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等角速度円運動の旅行者における「双子のパラドクス」

通常の「双子のパラドクス」においては、旅行者は所謂「3次元空間」(或いは、誤解を招く表現かもしれないが、「ガリレイ・ニュートン的空間」)で見る限り、直線分上を往復する。しかし、「双子のパラドクス」の本質は、旅行者が「3次元空間」内を運動して「3次元空間」内での「出発点」に戻ることで必然的に生じる加速度運動の結果、「出発点」に静止していた残留者との固有時の経過量に食い違いが起こることにある。つまり、旅行者の空間的経路は直線分である必要はない。従って、「一般化された双子のパラドクス」を考えることができる。

ここで注意しなければならないのは、「双子のパラドクス」を説明するには (「パラドクス」を解消するには) 一般相対論を俟たねばならないのだが、「双子のパラドクス」を叙述するにはミンコフスキー時空内の言葉遣いでなければならないことだ。

ガリレイ・ニュートン的描像では「出発点に戻る」と表現される現象は、ミンコフスキー的描像では、「出発点」と「終点」の空間部座標が一致し、時間部座標が一致しないと云うことだ。つまり、「出発点」と「終点」は time-like に分離している訣であり、これが「双子のパラドクス」が描像可能にとる前提条件になる。

このことから、(「病理学的な例外」が存在しうる可能性は排除できないが)「双子のパラドクス」における旅行者の全行程は、単一のミンコフスキー時空内に収まらねばならないだろうことが言える。

つまり、「双子のパラドクス」が叙述可能なのは (少なくとも、叙述が「自然」なのは)、4次元時空多様体の内、ミンコフスキー時空だけだということだ。さらにそのミンコフスキー時空をマッピングするのが、本来的には元のミンコフスキー時空とは別のミンコフスキー・マップ・セットであるわけで、(私のような無学な人間には、他人様の事は言える筋合いのものではないのだが) 物理的思考に馴染まない人たちには難しいのは仕方がないかもしれない。

このことは、伝統的な (「アインシュタイン・ケース」とでも呼ぶべきか) 「双子のパラドクス」の理解のし難さを、僅かばかり増やしているかもしれない。この場合、出発点を原点とするミンコフスキー・マップを作ると、肝腎の折り返し点における現象の数学的表現が複雑になってしまうのだ。副次的なミンコフスキー・マップを折り返し点を原点にして貼れば、数学的表現は簡単になるが、そのことで物理的描像がボヤけている可能性があるように思われる。(「単一のミンコフスキー・マップ」と云う便法があるのかもしれないが、私は知らない。なお、ここらへんのことについては [nouse: Rindler 計量と「双子のパラドクス」] 《2007年10月12日[金]》も参照して頂きたい)。


実は、旅行者の全行程が、単一のミンコフスキー・マップで簡単に表示できるケースがある。旅行者が、等角速度円運動をする場合である。

このような旅行者は、同じ角速度 (これを \omega とする) で回転する円筒座標系 (z: 円運動の中心軸、r: 中心軸からの距離、\theta: 特定の半径方向を基準とする中心軸周りの角度) で見ると、座標系内の一点に静止しているので、叙述が簡単になる。従って、以下、この座標系を用いて記述する。

さて、この等角速度回転円筒座標系の線素は、[nouse: 一般相対論によるサニャック効果の導出] (2007年9月30日[日]) にも書いたように:

ds^2 = (c^2 - r^2 \omega^2)\, dt^2 - dr^2 - r^2 d\theta^2 - dz^2 - 2r^2 \omega \, dt \, d\theta

であるが、これは、マッピング関数 (ct, z, r, \theta ) によって貼られたミンコフスキー・マップであると見ることもできることは注意しておいて良かろう。

一般相対論の初歩的な帰結として、線素 g_{ij} の座標系内に静止している「観測者」の場合、座標系において t_{0} から t まで時間が経過する際の、観測者において経過する固有時間 \tau (t) は:

\tau (t) = \int_{t_0}^{t} \sqrt{g_{00}} \, dt

となることが知られているから、これを上記の等角速度回転円筒座標系に当てはめるなら、中心軸から距離 R の円形行程を旅行者が巡航する際、座標時間 t での出発時刻を 0 とすると、その固有時の進み方は

\tau (t) = \int_{0}^{t} \sqrt{\frac{c^2 - R^2 \omega^2}{c^2}} \, dt = \sqrt{1- \frac{R^2 \omega^2}{c^2}} \cdot t

残留者から見て、円筒座標系の原点は静止しているから、残留者の固有時間は、円筒座標系の座標時間と一致することに注意すると、R \omega は、残留者から見た旅行者の接線方向速度に他ならないから \sqrt{1- \frac{R^2 \omega^2}{c^2}} は、旅行者の接線方向の速度に対するローレンツ係数の逆数そのものである。

従って、等角速度円運動をする旅行者の固有時間は、残留者の固有時間に対して、接線速度と同じ速度の等速直線運動に対して特殊相対論的に発生する時間遅延と正確に同一の量の時間遅延を引き起こす。これは、「アインシュタイン・ケース」のような「ほぼ同一」といった留保が必要がない上、時間遅延を引き起こす「加速度」が全行程で同一の大きさの遠心力であるので、イメージが掴みやすいだろう。

ついでに懺悔しておくと、[nouse: 一般相対論によるサニャック効果の導出] で 『実は、サニャック効果の論理構造は、[双子のパラドクス] とも似ていることも注意しておいて良いだろう。ただし、むしろ「似て非なる」と言っておいた方が良いかもしれない。』と書いたが、これはかなり間拔けな発言だった。その直後のサニャック効果の定式化で、線素とラグランジアンとを比較して私自身が指摘しているように、等角速度円運動の場合、サニャック効果は、線素へのコリオリ力ポテンシャルの寄与分から発生するのと同様に、「双子のパラドクス」は遠心力ポテンシャルの寄与分から発生するのである。「似て非なる」のは当然なのだ、

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