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白露の玉もてゆへるませのうちに光さへそふ常夏の花

作者:高倉院 出典:[新古今和歌集3]275
中公文庫版『日本語で一番大切なもの』p.238

助詞「さへ」の用例。「さへ」と「そふ」が非常に近いところに並んでいる。
「ませ」は植え込みの周囲の低い柵。

「常夏/撫子」と「露」は縁語。

参考 (『源氏物語』[帚木] 中の「常夏/撫子」と「露」を主題とする歌の登場する部分):
...『さる、憂きことや、あらん』とも知らず、心には忘れずながら、消息などもせで、久しく侍りしに、むげに思ひしをれて、心細かりければ、幼き者などもありしに、思ひわづらひて、撫子の花を折りて、おこせたりし」
とて、涙ぐみたり。「さて、その文の言葉は」と、問ひたまへば、
「いさや、異なることもなかりきや。
  山がつの垣ほ荒るとも折々にあはれはかけよ撫子の露
おもひ出でしまゝに、まかりたりしかば、例の、うらもなき物から、いと、物思ひ顔にて、荒れたる家の、露繁きをながめて、蟲の音にきほへる氣色、昔物語めきておぼえ侍りし。
  咲きまじる色はいづれとわかねどもなほ常夏にしくものぞなき
大和撫子をばさしおきて、まづ『塵をだに』など、親の心を取る。
  うち払ふ袖も露けき常夏にあらし吹きそふ秋も來にけり
と、はかなげに言ひなして、まめまめしく恨みたる様も見えず。涙を、漏らしおとしても、いと、恥づかしくつゝましげに、紛らはし隠して、「『つらきをも、思ひ知りけり』と、みえんは、わりなく苦しき物」と、思ひたりしかば、心安くて、又、とだえ置き侍りしほどに、あともなくこそ、かき消ちて、失せにしか。...

この「常夏」が後の「夕顔」である。彼女が「恥づかしくつゝましげ」であることに留意すべきだろう。

本記事は、極めて長文である [nouse: 大野晋・丸谷才一『日本語で一番大切なもの』引用文索引] (2008年3月1日[土]) から同一引用文に係る項目を分離独立させたもので、内容に実質的な変化はない。

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