり。] すなはちその山に入りたまへば、また尾生 (あ) る人に遇ひたまひき。この人巖 (いはほ) を押し分けて出で來りき。爾に「汝は誰ぞ。」と問ひたまへば、「僕は國つ神、名は石押分 (いはおしわく) の子と謂ふ。今、天つ神の御子幸行 (い) でましつと聞けり。故、參向 (まゐむか) へつるにこそ。」と答へ曰しき。[こは吉野の國巣の祖。] 其地より蹈み穿 (うか) ち越えて、宇陀 (うだ) に幸でましき。故、宇陀の穿 (うかち) と曰 (い) ふ。
岩波文庫『古事記』p.81-p.83

|
|

« 足柄の八重山越えていましなば誰をか君を見つつしのはむ | トップページ | あしひきの山桜戸を開けおきてわが待つ君を誰かとどむる »

『日本語で一番大事なもの』」カテゴリの記事

日本語/和文」カテゴリの記事

詩/文藝」カテゴリの記事

読み物・書き物・刷り物」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/40172/40375968

この記事へのトラックバック一覧です: 蘆原の中つ国はいたく喧ぎてありなり:

« 足柄の八重山越えていましなば誰をか君を見つつしのはむ | トップページ | あしひきの山桜戸を開けおきてわが待つ君を誰かとどむる »