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ひとり寝やいとど寂しきさを鹿の朝臥す小野の葛のうら風

作者:藤原顕綱 出典:[新古今和歌集5]450
中公文庫版『日本語で一番大切なもの』p.74

丸谷才一の説明:『新古今和歌集』では、普通名詞+間投助詞「や」の形が非常に多くなる。この歌は、その一例。

「『新古今和歌集』巻第五 秋歌下」の冒頭「下紅葉かつ散る山の夕時雨濡れてやひとり鹿の鳴くらむ (藤原家隆朝臣 [新古今和歌集5]437)」から「過ぎて行く秋の形見にさを鹿のおのが鳴く声も惜しくやあるらむ (権大納言長家 [新古今和歌集5]452)」ぐらいまで同じモチーフ (寂しさ、さを鹿、小野、葛、風) の作例が並んでいる。

一応、解を付けておく:「あなたを待ちながらのひとり寝がとうとう朝になり、ますます寂しさが増してきました。私はまるで妻を恋しく思って鳴きながら得られず朝の野の中に臥している牡鹿と同じです。その野に繁る葛の葉が秋風にあおられて裏が見えて...あなたをおうらみいたします。」

参考:
下紅葉かつ散る山の夕時雨濡れてやひとり鹿の鳴くらむ (藤原家隆朝臣 [新古今和歌集5]437)
野分せし小野の草ぶし荒れはててみ山に深きさをしかの声 (寂蓮法師 [新古今和歌集5]439)
嵐吹く真葛が原に啼く鹿はうらみてのみや妻を恋ふらん (俊恵法師 [新古今和歌集5]440)
われならぬ人もあはれやまさるらむ鹿鳴く山の秋のゆふぐれ (土御門内大臣 [新古今和歌集5]443)
鳴く鹿の声に目ざめてしのぶかな見はてぬ夢の秋の思を (前大僧正慈円 [新古今和歌集5]445)
夜もすがらつまどふ鹿の鳴くなべに小萩が原の露ぞこぼるる (権中納言俊忠 [新古今和歌集5]446)
寝覚して久しくなりぬ秋の夜は明けやしぬらむ鹿ぞ鳴くなる (源道済 [新古今和歌集5]447)
過ぎて行く秋の形見にさを鹿のおのが鳴く声も惜しくやあるらむ (権大納言長家 [新古今和歌集5]452)
わが恋は松を時雨のそめかねて真葛が原に風さわぐなり (前大僧正慈円 [新古今和歌集11]1030)
いかにせむ葛のうら吹く秋風に下葉の露のかくれなき身を (相模 [新古今和歌集13]1166)
来ぬ人をあきのけしきやふけぬらむうらみによわるさをしかの声 (寂蓮法師 [新古今和歌集14]1321) (「まつ虫の声」のヴァリアント)
秋風の吹き裏返し葛の葉の葉の裏見れば恨めしきかな (平貞文 [古今和歌集15]823)

本記事は、極めて長文である [nouse: 大野晋・丸谷才一『日本語で一番大切なもの』引用文索引] (2008年3月1日[土]) から同一引用文に係る項目を分離独立させたもので、内容に実質的な変化はない。

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