« マウス右クリック・メニュー (コンテキスト・メニュー) にファイルの「フォルダーへコピー」又は「フォルダーへ移動」を追加した場合の注意点 | トップページ | 英語版ウィキペディア "Sagnac effect" 訳文 »

[nouse: マルトデキストリンの構造式?] 補足

英語版ウィキペディア「デキストリン構造式」
デキストリン (dextrin) にしろ、マルトデキストリン (maltodextrin) にしろ、その「構造式」に拘っても仕方がないと思うのだが (今の文脈では、「シクロデキストリン (cyclodextrin)」は、考慮していない)、乗りかかった船 ([nouse: マルトデキストリンの構造式?] 2007年7月8日 [日]) なので、補足しておく。

実は、デキストリンの「構造式」なるものは、英語版ウィキペディア (上図) とドイツ語版ウィキペディア (下図) とに掲げられている。

ただし、見て分かる通り、英語版ウィキペディアの方は、ブドウ糖/デキストロース/グルコース (glucose) 3分子が重合した例であり、一般形ではない。

ドイツ語版ウィキペディア「デキストリン構造式」

これに対し、ドイツ語版ウィキペディアの方は、不特定数 (n 個) のブドウ糖が 1 → 4 α D グルコシド結合した (直鎖) 重合体を表わしてはいる。勿論「(直鎖) デンプン分子と何処か違うのだ」と云うツッコミは簡単に入れられる訣だが、かと言って、デンプンとデキストリンとの境をなす厳格な n の値など誰も入れられるものもあるまい。

結局のところ、米国食品安全局 (US Food and Drug Administration) による連邦規則第21編第1章 (食品安全局) B (人間用の食品-承前) 第184部 (概ね安全であることが確認されている直接的食品成分) 第184.1444章 マルトデキストリン (Maltodextrin) にあるように、

(a) Maltodextrin ((C6H10O5)n, CAS Reg. No. 9050-36-6) is a nonsweet nutritive saccharide polymer that consists of D-glucose units linked primarily by [alpha]-1-4 bonds and that has a dextrose equivalent (D.E.) of less than 20. It is prepared as a white powder or concentrated solution by partial hydrolysis of corn starch, potato starch, or rice starch with safe and suitable acids and enzymes.
--FDA > CDRH > CFR Title 21 Database Search

(a) マルトデキストリン ((C6H10O5)n CAS 登録番号 9050-36-6) は、主として α-1-4 結合により結びついた D-グルコースを単位とする重合体であって、且つ、デキストロース当量 (D.E.) が20未満であるような甘味性のない食用の糖質を言う。マルトデキストリンは、コーンスターチ、ジャガイモ・デンプン、米デンプンを安全性のある適宜の酸や酵素で部分的に加水分解することで調製される白色の粉体又は高濃度の液体である。

とするのが、穏当なところだろう (なお、ヨーロッパ産のマルトデキストリンの原料は、通常小麦デンプンが使われる。このため、製品にグルテンが残る可能性があるので、自己免疫疾患 「セリアック病」患者及び関係者は注意しなければならない-英語版ウィキペディアによる)。

ただ、一応指摘しておくと、FDA 規則の示す (C6H10O5)n と、ウィキペディアの構造式は、原子数が一致しない。例えば、n=2 とすると、C12H20O10 となって、麦芽糖の C12H22O11 とは食い違う。構造式を論ずる以上、これは「極端な例」とは言えないだろう。第一「マルトデキストリン」の「マルト」の由来は「麦芽 (モルト)」である。

なぜこのようなことが起こるのかと言うと、FDA 規則の方は、グルコシド結合で弾き出される水酸基・水素基を、単純にグルコース1分子当たり水分子1個分と勘定しているだけで、グルコシド結合を起こさない両端の 1 及び 4 部位を考慮していないからだ。正確にはn個のグルコースが結合したデキストリンでは、(n-1) 個の水分子に相当する要素を減らす必要がある。これは、所謂「植木算」だ。(私は、上記のFDA 規則を最初に読んだ時、「アメリカ人は植木算を学校で教えないのかね」と思ってしまった。) もっとも、ネットを探してみたが、OH-(C6H10O5)n-H などと云うような記法は見つからなかったが...

ついでに書いておくと、以前英文版ウィキペディアで引用されていた FDA 規則の条文を、或るオッチョコチョイが「著作権のあるテキスト(copyrighted text) だから」と云う理屈で削除して、その元のテキストだと云う食品添加物オンライン・データベースへの外部リンクに切り替えてしまった(15:12, 6 August 2007)。米国連邦法規が、基本的には著作権の対象にならない (米国著作権法第105条) ことは、著作権に関する知識のイロハである。(法規を著作権からの除外しない場合に予想される社会的混乱を考えれば、こうした例外規定は、米国に限るようなものではないことが分かるだろう。例えば、日本では著作権法第13条参照。)しかも、問題の FDA 規則を読めば、冒頭に連邦規則だと明記してあるし、外部リンクを張ったデータベースの構成も、問題のウェブページが連邦規則を転記したものであることが分かるようになっている。

|
|

« マウス右クリック・メニュー (コンテキスト・メニュー) にファイルの「フォルダーへコピー」又は「フォルダーへ移動」を追加した場合の注意点 | トップページ | 英語版ウィキペディア "Sagnac effect" 訳文 »

どうでもいいこと」カテゴリの記事

化学」カテゴリの記事

大きなお世話」カテゴリの記事

食い物・飲み物」カテゴリの記事

コメント

ゆきこ様。コメント戴いていたことを失念していました。申しわけない。

既に解決済みかとは思いますが、一応御返答いたします。といっても、私も、別段、詳しいことは知らないのですが。

極めて初歩的なことから書いてしまいますが、デキストリンは単糖の一種であるブドウ糖の重合体です。

ブドウ糖が、「グルコース」(glucose) とも、「デキストロース」(dextrose) とも呼ばれることがあるのはご存じでしょう。

イメージとしては、ブドウ糖が2個繋がったのが麦芽糖 (マルトース/maltose)、3個繋がったのがマルトトリオースです。

デンプンもブドウ糖の重合体ですが、ブドウ糖が2個とか3個とかではなく、可成多く繋がっていて所謂高分子になっています。言ってみれば「ブドウ糖ポリマー」ですね。しかし、ブドウ糖の重合度が幾つ以上になるとデンプンと呼ばれるかという定義を私は聞いたことがありません。

私なりの理解を言うなら、「デンプンとは、ブドウ糖ポリマーであって、天然の穀物等 (芋類、豆類、トウモロコシ、米、麦、片栗・・・) から抽出されるもの、或いは、その化学的な同等物」ぐらいになります。その由来からして、デンプンは重合度の異なるブドウ糖ポリマーの混合物なので、「重合度が幾つ以上ならデンプンである」と云う規定の仕方は意味がないだろうと思います。

デキストリンもブドウ糖の重合体ですが、デンプンよりは重合度が低い範囲をカバーする概念です。この場合も、様ざまな重合度の重合体の混合物ですから、重合度の細かい数値を問題にしてもあまり意味がないでしょうね。それよりも、ブドウ糖には還元性があるのに対し (麦芽糖やマルトトリオースにも還元力はありますが、それは脇に置いておいて)、デンプンには還元性が認められないことから、還元力を測って、それがブドウ糖 (デキストロース) に換算するとどの程度になるかをもって、総体として、デンプンからどの程度重合度が下がっているから見るようです。それをデキストロース当量 (Dextrose Equivalent = DE) とかブドウ糖当量とか呼んでいます。

しかし、化学上の概念としては、デキストリンとは、ブドウ糖のそれほど大きくない重合体のことを意味するだけなので、理念上は、それを得るのに、デンプンを分解しなくてもよいのです。それが工業上意味があるかどうかは別として、逆にブドウ糖をモノマーとして合成しても、出来たものはデキストリンと言えます。

これに対し、「マルトデキストリン」とは、デンプンを分解して製造したデキストリンを意味します。マルト (= モルト) とは麦芽のことで、「マルトデキストリン」と云う呼称も、おそらく元々は、麦芽に多く含まれいてるデキストリンを意味しているのでしょう。

麦芽が出来る際には、つまり大麦の種子が発芽する際には、種子中で、糖化酵素が活性化して、デンプンに働き、麦芽糖を多く含む分解物を作り出します。同様なことを、大麦由来のものに限らずデンプンに対して行って、工業的に製造したデキストリンを、食品添加物等として販売しているのが、普通の意味での「マルトデキストリン」と云う訣です。

もっもと、呼称と云うのはしばしば微妙で、現実として入手されるデキストリンは、デンプンを分解して得られたものしかないことから、「デキストリン」をデンプンの分解物としてのみ説明し、それに対し「マルトデキストリン」は食品添加物として利用される場合の呼び方として説明する流儀もあるようですね (私は、あまり感心しない)。

ただ、もう一つ注意すべきなのは、デンプンを分解するのに酵素を用いるのではなく、酸性条件下で過熱するすると云う方法があるのです。と言うか、工業的には、こちらの方が採用されているのではないか。実は、このようにして製造されたデキストリンを、特に「焙焼デキストリン」あるいは「ピロデキストリン」(pyrodextrin) と呼ぶことがあります。更に、マルトデキストリンを酵素分解産生物に限定して、それをピロデキストリンと対概念にする立場もあって、確かに、その方が呼称と内容とが一致します。

次に、「分岐デキストリン」ですが、デキストリンの製造方法とは無関係でしょうね。デキストリンはブドウ糖の重合体ですが、その繋がり方が、一本の線になっているか、途中で枝分かれしているかで、夫々、「直鎖デキストリン」 (linear dextrin)、「分岐デキストリン」(branched dextrin) と呼ぶのです。つまり、分岐デキストリンと対概念をなすのは直鎖デキストリンと云うことになります。

デンプンでも、似たことがあって、デンプン分子が、直鎖状に並んだブドウ糖の繋がりからなる時は、アミロースと呼ばれ、分岐している時はアミロペクチンと呼ばれています。

ちなみに、デンプン分子の環状に繋がったデキストリンも存在して、それはシクロデキストリン (cyclodextrin) と呼ばれいてます。

だから、「マルトデキストリンと分岐デキストリンはどう違うか」と云うことだけなら、別範疇に属するので、比較が無意味な位違っていると云うのが答えになるでしょう (「マルトデキストリンとピロデキストリンとはどう違うか 」とか「分岐デキストリンと直鎖デキストリンととどう違うか」なら良かったのですが)。

投稿: ゑびすや | 2010年1月17日 (日) 02:43

よろしければ教えていただきたいのですが、マルトデキストリンと分岐デキストリンはどのようにちがうのでしょうか?

投稿: ゆきこ | 2010年1月13日 (水) 15:01

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/40172/16065901

この記事へのトラックバック一覧です: [nouse: マルトデキストリンの構造式?] 補足:

« マウス右クリック・メニュー (コンテキスト・メニュー) にファイルの「フォルダーへコピー」又は「フォルダーへ移動」を追加した場合の注意点 | トップページ | 英語版ウィキペディア "Sagnac effect" 訳文 »