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君によりことの繁きをふるさとの明日香の川にみそぎしにゆく

作者:八代女王(やしろのおほきみ) 出典:[万葉集4]626/629
中公文庫版『日本語で一番大切なもの』p.340

接続助詞「を」の用例。丸谷才一の解は「あなたのせいで評判がいろいろ立つので、それで明日香の川に、それを払うためみそぎしに行く」。しかし、「君により」を「あなたのせいで」とするのは疑問 (まぁ、一般的な読み方らしいが)。そう解釈してしまうと、「明日香の川にみそぎしにゆく」との繋がりが分からなくなる。

「きみにより」は「あなたをお慕いしたので」、或いは、更に踏み込むなら「あなたにすっかりお縋りしたことで」とすべきではないか。私なりの解を付けておく:「あなたにすっかりお縋りしたことで、噂が喧しくなりました。かっての都にある明日香川に禊に参ります」

参考 (『万葉集』中の「君により」、「妹により」):
秋の田の穂向きの寄れる片寄りに君に寄りなな言痛くありとも (但馬皇女 [万葉集2]114)
今さらに何をか思はむうち靡き心は君に寄りにしものを (安倍女郎 [万葉集4]505/508)
梓弓末はし知らずしかれどもまさかは君に寄りにしものを (作者不詳 [万葉集巻12]2985/2997)
梓弓末のたづきは知らねども心は君に寄りにしものを (作者不詳 [万葉集巻12]/2998)
我が身こそ関山越えてここにあらめ心は妹に寄りにしものを (中臣朝臣宅守 [万葉集15]3757/3779)

本記事は、極めて長文である [nouse: 大野晋・丸谷才一『日本語で一番大切なもの』引用文索引] (2008年3月1日[土]) から同一引用文に係る項目を分離独立させたもので、内容に実質的な変化はない。

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