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2007年8月の8件の記事

[nouse: マルトデキストリンの構造式?] 補足

英語版ウィキペディア「デキストリン構造式」
デキストリン (dextrin) にしろ、マルトデキストリン (maltodextrin) にしろ、その「構造式」に拘っても仕方がないと思うのだが (今の文脈では、「シクロデキストリン (cyclodextrin)」は、考慮していない)、乗りかかった船 ([nouse: マルトデキストリンの構造式?] 2007年7月8日 [日]) なので、補足しておく。

実は、デキストリンの「構造式」なるものは、英語版ウィキペディア (上図) とドイツ語版ウィキペディア (下図) とに掲げられている。

ただし、見て分かる通り、英語版ウィキペディアの方は、ブドウ糖/デキストロース/グルコース (glucose) 3分子が重合した例であり、一般形ではない。

ドイツ語版ウィキペディア「デキストリン構造式」

これに対し、ドイツ語版ウィキペディアの方は、不特定数 (n 個) のブドウ糖が 1 → 4 α D グルコシド結合した (直鎖) 重合体を表わしてはいる。勿論「(直鎖) デンプン分子と何処か違うのだ」と云うツッコミは簡単に入れられる訣だが、かと言って、デンプンとデキストリンとの境をなす厳格な n の値など誰も入れられるものもあるまい。

結局のところ、米国食品安全局 (US Food and Drug Administration) による連邦規則第21編第1章 (食品安全局) B (人間用の食品-承前) 第184部 (概ね安全であることが確認されている直接的食品成分) 第184.1444章 マルトデキストリン (Maltodextrin) にあるように、

(a) Maltodextrin ((C6H10O5)n, CAS Reg. No. 9050-36-6) is a nonsweet nutritive saccharide polymer that consists of D-glucose units linked primarily by [alpha]-1-4 bonds and that has a dextrose equivalent (D.E.) of less than 20. It is prepared as a white powder or concentrated solution by partial hydrolysis of corn starch, potato starch, or rice starch with safe and suitable acids and enzymes.
--FDA > CDRH > CFR Title 21 Database Search

(a) マルトデキストリン ((C6H10O5)n CAS 登録番号 9050-36-6) は、主として α-1-4 結合により結びついた D-グルコースを単位とする重合体であって、且つ、デキストロース当量 (D.E.) が20未満であるような甘味性のない食用の糖質を言う。マルトデキストリンは、コーンスターチ、ジャガイモ・デンプン、米デンプンを安全性のある適宜の酸や酵素で部分的に加水分解することで調製される白色の粉体又は高濃度の液体である。

とするのが、穏当なところだろう (なお、ヨーロッパ産のマルトデキストリンの原料は、通常小麦デンプンが使われる。このため、製品にグルテンが残る可能性があるので、自己免疫疾患 「セリアック病」患者及び関係者は注意しなければならない-英語版ウィキペディアによる)。

ただ、一応指摘しておくと、FDA 規則の示す (C6H10O5)n と、ウィキペディアの構造式は、原子数が一致しない。例えば、n=2 とすると、C12H20O10 となって、麦芽糖の C12H22O11 とは食い違う。構造式を論ずる以上、これは「極端な例」とは言えないだろう。第一「マルトデキストリン」の「マルト」の由来は「麦芽 (モルト)」である。

なぜこのようなことが起こるのかと言うと、FDA 規則の方は、グルコシド結合で弾き出される水酸基・水素基を、単純にグルコース1分子当たり水分子1個分と勘定しているだけで、グルコシド結合を起こさない両端の 1 及び 4 部位を考慮していないからだ。正確にはn個のグルコースが結合したデキストリンでは、(n-1) 個の水分子に相当する要素を減らす必要がある。これは、所謂「植木算」だ。(私は、上記のFDA 規則を最初に読んだ時、「アメリカ人は植木算を学校で教えないのかね」と思ってしまった。) もっとも、ネットを探してみたが、OH-(C6H10O5)n-H などと云うような記法は見つからなかったが...

ついでに書いておくと、以前英文版ウィキペディアで引用されていた FDA 規則の条文を、或るオッチョコチョイが「著作権のあるテキスト(copyrighted text) だから」と云う理屈で削除して、その元のテキストだと云う食品添加物オンライン・データベースへの外部リンクに切り替えてしまった(15:12, 6 August 2007)。米国連邦法規が、基本的には著作権の対象にならない (米国著作権法第105条) ことは、著作権に関する知識のイロハである。(法規を著作権からの除外しない場合に予想される社会的混乱を考えれば、こうした例外規定は、米国に限るようなものではないことが分かるだろう。例えば、日本では著作権法第13条参照。)しかも、問題の FDA 規則を読めば、冒頭に連邦規則だと明記してあるし、外部リンクを張ったデータベースの構成も、問題のウェブページが連邦規則を転記したものであることが分かるようになっている。

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マウス右クリック・メニュー (コンテキスト・メニュー) にファイルの「フォルダーへコピー」又は「フォルダーへ移動」を追加した場合の注意点

ネット上で、Windows の「便利なカスタマイズ」として、レジストリを編集して、ファイルをマウス右クリックした際に現われるメニュー (コンテキスト・メニュー) に、そのファイルを所望のフォルダーへコピーしたり(「フォルダーへコピー」)、移動したり (「フォルダーへ移動」) するための項目を追加する手順が説明されている例がある。

Windows の利用形態には個人差があるだろうから、それにもよるだろうが、基本的に便利な機能であるには違いない。

しかし、このカスタマイズには「副作用」があるようだ。

少なくとも、私が試しに導入してみた例ではそうだった。

そうでないカスタマイズ法もあるのかもしれないが、私が経験した場合を説明すると、こうした右クリックメニュー追加後に、スタートメニューから降りて行って或るフォルダー (私は、良く使うフォルダーをスタートメニューに入れてある) をダブルクリックなり、右クリック・メニューなりで開こうとすると、フォルダが開かず、その代わりに「項目の移動」や「項目のコピー」のダイアログがでてきてしまうのだ (それらをキャンセルすると、ようやく目的のフォルダが開く)。

まぁ、異常が起こるのは、スタートメニューに「フォルダ」として登録されている場合で、フォルダへの「ショートカット」として登録されている場合は、素直に目的のフォルダが開いたりするのだが、予備知識無しに (私がそうだった) こうした現象に出会うと、やや戸惑う。そして、毎度そうなるので、戸惑いが無くなった後でも、煩わしさは残る(「ショートカットとして登録すれば良い」と言われそうだが、「そう云う問題ではない」と言い返したい気がする)。

この現象は、該当するレジストリ・キーを削除したところ消滅した。

そして、改めて、何が起こったのか調べてみると、現象自体への言及がなかなか見つからなかったりするのだ。

しかし「灯台下暗し」。私は見過ごしていたのだが (インストールしただけで、あまり使っていなかった) [窓の手 2004 for WindowsXP] の [右クリック] タブに、このメニュー追加の項目があって、そこには既に「スタートボタン → プログラム → 任意のフォルダを開くを選択する際にも、コピー又は移動のダイアログが表示されてしまう等の副作用があります」と注意書がしてあった。

これらは、みなレジストリに同一の変更を加えることで、同一の目的を達成していると筈なのだが、「副作用」に就いて指摘してあるのは、私が知る限り、[窓の手] のみである。

「戸惑っている」かもしれない人のために、ここに書き留めておく。

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"Inkscape tutorial: Tracing" 訳文 (再編集簡約版)

以下は、[nouse: "Inkscape tutorial: Tracing" 訳文] (2007年8月 1日 [水]) から、原英文を除去し、[訳註] も最小限にまで減らした (そのため、明示せずに訳者補綴を本文に織り込んだ部分や、ミセケチを実際に削除したところもある) ものである。


Inkscape 教程:トレース

Inkscape の特徴の一つは、ビットマップ・イメージをトレースして、SVG 描画用の <経路>要素にできることである。この短い文章は、読者がトレース機能を習得するのを助けるべく書かれたものである。

[[訳註:この翻訳文では、"path" は「経路」と訳されているが、"Inkscape for Windows" では「パス」となっている。]]

現在、Inkscape は、ピーター・セリンジャー (Peter Selinger) によるビットマップ・トレース・エンジンである「ポットレース (Potrace)」(potrace.sourceforge.net) を採用している。Inkscape は、将来、別のトレース・プログラムも利用できるようになると思われるが、現在のところは、この優れたツールは、我我の必要を補って余りあるものである。

トレース機能の目的は、元の画像の正確な複製を作り出すことにはないことに留意しておいていただきたい。それは、完成した製品を作り出すためのものでもない。如何なる自動的なトレース・プログラムにも、そのようなことは不可能である。トレース・プログラムから得られるのは、描画の際の資源として利用可能な、一まとまりの曲線なのである。

Potrace は、白黒2値のビットマップを解釈して、一まとまりの曲線を生成する。そうした Potrace のために、現在のところ、Inkscape には、3種類の入力フィルターが備えられていて、生の画像を Potrace が処理可能な形に変換している。

一般に、中間生成ビットマップにおいて、黒ピクセルが多い方が、Potrace は、多くのトレースを行なう。トレース量が増加すると、必要な CPU 時間が増大し、<経路>要素が、非常に大きくなる。まず明るめの中間生成画像で試しにトレースを行なってみた後、出力される経路の割合及び細かさが所要のものとなるまで、少しづつ暗くしていくことをお薦めする。

トレース・プログラムを利用するには、画像をロード又はインポートし、選択してから、項目 経路 > ビットマップをトレース を選択するか、Shift+Alt+B を押せば良い。

[[訳註:原英文で表示されているダイアログの画像は、英語版 Inkscape (恐らく古いヴァージョン) から得られたものであるので、(私が持っている) "Inkscape for Windows" で対応する「タブ」のキャプチャ画像で差し替えた。]]

An example image

見ての通り、3種類のフィルター・オプションが利用可能である:



  • 明度の閾値 [[訳註:"Inkscape for Windows" では、「明るさの境界」が対応すると思われる。]]

このフィルターでは、単にピクセルの赤色・緑色・青色の和 (つまり「階調」) でもって、そのピクセルを黒と認定すべきか、白と認定すべきかの指標とするものである。その閾値は、0.0 (黒) から 1.0 (白) までが設定できる。閾値設定を高くすれば、「白」と認定されるピクセルの数は少なくなり、中間生成画像は暗くなる。

An example image



  • 最適化エッジ検出 [[訳註:"Inkscape for Windows" では、「エッジ検出」が対応すると思われる。]]

このフィルターでは、J. キャニー (J. Canny) が考案したエッジ検出アルゴリズムを、類似コントラストの等傾線を迅速に発見する手段として採用している。これにより得られる中間生成ビットマップは、「明度の閾値」処理により得られる中間生成ビットマップと比べると、元の画像に似ていないが、他の方法では無視されがちな曲線情報が得られる可能性が高い。このフィルターでの閾値設定 (0.0 – 1.0) に従って、コントラスト・エッジに隣接するピクセルを出力中に含めるかどうかと云う調整が明度の閾値に対して行なわれる。この設定をするなら、出力におけるエッジの「濃さ」つまり太さが調整される。

An example image



  • 色の量子化

このフィルターの出力結果の中間生成画像は、上記の2つのフィルターのものとは非常に異なっているものの、実際非常に有用である。明度又はコントラストの等傾線を示す代わりに、このフィルターは、明度やコントラストが等しい場合であっても、色が変化するエッジを探し出す。このフィルターで設定されるのは、もし中間生成ビットマップに色を付けたとしたのなら何種類の色が出力されることになるのかを示す「色数」である。その上で、その色の指数が奇数であるか偶数であるかに応じて黒か白かが決定される。

An example image

3種類のフィルターを全て試してみて、様ざまな入力画像に対し、様ざまな種類の出力が得られることを見られたい。他のフィルターに比べて、あるフィルターが最も良く働くと云う画像が必ずあるであろう。

トレース作成後、出力された経路に対し 経路 > 簡略化 (Ctrl+L) を適用してみて、ノード数を減らすこともお薦めする。それにより、Potrace の出力は、非常に編集しやすいものになりうる。例えば、下図は「老いたるギター弾き」(パブロ・ピカソ 1903/1904年) をトレースしたものの典型例である:

An example image

膨大な数のノードが経路中にあることに注意されたい[[訳註:この訳文中の図面ではノードは表示されない]]。Ctrl+L を打った後の典型的な結果は、以下のようになる:

An example image

表示は、幾らか近似的で粗くなっているが、描画は大幅に単純化されて、編集がしやすくなっている。必要なのは、正確な画像の実現ではなく、描画を行なう際に利用できる一まとまりの曲線だと云うことを心に留意していただきたい。

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"Inkscape tutorial:Shapes" 訳文 (再編集簡約版)

以下は、[nouse: "Inkscape tutorial:Shapes" 訳文] (2007年7月31日 [火]) から、原英文を除去し、[訳註] も最小限にまで減らした (そのため、明示せずに訳者補綴を本文に織り込んだ部分や、ミセケチを実際に削除したところもある) ものである。


Inkscape tutorial:Shapes

本教程では、「矩形」と「楕円」と「星形」と「螺旋」との4種類の造形ツールを扱う。以下、Inkscape の造形機能を実際に見ていただき、それらが、どのような場合に、どのようにして、使いうるものなのかと云う実例を示す。


Inkscape には、4つの多機能造形ツールがあるが、それぞれが固有の種類の図形を担当して作成・編集する。図形は、ドラッグ可能なハンドルと、図形の外観を決定する数値パラメータとを用いて、その図形の種類に特有な方法で修正することができるオブジェクトである。

例えば、星形では、その芒の数、長さ、角度、丸め等を変えることができるが、それでも星形は星形のままである。図形は、単なる経路よりも「自由度に低い」が、ヨリ面白く有用であることが多い。図形は常に経路へと変換可能であるが (Ctrl+Shift+C)、その逆変換は不可能である。

Inkscape の造形ツールは、矩形楕円星形螺旋の4種類である。まず、造形ツールの一般的な働き方を見ることにしよう。次いで、それぞれの種類の図形に就いて詳細に述べることにする。


一般的事項

新規の図形は、対応するツールでキャンバス上を ドラッグ することで作成される。図形が作成されると (そして、選択されている間は)、そこには白抜きの小さい矩形のハンドルが表示されているので、そのまま、こうしたハンドルをドラッグして、作成された図形の編集が可能である。

4種類の図形どれを、4種類の造形ツール又はノード・ツール (F2) のどれで見ても、そのハンドルが表示される。マウスポインタをハンドル上にかさねると、そのハンドルを単純にドラッグしたり、或いは様ざまな修飾キー (Shift, Ctrl, Alt) を押した状態でそのハンドルをドラッグ又はクリックすると何が起こるのかが、ステータスバーに表示される。

また、各造形ツールのパラメータが、(キャンバス上方に横方向に伸びている) ツール制御バーに表示される。通常、そこには数値入力フィールドと、そうした数値をデフォルト値にリセットするボタンが並んでいる。その時点で使われているツールの本来の対象図形が選択されている場合には、ツール制御バー中の数値を編集すると、選択されている図形が変化する。

ツール制御バーでの変化は全て記憶され、そのツールで描画される次のオブジェクトに適用される。例えば、星形の芒数を変えると、その後、新規に描画される星形は、やはりこの芒数になる。更に、単に或る図形を選択しただけでも、そのパラメータがツール制御バーに送られるため、新規に作成される同一種の図形のパラメータは、そのように設定されることになる。

造形ツール利用中は、オブジェクトの選択は、そのオブジェクトを クリック すれば行なえる。Ctrl+クリック (グループ内部でのオブジェクト選択) 及び Alt+クリック (背面にあるオブジェクトの選択) も、セレクタ・ツールにおけるのと同様に行なえる。Esc キーを押すと、選択が解除される。

[[訳註:少なくとも私が使っている "Inkscape for Windows" では、グループ内部のオブジェクトを、造形ツール (どの造形ツールでもかまわない) で クリック しても Ctrl+クリック しても、同じくそのオブジェクトだけが選択される。つまり、Ctrl+クリック に独立した意味はないようだ。この点は、クリック ではグループ全体が選択され、Ctrl+クリック ではポイントされたオブジェクトのみが選択されるセレクタと異なっている。]]


矩形

矩形は、デザイン及びイラストレーションにおいて、最も単純であり、かつ恐らく最も有りがちな図形である。Inkscape では、矩形の作成・編集をできる限り容易且つ便利に行なえるように努められている。

矩形ツールへの切り替えは、F4 を押したり、ツールバーの矩形ツール・ボタンをクリックすると行なわれる。

An example image

矩形描画用ショートカット:

  • Ctrl が押されていると、正方形か、縦横長が整数比 (2:1, 3:1 等) の長方形が描かれる。
  • Shift が押されていると、ドラッグし始めた点を中心として矩形を描画する。

実例を見れば分かるように、選択されている矩形 (描画されたばかりの矩形は必ず選択されている) は、その3つの角に3個のハンドルが表示されている。実際には、ハンドルは4つあるのだが、矩形が丸められていない限り、その内の2個は (右上の角で) 重なっているのである。これらの2個のハンドルは、丸めハンドルであり、他の2個 (左上と右下) はサイズ変更ハンドルである。

まず、丸めハンドルを見てみよう。丸めハンドルの一方を下方へドラッグすると、矩形の4つの角の全てが丸められ、2つ目の丸めハンドル (角にある当初の位置に留まっている) が見えるようになる。角を(真)円形に丸めたいのなら、すべきことはこれだけで良い。もし、角の一方の辺での丸めの方が他方の辺での丸めより強いようにしたいなら、2番目のハンドルを左側に移動させれば良い。

下図では、左の2つの矩形の角に(真)円形丸めが付けられており、残りの2つの矩形の角には、角に楕円丸めが付けられている。

An example image

大抵の場合、作図全体を通じて、矩形の寸法が色色あったとしても、丸めが付けられている角の半径及び形状は一定でなければならない (さまざまな大きさの丸めが付いたボックスからなる図表を考えてみていただきたい)。Inkscape では、これが簡単にできる。セレクタ・ツールに切り替えると、そのツール制御バー右端には4つのトグル・ボタンからなる一画があるが、そのうちの左から2番目は、2個の同心的な丸めが付いた角が示されている。これが、矩形が拡大・縮小された際に丸め付き角を拡大・縮小するかどうかを決めるボタンである。

例えば、下図は、本来の赤い矩形を複製し、「丸め付き角も拡大・縮小」ボタンを押さずに、様ざまな縦横比で、何度か拡大及び縮小して作ったものである。

An example image

全ての矩形で、丸め付き角の寸法及び形状が同一であるため、それらが集まる右上角では、丸めが正確に一致することに注意されたい。全ての青い破線矩形は、元の赤い矩形を、丸めハンドルの再調整を全くしないまま、セレクタにより拡大・縮小して得られたものである。

比較のため、下に、構成は同一であるが、「丸め付き角も拡大・縮小」ボタンを押して作成したものを示す。

An example image

矩形が異なると、その丸め付き角も異なっていることと、右上角で、僅かにズレが生じていることに注意されたい。これと (視覚的に) 同じことが、元の矩形を経路変換し (Ctrl+Shift+C)、経路として拡大・縮小した時にも起こる。

以下は、矩形の丸めハンドルに対するショートカットである:

  • Ctrl を押しながらドラッグすると、他方の半径が同一になる (丸めが真円形になる)。
  • Ctrl+クリック すると、ドラッグしなくても、他方の半径が同一になる。
  • Shift+クリック では、丸めが除去される。

気が付かれているかもしれないが、矩形ツール制御バーには、選択されている矩形の水平方向丸め半径 (Rx) 及び垂直方向丸め半径 (Ry) が表示されており、任意の長さ単位を使って、その値を正確に指定できる。丸めなしボタンは、その名の通り、選択されている矩形 (複数可) から丸めを除去する。

こうした制御手段の重要な利点は、多数の矩形を一度に扱えると云うことである。例えば、レイヤ中の全ての矩形を変更したい場合、Ctrl+A (全て選択) してから、制御バー中の所要のパラメータを設定しさえすればよい。矩形でないオブジェクトが選択されていても、それらは無視され、矩形のみが変化する。

次は、矩形の寸法変更ハンドルである。セレクタでも矩形の寸法変更が可能なのに、そのようなことをする必要が一体あるのかと思われる方がいるかもしれない。

セレクタの問題点は、「水平」及び「垂直」と云う方向の概念が、常に文書のページに対するものであることなのである。これに対し、矩形の寸法変更ハンドルでは、矩形が回転していたり、歪んでいたりしても、その矩形の辺に沿って拡大・縮小が行なわれる。

An example image

寸法変更ハンドルは2個あるので、矩形は如何なる方向にでも、寸法変更が可能である (寸法変更ハンドルは、矩形の辺に沿う方向でさえも動かすことができる)。方向ハンドルを動かしても、丸め半径は維持される。

[[訳註:後の方のセンテンスには、補足が必要だろう。寸法変更ハンドルが、丸めハンドルに接近しすぎると (つまり、どちらかの辺の長さを狭めすぎると)、丸め半径は維持しきれなくなって、減少する。あたかも、丸めハンドルが、寸法変更ハンドルにより押し退かされるようにして、動くのである。]]

以下は、寸法変更ハンドルに対するショートカットである。

  • Ctrl を押したままドラッグすると、寸法変更ハンドルのドラッグ方向が、矩形の辺方向又は対角線方向に仮止めされる。つまり、Ctrl が押されていると、矩形の幅、高さ、縦横比 (この場合も、回転又は歪んでいることがありうる独自の座標系においての話である) のうちの何れかが維持される。

以下に、上に示したのと同じ矩形に加えて、Ctrl を押しながらドラッグするとハンドルが貼りつく方向を破線で示した図である。

An example image

矩形を平行四辺形に潰したり、回転させたりしてから、複製し、寸法変更ハンドルで寸法を変更することで、立体的な構成を容易に形成することができる:

An example image

更に、下図は、丸め及びグラデーション付き塗り潰しをした矩形構成の例である:

An example image


楕円

楕円ツール (F5) では、楕円と円とを作成することができる。また、こうした楕円と円からは、扇形や弧を作ることができる。描画におけるショートカットは、矩形ツールの時と同様:

  • Ctrl が押されていると、円か、整数比 (2:1, 3:1 等) の楕円が描かれる。
  • Shift が押されていると、ドラッグし始めた点を中心として描画する。

楕円のハンドルに就いて説明しよう。

An example image

楕円を選択すると、矩形の場合と同じように、当初は3個のハンドルが見えるが、実際にはハンドルは4個ある。右端に現われるハンドルは、楕円を「開く」ための2個のハンドルが重なっているのである。そうした右端に現われるハンドルをドラッグしてから、その下から現われるの他方のハンドルをドラッグすると、円グラフで見られるような扇形や、あるいは弧が色色作られる。

An example image

扇形 (弧と2本の半径) にするには、楕円の外側をドラッグすれば良い。にするには、楕円の内側をドラッグすれば良い。上図には、左半分に4個の扇形があり、右半分には3個の弧がある。弧は図形として閉ぢていない、つまり、運筆は楕円に沿って進んでいるだけで、弧の両端間の「弦」部分には存在しないことに、注意されたい。このことは、塗り潰しを除去して運筆だけを残すと、良くわかる:

An example image

上図の左側は、狭い扇形があつまって正に扇子のようになっている部分に注意されたい。これは、Ctrl を押すことで、ハンドルを一定角刻みで仮止めすれば簡単に作成できる。以下は、弧/扇形ハンドル用のショートカットである:

  • Ctrl が押された状態でドラッグすると、ハンドルが15度刻みで仮止めされる。
  • Shift+クリック すると、楕円全体が現われる (弧で扇形でもなくなる)。

仮止めで刻まれる角度は、Inkscape の「ユーザー設定」(の刻み値タブ) において変更することが可能である。

[[訳註:この翻訳文では "Inkscape Preferences" は 「Inkscape の『ユーザー設定』」、"Steps" は「刻み値」と訳す。"Inkscape for Windows" では、それぞれ「Inkscape の設定」と「変化の間隔」となっているようだ。]]

楕円に付いている残りの2個のハンドルは、楕円の中心を基準とした寸法変更を行なうためのものである。これらのハンドルに対するショートカットは、矩形の場合と同様である:

  • Ctrl が押さた状態でドラッグすると、真円が描かれる (他方の径の長さが同じになる)。
  • Ctrl+クリック すると、ドラッグしなくても真円になる。

矩形寸法変更ハンドルにおけるのと同様、楕円での寸法変更ハンドルも、楕円の固有座標中で楕円の高さ及び幅の調整を行なっている。このことは、つまり、回転した、又は、歪んだ楕円であっても、その回転又は歪みを維持したままで、その本来の軸に沿って簡単に伸縮させることができると云うことである。

An example image


星形

星形は、Inkscape により作成される図形のなかで、最も複雑で最も刺激的である。もし友達から喝采を浴びたいのなら、星形ツールを使ってみることだ。際限なく愉しくて、本当にクセになる!

星形ツールは、似て非なる、星形と多角形と云う2種類のオブジェクトを形成する。星形は、その位置で、芒の長さと形状を規定する2個のハンドルを有するのに対し、多角形に付いているハンドルは、1個だけであり、それは単に、ドラッグされた際に多角形を回転及び寸法変更するためだけのものである。

An example image

星形ツールの制御バーで、先頭にあるのは、星形を対応する多角形に変えたり、その逆を行なったりするチェックボックスである。次にあるのは、星形又は多角形の頂点数を指定するための数値入力フィールドである。このパラメータは、制御バーにおいてのみ編集が可能である。数値の入力可能範囲は3 (当然だ) から1024までであるが、利用中のコンピュータが非力なものであるなら大きい数値 (例えば200以上とか) は試みない方が良いだろう。

新規の星形又は多角形を描画する際

  • Ctrl を押した状態でドラッグすると、15度刻みの角度で仮止めされる。

星形の方が、遥かに面白みのある図形であるのは自然なことだ (実際上は多角形の方が有用であるケースも多い)。星形の2個のハンドルは、僅かに異なる機能を有する。第1のハンドル (当初は、頂点、つまり星形の凸部をなす角にある) は、星の光芒を長くしたり短くしたりするためのものであって、これを (図形の中心に対して) 回転させると、他方のハンドルも対応して回転する。これは、つまり、このハンドルによっては星の光芒を歪ませることはできないと云うことである。

[[訳註:"rays" は「光芒」と訳しておく。"Inkscape for Windows" では「光線」と訳されいてるようだ。]]

これと対照的に、他方のハンドル (当初は、二つの頂点の間の凹部にある) は、頂点ハンドルに影響を及ぼすことなく、半径方向にも接線方向にも自由に動くことができる。(実際、このハンドルは、中心からの距離を頂点ハンドルより離れた所まで移動することで、その自身が頂点となることが可能である。) このハンドルでは、星形の尖端部を歪ませて、あらゆる種類の、結晶形、曼荼羅形、雪片形、ヤマアラシ形を作り出すことができる:

An example image

こうした装飾の一切ない只の規則的な星形が必要ならば、このハンドルが歪みを形成しないようにすることもできる:

  • Ctrl を押した状態でドラッグすると、星の光芒は厳密に半径方向に伸びる (歪みがなくなる)。
  • Ctrl+クリック すると、ドラッグしなくても歪みがなくなる。

キャンパス上のハンドルをドラッグする操作を補足してものとして、制御バーには、スポーク比入力フィールドがあって、2個のハンドルのそれぞれから中心への距離の比を指定することができ、有用である。

Inkscape が作成する星形には、まだ二つ「仕掛け」がある。幾何学上、多角形は、直線の縁とキチリと曲がる角とからなる生硬な形である。しかし、現実として、通常存在する「多角形」は、様ざまな程度に曲線的であったり、丸みを帯びていたりしているものだ。Inkscape も、そのようにできるのである。ただし、星形又は多角形に丸みを帯びさせるのは、矩形の場合と少し異なっており、そのための専用のハンドルは設けられておらず、

  • ハンドルを、接線方向に Shift+ドラッグ すると星形又は多角形に丸めが付き、
  • ハンドルを Shift+クリック すると、丸めが除去される。

ここで「接線方向」とは、中心への方向とは直交する方向のことである。Shift を押した状態でハンドルを、中心に対し反時計回りに「回転」させると、正の丸めが付き、時計周りに回転させると、負の丸めが付く。(負の丸めが付いている例は、後の図を参照されたい。)

下図は、丸めを付けた矩形 (矩形ツールで作成) と、丸めを付けた4辺多角形 (星形ツールで作成) とを比較したものである:

An example image

見て分かるように、丸めを付けた矩形にはその辺に直線部分があり、円形 (一般的には楕円形) の丸めが付いているのに対し、丸めの付いた多角形又は星形は、直線部分が全くなく、その曲率は、最大値 (角にある) から最小値 (角と角との中間にある) へと滑らかに変化している。Inkscape では、これが、図形の各ノードに共線的ベジエ接線を付加するだけで実現している (このことは、図形を経路に変換してからノード・ツールで見てみると分かる)。

[[訳註:"collinear Bezier tangents" は「共線的ベジエ接線」と訳しておく。]]

制御バー中に表示されていて、調整可能なパラメータである丸めは、こうした接線の長さと、接線に隣接する多角形/星形の辺の長さと比なのである。このパラメータは負の値を取りうるが、これは接線の方向が逆転していると云うことである。値が 約 0.2 乃至 0.4 であると、「通常」の丸めとして期待されるであろう種類のものが得られるが、その他の値では、「美しい」とか、「複雑な」とか、「全く思いもかけない」などのパターンを作り出す傾向がある。丸めの値が大きい星形は、ハンドルの位置を遥かに超えて延びることある。以下に、その例を示すが、それぞれに付いているのは丸めの値である:

An example image

星形で、突端は角立っているが凹部は滑らかにしたいとか、その逆の方が良いとか云う場合でも、その星形からオフセット (Ctrl+J) を作れば簡単にできる:

[[訳註:ショートカット Ctrl+J は、オフセットに対するのものではなくて、動的オフレットに対するものである。 また、下図は、そのキャプションに従う限り、単なるオフセットではなく連携オフセット (ショートカットは Ctrl+Alt+J) で作成されたものである。たしかに、連携オフセットでないと、自然には、このような図柄にはならないだろう。もっとも、既にビットマップ化されているので、このような穿鑿は余り意味を持たないが...]]

An example image

星形のハンドルを Shift+ドラッグ することは、人間が知る最高の娯楽の一つである。しかし、更に優れたものにすることができる。

実在の形状に一層似せるために、Inkscape は、その星形及び多角形をランダム化させる (無作為的に歪める) ことができる。僅かにランダム化することで、星形が規則性から逸脱し、ヨリ人間味があり、そして、しばしば滑稽なものになる。強いランダム化は、度外れて思いもかけない一連の形状を産み出して、ワクワクさせられる。丸められた星形は、ランダム化されても滑らかな丸めが付いている。以下は、そのショートカットである:

  • ハンドルを接線方向に Alt+ドラッグ すると、星形又は多角形はランダム化する。
  • Alt+クリック すると、ランダム化が除去される。

ハンドル位置とランダム化とが一対一に対応するため、星形をランダム化描画したり、そのハンドルをドラッグして編集する際には、図形が「震える」。だから、Alt を押さずにハンドルを動かすと、その図形は同じランダム化レベルで再ランダム化されていくが、Alt を押した状態でドラッグすると、ランダム化対象は同一に維持されるが、ランダム化レベルは調整される。下図は、パラメータが正確に同一であるが、それぞれハンドルを非常に僅かに動かして再ランダム化を行なっている星形である (ランダム化水準は、全て 0.1 である。)

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そして下図は、上に並んだ星形のうちの真中の星形を、ランダム化レベルを -0.2 から 0.2 に変化させてあるものである。

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[[訳註:直上の図中、右から2番目の星形が、一つ前の図の真中の星形に一致することに (なぜなら、「一つ前の図」は「ランダム化レベル 0.1」だから) に注意。 ]]

ランダム化された星形の応用は、読者自身が見いだされるであろうが、(原文)筆者の特別のお気に入りは、丸めの付いたアメーバ状の「染み」と、大きな惑星のゴツゴツした空想的な風景である。

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螺旋

Inkscape の螺旋は、星形のように人の心を奪うと云った所はないものの、多くの用途があり、極めて有用なことがある。螺旋は、星形と同様中心から描画されるが、描画中及び編集中ともに:

  • Ctrl+ドラッグ すると、15度刻みの角度で仮止めされる。

描画された螺旋には、その内端と外端との2個のハンドルがある。両ハンドルとも、ドラッグされるだけで、螺旋を巻いたり解いたりする (つまり、ドラッグし続けると、螺旋の巻き数を変える)。他のショートカットとしては:

外端のハンドルに対して:

  • Shift+ドラッグ すると、中心に対して拡大・縮小/回転が起こる (延伸/減縮は起こらない)。
  • Alt+ドラッグ すると、半径を固定して、延伸/縮減する。

内端のハンドルに対して:

  • 文書 (スクリーン) の縦方向に Alt+ドラッグ すると、巻き締まりが強くなったり/巻き締まりが緩くなったりする。
  • Alt+クリック すると、巻き締まりがリセットされる。
  • Shift+クリック すると、内側のハンドルが中心へと移動する。

螺旋の巻き締まりとは、螺旋の巻き方が一様であるかどうかを表わしている。その値が1に等しい時は、螺旋は一様である。1未満の時 (上方に Alt+ドラッグ) は、螺旋は周辺近くで巻きが締まる。1より大きい時 (下方に Alt+ドラッグ) は、中心方向に巻きが締まる。

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螺旋の巻き数の最大値は1024である。


楕円ツールが楕円ばかりでなく弧 (一定の曲率を有する線) にも有効であったのと丁度同じに、螺旋ツールは、曲率が滑らかに変化する曲線を作成するのに有用である。単純なベジエ曲線と比較して、弧又は螺旋は、その形状に影響を及ぼすことなく曲線に沿ってハンドルをドラッグするなら伸ばしたり縮めたりすることができるので、ヨリ便利であることが多い。また、螺旋は通常塗り潰しをしないで描画されるが、塗り潰しを行なってから運筆を除去することで、面白い効果をえることができる。

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特に興味深いのは、運筆が破線であるような螺旋である。それにより、図形の滑らかな集中と、規則的に等間隔に並んだマーク (点又はダッシュ) とが組み合わさって、美しいモアレ効果が生じる。

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結び

Inkscape の造形ツールは非常に強力である。その仕掛けを学んで、時間が空いた折りに楽しんでいただきたい。そうすることが、デザイン作業において、役に立つことになる。なぜなら、単なる経路の代わりに図形を利用すると、ベクター・アートはヨリ早く作成でき、ヨリ簡単に編集できることが多くなるからである。造形の改良法に就いて何かアイデアをお持ちなら、開発者にご報告下さい。

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"Inkscape tutorial:Advanced" 訳文 (再編集簡約版)

以下は、[nouse: "Inkscape tutorial:Advanced" 訳文] (2007年7月23日 [月]) から、原英文を除去し、[訳註] も最小限にまで減らした (そのため、明示せずに訳者補綴を本文に織り込んだ部分や、ミセケチを実際に削除したところもある) ものである。

Inkscape 教程:上級

本教程では、コピー/貼り付けと、ノード編集と、手書き描画及びベジエ曲線描画と、経路操作と、ブール演算と、オフセットと、簡略化と、テキスト・ツールとを扱う。

[[訳註:"freehand (drawing)" は「手書き(描画)」と訳しておく。]]
[[訳註:"path" は「経路」と訳す。ちなみに "Inkscape for Windows" では「パス」とされている。]]
[[訳註:"booleans" は「ブール演算」と訳しておいた。]]


貼り付け技法

何らかのオブジェクトを Ctrl+C でコピーしたり Ctrl+X で切り取りしたりした後、通常のコマンドである 貼り付け (Ctrl+V) を使うなら、コピーされていたオブジェクトは、マウス・カーソルの位置に貼り付けられる (ただし、マウス・カーソルがウィンドウ外にある場合には、文書ウィンドウの中央に貼り付けられる)。また、クリップボード内のオブジェクトの方は、コピーが行なわれた元の位置を憶えているから、「元あった位置に貼り付け」(Ctrl+Alt+V) ることもできる。

[[訳註:"Paste in Place" は、上記の如き含意であるので「元あった位置に貼り付け」と訳した。ちなみに "Inkscape for Windows" では「同じ場所に貼り付け」となっていてる。]]

様式の貼り付け (Shift+Ctrl+V) と云う別のコマンドもあるが、これは、クリップボードに残っている(前回の)オブジェクトの様式を、現時点で選択されているオブジェクトに適用すると云うものである。このコマンドでは、「塗り潰し」、「運筆」、「フォント設定」の全「様式」が貼り付けられるが、「形状」、「寸法」、「形状種を特定するパラメータ(星の芒数等)」などは貼り付けられない。

[[訳註:"tips of a star" は「(星の)芒」と訳しておく。 ]]

Inkscape には自前の内部クリップボードがあることに注意されたい:Inkscape は、テキスト・ツールにおけるコピー/貼り付け以外では、システムのクリップボードを利用しないのである。


手書き描画と規則的経路描画

自由な形状を作成する最も簡単な方法は、鉛筆 (手書き) ツール (F6) を用いることである:

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ヨリ規則性のある図形を描きたいのなら、ペン (ベジエ) ツール (Shift+F6) を用いられたい:

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ペン・ツールでは、クリック を行なう度に、曲線ハンドルのない、角が付いたノードが作られるため、一連のクリックが行なわれると、一連の直線分の列が形成される。クリック・アンド・ドラッグ を行なうと、両側にハンドルが付いた直線分の中ほどに滑らかなベジエ・ノードが形成される。ハンドルをドラッグ中に Shift を押すと、他方のハンドルが固定されて 中心となり、ドラッグ中のハンドル一つだけが回転するようになる。例によって、Ctrl が押されると、編集中の線分又はベジエ・ハンドルの方向は15度刻みに制限される。入力キー を押すことで線形成は完了するが、完了以前に Esc の方が押されると、線形成が取り消される。完了していない線の最後の線分だけを取り消すには、Backspace を押せば良い。

手書きツールにおいても、ベジエ・ツールにおいても、現時点で選択されている経路には、両端に小さい正方形の アンカーが表示される。こうしたアンカーにより、新経路を作成することなく、(アンカーの一方から描画を続けることで) 経路を伸ばしたり、(一方のアンカーから他方のアンカー迄描画することで) 経路を閉ぢたりすることができる。

経路編集

造形ツールで形成される図形とは異なり、ペン・ツール及び鉛筆ツールが形成するのは、経路と呼ばれるものである。経路とは、(他の全ての Inkscape オブジェクトと同様) 塗り潰し及び運筆に就いて任意の規定値が可能な一連の直線分及び/又はベジエ曲線のことである。ただし、図形とは異なり、経路では、その (所定のものであるハンドルとは、やや異なり) 任意のノードを自由にドラッグすることでできて、それにより編集が可能である。


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経路を選択した後、ノード・ツールに (F2) 切り替えると経路上に幾つかの灰色の正方形をしたノードが見える筈である。こうしたノードは、セレクタ・ツールにより、オブジェクト選択の場合と全く同様にして、クリックShift+クリック、或いは、「輪ゴム」を ドラッグ することで 選択可能である。選択されたノードはハイライトされ、ノードハンドル (選択された各ノードに直線で結ばれた1個又は2個の小円) が表示されるようになる。

[[訳註:この翻訳文では "node handles" を「ノードハンドル」と訳してあるが、"Inkscape for Windows" では「コントロールハンドル」とされているようだ。]]
[[訳註:上記パラグラフでは、「ノードハンドル」が「選択された各ノード」に直線で結ばれるとされているが、そうとは限らないようだ。選択されていないノードに就いても (特に、選択されたノードに隣接するノードの場合は) ノードハンドルが表示されるのが常のようである。]]

経路は、ノード及びノードハンドルを ドラッグ することで編集される。 例によって Ctrl が押されていると、移動及び回転が制限される。矢印Tab[]<> キーのそれぞれは、その機能が (CtrlShift が押されることにより) 修飾される場合も含めて、やはりセレクタにおけるのと同様な (対象がオブジェクトではなくてノードになる訣だが) 働きをする。選択されたノードは、削除 (Del) することも、複製 (Shift+D) することも可能である。経路は、選択されたノード (複数可) で切断 (Shift+B) することもできれば、同一経路の両端のノードを選択するなら、それを結びつけることもできる (Shift+J)。

ノードは 尖点にすること (Shift+C) ができる。これは、つまり、その両ハンドルが独立して動けるので、相互の角度が任意に決められると云うことである。また、ノードは 平滑点にすること (Shift+S) も可能である。これは、つまり、そのハンドルが常に同一直線上にある (共線的) と云うことである。さらに、ノードは対称的にすること (Shift+Y) もできる。これは、平滑点であって、更に両方のハンドルが同一の長さを有すると云うことである。

また、ノードハンドルは、その上で Ctrl+クリック を行なうことで、退避させることができる。隣り合う2個のノードのハンドルが退避している場合、そのノード間の経路区間は直線分となる。退避しているノード・ハンドルを引き出すには、ノードから Shift+ドラッグ を行なえばよい。


部分経路及び結合

経路オブジェクトは、複数の部分経路からなることがある。部分経路は、互いに繋がりあった一連のノードからなる。(従って、ある経路が複数の部分経路からなる場合には、そのノードの全てが繋がりあっているとは限らない。)

複合経路は、グループとは同じではないので注意されたい。複合経路は、全体としてのみ選択が可能な単一のオブジェクトである。

Inkscape では、複数の経路を複合経路に結合 (Ctrl+K) することもできれば、複合経路を別個の経路に分離 (Shift+Ctrl+K) することもできる。1個のオブジェクトは、一組の塗り潰し・運筆規定値しか持ちえないので、新たに形成される複合経路は、結合されるオブジェクトのうち最初の (Z順位が一番低い) オブジェクトのスタイルを獲得する。

塗り潰しがあって上下重なっている経路を結合すると、通常は、経路が重なっている領域では、塗り潰しは消えてしまう。

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これは、内部に穴のあるオブジェクトを作成する最も簡単な方法である。ヨリ強力な経路に対するコマンドに就いては、後述の「ブール演算」を参照されたい。


経路への変換

全ての図形オブジェクト又はテキスト・オブジェクトは、経路への変換 (Shift+Ctrl+C) が可能である。この操作では、オブジェクトの外見は変化しないが、そのオブジェクト種に固有の全ての規定性がなくなってしまう (例えば、矩形の角を丸めるとか、テキスト編集とかは不可能になる)。その代わり、経路ノードの編集ができるようになる。

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更に、任意のオブジェクトの運筆は、経路 (「輪郭」) に変換可能である。

[[訳註:"Inkscape for Windows" では「運筆を経路へ」コマンドのショートカットキーは Ctrl+Alt+C。]]

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ブール演算

経路メニュー中のこのコマンドによると、ブール演算による複数のオブジェクトの結合が可能になる。

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これらのコマンドのキーボード・ショートカットは、ブール演算に対応する算術的演算 (「合併 (union)」は「加算 (addition)」であり、「差分 (difference)」は「減算 (subtraction)」であり、...など) が連想されるものになっている(例図参照)。差分非共通分 (exclusion) とは、選択されたオブジェクト2個に対してのみに適用可能である。他の演算は、同時に任意個数のオブジェクトに適用しうる。その演算結果は、最も背面にあるオブジェクトのスタイルを継承する。

[[訳註:"Inkscape for Windows" では、"union" は「統合」、"difference" は「差分」、"exclusion" は「排他」になっている。]]

非共通分コマンドの結果は、結合コマンドの結果 (「部分経路及び結合」での例図参照) に似ているが、異なっているのは、非共通分コマンドは、元の経路が交差する位置にノードを補足することにある。分割経路切断との相違点は、分割が前面オブジェクトの経路により、背面オブジェクト全体を区切るのに対し、経路切断では、背面オブジェクトの運筆のみが切断され、塗り潰しが全て除去される点にある (これは、塗り潰しのない運筆を、幾つかの部分に寸断するのに便利である)。

[[訳註:上記の経路切断の例図では、経路がズレているが、これは切断を強調するための図解であって、実際には経路はズレない。]]

収縮及び膨張

[[訳註:"Inset" 及び "outset" は、それぞれ「収縮」及び「膨張」と訳しておく。ちなみに "Inkscape for Windows" では「インセット」及び「アウトセット」。]]

Inkscape では、寸法変更 (scaling) 以外にも、オブジェクトの経路をオフセットさせることで、つまり、経路の各点を、経路に対し直角方向にずらすことで、図形を拡大したり縮小したりすることができる。そうした縮小と拡大に対応するコマンドは、収縮 (Ctrl+() と膨張 (Ctrl+)) と呼ばれる。下には、ある経路 (赤色) を収縮及び膨張させた経路を幾つか示してある。

[[訳註:"offset" の訳も難しい。「オフセット」としておく。"Inkscape for Windows" でも「オフセット」とされている。]]

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収縮コマンド及び膨張コマンドは、(元のオブジェクトが経路でない場合は、それを経路に変換してから) 経路を生成すると云うだけのものである。しかし、オフセット距離を制御する (図形のハンドルと類似する) ドラッグ可能なハンドルが付いたオブジェクトを形成する動的オフセット (Ctrl+J) の方が便利であることが多い。

[[訳註:この翻訳文での "dynamic offset" の訳語は「動的オフセット」。"Inkscape for Windows" では「ダイナミックオフセット」となっている。]]

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[[訳註:この例図はかすれて見づらいが、翻訳原文書 ("Inkscape tutorial: Advanced") の段階でこのようになっている。]]

こうした動的オフセット・オブジェクトは、最初の経路を記憶しているため、何度オフセット距離を変更しても「劣化」することはない。調整を行なう必要がなくなったら何時でも、オフセットされたオブジェクトを経路に戻すことが可能である。

更に便利なのは、動的オフセットに類似するが、編集可能な他の経路と結びついていると云う連携オフセットである。元になる経路一つに対して、連携オフセットは幾つでも作ることが可能である。下には、赤い色の元の経路と、運筆が黒く塗り潰しがない連携オフセットと、塗り潰しが黒く運筆がない連携オフセットとを示してある。

[[訳註:"linked offset" は「連携オフセット」と訳す。これに関連して、この文脈での "connected" は「結びついている」と訳しておく。なお、"Inkscape for Windows" では "linked offset" は「リンクオフセット」とされている。キーボード・ショートカットは Ctrl+Alt+J]]

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簡略化

簡略化コマンド (Ctrl+L) の主な用途は、経路の形状をほぼ維持しつつ、経路のノード数を減らすことにある。鉛筆ツールにより形成された経路は、必要以上にノードが作られていることがあるから、このコマンドは鉛筆ツールにおいて有用となりうる。下の図において、左側の図形は、手書きツールで作成したものであり、右側の図形は、簡略化したその写しである。元の経路は28のノードがあったが、簡略化した方の経路のノード数は17であり (これにつまり、ノードツールによる操作が遥かに容易になると云うことである)、滑らかになっている [[訳註:この翻訳文では、下図に「ノード」は存在しない]]。

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簡略化の程度 (閾値と呼ばれる) は、選択対称の規模に依存する。従って、経路を大きめなオブジェクトと共に選択するならば、経路単体を選択するより、簡略化はヨリ大胆に行なわれる。また、簡略化コマンドは促成化できる。これはつまり、Ctrl+L を何回か続けて (コマンド・コールの間隔が0.5秒以下になる) 早押すると、各コールでの閾値が増大すると云うことである。(簡略化コマンドの間隔を置くようにすると、閾値はデフォルト値に戻る。)促成化を利用することで、個個の事情に正確に応じた程度の簡略化を行なうのは容易である。

手書き運筆を滑らかにするほかに、簡略化コマンドは、様様な創造的効果を引き起こすのに利用できる。生硬で幾何学的な図形を、ある程度簡略化することで、鋭い角を溶かしたり、極めて自然な歪みを持ち込んだりして、流行の感じになることも、ただ滑稽な感じになるだけのこともあるが、元の形状から素晴らしく生気に富んだ一般化を産み出すことがしばしばある。以下に示すのは、簡略化した後、見栄えが遥かに良くなったクリップアートの例である。

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テキスト作成

Inkscape では、複雑な長文テキストを作成することができる。しかしながら、見出し、バナー、ロゴ、図面のラベル及びキャプション等の短文テキスト・オブジェクトを作成するのにも極めて便利である。

テキスト・オブジェクトを作成するには、テキスト・ツールに切り替えて (F8)、文書中のどこかをクリックし、所要のテキストを入力しさえすればよい。フォント・ファミリー、フォント・スタイル、フォント・サイズ、文字揃え (アラインメント) を変更するには、テキスト/フォント・ダイアログ を開いて (Shift+Ctrl+T) 指定すれば良い。このダイアログには、テキスト入力タブをあるので、そこで選択されているテキスト・オブジェクトの編集を行なうことができ、場合によっては、カンヴァス上で直接編集するより便利なこともある (特に、テキスト入力タブは、自動スペル・チェックをサポートしている)。

[[訳註:テキスト/フォント・ダイアログの「テキスト入力タブ」は、上記の説明通り「選択されているテキスト・オブジェクトの編集を行なうことができ」るが、名称から期待できるような新たなテキストの入力 (新規テキスト・オブジェクトの作成) はできないようである。]]

他のツールと同様、テキスト・ツールも、対応するオブジェクト--テキスト・オブジェクト--を選択できる。つまり、テキスト・ツールでクリックすることで、既存のテキスト・オブジェクトのどれでも選択し、そして、その中にカーソルを置くことができる。

テキスト・デザインにおいて最も良く行なわれる操作のうちの一つが、文字間の間隔及び行間の間隔の調整である。いつも通りのことであるが、Inkscape は、これに対してもキーボード・ショートカットを用意している。テキスト編集中に Alt+< キー及び Alt+> キーを押すなら、テキスト・オブジェクトのカーソル行の文字間隔が、行の全長が現時点での拡大・縮小率における1画素分増減するようにして、変化する (セレクタ・ツールにおいて、同じキーが押される際の、画素寸法刻みのオブジェクト拡大・縮小と比較されたい)。テキスト・オブジェクトでのフォント・サイズがデフォルトより大きい場合には、通常、文字間隔をデフォルトより僅かに詰めると好適になりやすい。以下に例を示す:

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上図の文字間隔を詰めた方の例は、見出しとしてやや優れているようだが、未だ完全ではない。文字間隔が一様でないのである。例えば、"a" と "t" との間は離れすぎているのに対し、"t" と "i" との間隔は狭すぎる。こうした (特に大きなフォント・サイズで目立つような) カーニング (kern) が不適切となる度合は、高品位フォントよりも低品位フォントにおける方が大きくなるとは言え、どのテキスト文字列やどのフォントにおいても、カーニング調整を行なうことで改良されるような文字対が見つかるであろう。

Inkscape では、こうした調整が本当に簡単に行なえる。テキスト編集中にカーソルを、気に入らない文字間に置いて Alt+矢印 を押すなら、カーソル以降にある文字が移動する。以下の例は、上記と同じ見出しだが、文字の配列が一様に見えるよう手動で調節したものである。

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Alt+左 又は Alt+右 では、文字が水平方向にずらされるが、Alt+上 又は Alt+下 を使うと文字を垂直方向にずらすことも可能である。

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テキストを経路に変換することも勿論可能であって (Shift+Ctrl+C)、文字を正規の経路オブジェクトとして移動させることもできる。しかし、テキストはテキストのままでおいた方が遥かに都合が良い。なぜなら、その方が、編集が可能であり、カーニングや間隔指定を失うことなく別のフォントにしてみることができ、保存されるファイルにおいて必要となる容量が遥かに少なくて済むからである。「テキストはテキストとして」と云う仕方のただ一つの欠点は、そうした SVG 文書を開くシステムでは、元のフォントがインストールされていなければならないことだけである。

文字間隔と同様に、複数行あるテキスト・オブジェクトでは、行間隔も調整が可能である (Ctrl+Alt+< キー及び Ctrl+Alt+>)。セレクタにおけるのと同様、任意の間隔変更又はカーニングショートカットにおいて Shift が押されるなら、押されていない場合の10倍の効果が得られる。


XML エディタ

Inkscape において究極に強力なツールは、XML エディタである (Shift+Ctrl+X)。それは、現在の状態を常時反映する、文書の XM ツリー全体を表示する。図面の編集を行なうなら、XML ツリーが対応して変化するのを見ることができる。更に、XML エディタでは、全てのテキスト、要素、属性のノードを編集することができ、その結果は、キャンバス上に反映される。このことは、SVG に就いてインタラクティブに学習するため手段として、考えうるうちの最良のものであり、通常の編集ツールでは不可能であると思われるような仕掛けを作ることも可能になる。

[[訳註:上記パラグラフ中の "nodes"/「ノード」は XML データ構造の用語としてのものであって、経路のノードのことではない。]]

結び

この教程は、Inkscape の全機能のうち、ほんの一部を示したに過ぎない。Inkscape を使って愉しい体験していただきたいと思っている。実際に試してみると云うことをためらわず、そして作成したものを共有するようにしていただきたい。一層の情報、最新版の Inkscape, ユーザーや開発者たちによる支援を望まれるなら www.inkscape.org を訪問していただきたい。

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"Inkscape tutorial:Basic" 訳文 (再編集簡約版)

以下は、[nouse: "Inkscape tutorial:Basic" 訳文] (2007年7月18日 [水]) から、原英文を除去し、[訳註] も最小限にまで減らした (そのため、明示せずに訳者補綴を本文に織り込んだ部分や、ミセケチを実際に削除したところもある) ものである。

Inkscape 教程:基本

この教程 (tutorial) は、Inkscape利用法の基礎を解説したものである。本文書は、Inkscape用として正規のものであり、読者はこれを閲覧・編集・複製・保存することができる。
この [教程:基本] では、キャンバスの移動方法と、文書の扱い方と、造形ツールの基本と、選択の仕方と、選択・グループ化・塗り潰し (フィル) 及び運筆 (ストローク) 設定よるオブジェクトの変形と、整列と、Z順位 (z-order) とを扱う。ヨリ高度の事柄に就いては、ヘルプメニューにある他の教程に当たられたい。

[[訳註:"Inkscape for Windows" のメニュー等では "document" は「文書」ではなく「ドキュメント」となっている。]]


キャンバスの横方向/縦方向移動

文書キャンバスを横方向/縦方向移動 (スクロール) させる方法は幾つもある。キーボードでスクロールさせるには、Ctrl+矢印 を使う。マウスの中央ボタンを使ってもキャンバスのドラッグが可能である。縦及び横のスクロールバー (Ctrl+B で表示/表示が切り替わる) を使っても良い。縦方向のスクロールは、マウスの ホイール でも可能であるし、ホイールと Shift を併用すれば横方向スクロールができる。

[[訳註:"arrow" は「矢印」または「矢印キー」と訳し、「カーソルキー」と云う訳語は節約する。]]


拡大・縮小

縮小又は拡大を行なうには、- キー又は + キー (= キーでもよい) を押すのが最も簡単な方法である。拡大する他の方法としては、Ctrl+中央クリックCtrl+右クリック でも良く、縮小する他の方法としては、Shift+中央クリックShift+右クリック でも良い。Ctrl を押したまま、マウスホイールを回転させても、拡大・縮小は可能である。別の方法としては、(文書ウィンドウの右下隅にある) 拡大・縮小率入力フィールドをクリックして、正確な拡大・縮小率を百分率で与えてから入力キーを押しても良い。(ウィンドウ左側のツールバーには) 拡大・縮小ツールがあるので、それでドラッグを行なって 矩形を作ると、それにより囲まれる領域は、ウィンドウ一杯に収まるように拡大表示される (ズームインが起こる)。

[[訳註:訳者の "Inkscape for Windows" では、= キーによる拡大は、インプリメントされていないようだ。]]

Inkscape は、作業過程中、用いられた拡大・縮小レベル履歴を保持する。` キーを押すと、一段階前の拡大・縮小レベルに戻り、Shift+` を押すと一段階後の拡大・縮小レベルに進む。

[[訳註:訳者の "Inkscape for Windows" では、この機能はインプリメントされていないようだ。]])


Inkscape のツール群

左側に縦に伸びたツールバーには、Inkscape の描画・編集ツール群が置かれている。ウィンドウ上部、メニューの直下にあるのは、一般的なコマンドを配したコマンドバーと、各ツール固有の制御を行なうためのツール制御バーである。ウィンドウ下部にはステータスバーがあって、作業に役立つヒント及びメッセージが表示される。

多くの操作がキーボード・ショートカットで実行可能である。ヘルプ > キー/マウスを開くと、完備したリファレンスを見ることができる。


文書の作成及び操作

空の文章を作成するには ファイル > 新規 を使うか、Ctrl+N を押すこと。既存の SVG 文書を開くには、ファイル > 開く (Ctrl+O) を用いられたい。保存するには、ファイル > 保存 (Ctrl+S) を使うか、改めて名前を付けて保存する場合は 名前を付けて保存 (Shift+Ctrl+S) を使われたい。(Inkscape はまだ不安定であるので、こまめに保存することを忘れないように!)

Inkscape は、ファイルに SVG (Scalable Vector Graphics:スケーラブル ベクター グラフィックス) フォーマットを用いている。SVG は、広範なグラフィクス・ソフトウェアによりサポートされているオープン・スタンダードである。SVG ファイルは、XML に基づいており、(Inkscape 以外でも) テキスト・エディターや XML エディター のどれを使っても編集可能である。Inkscape は、SVG 以外にも他の幾つかのフォーマット (EPS や PNG) に就いてインポート及びエクスポートが可能である。

Inkscape は、文書ごとに別々の文書ウィンドウを開く。そうした複数の文書間の行き来は、ウィンドウ・マネージャー (例えば Alt+Tab) を利用すれば可能であるし、また Inkscape のショートカット Ctrl+Tab を使えば開いている文書ウィンドウの全てを循環していく。


図形作成

図形を作成してみよう。まず、ツールバーの矩形作成ツールをクリックされたい (あるいは、F4 を押されたい)。次いで、新規の空文書でクリック・アンド・ドラッグを行なわれたい。

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デフォルトでは、矩形は、(若干透明性のある) 青い色をしており、運筆 (輪郭) は黒である。後で、これを変化させる仕方を説明する。他のツールを使うと、楕円、星形、螺旋を作成することもできる。

[[訳註:上記の例図とパラグラフの内容は整合しない。]]
[[訳註:"stroke" は「運筆」と訳しておく。"Inkscape for Windows" のメニューでは、「ストローク」になっている。]]

An example image

これらのツールは、まとめて造形ツールと呼ばれる。作成された図形の各各には、一つ又は複数の小さい矩形のハンドルが表示される。こうしたハンドルをドラッグしてみて、図形がどのように変化するか確かめられたい。造形ツールの制御パネルによっても、図形を変形させることができるが、その設定は、その時点で選択されている図形 (つまり、ハンドルが表示されている図形) を変形させるだけでなく、新規に作成される図形にもデフォルトとして適用される。

直前の操作を取り消す (アンドゥする) には、Ctrl+Z を押されたい。もう一度思い返して、取り消した操作をやはり行なう (やり直しする) には、Shift+Ctrl+Z を押せば良い。


図形の移動、寸法変更、回転

Inkscape で最も良く用いられるツールはセレクタである。ツールバーの一番上のボタン (矢印が表示されているもの) をクリックするか、F1 又は Space を押されるなら、キャンバス上の任意のオブジェクトを選択できるようになる。

An example image

オブジェクトの周りに、8個の矢印形ハンドルが現われるが、この状態では以下のことが可能になる:

  • オブジェクトをドラッグすると、オブジェクトが移動する。(Ctrl を押しながら、これを行なうと、移動方向が水平と垂直とに限定される。)
  • ハンドルのどれでもドラッグすると、オブジェクトの寸法の変更が起こる。(Ctrl を押しながら、これを行なうと、当初の縦横比が保存される。)

上記の矩形をもう一度クリックすると、ハンドルが変化する。この場合可能なのは:

  • 隅のハンドルをドラッグすると、オブジェクトが回転する。(Ctrl を押しながら、これを行なうと、回転が15度刻みになる。回転の中心にしたい位置に十字マークをドラッグすること。)
  • 隅にないハンドルをドラッグすると、オブジェクトは 斜めに歪む。(Ctrl を押しながら、これを行なうと、15度刻みで傾斜が起こる。)

セレクタを利用している間なら、制御バー (キャンバス上方にある) における数値入力フィールドを使って、選択されているオブジェクトの正確な座標値 (X 及び Y) と寸法値 (W 及び H) を設定することができる。


キー入力を用いた変形

Inkscape が他の大多数のベクター・エディターと異なる特徴の一つは、キーボードによる操作を強化している点である。キーボードから行なえないコマンド又はアクションは殆ど存在せず、オブジェクトの変形もその例外ではない。

キーボード入力によって、オブジェクトを移動することも (矢印 キー)、 寸法を変更することも (< キー及び > キー)、回転させることも ([ キー及び ] キー) 可能である。デフォルトでは、移動及び寸法変更は 2px 刻みであるが、Shift を押しながら行なうと、移動及び寸法変更の変化量は10倍になる。Ctrl+> 及び Ctrl+< では、寸法が元の大きさの、それぞれ200%と50%とになる。デフォルトでの回転は15度刻みであるが、Ctrl を押しながら行なうと、90度刻みになる。

ただし、恐らく最も役に立つのは、Alt と共に変形用キーを用いることで実現される画素サイズ準拠変形 (pixel-size transformations) である。例えば、Alt+矢印 を使うならば、選択したオブジェクトは、現在の拡大/縮小率に応じた1画素分の移動をする (つまり、画面上に表示されている1画素分の移動である。従って、拡大/縮小率とは独立した SVG の長さの単位である画素/ピクセルと混同しないようにされたい)。このことはつまり、拡大をおこなった際には、Alt+矢印 は、画面上の見かけでは同様に1画素分移動したように見えるかもけれども、移動の絶対量は減少していると云うことである。このため、所要の拡大又は縮小を行ないさえすれば、オブジェクトを任意の正確な位置に置くことが可能である。

同様に、Alt+> 及び Alt+< によって、選択したオブジェクトの寸法変更が見かけの1画素単位で行なわれるし、Alt+[ 及び Alt+] を使うならば,、オブジェクトの回転を、その中心から最も離れた点が画面上での1画素分移動するように起こさせることができる。


多重選択

Shift+クリック を使うことで、同時に任意個数のオブジェクトを選択することができる。あるいは、選択したいオブジェクトを囲むように ドラッグ してもよい。これは、輪ゴム選択 (rubberband selection) と呼ばれる。(セレクタは、図形のない部分からドラッグを始める場合に「輪ゴム」を形成するのだが、もし、ドラッグ開始前に Shift が押されているなら、Inkscape は常に「輪ゴム」を形成する)

[[訳註:「輪ゴム選択」(rubberband selection) と云う用語は、読者をミスリードする可能性がある。「ドラッグ」により指定される領域は勿論矩形である。その矩形の輪郭部分を「輪ゴム」と呼んでいるのだ。このパラグラフは、セレクタ支配下の状況でポインタのドラッグを行なうことで形成される矩形内に入った図形は複数あっても同時に選択されることに関する。パラグラフの後半は、ドラッグの開始点が図形内にあった場合、通常ならば、その図形が選択されてしまうため (その後ドラッグしても、選択された図形の移動が起こるだけになり)、多重選択用の矩形が形成が始まらないが、Shift キーを押しながらドラッグを始めるならば、矩形形成が行なえると云うこと。]]

An example image

An example image

多重選択されたうちの個々のオブジェクトには、デフォルトでは破線でできた矩形枠である選択済標示が現われる。こうした標示により、どのオブジェクトが選択されていて、どのオブジェクトが選択されていないかが一目で分かる。例えば、上記の2個の楕円の両方と矩形とを選択した場合、標示がなかったなら楕円が選択されているかどうかを判断するのは困難なものになるであろう。

[[訳註:最後のセンテンスは、多重選択が行なわれた場合、ハンドルは個々の選択されたオブジェクトに付くのではなく、選択された複数のオブジェクト全体を囲むように付くだけであることに関する。従って、多重選択の場合、ハンドルからだけでは、内側にあるオブジェクトが選択されているかどうかは判断できない。]]

選択されているオブジェクトに Shift+クリック を行なうと、その選択を外すことができる。

Esc が押されると、選択されたオブジェクト全ての選択が解除される。Ctrl+A では、現在操作中のレイヤに載っている全てのオブジェクト (レイヤが一枚だけの場合、これは文書中の全オブジェクトを意味する) が選択される。


グループ分け

幾つかのオブジェクトをまとめて、一つのグループとすることができる。グループ化されると、ドラッグや変形の際に単一のオブジェクトであるかのように振る舞う。

An example image

グループを作成するには、1個又は複数個のオブジェクトを選択してから、Ctrl+G を押せばよい。1つにしろ複数あるにしろグループを解除するには、選択してから Ctrl+U を押せば良い。グループ自体のグループ化も、他のオブジェクトと全く同様に、可能である。こうした再帰的グループは、任意の深さまで構成することができる。しかし、Ctrl+U によっては、選択されたグループにおける最上層レベルのグループしか解除することができない。グループの入れ子が深くなっているグループ化を完全に解除するには、Ctrl+U を繰り返し押す必要がある。

ただし、グループ内のあるオブジェクトを編集しようとする場合でもグループ解除をする必要はない。そのオブジェクトを Ctrl+クリック しさえすれば、そのオブジェクトが選択されて、それだけの編集が可能になる。また、幾つかのオブジェクト (グループ内に入っていても、いなくてもよい) に対して Shift+Ctrl+クリック を行なうなら、グループ分けに関わらない多重選択が可能である。


塗り潰し及び運筆

Inkscape の機能の多くが、ダイアログを介して利用可能になっている。あるオブジェクトを一定の色で塗る最も単純な方法は、恐らくオブジェクト・メニューからスウォッチ・ダイアログを開き、オブジェクトを選択し、そのオブジェクトに塗るためのスウォッチを選択する (塗り潰す色を変更する) と云うものであろう。

[[訳註:このパラグラフの説明は実態から離れているかもしれない。"Inkscape for Windows" ではスウォッチ・ダイアログは「表示メニュー」内にある。また、Inkscape には "Object menu" はあっても "Objects menu" なるものは実装されていないようだ。さらに、スウォッチの利用は、スウォッチ・ダイアログ (Ctrl+Shift+W) より、ウィンドウとステータスバーとの間に置かれているユーザー・インターフェイスを使った方が簡単だろう。]]

ヨリ強力であるのは、「塗り潰し/運筆ダイアログ」(Shift+Ctrl+F) である。

[[訳註:この翻訳では "Fill and Stroke dialog" は「塗り潰し/運筆ダイアログ」と訳した。ちなみに "Inkscape for Windows" では「フィル/ストローク」とされている。]]
[[訳註:私が持っている "Inkscape for Windows" (Ver. 0.45) では、Shift+Ctrl+F を押しても、"Fill and Stroke dialog" は起動しない。ただし、メニューからなら開くことができる。]]

An example image

見れば分かるように、このダイアログには「塗り潰し」、「運筆跡 (オブジェクトの輪郭)」、「運筆様式」3つのタブがある。「塗り潰し」では、選択された (単一のにしろ複数にしろ) オブジェクト(内部)を塗り潰しの仕方を編集できる。「塗り潰し」タブの下方にあるボタンにより「塗り潰さない」(×印の付いたボタン)、「平坦に塗り潰す」、「直線方向グラデーション」、「放射方向グラデーション」などの種類を選択できる。

[[訳註:この翻訳文では "Stroke paint" 及び "Stroke style" を、それぞれ「運筆跡(オブジェクトの輪郭)」及び「運筆様式」と訳してある。ちなみに "Inkscape for Windows" では「ストロークの塗り」及び「ストロークのスタイル」になっている。]]
[[訳註:この翻訳文における「平坦に塗り潰す」、「直線方向グラデーション」、「放射方向グラデーション」は、"Inkscape for Windows" では「単一色」、「線形グラデーション」、「放射グラデーション」になっている。]]

その下にあるのが、「RGB」、「CMYK」、「HSL」、「ホイール」と云う固有のタブがそれぞれに付けられた一連の色指定手段である。恐らく、最も簡便であるのは「ホイール式指定」と思われるが、この場合は、三角形を回転させてホイール上ので色相 (hue) を選択し、次いで三角形内でけその色相の明彩度 (shade) を選択する。どの色指定手段にもスライダーが付いていて、選択したオブジェクトのアルファ (不透明度) が設定できる。

オブジェクトが選択されると何時でも、その時点での「塗り潰し」、「運筆跡(オブジェクトの輪郭)」、「運筆様式」の状態を示すよう色指定手段の表示が更新される。(多重選択されたオブジェクトの場合、このダイアログは平均の色を示す。) 自分でオブジェクトを作成して確認していただきたい。

An example image

「運筆跡(オブジェクトの輪郭)」では、オブジェクトの運筆跡 (輪郭) を除去したり、色や透明度を指定することができる。

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最後のタブである「運筆様式」では、運筆における幅その他のパラメータの設定が可能である。

An example image

また、塗り潰し及び/又は運筆においては、色を平坦に塗る以外に、グラデーションを付けることができる。

An example image

色の塗り方を平坦からグラデーションへと切り替えると、それまで平坦に塗られていた色が、不透明から透明に変化するように塗り変えられる。グラデーション・ツールへ切り替えて (Ctrl+F1)、グラデーション・ハンドル - グラデーションの方向と長さを規定する線分で結ばれた制御ハンドル--をドラッグする実習をされたい。グラデーション・ハンドルが選択される (青い色に変わる) と、塗り潰し及び運筆ダイアログは、選択されたオブジェクト全体の色ではなく、そのハンドルが支配する色を指定するようになる。

オブジェクトの色を変更する簡便な方法としては、この他に、「スポイト・ツール」(F7) を使うと云うものがある。このツールで図面上の任意の位置を クリック するだけで、そこの色が、選択されているオブジェクトの塗り潰しに使われる (Shift+クリック すると、運筆の色として使われる)。


複製、整列、配置

オブジェクトへの操作で最も普通にあるものの一つは、複製である (Ctrl+D)。複製されたオブジェクトは、元のオブジェクト上に正確に重なって置かれた状態で選択されているので、マウスや矢印キーを使ってドラッグすることができる。

An example image

上記のような四角形を実際に、幾つか複製してみると、そうした四角形の複製は多かれ少なかれ不規則に並んだのではなかろうか。そのような場合は、整列ダイアログ (Ctrl+Shift+A) が便利である。列の全体を選択 (Shift+クリック するか、「輪ゴム」をドラッグ) してから、整列ダイアログを開いて、「中心を水平軸上に合わせる」ボタンを押し、次いで「オブジェクト間の水平方向間隔を等しくする」ボタンを押すなら (「中心を水平軸上に合わせる」と「オブジェクト間の水平方向間隔を等しくする」はボタンのツールチップに表示される)、オブジェクトがキレイに整列し、等間隔で配置されるようになる。以下に、整列及び配置を適用した例を示す:

An example image

Z順位

Z順位と云う用語は、図面におけるオブジェクトの積み重なりの順位、つまり、どのオブジェクトが上にあって、他のオブジェクトを覆い隠しているかと云うことに関する。オブジェクトメニューにおける2つのコマンド「最前面へ」(Home キー) と「最背面へ」(End キー) とは、選択されているオブジェクトを、その時点でのレイヤZ順位の最前面と最背面へと移動する。他の2つのコマンド、「前面へ」(PgUp) と「背面へ」(PgDn) とは、選択部分を一段階だけ、つまりZ順位中において、非選択オブジェクト1個を越えるようにして移動させる (「Z順位中において」なので、選択部分と重なっているオブジェクトのみが問題となり、選択部分と重なるオブジェクトがない場合には、「前面へ」と「背面へ」は、それぞれ最前面と最背面への移動を引き起こす)。

[[訳註:"z-order" の z は、画面/ウィンドウを x 軸及び y 軸が張っているとみて、それらに直行する z 軸の謂いである。]]

An example image

Tab は、選択を行なうショートカットとして非常に有用である。このショートカットは、なにも選択されていない状態では、最背面のオブジェクトを選択し、選択が行なわれている状態ではZ順位で選択されているオブジェクト (単一でも複数個でもかまわない) の上のオブジェクトを選択する。Shift+Tab の働き方は逆方向であって、最前面のオブジェクトから始まって、順次後ろのほうに下がっていく。作成されるオブジェクトは、積み重なりの一番上に付け加えられるので、何も選択していない状態で、Shift+Tab を押すなら、最後に作成されたオブジェクトが選択されるので都合が良い。


背面にあるオブジェクトの選択と、選択されたオブジェクトのドラッグ

必要なオブジェクトが他のオブジェクトの背面に隠れている場合どうするか? 最前面のオブジェクトが (若干ながらでも) 透明であるなら最背面のオブジェクトを見ることはできるかもしれないものの、クリックをしても選択されるのは最前面のオブジェクトであって、必要なオブジェクトではない。

こうした時のためにあるのが Alt+クリック である。まず、Alt+クリック で、通常のクリックと同じようにして最前面のオブジェクトを選択する。しかし、同じ位置で、もう一度 Alt+クリック すると、最前面の直下にあるオブジェクトが選択される。更に同じことをするなら、更に下のオブジェクトが選択される...。このようにして、Alt+クリック を何回か繰り返すと、最前面から最背面の列を循環して、クリック位置でのZ順位が付けられたオブジェクトの積み重なりを辿ることになる。最背面のオブジェクトに到達すると、次の Alt+クリック では当然最前面のオブジェクトが再び選択されるのである。

これは結構なことだとは言え、表面に現われていないオブジェクトを選択しても、それで何ができるのか? キーを使えば変形ができるし、選択されたオブジェクトのハンドルのドラッグが可能である。しかし、オブジェクト自体をドラッグすると、やはり最前面のオブジェクトが選択しなおされてしまう (これは、クリック・アンド・ドラッグ動作の仕様である--まずカーソル位置 (最前面) でのオブジェクトが選択され、ついで選択されたオブジェクトがドラッグされる)。Inkscape に、その時点で選択されているオブジェクトを、他のオブジェクトを選択させることなく、ドラッグさせるには、Alt+ドラッグ を用いると良い。これにより、何処でマウスをドラッグしても、その時点で選択されているオブジェクトを移動させることができる。


An example image


結び

これで、基本教程を終える。Inkscape には語るべきことが他に多くあるが、ここで説明した技法によるだけでも、単純ながらも有用なグラフィックスを作成することが可能である。より複雑な内容に就いては、ヘルプ > 教程 における「上級」その他の教程を見られたい。

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[ガリレオの些細な過ち] 及び [「複合變列」につまづく] での図面の差し替え

[nouse: ガリレオの些細な過ち] (2006年4月3日 [月]) 中の図面に見栄え上の不満があったので、inkscape で作成したものに差し替えた。ついでに、 それほどの不満はなかったのだが、[nouse: 「複合變列」につまづく] (2006年2月26日 [日]) 中の図面も、inkscape によるものに差し替えた。

以下が、それらの図面である。


nouse: ガリレオの些細な過ち

第26図

  • 当初の図面:
    ガリレオ[新科学対話] 第26図。[ガリレオの些細な過ち] で以前採用
  • 差し替えた図面。tutorial を読まないまま inkscape + gimp で作成。出来栄えに不満があったので、tutorial を読み出し始めた。その結果が、2007年7月18日7月23日7月31日、8月1日にポストしたものである。
    ガリレオ[新科学対話] 第26図。[ガリレオの些細な過ち]で、一時採用。tutorial を読まないまま inkscape + gimp で作成。
  • 現在の図面 (inkscape で作成):
    ガリレオ[新科学対話] 第26図。[ガリレオの些細な過ち] で現在採用。inksacpe で作成。

第25図

  • 当初の図面:
    ガリレオ[新科学対話] 第25図。[ガリレオの些細な過ち] で以前採用
  • 現在の図面 (inkscape で作成):
    ガリレオ[新科学対話] 第25図。[ガリレオの些細な過ち] で現在採用。inksacpe で作成。


nouse: 「複合變列」につまづく

  • 当初の図面:
    ガリレオ[新科学対話] 第12図。[「複合變列」につまづく] で以前採用。
  • 現在の図面 (inkscape で作成):
    ガリレオ[新科学対話] 第12図。[「複合變列」につまづく] で現在採用。inksacpe で作成。

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"Inkscape tutorial: Tracing" 訳文

以下は、"Inkscape tutorial: Tracing" (Converted from DocBook source by tutorial-html.xsl. Last update: Sat Apr 30 20:06:29 GMT 2005) の訳文である。

この文書は、[nouse: "Inkscape tutorial:Basic" 訳文] (2007年7月18日[水])、[nouse: "Inkscape tutorial:Advanced" 訳文] (2007年7月23日[月])、及び [nouse: "Inkscape tutorial:Shapes" 訳文] (2007年7月31日[火]) で翻訳した、"Inkscape tutorial:Basic" (Converted from DocBook source by tutorial-html.xsl. Last update:Sat Apr 30 20:00:45 GMT 2005), "Inkscape tutorial: Advanced" (Converted from DocBook source by tutorial-html.xsl. Last update: Sat Apr 30 20:02:39 GMT 2005), 及び "Inkscape tutorial: Shapes" (Converted from DocBook source by tutorial-html.xsl. Last update: Sat Apr 30 20:03:55 GMT 2005) と一体をなしており、やはり、翻訳に著作権上の問題は発生しないと信じる。

Inkscape tutorial: Tracing
Inkscape 教程:トレース

One of the features in Inkscape is a tool for tracing a bitmap image into a <path> element for your SVG drawing. These short notes should help you become acquainted with how it works.
Inkscape の特徴の一つは、ビットマップ・イメージをトレースして、SVG 描画用の <経路>要素にできることである。この短い文章は、読者がトレース機能を習得するのを助けるべく書かれたものである。

[[訳註:この翻訳文では、"path" は「経路」と訳されているが、"Inkscape for Windows" では「パス」となっている。]]

Currently Inkscape employs the Potrace bitmap tracing engine (potrace.sourceforge.net) by Peter Selinger. In the future we expect to allow alternate tracing programs; for now, however, this fine tool is more than sufficient for our needs.
現在、Inkscape は、ピーター・セリンジャー (Peter Selinger) によるビットマップ・トレース・エンジンである「ポットレース (Potrace)」(potrace.sourceforge.net) を採用している。Inkscape は、将来、別のトレース・プログラムも利用できるようになると思われるが、現在のところは、この優れたツールは、我我の必要を補って余りあるものである。

Keep in mind that the Tracer's purpose is not to reproduce an exact duplicate of the original image; nor is it intended to produce a final product. No autotracer can do that. What is does is give you a set of curves which you can use as a resource for your drawing.
トレース機能の目的は、元の画像の正確な複製を作り出すことにはないことに留意しておいていただきたい。それは、完成した製品を作り出すためのものでもない。如何なる自動的なトレース・プログラムにも、そのようなことは不可能である。トレース・プログラムから得られるのは、描画の際の資源として利用可能な、一まとまりの曲線なのである。

Potrace interprets a black and white bitmap, and produces a set of curves. For Potrace, we currently have three types of input filters, to convert from the raw image to something that Potrace can use.
Potrace は、白黒2値のビットマップを解釈して、一まとまりの曲線を生成する。そうした Potrace のために、現在のところ、Inkscape には、3種類の入力フィルターが備えられていて、生の画像を Potrace が処理可能な形に変換している。

Generally the more dark pixels in the intermediate bitmap, the more tracing that Potrace will perform. As the amount of tracing increases, more CPU time will be required, and the <path> element will become much larger. It is suggested that the user experiment with lighter intermediate images first, getting gradually darker to get the desired proportion and complexity of the output path.
一般に、中間生成ビットマップにおいて、黒ピクセルが多い方が、Potrace は、多くのトレースを行なう。トレース量が増加すると、必要な CPU 時間が増大し、<経路>要素が、非常に大きくなる。まず明るめの中間生成画像で試しにトレースを行なってみた後、出力される経路の割合及び細かさが所要のものとなるまで、少しづつ暗くしていくことをお薦めする。

To use the tracer, load or import an image, select it, and select the Path > Trace Bitmap item, or Shift+Alt+B.
トレース・プログラムを利用するには、画像をロード又はインポートし、選択してから、項目 経路 > ビットマップをトレース を選択するか、Shift+Alt+B を押せば良い。

An example image

[[訳註:上のキャプチャ画像は、英語版の、しかも恐らく古いヴァージョンの Inkscape から得られたものである。参考のために、(私が持っている) "Inkscape for Windows" で対応する「タブ」のキャプチャ画像を下に挿入しておく。]]

An example image

The user will see the three filter options available:
見ての通り、3種類のフィルター・オプションが利用可能である:

  • Brightness Threshold
    明度の閾値

[[訳註:"Inkscape for Windows" では、「明るさの境界」が対応すると思われる。]]

This merely uses the sum of the red, green and blue (or shades of gray) of a pixel as an indicator of whether it should be considered black or white. The threshold can be set from 0.0 (black) to 1.0 (white). The higher the threshold setting, the fewer the number pixels that will be considered to be “white”, and the intermediate image with become darker.
このフィルターでは、単にピクセルの赤色・緑色・青色の和 (つまり「階調」) でもって、そのピクセルを黒と認定すべきか、白と認定すべきかの指標とするものである。その閾値は、0.0 (黒) から 1.0 (白) までが設定できる。閾値設定を高くすれば、「白」と認定されるピクセルの数は少なくなり、中間生成画像は暗くなる。

[[訳註:原英文 html テキスト中の数値文字参照を含む \u201cwhite\u201d を &#8220;white&#8221; に変更した (ブラウザ上の表示は “white” になっている)。]]

An example image

  • Optimal Edge Detection
    最適化エッジ検出

[[訳註:"Inkscape for Windows" では、「エッジ検出」が対応すると思われる。]]

This uses the edge detection algorithm devised by J. Canny, as a way of quickly finding isoclines of similar contrast. This will produce an intermediate bitmap that will look less like the original image than does the result of Brightness Threshold, but will likely provide curve information that would otherwise be ignored. The threshold setting here (0.0 – 1.0) adjusts the brightness threshold of whether a pixel adjacent to a contrast edge will be included in the output. This setting can adjust the darkness or thickness of the edge in the output.
このフィルターでは、J. キャニー (J. Canny) が考案したエッジ検出アルゴリズムを、類似コントラストの等傾線を迅速に発見する手段として採用している。これにより得られる中間生成ビットマップは、「明度の閾値」処理により得られる中間生成ビットマップと比べると、元の画像に似ていないが、他の方法では無視されがちな曲線情報が得られる可能性が高い。このフィルターでの閾値設定 (0.0 – 1.0) に従って、コントラスト・エッジに隣接するピクセルを出力中に含めるかどうかと云う調整が明度の閾値に対して行なわれる。この設定をするなら、出力におけるエッジの「濃さ」つまり太さが調整される。

[[訳註:原英文 html テキスト中の数値文字参照を含む (0.0 \u2013 1.0) を (0.0 &#8211; 1.0) に変更した (ブラウザ上の表示は (0.0 – 1.0) になっている)。]]

An example image



  • Color Quantization
    色の量子化

The result of this filter will produce an intermediate image that is very different from the other two, but is very useful indeed. Instead of showing isoclines of brightness or contrast, this will find edges where colors change, even at equal brightness and contrast. The setting here, Number of Colors, decides how many output colors there would be if the intermediate bitmap were in color. It then decides black/white on whether the color has an even or odd index.
このフィルターの出力結果の中間生成画像は、上記の2つのフィルターのものとは非常に異なっているものの、実際非常に有用である。明度又はコントラストの等傾線を示す代わりに、このフィルターは、明度やコントラストが等しい場合であっても、色が変化するエッジを探し出す。このフィルターで設定されるのは、もし中間生成ビットマップに色を付けたとしたのなら何種類の色が出力されることになるのかを示す「色数」である。その上で、その色の指数が奇数であるか偶数であるかに応じて黒か白かが決定される。

An example image

The user should try all three filters, and observe the different types of output for different types of input images. There will always be an image where one works better than the others.
3種類のフィルターを全て試してみて、様ざまな入力画像に対し、様ざまな種類の出力が得られることを見られたい。他のフィルターに比べて、あるフィルターが最も良く働くと云う画像が必ずあるであろう。

After tracing, it is also suggested that the user try Path > Simplify (Ctrl+L) on the output path, to reduce the number of nodes. This can make the output of Potrace much easier to edit. For example, here is a typical tracing of the Old Man Playing Guitar:
トレース作成後、出力された経路に対し 経路 > 簡略化 (Ctrl+L) を適用してみて、ノード数を減らすこともお薦めする。それにより、Potrace の出力は、非常に編集しやすいものになりうる。例えば、下図は「老いたるギター弾き」をトレースしたものの典型例である:

[[訳註:「老いたるギター弾き」は、パブロ・ピカソ (Pablo Picasso) による、1903/1904年、所謂「青の時代」の作品。現在、シカゴ美術館 (the Art Institute of Chicago) に収蔵されている由。]]

An example image

Note the enormous number of nodes in the path. After hitting Ctrl+L, this is a typical result:
膨大な数のノードが経路中にあることに注意されたい。Ctrl+L を打った後の典型的な結果は、以下のようになる:

[[訳註:上記パラグラフの内容に関連して注意するなら、この翻訳文中の図面では、ノードの表示は不可能だが、削除すると、この文章後半の意義が無くなるので、そのまま残しておく。]]

An example image

The representation is a bit more approximate and rough, but the drawing is much simpler and easier to edit. Keep in mind, that what you want is not an exact rendering of the image, but a set of curves that you can use in your drawing.
表示は、幾らか近似的で粗くなっているが、描画は大幅に単純化されて、編集がしやすくなっている。必要なのは、正確な画像の実現ではなく、描画を行なう際に利用できる一まとまりの曲線だと云うことを心に留意していただきたい。

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