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荒れにけりあはれ幾代の宿なれや住みけむ人のおとづれもせぬ

作者:読人しらず 出典:[古今和歌集18]984
中公文庫版『日本語で一番大切なもの』p.149

已然形の用法。「なれ」+「や」で「なれや」の場合。
「幾代の宿なれや」。「や」のまえに不定詞「幾」がついて、平安朝風。大野晋の解は「昔住んだという人はもう訪れもしない。来てみると宿は荒れ果てているなあ、ああ、幾世も経た宿であるんだろうか(そうじゃないのに)」。典型的なサブジャンクティブ。

大野晋の解を私 ([ゑ]) なりにパラフレーズすると、「荒れてしまっているではないか。やれやれ、どれほど昔からの家だというのだ。住んでいた人もやってこないのだろうな」。「けむ」と云う過去の事態の推量の助動詞が使われているが、これは作者と住人とに面識がなかったためで、誰かが住んでいたことは確かだろう。だから、 「昔住んだという人」と廻りくどく言わなくても良いとおもう。

本記事は、極めて長文である [nouse: 大野晋・丸谷才一『日本語で一番大切なもの』引用文索引] (2008年3月1日[土]) から同一引用文に係る項目を分離独立させたもので、内容に実質的な変化はない。

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