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苦しくも降り来る雨か神の崎狭野の渡りに家もあらなくに

作者:長忌寸奥麻呂(ながのいみきおきまろ) 出典:[万葉集3]265/267
中公文庫版『日本語で一番大切なもの』p.63, p.117

『日本語で一番大切なもの』では「神が崎」とあるのを「神の崎」と改めた。「神の崎」の訓は「みわのさき」。「も...か」の呼応の例。

『日本語で一番大切なもの』での大野晋の説明 (p.63-p.64):「苦しくも降り来る雨か」の「か」は詠嘆だが、それは「苦しく降り来る雨」と云う「も...か」の呼応によって生じている。これはこれ、あれはあれというふうに確定的に分けるのが「は」の役割であるのに対し、「も」は本来不確定な判断を表わす言葉で、あっちもこっちもはっきりしないこと、しかし、だからといって放りっぱなしにするのかと云うと、そうではなく非常に執着した気持ちを持っていることを表わす。だから、 「苦しくも降り来る雨か」の意味は、一応「ひどくつらい感じで降ってくる雨であることよ」になるのだが、「も」が来ると全体が非常に明晰を欠くことになる。明晰を欠くから判断を下せない。自分で判断を下せないことには、詠嘆する以外にないことになる。

駒とめて袖打払ふかげもなし佐野のわたりの雪の夕ぐれ (藤原定家 [新古今和歌集6]671)」の本歌。

本記事は、極めて長文である [nouse: 大野晋・丸谷才一『日本語で一番大切なもの』引用文索引] (2008年3月1日[土]) から同一引用文に係る項目を分離独立させたもので、内容に実質的な変化はない。

この歌の解を補足しておく:「雨がひどく降っているのかもしれない。この神が崎の渡りに、家が見当たらないのだ」。

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