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朝井堤に来鳴くかほ鳥汝だにも君に恋ふれや時終へず鳴く

作者:不詳 出典:[万葉集10]1823/1827
中公文庫版『日本語で一番大切なもの』p.255

朝井堤(あさゐで):朝の堰。この「汝(なれ)だにも」は「お前までも」。「...までも」は本来「さへ」が担っていた意味。
「かほ鳥」は万葉集中で謡われている鳥 ([3]372/375, [6]1047/1051, [10]1823/1827, [10]1898/1902, [17]3973/3996) だが、未詳。春、山や水辺で間断なく鳴く。「かほ」が鳴き声を表わすとしてカッコウとする説がある。

本記事は、極めて長文である [nouse: 大野晋・丸谷才一『日本語で一番大切なもの』引用文索引] (2008年3月1日[土]) から同一引用文に係る項目を分離独立させたもので、内容に実質的な変化はない。

補足
  山部宿禰赤人、春日野に登りて作る歌一首[并せて短歌]
春日を 春日の山の 高座の 御笠の山に 朝さらず 雲居たなびき 貌鳥の 間なくしば鳴く 雲居なす 心いさよひ その鳥の 片恋のみに 昼はも 日のことごと 夜はも 夜のことごと 立ちて居て 思ひぞ我がする 逢はぬ子故に
(山部赤人 [万葉集3]372/375)

  寧楽の故郷を悲しびて作る歌一首[并せて短歌]
やすみしし 我が大君の 高敷かす 大和の国は すめろきの 神の御代より 敷きませる 国にしあれば 生れまさむ 御子の継ぎ継ぎ 天の下 知らしまさむと 八百万 千年を兼ねて 定めけむ 奈良の都は かぎろひの 春にしなれば 春日山 御笠の野辺に 桜花 木の暗隠り 貌鳥は 間なくしば鳴く 露霜の 秋さり来れば 生駒山 飛火が岳に 萩の枝を しがらみ散らし さを鹿は 妻呼び響む 山見れば 山も見が欲し 里見れば 里も住みよし もののふの 八十伴の男の うちはへて 思へりしくは 天地の 寄り合ひの極み 万代に 栄えゆかむと 思へりし 大宮すらを 頼めりし 奈良の都を 新代の ことにしあれば 大君の 引きのまにまに 春花の うつろひ変り 群鳥の 朝立ち行けば さす竹の 大宮人の 踏み平し 通ひし道は 馬も行かず 人も行かねば 荒れにけるかも
(田辺福麻呂之歌集 [万葉集6]1047/1051)

  鳥に寄する
貌鳥の間なくしば鳴く春の野の草根の繁き恋もするかも
(作者不詳 [万葉集10]1898/1902)

  三月の四日、大伴宿禰池主
  昨日短懐を述べ、今朝耳目を汗す。さらに賜書を承り、かつ不次を奉る。死罪死罪。
  下賎を遺れず、頻りに徳音を恵みたまふ。英霊星気あり、逸調人に過ぐ。智水仁山、すでに琳瑯の光彩をつつみ、潘江陸海、おのづから詩書の廊廟に坐す。思を非常に騁せ、情を有理に託す。七歩にして章を成し、数篇紙に満つ。巧く愁人の重患を遣り、能つ恋者の積思を除く。山柿の歌泉は、これ比ぶれば蔑きがごとく、彫竜の筆海は、粲然として看ること得たり。まさに知りぬ、僕が幸あることを。敬みて和ふる歌、その詞に云はく、
大君の 命畏み あしひきの 山野さはらず 天離る 鄙も治むる ますらをや なにか物思ふ あをによし 奈良道来通ふ 玉梓の 使絶えめや 隠り恋ひ 息づきわたり 下思に 嘆かふ我が背 いにしへゆ 言ひ継ぎくらし 世間は 数なきものぞ 慰むる こともあらむと 里人の 我れに告ぐらく 山びには 桜花散り かほ鳥の 間なくしば鳴く 春の野に すみれを摘むと 白栲の 袖折り返し 紅の 赤裳裾引き 娘子らは 思ひ乱れて 君待つと うら恋すなり 心ぐし いざ見に行かな ことはたなゆひ
(大伴池主 [万葉集17]3973/3996)

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