« 宮柱したつ磐根にしきたてて露もくもらぬ日のみかげかな | トップページ | み吉野の吉野の山の春がすみ立つを見る見るなほ雪ぞ降る »

み雪降る冬の林に飄風かもい巻き渡ると思ふまで

作者:柿本人麻呂 出典:[万葉集2]199
中公文庫版『日本語で一番大切なもの』p.320

動詞に接頭語「い」が付いている例。「飄風」の読みは「つむじ」。大野晋曰く:この「い」は「息」と云う意味ではないか。

参考 (柿本人麻呂 [万葉集2]199):
  高市皇子尊(たけちのみこのみこと)の城上(きのうへ)の殯宮(あらきのみや)の時に、柿本朝臣人麻呂が作る歌一首并せて短歌
かけまくも ゆゆしきかも [一云 ゆゆしけれども] 言はまくも あやに畏き 明日香の 真神の原に ひさかたの 天つ御門を 畏くも 定めたまひて 神さぶと 磐隠ります やすみしし 我が大君の きこしめす 背面の国の 真木立つ 不破山超えて 高麗剣 和射見が原の 仮宮に 天降りいまして 天の下 治めたまひ [一云 掃ひたまひて] 食す国を 定めたまふと 鶏が鳴く 東の国の 御いくさを 召したまひて ちはやぶる 人を和せと 奉ろはぬ 国を治めと [一云 掃へと] 皇子ながら 任したまへば 大御身に 大刀取り佩かし 大御手に 弓取り持たし 御軍士を 率ひたまひ 整ふる 鼓の音は 雷の 声と聞くまで 吹き鳴せる 小角の音も [一云 笛の音は] 敵見たる 虎か吼ゆると 諸人の おびゆるまでに [一云 聞き惑ふまで] ささげたる 幡の靡きは 冬こもり 春さり来れば 野ごとに つきてある火の [一云 冬こもり 春野焼く火の] 風の共 靡くがごとく 取り持てる 弓弭の騒き み雪降る 冬の林に [一云 木綿の林] つむじかも い巻き渡ると 思ふまで 聞きの畏く [一云 諸人の 見惑ふまでに] 引き放つ 矢の繁けく 大雪の 乱れて来れ [一云 霰なす そちより来れば] まつろはず 立ち向ひしも 露霜の 消なば消ぬべく 行く鳥の 争ふはしに [一云 朝霜の 消なば消とふに うつせみと 争ふはしに] 渡会の 斎きの宮ゆ 神風に い吹き惑はし 天雲を 日の目も見せず 常闇に 覆ひ賜ひて 定めてし 瑞穂の国を 神ながら 太敷きまして やすみしし 我が大君の 天の下 申したまへば 万代に しかしもあらむと [一云 かくしもあらむと] 木綿花の 栄ゆる時に 我が大君 皇子の御門を [一云 刺す竹の 皇子の御門を] 神宮に 装ひまつりて 使はしし 御門の人も 白栲の 麻衣着て 埴安の 御門の原に あかねさす 日のことごと 獣じもの い匍ひ伏しつつ ぬばたまの 夕になれば 大殿を 振り放け見つつ 鶉なす い匍ひ廻り 侍へど 侍ひえねば 春鳥の さまよひぬれば 嘆きも いまだ過ぎぬに 思ひも いまだ尽きねば 言さへく 百済の原ゆ 神葬り 葬りいまして あさもよし 城上の宮を 常宮と 高く奉りて 神ながら 鎮まりましぬ しかれども 我が大君の 万代と 思ほしめして 作らしし 香具山の宮 万代に 過ぎむと思へや 天のごと 振り放け見つつ 玉たすき 懸けて偲はむ 畏かれども
(柿本人麻呂 [万葉集2]199)
これは、万葉集中最長歌である。

ちなみに、反歌は2首あって:
ひさかたの天知らしぬる君故に日月も知らず恋ひわたるかも (柿本人麻呂 [万葉集2]200)
埴安の池の堤の隠り沼のゆくへを知らに舎人は惑ふ (柿本人麻呂 [万葉集2]201)

さらに:
  或書の反歌一首
哭沢の神社にみわ据ゑ祈れども我が大君は高日知らしぬ
(柿本人麻呂 [万葉集2]202)
   右一首は、類聚歌林には「桧隈女王、泣沢の神社を怨むる歌なり」といふ。 日本紀を案ふるに、曰はく、「十年丙申の秋の七月辛丑の朔の庚戌に、後皇子尊薨ず」といふ。
「神社」の読みは「もり」。

本記事は、極めて長文である [nouse: 大野晋・丸谷才一『日本語で一番大切なもの』引用文索引] (2008年3月1日[土]) から同一引用文に係る項目を分離独立させたもので、内容に実質的な変化はない。

|
|

« 宮柱したつ磐根にしきたてて露もくもらぬ日のみかげかな | トップページ | み吉野の吉野の山の春がすみ立つを見る見るなほ雪ぞ降る »

『日本語で一番大事なもの』」カテゴリの記事

日本語/和文」カテゴリの記事

詩/文藝」カテゴリの記事

読み物・書き物・刷り物」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/40172/40554125

この記事へのトラックバック一覧です: み雪降る冬の林に飄風かもい巻き渡ると思ふまで:

« 宮柱したつ磐根にしきたてて露もくもらぬ日のみかげかな | トップページ | み吉野の吉野の山の春がすみ立つを見る見るなほ雪ぞ降る »