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あつみ山や吹浦かけて夕すずみ

作者:芭蕉 出典:[奥の細道]酒田
中公文庫版『日本語で一番大切なもの』p.73

俳諧の切字「や」の例。地名+「や」の形。

参考 ([奥の細道]酒田):
羽黒を立て鶴が岡の城下、長山氏重行と云物のふの家にむかへられて、俳諧一巻有。左吉も共に送りぬ。川舟に乗て酒田の湊に下る。淵庵不玉と云醫師の許を宿とす。
  あつみ山や吹浦かけて夕すゞみ
  暑き日を海にいれたり最上川

岩波文庫『奥の細道』p.41-p.42

本記事は、極めて長文である [nouse: 大野晋・丸谷才一『日本語で一番大切なもの』引用文索引] (2008年3月1日[土]) から同一引用文に係る項目を分離独立させたもので、内容に実質的な変化はない。


補足
曾良随行日記
一 十三日 川船ニテ坂田ニ趣。船ノ上七里也。陸五里成ト。出船ノ砌、羽黒ヨリ飛脚、旅行ノ帳面被調、被遣。又、ゆかた二ツ被贈。亦、發句共も被爲見。船中少シ雨降テ止。申ノ刻ヨリ曇。暮ニ及テ、坂田ニ着。玄順亭へ音信、留守ニテ、明朝逢。
○ 十四日 寺島彦助亭へ被招。俳有。夜ニ入歸ル。暑甚シ。
○ 十五日 象潟へ趣。朝ヨリ小雨。吹浦ニ到ル前ヨリ甚雨。晝時、吹浦ニ宿ス。此間六リ、砂濱、渡シ二ツ有。[左吉状届。晩方、番所裏判濟。]
○ 十六日 吹浦ヲ立。番所ヲ過ルト雨降出ル。[一リ] 女鹿。是ヨリ難所。馬足不通。[番所手形納。] 大師崎共、三崎共云。一リ半有。小砂川、御領也。庄内預リ番所也。入ニハ不入手形。塩越迄迄三リ。半途ニ關ト云村有 [是ヨリ六郷庄之助殿領]。ウヤムヤノ關成ト云。此間、雨強ク甚濡。船小ヤ入テ休。晝ニ及テ塩越ニ着。佐々木孫左衛門尋テ休。衣類借リテ濡衣干ス。ウドン喰。所ノ祭ニ付テ女客有ニ因テ、向屋借リテ宿ス。先、象潟橋迄行テ、雨暮氣色ヲミル。今野加兵へ、折々來テ被訪。
十七日 [朝、小雨。晝ヨリ止テ日照。] 朝飯後、皇宮山蚶彌寺へ行。道々眺望ス。歸テ所ノ祭渡ル。過テ、熊野權現ノ社へ行、躍等ヲ見ル。夕飯過テ、潟へ船ニテ出ル。加兵衛、茶・酒・菓子等持參ス。歸テ夜ニ入、今野又左衛門入來。象潟縁起等ノ絶タルヲ歎ク。翁諾ス。彌三郎低耳、十六日ニ跡ヨリ追來テ、所々ヘ随身ス。
○ 十八日 快晴。早朝、橋迄行、鳥海山ノ晴嵐ヲ見ル。飯終テ立。アイ風吹テ山海快。暮ニ及テ、酒田ニ着。
○ 十九日 快晴。三吟始。明廿日、寺島彦助江戸へ被趣ニ因テ状認。翁ヨリ杉風、又鳴海寂照・越人へ被遣。予、杉風・深川長政へ遣ス。

岩波文庫『奥の細道』p.130-p.132


曾良俳諧書留
  六月十五日、寺嶋彦助亭にて
凉しさや海に入たる最上川   翁
月をゆりなす浪のうき見る   (寺嶋)詮道
黒かもの飛行庵の窓明て    不玉
麓は雨にならん雲きれ     (長崎一左衞門) 定連
かはとぢの折敷作りて市を待  ソラ
影に任する霄の油火      (かゞや藤衞門) 任曉
不機嫌の心に重き戀衣     (八幡源衞門) 扇風
    末略ス

  出羽酒田、伊東玄順亭にて
温海山や吹浦かけて夕凉    翁
みるかる磯にたゝむ帆莚    不玉
月出は關やをからん酒持て   曾良
土もの竈の煙る秋風      翁
しるしして堀にやりたる色柏  玉
あられの玉を振ふ蓑の毛
鳥屋籠る鵜飼の宿に冬の來て  翁
火を焼かげに白髪たれつゝ   玉
海道は道もなきまで切狹め   良
松かさ送る武隈の土産     翁
草枕おかしき戀もしならひて  玉
ちまたの神に申かねごと
御供して當なき吾もしのぶらん 翁
此世のすゑをみよしのに入   玉
あさ勤妻帯寺のかねの聲
けふも命と嶋の乞食      翁
憔たる花しちるなと茱萸折て  玉
おぼろの鳩の寝所の月
物いへば木魄にひゞく春の風  玉
姿は瀧に消る山姫       翁
剛力がけつまづきたる笹づたひ
棺を納るつかのあら芝     玉
初霜ハよしなき岩を粧らん   翁
ゑびすの衣を縫々ぞ泣
明日しめん厂を俵に生置て   玉
月さへすごき陣中の市     翁
御輿は眞葛の奥に隠しいれ
小袖袴を送る戒の師      玉
吾顔の母に似たるもゆかしくて 翁
貧にはめらぬ家はうれども
奈良の京持傳へたる古今集   玉
花に符を切坊の酒蔵      翁
鶯の巣を立初る羽づかひ
蠶種うごきて箒手に取     玉
錦木を作りて古き戀を見ん   翁
ことなる色をこのむ宮達    良
岩波文庫『奥の細道』p.183-p.186

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