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2007年4月の14件の記事

[暴想] Bookmarklet "Big Editor" 改

[[2007-07-27 (金) 21:22:16追記::最近の cocolog のシステム更新の結果と思われるが、「[暴想] Bookmarklet "Big Editor" 改」 は動作しなくなった。その代わり、現在では「本文」の入力フィールドを「大きく」して広げるオプションが複数回指定可能--上限は未確認--になっている。]]

[nouse: JavaScript による、ココログサイト内全文検索] で

ついでに書いておくと、[ココログの記事作成画面をドリコム風にするJavaScript::Bookmarklet] (2005.10.03) や、[記事の作成画面を巨大化するJAVASCRIPT::BOOKMARKLET] (2005.09.07) も、やはり私のシステムと相性が悪いらしく働いてくれない。ともに、使えたなら便利だろうと思われるので、残念。

と書いた (ちなみに私が使っているのは IE6) が、それ以来ズッと同じ思いを抱いていた。「使えたら便利なのに...」。

で [記事の作成画面を巨大化するJAVASCRIPT::BOOKMARKLET] つまり "Big Editor" の方なんだが、その bookmarklet としての "URL" は、

javascript:expandEditor(%20'text',%20'expand',%20'600'%20);

であるのは、[記事の作成画面を巨大化するJAVASCRIPT::BOOKMARKLET] にも「編集」の指針のために、明記されている通り。

なぜ動かないのだろうと思って、他の bookmarklet の中身を覗いたりしてみたのだが、わたくしプログラミングは素人でね、何がなんだかサッパリ分からない。それでも、"Big Editor" のスクリプトを何となく少しだけ変えたくなった(「シロートは恐い」とおっしゃって下さって結構)。こんな具合だ:

javascript:(function(){expandEditor(%20'text',%20'expand',%20'600'%20)})();

そしたら動くようになった。使ってみると、やっぱり便利。ダラダラと長い文章を書く私は、今では "600" を "1500" にしてしまった。とっても便利。

あっ。でもシロートの言うことを真に受けて大怪我をしても、私は知らないからご注意。

そうそう。ついでに書いておくと、[カテゴリ別バックナンバーをプルダウンメニューにするJavaScript] (2005.10.09) と[月別バックナンバーをプルダウンメニューにするJavaScript] (2005.10.10) は、ともに、とても有り難くつかわせていただいているが、図々しくも最近は「カテゴリ名とか、『200*年*月の*件の記事』を冒頭に表示してくれるといいな」などと思うようになっている。

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YouTube [ドンキーコングJr.を嫁にやらせてみた]

ネットでブログパーツ探しをしていた時 ([nouse: ブログパーツを10個並べて]) に、ゲームもその中に入れようとしたのは、「品揃え」に対する一種の義務感からにすぎない。

私自身は、筋肉反射の応答時間が比較的に長めであり(通常「ドン臭い」と呼ばれる範疇に属する)、勝負勘と博才と籤運とには無縁、おまけに吝嗇で方向音痴であるために、ゲームと云うのは滅多にしない。(何かのきっかけで、たまにすることがあると、変にノメリ込んで、結局徒労感だけを残して放棄することになる。丁度、ガムなど買うことがないのに、人から貰うと延々と噛んだ挙げ句、翌日顎が痛くなって後悔するのに似ている。)

それで、幾らかでも興味を持てて選んだのが、[五目並べ+オセロ] (「数独」と云うのは、聞き知っているだけで、したことはない。あまり、する気もない。「数独」より「素読」と云う気分である) と [箱入り娘] だった。極めてクラシカルであって、ブログパーツとテレビゲームではジャンルが違うから、見当違いな感慨かもしれないが、「マリオ」や「ゼビウス」のレベルにさえ達していない。「済度し難い」と言われても仕方がないと思っている。

しかし、実を言うと、所謂「テレビゲーム」を、他人がするのを見ているのは嫌いではないのだ。自分が「とことんダメ」であるためか、誰がやっているのを見ても、素直に感心して見てしまう。だから、たまたま [【嫁の挑戦6】ドンキーコングJr.を嫁にやらせてみた【CX風編集】] と云うのを YouTube で見つけた時も、ブログパーツとは関係ないのに、つい見入ってしまった。

もっとも、この「感心」には、「嫁」の初々しさに対する共感も混じっているに違いなくて、それほど同時録音風に入る「嫁」の発言は微笑ましく、そして生々しい。その「生々しさ」の程が良いのだな。我々は、見ず知らずの家の居間で「嫁」がゲームをするのを横で見ている気分になるのだけれど、その一方で、他人の秘密を覗き見していると云った背徳感にとらわれないで済む。素材も良いのだろうし、編集も旨くいっている。全体の枠組みの作り方(編集方針)も正解だったのだろう。

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Claude Debussy (クロード・ドビュッシー) のロシア語表記に就いて

アクセス記録を見ると、[クロード・ドビュッシー] (Claude Debussy) のロシア語表記を探して、このサイトを訪問されたかたがいらっしゃるようだ。

勿論、[nouse: フランス語 "net et vif" に就いて] 中に張ったリンク "Сады под дождем (Net Et Vif) (Эстампы)" から辿ることもできるが、目的とすべき [71. Сады под дождем (Net Et Vif) (Эстампы)/(автор музыки: Клод Дебюсси)] が、ページの中に埋もれているので、お節介ながら、直接示しておくと、Claude は Клод (全部を大文字にすると КЛОД)に、Debussy は Дебюсси (全部を大文字にすると ДЕБЮССИ) に表記されている。

なお、以下のサイトも参照されると良いのではないかと思う。

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Neil Ashby に就いて: 相対論の実用

[nouse: [飛行機に原子時計を載せて・・・] 補足: 相対論の話を少しばかり] で言及した Neil Ashby (Dept. of Physics, University of Colorado) に就いては、Wikipedia にも項目が立てられていないようだ(本文中には散見する)。ただし、コロラド大学のサイトでは次のように紹介されている。

Neil Ashby
ネイル・アシュビー

Professor. Ph.D. Harvard University, 1961.
教授 (1961年ハーバード大学博士号取得)

The principal emphasis of Prof. Ashby's research is on theoretical general relativity with practical applications. For example, studies of relativistic effects within navigational satellite systems such as the Global Positioning System (a set of 24 satellites carrying atomic clocks) show that several relativistic effects must be accounted for in order for the system work properly.
アシュビー教授が研究で特に力を注いでいるのは、実用を見込んだ一般相対論である。例えば、(原子時計を搭載した24個の人工衛星からなる) グローバル・ポジショニング・システム などの衛星測位システムへの相対論的影響を研究した結果、システムが正常に作動するには、幾つかの相対論的効果を考慮に入れる必要のあることがあきらかとなった。

Another application is to the study of relativistic perturbations of the motion of earth-orbiting satellites, and to the interpretation of the results of accurate laser ranging experiments from the earth to such satellites as LAGEOS. Accounting for relativistic effects due to motion of the earth around the sun, such as the effects of Lorentz contraction and breakdown of simulataneity, on the higher order multipole gravitational potentials of the earth, is important in the determination of the earth's mass. Simulation of accurate ranging between the Earth and an orbiter or lander on the planet Mercury show that ranging experiments are among the best available techniques to test alternative theories of gravitation. Another area of current active interest is the generation of gravitation waves by compact objects such as neutron stars, spiraling into, and being captured by, very massive black holes.
他の応用としては、地球周回衛星の運動へに及ぼされる対論的摂動の研究や、地球から LAGEOS (Laser Geodynamics Satellite) --レーザー地球力学衛星-- などの衛星へ高精度レーザー測距実験を行なった際の結果の解釈があげられる。地球の太陽に対する公転運動に起因するローレンツ収縮や同時性の破れなどの相対論的効果が、地球の高次多重極重力ポテンシャルへ及ぼす影響を考慮に入れることは、地球質量の決定にとり重要である。地球と火星周回衛星又は火星表面着陸機との間の高精度測距をシミュレーションしたところ、測距実験が、一般相対論に代わる新たな重力理論に対する実施可能な検証手段として最良のものの一つであることが示された。更に、現在興味を抱いている分野としては、超巨大ブラックホールに螺旋軌道を描いて接近し捕捉されつつある中性子星などの高密度天体による重力波の発生がある。

A secondary area of interest is statistical mechnics. In particular, solutions of the Uehling-Uhlenbeck equations are being studied with the aid of a set of orthogoanl [orthogonal] polynomials, analagous to Sonine polynomials, but constructed to provide convenient solutions to the problem of transport in situations where quantum effects are important. Applications being looked at included transport in mixtures of liquid Helium II, liquid helium IV, and dilute gases at low temperatures.
その他に興味を抱いているのは統計力学である。特に、ユーリン-ウーレンベック方程式 (Uehling-Uhlenbeck equations) を、ソニン多項式 (Sonine polynomials) と同様にして、ただし、量子効果が重要となる状況下での輸送問題に適する解法が得られるように構成した直交多項式系を用いる解法を研究中である。見込まれる応用例としては、低温でのヘリウムII・ヘリウムIV・希薄気体混合物における輸送問題がある。

--訳註:ソニン多項式 (Sonine polynomials) とは、ラゲルの陪多項式 (associated Laguerre polynomial) のことである。「ラゲルの陪多項式」に就いては、"Laguerre Polynomial -- from Wolfram MathWorld" や「水素原子におけるシュレーディンガー方程式の解: ラゲールの陪多項式(ラゲール陪関数)をあてはめる - Wikipedia」を参照されたい。

Selected Publications
著作/発表論文

  • "Canonical Planetary Perturbation Equations for Velocity-Dependent Forces, and the Lense-Thirring Precession," N. Ashby, T. Allison, Celestial Mechanics and Dynamical Astronomy 57, 537-585 (1993).
  • "Mercury Relativity Orbiter Mission," N. Ashby, P.L. Bender, I. Ciufolini, L. Iess, Proceedings of the Symposium on Future Fundamental Physics Missions in Space and Enabling Technologies, 5-7 April 1994, El Escorial, Spain (Eds. J. Leon And J. Perez-Mercader, Instituto Nacional de Tecnica Aeroespacial, Madrid.)
  • "Relativity in the Future of Engineering," N. Ashby, IEEE Transactions on Instrumentation and Measurement 43, 505-514 (1994).
  • "Introduction to Relativistic Effects in the Global Positioning System," N. Ashby, J.J. Spilker, Jr., Ch. 18 in The Global Positioning System--Theory and Application, Eds B.W. Parkinson, J.J. Spilker, Jr., American Institute of Aeronautics and Astronautics, (1995).

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ブログパーツを10個並べて

注意:私自身のコンピュータ・システムの CPU 負荷を抑えるために、現状では、以下で取り上げたブログパーツは削除してある。

この数日間、一連の流れの延長として、ネット上に公開されているブログパーツをアレコレ見て廻った。そのうちの10個をサイドバーに並べたのは、デフォルトのリストの項目数が 10 であったためで、取り立てて意味はない。Sony-Ericsson 提供のガジェットが4個を占めたことには他意はないが、そのどれもが「仕事に行き詰まった時に手が伸びそう」で、しかも「全く頭を使わずに済む」ものであるのは、我が身に思い当たる節があって、苦笑せざるを得ない。

しかし "10" と云う数は、私の身の程にはあっていたようだ。ほかはもう、今の私には、興味が沸かないか、使いこなせそうもないものが多い(「映像」や「音楽」が入らなかったのが、我ながら不甲斐ない)。

ただ、入れられなくて残念な気がしたものが2つある。両方とも日産が提供する「ブログシール」で、一つは [キューブ・コレクションカード]、もう一つは "Driving Cube" (タナカミノル・ブログシール) である。[コレクションカード] の方は、表示されなかったし、[タナカミノル] の方は、表示が乱れてしまう(リロードすると直るようだが)。

今、ハタと、「この二つは、サイドバー向きではなかったのかもしれない」と気付いて、[ブログシール使用方法] を読んだら...

同一の「ブログシール使用方法」説明が [ブログシール・ダウンロードアイテム] のページにも、[キューブ・コレクションカード] にもあって、コンテキストが混乱している。少なくとも [キューブ・コレクションカード] の方は書き直す必要があるだろう。それに「ダウンロードはこちら」と云う表現は、不明確、中途半端な表現だ

※ 付の注意書で、「一部のポータルサイトでは JavaScript を貼り付けることができない、もしくはサイドメニューに貼り付けても表示されない」と書いてあった。[なおゆき] さん ([暴想]) の JavaScript はキチンと動いているんだが、そうでない JavaScript もあると云うことなのだろうか。

実験してみたところ、JavaScript を本文の方に入れると、[タナカミノル] の方は、正常に動作するようなので、入れておく。ただ、これは、デフォルトではページを開く度に自動的にスタートしてしまうから、訪問者の中には煩わしいと感じられる方がいるかもしれない。頃合いを見て撤去する予定である。(ただ、「煩わしい」と思われても、暫く付き合われることをお薦めする。[芸の細かさ] に感心されるであろう。)


2007-04-26 (木) 00:43:50 補足。実際にポストした所、Sony-Ericson のガジェットの表示が乱れるようになってしまったので、取り敢えず [タナカミノル] を削除する。


[コレクションカード] の方は、本文に入れても、表示されないようだ。小さい自動車が画面を疾駆する姿は、見ていて和むのだが(あともう少し走っていて貰いたいと思うほどだ)、出来ないものは仕方がない。それに、[タナカミノル] と [コレクションカード] とを同一ページに置くのは禁忌なのだそうだ。

なお、日産は、スクリーンセーバーでも [cube WIRED 佐野研二郎 スクリーンセーバー「cubeman」:日産 キューブ ブログ Cube Blog] と [cube WIRED 辻川幸一郎 スクリーンセーバー「Sugar Cube Clock」:日産 キューブ ブログ Cube Blog] と云う良いものを出している。未だならば、「試してみる価値がある」と言い添えておきたい。


サイドバーの10個の方も、今後適宜整理・交換するつもりである。


ブログパーツ貼り付けに際して、気付いたことを書いておく。

[ice princess 箱入り娘] は、リンク切れしている紹介ページが幾つか見受けられた。その中には、オリジナルの [Life is beautiful: ブログ用ミニアプリ: 箱入り娘] ページも含まれる。ただ、そのページのサイドバーに載っていた実物のリンクは生きているので、そちらのほうからリンクを辿ることができる。

[ブログパーツをさがせ: NEWS@niftyの最新ニューストピックス] でのサイト紹介も現在リンク切れしている。しかし、こちらの方も、貼られているニュースティッカーそのものは生きているので、リンクを再構成することはできる。

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ブログパーツ設置及びアクセスカウンタ表示

昨2007年4月28日に、次の3つのブログパーツを、この nouse レイアウトに 追加した。

1. 人気記事ランキング (ココログのアクセス解析ツール)
2. 天気予報リンクサービス (天気予報コム)
3. ミニスクロール地図 (ALPSLAB myBase)

また、やはり ココログのアクセス解析に従うアクセスカウンタを表示するようにした。これまでも独自のアクセスカウンタ ([nouse: アクセスカウンタ設置] 参照) を使用してきたが、これはココログのものと、計数法が異なるらしく、結果が一致しない。大概、独自版の方が、ココログ版のアクセス数より多いが、時に独自版が、ココログ版のアクセス数と訪問者数との間になることがある(ココログ版のアクセスカウンタに表示されるのは、訪問者数だそうだ)。

実を言うと、アクセス累計よりも、「前日比」の方に興味がある私としては、それを直接表示してくれる独自版の方は捨てがたい。かと言って、なにやら水増しした数を発表している気分のままでいるのも業腹である。起算日が異なるアクセスカウンタを並列すると云う珍妙なことになっているのは、そうした我儘に従った結果である。

補足 (2008-04-09[水]):
現在では、ココログ版のアクセスカウンタ累計数の方が、独自版の累計数を追い抜いている。当初、たしか10000前後の差があったと記憶しているし、また、これも当初の印象だが、ココログ版のカウントの方が、独自版より少なめだったので、キツネに摘ままれたような気分である。

また、上記のブログパーツ3点は、現状では削除してある。

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[ココログ最強カレンダー] を導入

[なおゆき] さん ([暴想]) によるブログパーツ [ココログ最強カレンダー] を導入した。

このブログのテンプレートをリッチ化した ([nouse: テンプレート変更] 参照) のは、それが [ココログ最強カレンダー] 導入の前提条件になっていたからである。

関連記事: [nouse: [ココログ最強カレンダー] (cocolog_ajax_calendar.js) 改]

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テンプレート変更

2007年4月21日、ブログ nouse のテンプレートを、「リッチ」である [ノート(2列左)] に変更した。左側画像が変更前、右側画像が変更後である。 ただし、[変更前] の方は、実際には、[カテゴリー別バックナンバー] 及び [月別バックナンバー] が、[なおゆき]さん ([暴想])による JavaScript によりプルダウンメニュー化されている。変更前のデスクトップ画像をキャプチャしておかなかったため、[テンプレートの管理] メニューの「確認」画像で代用したところ、JavaScript が反映されなかったのだ。

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羅一秀: 毛沢東の「最初」の夫人

アクセス解析を見ていたら、毛沢東の最初の妻である [羅一秀(罗一秀)] を少なくとも名前を挙げて言及している日本語サイトで、Google/Yahoo-J にヒットするのはどうやらこの nouse だけらしいことを知った。新たに稿を起こすほどの必要性は、今のところ感じていないが、[羅一秀(罗一秀)] に就いて言及した非日本語サイトへのリンクを幾つかまとめておけば、誰かの役には立つこともあろうか、取り急ぎ、これを書く。

まず、やや面映いが、「日本でただ一つ」の部分を再録しておく。

試みに、中文版の wikipedia [毛泽东] を見た。ところが、それからは毛沢東が 1893年12月26日生まれであったことは分かったが、1909年/1910年の記載が見当たらない:

1893年12月26日,毛泽东出生在湖南省长沙府湘潭县韶山冲(今湖南省湘潭市韶山市)的一个中农家庭中。1908年,其父毛顺生为他配婚与罗氏(罗一秀),但毛泽东始终不承认这桩婚事。1911年春,到湖南长沙湘乡驻省中学求学。1912年,以第一名的成绩考入湖南全省公立高等中学校(今长沙市第一中学),次年春考入湖南省立第四师范学校,学校后来并入湖南省立第一师范。

ただ、父 毛順生 (毛顺生) により1908年に結婚させられた (其父毛顺生为他配婚与罗氏) 最初の妻 羅一秀 (罗一秀) が、1910年春に病死していることだけが分かっただけだ(个人生活)。
--nouse: 毛沢東郷関ヲ出ヅ

つまり、「最初の妻」と書いたが、毛沢東は妻として認めていなかったらしい(但毛泽东始终不承认这桩婚事)。

さて、ザッとネットを調べたところでは Wikipedia 系 (コピーを含む) を除けば [羅一秀(罗一秀、あるいは Luo Yixiu)]に言及しているのは、二・三にすぎない(ちなみに、日本語版 ウィキペディア には、今のところ言及なし)。

まず、本人に就いての Wikipedia の記事(英文版と中文版しか見つからなかった)。

ついでに、夫の方の wikipedia 記事を幾つか言語で:。

  • Mao Zedong - Wikipedia, the free encyclopedia
    Genealogy
      Mao Zedong had several wives which contributed to a large family. These were:
    1. Luo Yixiu (罗一秀, 1889-1910) of Shaoshan: married 1907 to 1910
    2. Yang Kaihui (杨开慧, 1901-1930) of Changsha: married 1921 to 1927, executed by the Kuomintang in 1930
    3. He Zizhen (贺子珍, 1910-1984) of Jiangxi: married May 1928 to 1939
    4. Jiang Qing: (江青, 1914-1991), married 1939 to Mao's death
  • Mao Zedong - Wikipedia
    Familie
      Frauen
    1. Luo Yixiu , (羅一秀, 1889 - 1910) aus der Provinz Hunan: geheiratet 1907 - 1910 (verstorben)
    2. Yang Kaihui (杨开慧, 1901 - 1930) aus Changsha: geheiratet 1921 - 1927, (1930 von der Kuomintang hingerichtet)
    3. Gui-yuan (He Zizhen) (贺子珍, 1910-1984) aus Jiangxi: geheiratet 1928; geschieden 1939
    4. Jiang Qing (江青, 1914-1991), geheiratet 1939
  • 毛沢東 - Wikipedia
    [羅一秀(罗一秀)] についての記載は見当たらない。
  • 毛泽东
    上記に引用済み。

なお、[马代伟 (Ma Daiwei)] と云う女性が、毛沢東の "the unpopular wife" (1912-1920) として付け加えられることもある。

Wikipedia 系以外では次のようなものが見つかった。

  • 毛澤東後代 「夾著尾巴做人」by [shingjia]
    毛澤東共有三任妻子(一說四任,元配羅一秀,不被毛承認)、十名子女(六名夭折),大兒子毛岸英在韓戰中去世。目前毛澤東仍在世的三名子女,是他與楊開慧所生的毛岸青、與賀子珍所生的李敏,與江青所生的李訥。
  • 毛主席的儿子是? 十名子女一戰死五夭亡 by [houni1986]
    毛澤東先後有四位妻子 毛澤東先後娶過四位妻子,她們分別是: 羅一秀:一九○七年由父母包辦結婚,一九一○年春患痢疾病逝。 楊開慧:一九二○年結婚,一九三○年底被當時南京國民政府湖南省主席何鍵槍殺。 賀子珍:一九二八年在井岡山與毛澤東同居,一九三七年前往蘇聯治病。 江靑:一九三八年在延安與毛澤東同居。

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聊斎志異中の一篇 [嬰寧] と落語 [崇徳院]

忘れてしまわないうちに書いておく。どうでもいいことなので、すぐに忘れてしまいそうなのだ。

この前、自宅で、本の探し物をしていたら目的の物ではなくて [聊斋志异选(聊斎志異選)] (1978年 第2版。北京 人民文学出版社) が出てきたのだった。少し気になったので、仕舞い返さずにおいて、時時は取り上げて中を覗いたりしている。鉛筆の書き込みがあって、昔、日本橋の丸善でバーゲンセールの際、勢いで買ったものらしい。酸性紙を使っているらしくて、表紙などボロボロになってしまって可哀想なくらいだ。

その中に [婴宁(嬰寧)] と云う一篇があって、こんな風に始まっていた(書籍から写して入力するのが面倒なので、以下ネット上に見つけたテキストの方をコピーする):

婴宁

王子服,莒之罗店人,早孤,绝慧,十四入泮。母最爱之,寻常不令游郊野。聘萧氏,未嫁而夭,故求凰未就也。

会上元,有舅氏子吴生邀同眺瞩,方至村外,舅家仆来招吴去。生见游女如云,乘兴独游。

有女郎携婢,拈梅花一枝,容华绝代,笑容可掬。...
--中国新世纪读书网: 蒲松龄-->聊斋志异-->婴宁
[人民文学出版社]版では「舅家仆来」ではなく--舅家有僕来--。

「良いネ」と思いながら、その先を読むともなく読むと:

...生注目不移,竟忘顾忌。女过去数武,顾婢子笑曰:“个儿郎目灼灼似贼!”遗花地上,笑语自去。

生拾花怅然,神魂丧失,怏怏遂返。至家,藏花枕底,垂头而睡,不语亦不食。母忧之,醮禳益剧,肌革锐减。医师诊视,投剂发表,忽忽若迷。母抚问所由,默然不答。

适吴生来,嘱秘诘之。吴至榻前,生见之泪下,吴就榻慰解,渐致研诘,生具吐其实,且求谋画。吴笑曰:“君意亦痴!此愿有何难遂?当代访之。徒步于野,必非世家,如其未字,事固谐矣,不然,拚以重赂,计必允遂。但得痊瘳,成事在我。”生闻之不觉解颐。

吴出告母,物色女子居里。而探访既穷,并无踪迹。
--中国新世纪读书网: 蒲松龄-->聊斋志异-->婴宁

ここまで読むと、如何に鈍感な私でも、落語の [崇徳院] の出だしに似ていると気付いた。まぁ、似ているのはここら辺ぐらいまでなんだが。

[聊斎志異] なら、角川文庫の柴田天馬訳で読んだことがある(と言うか、私にとって [聊斎志異] は柴田訳しか考えられない)。和訳を以前読んだ時には気がつかなかったことを、今回中国語で読んで気がついたわけだが、そう云うことは時時あるものだ。兎に角、まず繁体字版、ついで柴田訳を引用しておこう。

嬰寧

王子服,莒之羅店人,早孤。絕惠,十四入泮,母最愛之,尋常不令游郊野。聘蕭氏, 未嫁而夭,故求凰未就也。

會上元,有舅氏子吳生,邀同眺矚。方至村外,舅家有仆來, 招吳去。生見游女如雲,乘興獨遨。

有女郎攜婢,拈梅花一枝,容華絕代,笑容可掬。生 注目不移,竟忘顧忌。女過去數武,顧婢曰:「個兒郎目灼灼似賊!」遺花地上,笑語自 去。

生拾花悵然,神魂喪失,怏怏遂返。至家,藏花枕底,垂頭而睡。不語亦不食。母懮 之。醮禳益劇,肌革銳減。醫師診視,投劑發表,忽忽若迷。母撫問所由,默然不答。

適 吳生來,囑密詰之。吳至榻前,生見之小下。吳就榻慰解,漸致研詰。生具吐其實,且求 謀畫。吳笑曰:「君意亦復痴!此願有何難遂?當代訪之。徒步于野,必非世家。如其未 字,事固諧矣;不然,拚以重賂,計必允遂。但得痊瘳,成事在我。」生聞之,不覺解頤。

吳出告母,物色女子居里,而近代訪既窮,並無蹤緒。母大懮,無所為計。
--Wikisource 中文版: 聊齋志異/第02卷 [嬰寧]

嬰寧

王子服(おうしふく)は莒(きょ)の羅店(らてん)の人だった。早く父をうしなって孤(みなしご)になったのだが、大そうりこうで、十四のとき泮(はん)に入った1)。母は、ひどく、かわいがって、常々は游郊野(ゆさん)などもさせず、蕭氏(しょうし)をもらって配偶(めあわ)せるつもりであったのが、未嫁(こない)まえに若死にをしたので、求凰(つまさだめ)が、まだ、すまずにいた。

上元の節句である。舅氏子(いとこ)の呉が迎えに来て、いっしょに散歩をしたが、村はずれまで来ると、叔父の家の僕(しもべ)が呉を呼びに来て連れていった。王は遊女2)が雲のようにいるを見て、興に乗じて、一人で遊び歩くのであった。

婢(こしもと)をつれ、一枝の梅花を、ひねくりながら歩いている娘がいた。絶代(よにまれ)なきりょうで、笑うようすが、手にも掬(く)まれるようである。王はじっとみつめて、しまいには、変に思われるのさえ忘れていた。女は幾足か過(いっ)てから、腰元を見返って、「このひとの目は灼灼(ぎょろぎょろ)して賊(どろぼう)みたいね」と言って、花を地上に遺(す)て、笑いながら行ってしまった。

王は急いで花を拾ったが、がっかりして、気が抜けたようになり、わびしく帰ってきたのである。家につくと、王は花を枕の底にしまい、頭を垂れて睡(ね)たまま、話もしないし食べもしないのだ。母は心配して醮禳(まじない)をさせるけれども、ますますひどくなるばかりで、すっかり、やせ、医師が診察して薬をやり病気を発表(そとにだ)すと、うっとりして迷ったようになってしまった。母が、やさしく、わけを聞いても、黙って返事もしないのである。

おりから呉が来たので、母は呉に、ないないで、たずねてみてくれと頼んだ。呉が榻(ねだい)の前に来ると、王は呉を見て、ほろほろと涙を流すのであった。呉は寝台の傍によって慰めながら、聞いてみると、王はくわしく事実を話し、そして、何とか考えてくれろと言った。呉は笑って、「きみも亦復痴(ずいぶんばか)げている。そんなことは何でもないさ。よろしい。きみに代わって探してみよう。徒歩于野(のあそび)をするくらいなら、きっと世家(いえがら)ではあるまい。もし許婚がなければ、もちろん、話は、まとまるし、そうでなかったら、たくさんな賂(かね)をやれば、思うに、きっと、ととのうさ。ただ、なおることだ。話はぼくが成功させる」と言った。王は、それを聞いて、思わず、にっこりしたのであった。

呉は部屋を出て母に話した。そして娘の居里(いどころ)を探したのであるが、訪ね尽くしても、さらに蹤緒(あとかた)がないので、母は、ひどく心配して、途方に暮れた。
--角川文庫 [完訳 聊斎志異 第三巻 (全4冊)] 柴田天馬訳。1969年改版。東京 角川書店。pp.15-16

注:
1)「泮に入る」: 「泮」は孔子廟の前の池のこと。明清時代、童試(県試・府試・院試の3つ)に合格して者が国立大学である [國子監] の学生になることを「入泮」と言った。
2)「遊女」: 「游(遊)」は物見遊山で出歩くこと。

この後、娘 (嬰寧) を探し出せなかった呉は、探索を諦めてしまって、適当なことを王に言って誤魔化す。業を煮やした、呉がデタラメに娘が暮らしていると言ったに場所へと出かける。すると...と云う具合に話が進み、落語の [崇徳院] からズレてしまう。

落語の [崇徳院] のテキストは、本稿の目的に丁度合うものが見つからないのだが、取り敢えずは以下を参照していただきたい。

[嬰寧] と [崇徳院] の構造上の類似点を挙げると次のようになる:

1. 親から大切にされている独身の青年が外出する。青年には、少なくとも途中までは同性の同伴者がいる。
2. 外出先で、青年は、美しい娘に遭う。娘には「婢(こしもと)」が同伴している。季節は「春」で、青年や娘が外出していることには、おそらく宗教的・祭儀的な意味がある。
3. 青年は娘を見つめ、娘は青年に気づく。
4. 娘は、ある物を落とし(あるいは、捨て)、青年がそれを拾う。その「ある物」とは限らないが、娘の象徴になる物が、娘から青年にわたる。
5. 娘の象徴になる物を持って、青年は自分の家に還る。青年は娘の象徴物を大切に仕舞う。
6. 青年は、娘に恋をしているが、その娘が誰かさえわからないために、「恋煩い」に陥り、元気をなくして病人のようになる。
7. 青年の親は心配して手を尽くすが、効果がない。青年は「元気がない」理由を、親に話さない。
8. 青年の親は、青年を医者に見せる。医者は、青年の「病」が内にこもったものであると診断して、それが外に出るような処方をする。
9. 青年の友人が、青年の家を訪れる。青年の親は、青年の友人に、青年から「元気がない」理由を聞き出すよう依頼する。
10. 青年の友人が青年に会うと、青年は友人に、外出時の娘との顛末と、娘が身元が不明であることをを話す。
11. 青年の友人は、青年の親に、青年の「元気がない」理由が「恋煩い」であること伝える。
12. 青年の友人は、娘を探し出すことになり、探しはじめるが、娘は見つからない。

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[飛行機に原子時計を載せて・・・] 補足: 相対論の話を少しばかり

以前、[nouse: 飛行機に原子時計を載せて・・・] (2004年9月9日 Thu) を書いた際に調べていて、「へぇ」と思いながらも書き損ねたことを書いておく。

いきなり話が脱線するが、実は現在このブログのテンプレートを、ニフティが言うところの「リッチ」に変更することを考えており、試した所、私が自分で挿入してきた html タグとの相性が悪いことに気が付いたので、タグの補正を行なっている。そこで、以前書いた記事を一つづつ走り読みするハメになったのだ。「さまざまのこと思ひ出す櫻哉」(笈の小文) で、つい立ち止まって読み耽ったりする。

で、まぁ、相対論の話なんだが。

「飛行機に原子時計を載せて・・・」でも書いたように、特殊相対論の検証を目指した Hafele と Keating との実験は、多分にフライングの気味があり、と言うか、後生の立場としては余り酷なことを言うのは謹むべきだろうが、それでも言ってしまうと「山師っぽい」ところがある(「冒険主義だった」と婉曲語法を使っても良うございますがね)。

しかし、そんなことは歴史の彼方に過ぎてしまった。跡のことは、篤実な科学史家にでも任せておけばよかろう。

GPS (Global Positioning System)、具体例を挙げると、[カーナビ] が、相対論を前提にしないと使い物にならないと云うのが「飛行機に原子時計を載せて・・・」の結びだったのだが、その際に引用した文章を、再度引用する。

要約:

相対性理論は間違っているといった疑似科学的言説が横行している。相対性理論の基本原理である光速度一定の原理は、GPS衛星が働くための基本的な原理である。GPS衛星は身近なところではカーナビや、巡航ミサイルの位置決めにも利用されている。光速度一定が成り立たなければ、カーナビは働かないのである。GPS衛星には原子時計が搭載されている。一般相対論によれば、高空を飛ぶ人工衛星の時計は地上の時計より遅れることが予言されるが、GPS衛星の時計はその遅れに対する補正もなされている。要するに、特殊相対論、一般相対論は最新技術に応用されており、もはや初歩的な意味で間違っているというような時代ではないのである。
--神戸大学理学部地球惑星科学科 松田卓也: カーナビと巡航ミサイルと相対論について (2002年7月、物理学会九州支部講演会、九州大学国際会議場にて)

まず、少し注釈をつけておこう。重箱の隅をつつくような言い方で申しわけないが、所謂「光速度一定の原理」つまり、電磁波の伝搬速度が慣性系の選択に依存しないと云うのは、マイケルソン・モーレーの実験 (Michelson–Morley experiment) による実験で確認された現象事実である。それは、マクスウェル方程式を不変にする局所座標系(ミンコフスキー空間)間の座標変換としてのローレンツ変換の本質に関わる特殊相対論の核心であり、当然、ガリレイ・ニュートン的世界観とは相容れないが、とにかく物理的現実である以上、高精度な時計を付随させた電磁波送信機を、位置が捕捉できている高々度の場所に置いて時間情報信号を電磁波により送信し、その信号を、やはり高精度な時計を付随させた受信機で受信するなら、送信機・受信機間の距離が測定できる。

ここらへんの議論はかなり無理があるのだが、それを敢えて無視して、話を続けると、測距法が得られた訣だから、3次元空間中の一般的配置においては4つ(以上)の送信機を使えば、受信機の位置は三角測量の原理で判定できる(受信機が、例えば地表面に固定されていると云う条件が加われば、3つの送信機でも位置決定は可能になる)。つまり、問題は初等幾何学に属する(工学的には、送信機の数が増えれば、精度が上がるとか、数学的には、送信機が特殊な位置関係にあると、一意の位置決定ができないことがありうると云った話はここではしない)。

つまり GPS 衛星の構想は、相対論とは独立に可能である。ただし、実際の運用には、相対論を考慮に入れた「誤差」の補正が必要だと云うのが問題の眼目なのだ。特に注意すべきなのは、相対論的な誤差は実質上一定の割合で間断なく蓄積していくことだ。この結果、補正を行なわないと、時間が経過すると早晩必ず実用に重大な支障が生じることになる。

しかし、先走らないで、引用文に戻ろう。実は、前回引用時に見落としてしまったが、上記「要約」には、タイプミスがある。「一般相対論によれば、高空を飛ぶ人工衛星の時計は地上の時計より遅れることが予言される」とあるけれども、実際には「遅れる」のではなく「進む」のだ。本文中では「一般相対論の予言によると、高空を飛ぶGPS衛星に積んだ時計は、地上の時計に比べると10億分の4程度進むはずである。」と、数値はともかく (実際には、1桁ほど小さい値になる) 正しく「進む」と記載されているのだが、問題の核心部分でのミスで、こう云うのは引用者泣かせである。とにかく、読み替える必要がある。

この間違いには若干同情できるところもあって、運動する物体上の時計の話なので、一般相対論よりポピュラーな特殊相対論な話の枠組みに囚われてしまって、つい「時計の遅れ」と書いてしまうこともありうるだろう。実は、この違いは、私が「へぇ」と思ったことにも関係する。

と云う訣で、ここで松田氏の講演を離れて、もう少し細かい話に移ろう。

[飛行機に原子時計を載せて・・・] でも言及した [GPS 衛星側での補正] ([GPS と物理] 野村清英 / 九州大学理学部) や、更には軌道の離心率を考慮に入れて、軌道に沿った線積分を行なっている [Relativistic Effects on Satellite Clocks] (Relativity in the Global Positioning System Neil Ashby / Dept. of Physics, University of Colorado) に書かれていることだが、GPS 衛星に搭載された時計に対する相対論の影響は、特殊相対論と一般相対論との二つの観点から論ぜられて、足し合わされている。

付言するなら、送信機だけではなく、受信機にも着目すると相対論的効果はこの2つに留まらない。受信機も厳密には慣性系に載っている訣ではなく、例えば受信機が地表にあるなら、地球の回転によるサニャック効果 (Sagnac effect) を考慮に入れてヨリ正確な位置決定を目指すことができる。しかし、私なぞは、送信機側で、特殊相対論的効果と一般相対論的効果をべつべつに考えて足し算しただけで、それなりの結果が出せることに感心してしまったりする(2007-05-29 こんな補足説明は必要はないとは思うが、一応つけておくと「特殊相対論的効果と一般相対論的効果をべつべつに考えて」と云うのは勿論、「言葉のアヤ」である)。まぁ、それはさておき...

特殊相対論的な補正項は、所謂「二次ドップラー効果」(second-order Doppler effect) である (日本語文献では、これは「横ドップラー効果」と言及されていることが多いようだ)。

少し復習しておこう。日本語版 Wikipedia の「ドップラー効果」の項にあるように、

光源 S が観測者 O から見て角度 θ の方向に速さ V で運動している場合、O での光の振動数 ν' は、

\nu'=\nu\times{\sqrt{1-(V/c)^2} \over 1-(V/c) \cos \theta}

となる。ここで、ν : 光源の出す光の振動数、V : 観測者から見た光源の速さ、c : 光速、θ : 観測者から見た光源の動く方向(θ=0:観測者に向かってくる場合)

重要なのは、光の場合には光源が観測者に対して真横に運動していて、視線方向の速度を持っていない場合(θ=90°)でも光の振動数が変化して見えることである。これを横ドップラー効果という。
--ドップラー効果 - Wikipedia

ここで、θ=90° とすれば、分母は 1 になるから、分子の平方根式 \nu\times\sqrt{1-(V/c)^2} に対し、初等的な2項展開を行ないさえすれば、補正項が簡単に得られる。

[GPS と物理] では、GPS 衛星の速度は 3.874 km/sec として、次の値が導かれている(Wikipedia では波源の速度は大文字の V で現わされていたが、[GPS と物理] では、波源、つまり衛星の速度は小文字 v で現わされている):

-(v/c)^2/2 = -8.4 \times 10^{-11}<br />

一般相対論的な補正項は、[GPS と物理] で言うところの「重力による赤方偏移」である(ここでも、言葉尻に拘るようで申しわけないが、実際に起こっているのは「重力減少による青方偏移」である。まぁ、マイナス符号を付けて考えれば「重力による赤方偏移」で一向に構わないわけだが...)。

これも復習しておこう。詳しい説明は一般相対論の教科書に譲るしかないが(申しわけないが具体名がちょっと出てこない。[場の古典論] あたりで十分だろうとも思えるが、最近はもっと良い教科書が出ているかもしれない。ネット上にも「丁度良い」と云う物が見当たりなかった。だいたい、日本語ネット上の相対論の話題は「イタイ人たち」のパフォーマンスの発表会の趣きがあって、調べ始めてすぐにウンザリしてしまったのだ)、弱い重力場 \phi を有する慣性系と、加速度系との比較を行なうことで、その場合の計量テンソルの 00 成分が次のようなものであることがわかる:

g_{00}=-1-{2\phi \over c^{2}}

座標依存周波数は、固有周波数を \sqrt{-g_{00}} で割ったものなので、近似的には固有周波数に 1-{\phi \over c^{2}} を掛けたものに等しい。これから、重力による赤方偏移/青方偏移が計算できる。

[GPS と物理] では次のようになっている(ここで \Delta U は、地表から GPS 衛星の高さまで上がった際の重力ポテンシャルの減少分)。

\Delta U / c^2 = 5.27 \times 10^{-10}

[GPS と物理]は、GPS 衛星の軌道高度を言及していないようだが、英文版 Wikipedia の "Global Positioning System" の項に記載されている GPS 衛星軌道の諸元、地上高度: 2.02x107 m, 軌道半径: 2.66x107 m (地球半径: 6.4x106 m) と、地心重力定数: 3.986×1014 m3/s2, 光速度: 3x108 m を使って計算してみると、たしかに大体上記の値が得られる。

[GPS と物理] と 英文版 Wikipedia とで、軌道諸元のセットが違っていると云う、「万が一の」可能性は少ない。なぜなら、GPS 衛星の軌道半径からケプラーの第3法則により速度が大体決まるが、それは、3.87 km/s で、上記の二次ドップラー効果の計算で用いた値にほぼ一致するからだ。

ちなみに "Global Positioning System" の説明では、一般相対論が弾き出す時計の進みは1日当たり 45,900 ナノ秒、特殊相対論が弾き出す時計の遅れは、1日当たり7,200 ナノ秒で、勿論これも、上記の計算に釣りあいがとれた数値である。

つまり、一般相対論的補正項の方が、特殊相対論的補正項より6倍以上大きいのだ。これを知った時には、思わず「へぇ」と思ってしまった。特殊相対論的効果が私たちの日常生活の傍にまで近付くことがあるのは、それなりに聞き及んでいたが、それを差し置いて一般相対論的効果が身近なものになっていたとは、全く知らなかったからだ。これは、新鮮な驚きだった。何十年経っても旧阿蒙から抜け出せない私のような者でも、少なくとも自分自身はしばしば刮目することができる役得があると云うところか。

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釈明若干: 記事 " List of Links to Mercurius/Hermes Images" に関連して

自分で書いておいてナニだが、日本語ブログのなかに英語のページが突然あると、かなり面妖なものだ。自己諒解が主目的である本ブログであっても、「鼠に齧らせておけばよい」などとすましてはいられまい。何らかの釈明が必要であろうと思って書いておく。

Wir überließen das Manuskript der nagenden Kritik der Mäuse um so williger, als wir unsern Hauptzweck erreicht hatten - Selbstverständigung.
--Karl Marx - Zur Kritik der Politischen Oekonomie - Vorwort

問題の英語ページ [nouse: List of Links to Mercurius/Hermes Images (English Version)] は、日本語ページ [nouse: メルクリウス/ヘルメス図像リンク集: イル・ジョルナーレ ("Il Giornale") ロゴに関連して] 中のリスト部分に、リスト作成の経緯を英文で付したものである。

いみじくも www (world wide web) と云う言葉が名詮自性するように、このささやかなブログであっても、世界中からアクセスがある。例えば、最近4ヵ月 ( 2007年1月1日 ~ 2007年4月11日) における当ブログ訪問者が使用するブラウザの言語設定を纏めたものを、ココログのアクセス解析から転写すると以下の通りだ。

1 [ja]Japanese2,369 93.1%
2 [en]English116 4.6%
3 [es]Spanish9 0.4%
3 [fr]French9 0.4%
5 [zh]Chinese8 0.3%
6 [de]German7 0.3%
7 [ko]Korean5 0.2%
8 [it]Italian4 0.2%
9 [ca]Catalan3 0.1%
9 [el]Greek3 0.1%
11 [pt]Portuguese2 0.1%
11 [ru]Russian2 0.1%
13 [da]Danish1 0.0%
13 [nb]NorwegianBokmal1 0.0%
13 [sl]Slovenian1 0.0%
13 [chr]1 0.0%
13 [hu]Hungarian1 0.0%
13 [nl]Dutch1 0.0%
13 [fi]Finnish1 0.0%

"chr" と云う言語コードはアメリカ先住民のチェロキー (Cherokee) のものであるらしい。

私自身が世界中のサイトを覗きまわっているので、逆にこのサイトの訪問者の使用言語が多種に亘るのには「お互い様」だ。

使用言語とリモートホストの URL から見て、ギリシア在住のギリシャ人と思われる方が検索されて、世界でただ一つこのサイトがヒットしたために訪問されたのを見たりすると、ちょっとした縁 (えにし) を感じたりしたこともあるのだが、それまでのことなのだ。「非日本語使用者は、このサイトに来た瞬間に失望しているだろうな」とは思うのだが、だからドウコウするようなことはなかった。中には、グーグルの翻訳エンジンを使って、翻訳させている訪問者もあって、もちろん結果は噴飯物なのだが、「あんなものは使う方が悪い」と、私は考えているから、同情する気は起こらない。

そうした事情が、「メルクリウス/ヘルメス図像リンク集・・・」を書いた後、変わった。グーグルのイメージ検索を介して、様様な言語使用者が頻頻とそのページを訪問されるてくる。「瞬間最大風速」的なものではあるが、非日本語使用者総数が日本語使用者数に拮抗したりする。こうなると放ってはおけない。" List of Links to Mercurius/Hermes Images" を作成した所以である。機械翻訳より、ちったあマシな英文になっているであろうと思っている。

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List of Links to Mercurius/Hermes Images (English Version)

Below is a list of links to web image resources of Mercurius (or, Mercury)/Hermes, the Roman/Greek gods of herald, commerce, travel, invention, music, agriculture and thievery, and to pages showing images of the gods.

I prepared a Japanese version of the list in the course of writing a blog piece "Foundation of Starbucks and Changeovers of its Logo" (in Japanese) and published it with a preface as another Japanese article on March 12, 2007 ("List of Links to Mercurius/Hermes Images: Iconography of the Il Giornarle logo").

Il Giornarle color logo"Il Giornarle" (1985-1987) was a coffee bar chain in Seattle, Washington, USA, managed by Howard Schultz, who created it after he left Starbucks (a coffee beans retailer in those days) and ran it until he purchased his ex-employer and merged the two companies into a new one, Starbucks Corporation.

Original_twin_tailed_siren_1Starbucks_logo_until_1987Il Giornarle logo was a profile of Mercury's head printed, as testified by Schultz, in green, which the new company took as a logo color instead of the original dark brown.

Unfortunately, the available copy of Il Giornarle logo has lost shadings, and it is hard to me to state whether in the icon the god wears a winged cap, one of his specialties. The image, however, looks a reproduction of what can be dated to many years ago, such is exactly the mermaid (siren or melusina) of the Starbucks first logo.

Roman_coin_mercury_syd_00875Il Giornarle's Mercury may have been got from something old like an ancient or medieval fine art work, a legendary relic, and (most plausibly) a punch mark of Greco-Roman coins. Maybe. So not maybe. That is a question. Thus I began to collect images, ancient or not, of Mercurius and Hermes, often never distinguishable between the two. I realized soon that the image resource relating to the word "Mercurius," "Mercury" or "Hermes" is surprisingly large, and, what was worse, many images are irrelevant to the Roman/Greek god, but often pictures of goods such as a French boutique's.

Mercurius/Hermes is the god of commerce, and may hide himself in all the commercial products, though what I was seeking was apparent images of the god. I suspended the work, and made up a list of the then found pages showing either of the two gods or both and some image files.

Unlike the Japanese version, some links have thumbnails for help to readers.

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ホメーロス「ヘルメース讃歌 (ΕΙΣ ΕΡΜΗΝ)」読解 (ヘルメースの属性に関する部分)

[nouse: メルクリウス/ヘルメス図像リンク集: イル・ジョルナーレ ("Il Giornale") ロゴに関連して] (2007年3月12日) でも触れたようにヘルメス(メルクリウス)には様様な属性がある。

以下は、「[ホメーロスの諸神讃歌] (訳註:沓掛良彦) 1990年4月 東京 平凡社 pp.169-202」中の [讃歌第4番:ヘルメース讃歌] をザッと読み、ヘルメス(以下、原語 Ἑρμῆς に合わせて、適宜「ヘルメース」と言う)の属性に関わりそうなところの「当たり」を付けてから、その部分のギリシア語テキストを Perseus Digital Library 所収の "Hymn 4 to Hermes Hugh G. Evelyn-White, Ed." から転写して、それに若干の読解を試みたものである。

更に、参考として沓掛訳も、拙訳に対照して並記してある。ただ、沓掛訳の原テキストは Les Belles Lettres 版 ("Homère, Hymnes" Texte ètablit et traduit par J. Humbert, Sociètè d'édition, Paris 1967. 私は未見) であって、Perseus Digital Library 版のギリシア語テキストの基本になっている筈の Loeb Classical Library 版 (おそらく "Hesiod: The Homeric Hymns and Homerica (Loeb Classical Library #57)") とは異なる。このため、訳文のみどうしでの比較は厳密には無意味であるし、また、並記したことに他意はないので、拙訳との比較検討をするつもりはない。

なお、沓掛訳は、文庫化されて筑摩書房から発売されている(ホメーロスの諸神讃歌)。その際訂正がなされたとのことだが、その文庫版を私は未見なので、その内容は参照していない。

ギリシア語テキストには、別に Oxford Classical Texts (Oxford University Press) 所収の "Homeri Opera: Vol. V. Hymns: (Hymni, Cyclus, Fragmenta, Margites, Batr, Vitae)" がある。これは手元にあったので、綴りのチェック程度には利用した。


ヘルメースの誕生。牧者。幸運を齎す者。神神の使者。


1 Ἑρμῆν ὕμνει, Μοῦσα, Διὸς καὶ Μαιάδος υἱόν,
2 Κυλλήνης μεδέοντα καὶ Ἀρκαδίης πολυμήλου,
3 ἄγγελον ἀθανάτων ἐριούνιον,

1 ヘルメースを寿ぎたまえ。ムーサよ。そは、ゼウスとマイアの子。
2 キューレーネーと羊多きアルカディアとの護り主。
3 不死なる神神の御使い。幸運を齎す者。

ヘルメースを讃め歌え、ムーサよ、ゼウスとマイアの御子、
キューレーネーと羊多いアルカディアを統べる神、
幸運をもたらす御使者(みつかい)を。
--[ホメーロスの諸神讃歌] 訳註:沓掛良彦 (1990年 東京 平凡社) pp.169-232 [ヘルメース讃歌 (讃歌第四番)] p.169

    第1行
  • Ἑρμῆν: 男性名詞「ヘルメース」(Ἑρμῆς) 単数対格。
  • ὕμνει: 動詞「歌う」(ὕμνεω) 能動相現在命令法第2人称単数。
  • Μοῦσα: 女性名詞 「ムーサ」(Μοῦσα) 単数呼格。
  • Διὸς: 男性名詞「ゼウス」 (Ζεύς) 単数属格。
  • Μαιάδος: 女性名詞「マイア」(Μαιάς) 単数属格。
  • υἱόν 男性名詞「息子」 (υἱός) 単数対格。
    第2行
  • Κυλλήνης: 女性名詞「キューレーネー」(Κυλλήνη) 単数属格。アルカディアの山。対応する形容詞 Κυλλήνιος (男性単数主格) は、名詞化してヘルメースの通り名でもある。
  • μεδέοντα: 動詞「守る、支配する」(μέδω) の能動相現在分詞男性単数対格(男性単数主格形は μεδέων)。 名詞用法として「守護者/支配者」の意。μέδω は動詞としては用いられず、専ら、この名詞形として現われる。ちなみに、女性単数主格形は μεδέουσα だが、これが所謂「メドゥサ/メデューサ」の由来。
  • Ἀρκαδίης: 女性名詞「アルカディア」(Ἀρκαδία) 単数属格。
  • πολυμήλου: 形容詞「羊に富む」(πολύμηλος) 女性単数属格。πολύ + μηλος
    第3行
  • ἄγγελον: 男性名詞「使者」(ἄγγελος)単数対格。 ἄγγελος は "angel" の語源。
  • ἀθανάτων: 形容詞「不死なる」(ἀθάνατος) 男性複数属格。ἀθάνατος の男性/女性複数形 ἀθάνατοι/ἀθάναται には名詞用法として「不死なる者たち」特に「神神」の意がある。
  • ἐριούνιον: 男性名詞「幸運を齎す者」(ἐριούνης) 単数対格。ヘルメースの別名。

「老獪なる赤子」。詐欺師。盗人。牧者。夢の配達人。「戸口を見張る者」


13 καὶ τότ' ἐγείνατο παῖδα πολύτροπον, αἱμυλομήτην,
14 ληιστῆρ', ἐλατῆρα βοῶν, ἡγήτορ' ὀνείρων,
15 νυκτὸς ὀπωπητῆρα, πυληδόκον, ὃς τάχ' ἔμελλεν

13 そも(マイアが)産みたまいしは、老獪なる赤子、口先三寸にて誤魔化し、
14 盗みを働き、牛を追う、夢の先達、
15 夜陰を窺い、戸口を見張る。

その時かのニンフが産んだのは、策略に富み、奸知に長け、
盗人にして牛を追う者、夢をもたらし、夜陰をうかがい、門口を見張る神であった。
--[ホメーロスの諸神讃歌] 訳註:沓掛良彦 (1990年 東京 平凡社) pp.169-232 [ヘルメース讃歌 (讃歌第四番)] p.170

    第13行
  • ἐγείνατο: 動詞 「生まれる」(γείνομαι) 中動相アオリスト直説法第3人称単数。中動相として「産む」の意。
  • παῖδα: (男性)名詞「子供」(παῖς) 単数対格。
  • πολύτροπον: 形容詞 「劫を経た、老獪な」(πολύτροπος) 男性単数対格。オデュッセウス の「通り名」でもある。新生児であるヘルメースに対する形容なので可笑しみがでてくる(「海千山千の子供」)。ユング風の言い方をするなら「老賢者にして始原児」
  • αἱμυλομήτην 男性名詞「甘言で誤魔化すのが巧みな奴」(αἱμυλομήτης) 単数対格。Liddell-Scott で釈義を "of winning wiles" とするは、前に "man" が脱落したか?
    第14行
  • ληιστῆρ': 男性名詞「盗人」(ληιστήρ) 単数対格 ληιστῆρα の語末母音省音。
  • ἐλατῆρα: 男性名詞「(家畜を)追って移動させる者」(ἐλατήρ) 単数対格。
  • βοῶν: (男性/女性)名詞「牛」(βοῦς) 複数属格。"βοῦς" はラテン語 "bos" (属格形: bovis) を経由して、英語 "bovine" へ。BSE (牛海綿状脳症) の B である。
  • ἡγήτορ': 男性名詞「導く者」(ἡγήτωρ) 単数対格 ἡγήτορα の語末母音省音。
  • ὀνείρων: 男性名詞「夢」(ὄνειρος) 複数属格。
    第15行
  • νυκτὸς: 女性名詞「夜」(νύξ) 単数属格。
  • ὀπωπητῆρα: 男性名詞「見つめる者、窺う者」(ὀπωπητήρ) 単数対格。
  • πυληδόκον: 男性名詞「戸口の見張り」(πυληδόκος) 単数対格。


牛泥棒、敷居


20 ὃς καί, ἐπειδὴ μητρὸς ἀπ' ἀθανάτων θόρε γυίων,
21 οὐκέτι δηρὸν ἔκειτο μένων ἱερῷ ἐνὶ λίκνῳ,
22 ἀλλ' ὅ γ' ἀναί̈ξας ζήτει βόας Ἀπόλλωνος
23 οὐδὸν ὑπερβαίνων ὑψηρεφέος ἄντροιο.

20 ヘルメース、母なる神の胎内を飛び出でし後
21 留まり居べき神さびの揺籃より、幾許も居寝ぬまま
22 兎にも角にも起き出でて、アポローンの牛ども求め
23 天井高き洞窟の、敷居を跨いで越えて去りにけり。

ヘルメースは母の不死なる胎内から跳び出すと、
聖なる揺籃の中に、長くはじっとしてはいなかった。
天井の高い洞窟の敷居を躍り越え、
アポローンの牛どもを探しにでかけたのだ。
--[ホメーロスの諸神讃歌] 訳註:沓掛良彦 (1990年 東京 平凡社) pp.169-232 [ヘルメース讃歌 (讃歌第四番)] p.170

    第20行
  • ὃς: 関係代名詞。男性単数主格。指示代名詞の代わりに使われている。ヘルメースのこと。
  • ἐπειδὴ: 接続詞 (ἐπεί の異形)。「..の時、..の後」
  • μητρὸς: 女性名詞 (μήτηρ) 単数属格。
  • ἀπ': 前置詞属格支配。ἀπό
  • ἀθανάτων: 女性名詞複数属格。複数だから、「不死なる者たち」つまり「神神」のこと。ヘルメースの母、マイアがその内の一人だと云うこと。
  • θόρε: 動詞「飛ぶ、跳ねる」(θρῴσκω) 能動相アオリスト直説法第3人称単数。
  • γυίων: 中性名詞「手、腕、足」(γυῖον) 複数属格。"μητρὸς γυῖα" で「子宮」の意。
    第21行
  • οὐκέτι: 副詞「もはや...しない」
  • δηρὸν: 形容詞「長い、長すぎる」(δηρός) 中性対格。副詞用法。
  • ἔκειτο: 動詞「横たわる」(κεῖμαι) 中動相未完了過去直説法第3人称単数。
  • μένων: 動詞「本来の場所に留まる」(μένω) 能動相現在分詞男性単数主格。
  • ἱερῷ: 形容詞「神的な」(ἱερός) 中性単数与格。
  • λίκνῳ: 中性名詞「箕籃、揺籠」(λίκνον) 単数与格。
    第22行
  • ἀλλ': 接続詞。ἀλλά
  • γ': 小辞。「少なくとも、何れにしろ」γε
  • ἀναί̈ξας: 動詞「跳び起きる」(ἀναί̈σσω) 能動相アオリスト分詞男性単数主格。
  • ζήτει: 動詞「探す」(ζητέω) 能動相未完了過去直説法第3人称単数。
  • βόας: (男性/女性)名詞 (βοῦς) 複数対格。
  • Ἀπόλλωνος: 男性名詞「アポローン」(Ἀπόλλων) 単数属格。
    第23行
  • οὐδὸν: 男性名詞「敷居」(οὐδόσ) 単数対格。
  • ὑπερβαίνων: 動詞「跨ぎ越える」(ὑπερβαίνω) 能動相現在分詞男性主格。
  • ὑψηρεφέος: 形容詞「天井が高い、屋根が高い」(ὑψηρεφής) 中性単数属格。
  • ἄντροιο: 中性名詞「洞窟」(ἄντρον) 単数属格。


楽器 (竪琴) の発明者


24 ἔνθα χέλυν εὑρὼν ἐκτήσατο μυρίον ὄλβον:
25 Ἑρμῆς τοι πρώτιστα χέλυν τεκτήνατ' ἀοιδόν:

24 さても一尾の亀を見いだしたり。そは、限りなき宝にこそありけれ。
25 ヘルメース、亀をして妙なる音を奏でさせ初めにし者なりければ。

そこで一匹の亀を見つけたが、これは大層な宝を手に入れたというもの、
ヘルメースこそが、最初に亀を歌奏でる具としたのだから。
--[ホメーロスの諸神讃歌] 訳註:沓掛良彦 (1990年 東京 平凡社) pp.169-232 [ヘルメース讃歌 (讃歌第四番)] p.170

    第24行
  • ἔνθα: 小辞。「そこで」
  • χέλυν: 女性名詞「亀」(χέλυς) 単数対格。
  • εὑρὼν 動詞「発見する」(εὑρίσκω) 能動相アオリスト分詞男性単数主格。その能動相現在完了直説法第1人称単数が εὕρηκα 「我見い出せり」
  • ἐκτήσατο: 動詞「得る」(κτάομαι) 能動相アオリスト直説法第3人称男性単数。
  • μυρίον: 形容詞「限りない」(μυρίος) 男性単数対格。
  • ὄλβον: 男性名詞「富、幸福」(ὄλβος) 単数対格。
    第25行
  • τοι: 小辞。「まことに」
  • πρώτιστα: 形容詞「一番最初の」(πρώτιστος) 中性対格。副詞として用いられている。「一番最初に」
  • τεκτήνατ': 動詞「工作する」(τεκταίνομαι) deponentia 中動相アオリスト直説法第3人称単数。τεκτήνατο
  • ἀοιδόν: 男性名詞「歌手」(ἀοιδόσ) 単数対格。「音楽的な音を出す」の意の形容詞的用法か。

走る者


69 αὐτὰρ ἄρ' Ἑρμῆς
70 Πιερίης ἀφίκανε θέων ὄρεα σκιόεντα,

69 (ヘルメースは)ようよう、
70 森の小暗いピーエリアーの山あいに走り着けり

ヘルメースは足速に駆けて、ピーエリアーの蔭なす山あいへと着いた。
--[ホメーロスの諸神讃歌] 訳註:沓掛良彦 (1990年 東京 平凡社) pp.169-232 [ヘルメース讃歌 (讃歌第四番)] p.173

    第69行
  • αὐτὰρ: 小辞 「それで」「しかし、とはいえ」
  • ἄρ': 小辞「それで」「どうやら」「結局」「勿論」ἄρα
    第70行
  • Πιερίης: 女性名詞「ピーエリアー」(Πιερία) 単数属格。ムーサたちが住んでいたと云うマケドニアの山地。
  • ἀφίκανε: 動詞「到達する」(ἀφικάνω) 能動相未完了過去直説法第3人称単数。
  • θέων: 動詞「走る」(θέω) 能動相現在分詞男性単数主格。
  • ὄρεα: 中性名詞「山」(ὄρος) 複数対格。
  • σκιόεντα: 形容詞「蔭なす」つまり「木木が鬱蒼と茂っている」(σκιόεις) 中性複数対格。


足跡の詐術


73 τῶν τότε Μαιάδος υἱός, ἐύσκοπος Ἀργειφόντης,
74 πεντήκοντ' ἀγέλης ἀπετάμνετο βοῦς ἐριμύκους.
75 πλανοδίας δ' ἤλαυνε διὰ ψαμαθώδεα χῶρον
76 ἴχνι' ἀποστρέψας: δολίης δ' οὐ λήθετο τέχνης
77 ἀντία ποιήσας ὁπλάς, τὰς πρόσθεν ὄπισθεν,
78 τὰς δ' ὄπιθεν πρόσθεν: κατὰ δ' ἔμπαλιν αὐτὸς ἔβαινε.

73 かの時、アルゴス殺しなるマイアの御子は、牛の群れより用心深く
74 五十頭を、くすねて盗れば、嘶き騒ぐ
75 迷い出てたる牛どもに、砂地を渡らせ
76 さかしまに足跡を付けさせようと、悪巧み、おさおさ抜かりなく
77 牛どもの前に立ちふさがり、前の蹄を後ろにし、
78 後の蹄を前にせしめて、押し戻しつつ歩みたり。

マイアの息子、アルゴスの殺し手である神は、その牛の群から五十頭を切り離した。
そして足跡の向きを逆にさせ、砂地のあたりでかなたこなたと追いまわした。
策略を用いるにもぬかりなく、蹄の向きが逆になるように、
前足が後ろに後足が前になるよう歩かせ、自分はそれに向き合って歩いた。
--[ホメーロスの諸神讃歌] 訳註:沓掛良彦 (1990年 東京 平凡社) pp.169-232 [ヘルメース讃歌 (讃歌第四番)] p.173

    第73行
  • τῶν: 定冠詞複数属格。「牛(複数)」を示す。指示代名詞として用いられている。奪格的な属格とすべきか、部分属格とすべきか微妙だが大意は変わるまい。
  • ἐύσκοπος: 形容詞 「目ざとい、用心深い」(εὔσκοπος) 男性単数主格。
  • Ἀργειφόντης: 「アルゴス殺し」男性名詞 (Ἀργειφόντης) 単数主格。ヘルメースのあだ名。
    第74行
  • πεντήκοντ': 数詞「50」。πεντήκοντα
  • ἀγέλης: 「(家畜の)一群」女性名詞 (ἀγέλη) 単数属格。
  • ἀπετάμνετο: 動詞 「切り取る、裁ち落とす」(ἀποτέμνω) 中動相未完了過去直説法第3人称単数。中動相では「切り取って横領する」の意となる。
  • βοῦς: (男性/女性)名詞複数対格。
  • ἐριμύκους: 形容詞 「喧しく嘶く」 (ἐρίμυκος) 男性/女性複数対格。
    第75行
  • πλανοδίας: 形容詞「迷い出た」(πλανόδιος) 女性複数対格。もとの群れから離れた牛たちを指す。これが女性形だと云うことは「牛ども」は雌であったか。
  • ἤλαυνε: 動詞「(盗んだ家畜を)追い立てる」(ἐλαύνω) 能動相アオリスト直説法第3人称単数。所謂「流音(幹)動詞」(verba liquida) であるため、アオリストの σ が消失する。高津 p.195。
  • ψαμαθώδεα: 形容詞「砂の」(ψαμαθώδης) 男性単数対格。
  • χῶρον: 男性名詞「地面」 (χῶρος) 単数対格。
    第76行
  • ἴχνι': 中性名詞 「足跡」(ἴχνιον) 複数対格。ἴχνια
  • ἀποστρέψας: 動詞「反転させる」(ἀποστρέφω) 能動相アオリスト分詞男性単数主格。
  • δολίης: 形容詞。「狡賢い」(δόλιος) 女性単数属格。
  • λήθετο: 動詞「気付かれない」(λανθάνω) 中動相未完了過去直説法第3人称単数。中動相としては「忘れる」の意(属格支配)。
  • τέχνης: 女性名詞「技能、手管」(τέχνη) 単数属格。
    第77行
  • ἀντία: 形容詞「対面する」(ἀντίος) 中性複数対格。副詞用法「対面して」
  • ποιήσας: 動詞 (ποιέω) 能動相アオリスト分詞男性単数主格。
  • ὁπλάς: 女性名詞 「蹄」(ὁπλή) 複数対格。
  • πρόσθεν: 副詞「前」
  • ὄπισθεν: 副詞「後」
    第78行
  • κατὰ: 副詞。「後を追って」と云う含意だろう。
  • ἔμπαλιν: 副詞「逆方向に」
  • ἔβαινε: 動詞「歩く」(βαίνω) 能動相未完了過去直説法第3人称単数。


ヘルメースのサンダル


79 σάνδαλα δ' αὐτίκα ῥιψὶν ἐπὶ ψαμάθοις ἁλίῃσιν,
80 ἄφραστ' ἠδ' ἀνόητα διέπλεκε, θαυματὰ ἔργα,
81 συμμίσγων μυρίκας καὶ μυρσινοειδέας ὄζους.
82 τῶν τότε συνδήσας νεοθηλέος ἄγκαλον ὕλης
83 ἀβλαβέως ὑπὸ ποσσὶν ἐδήσατο σάνδαλα κοῦφα

79 さて、海辺の砂の上ではすぐさまに、編み上げのサンダルをば、
80 言語道断、前代未聞、驚天動地の様に作りなす。
81 そは、御柳とミルテらしき枝とを綯い交ぜにして
82 芽生えの柴の一抱えを
83 葉取らぬままに両の足へと縛りつけ、歩みの軽き履き物となしたるなり。

それから海辺の砂浜に来ると、たちまちちして御柳(タマリスク)と天人花(ミルテ)の小枝とを織りまぜて
驚くべき作である、何とも言いがたい、思いもよらぬ形の草鞋を編み上げた。
若枝を一抱えほど束にして、その葉ともどもしっかりと足に縛りつけ、
それを軽い草鞋となしたのだ。
--[ホメーロスの諸神讃歌] 訳註:沓掛良彦 (1990年 東京 平凡社) pp.169-232 [ヘルメース讃歌 (讃歌第四番)] p.173

    第79行
  • σάνδαλα: 中性名詞「サンダル」 (σάνδαλον) 複数対格。通常複数形で用いられる。所謂「ヘルメスのサンダル」。(現代でも "hermes sandal" と云う商品が販売されている)。なお、このサンダルには「葉」は付いているが「翼」は付いていないことに注意。
  • αὐτίκα: 副詞「直ちに、その場で」
  • ῥιψὶν: 女性名詞「(麦藁、藺草、枝等の)編み物細工」(ῥίψ) 複数与格。
  • ψαμάθοις: 女性名詞「(海辺の)砂」(ψάμαθος) 複数与格。
  • ἁλίῃσιν: 形容詞「海の」(ἅλιοσ) 女性複数与格。
    第80行
  • ἄφραστ': 形容詞「表現不可能な」(ἄφραστος) 中性複数対格。ἄφραστα
  • ἠδ': 接続詞「であり、そして」。ἠδε
  • ἀνόητα: 形容詞「理解不可能な、前代未聞の」(ἀνόητος) 中性複数対格。
  • διέπλεκε: 動詞「編む」(διαπλέκω) 能動相未完了過去直説法第3人称単数。
  • θαυματὰ: 形容詞「驚くべき」(θαυματός) 中性複数対格。"θαυμαστός" の異形(叙事詩で用いられる)。
  • ἔργα: 中性名詞「作品」(ἔργον) 複数対格。
    第81行
  • συμμίσγων: 動詞「混ぜる」(συμμίγνυμι) 能動相現在分詞男性単数主格。
  • μυρίκας: 女性名詞「タマリスク (御柳)」(μυρίκη) 複数対格。
  • μυρσινοειδέας: 形容詞「ミルテ (銀梅花) のような」(μυρσινοειδής) 男性複数対格。ミルテ (Myrtle) はアプロディテ (Aphrodite) の神花とされる。ミルテ (μυρσίνη) そのものではなく、形容詞化 (εἶδος: 形状、種類) している。
  • ὄζους: 男性名詞「大枝、小枝」(ὄζος) 複数対格。
    第82行
  • συνδήσας: 動詞「結び合わせる」(συνδέω) 能動相アオリスト分詞男性単数主格。
  • νεοθηλέος: 形容詞「芽生えたばかりの」(νεοθηλής) 女性単数属格。
  • ἄγκαλον: 男性名詞「一抱え分」(ἄγκαλος) 単数対格。
  • ὕλης: 女性名詞「柴」(ὕλη) 単数属格。
  • なお、この行の "νεοθηλέος ἄγκαλον ὕλης" の部分は Oxford Classical Texts では "νεοθηλέαν ἄγκαλω ὥρην" を採用しており、脚注で、Loeb 版の形に言及している。
    第83行
  • ἀβλαβέως: 副詞「傷つけることなく」(ἀβλαβής)。
  • ὑπὸ: 前置詞。与格支配の場合は「に向かって」
  • ποσσὶν: 男性名詞「足」(πούς) 複数与格。
  • ἐδήσατο: 動詞「縛りつける」(δέω) 中動相アオリスト直説法第3人称単数。中動相として「我が身に縛りつける、我が身に結びつける、着る」
  • κοῦφα: 形容詞「軽い」(κοῦφος) 中性複数対格。


葡萄栽培の守護


87 τὸν δὲ γέρων ἐνόησε δέμων ἀνθοῦσαν ἀλωὴν
88 ἱέμενον πεδίονδε δι' Ὀγχηστὸν λεχεποίην
89 τὸν πρότερος προσέφη Μαίης ἐρικυδέος υἱός:
90 ὦ γέρον, ὅστε φυτὰ σκάπτεις ἐπικαμπύλος ὤμους,
91 ἦ πολυοινήσεις, εὖτ' ἂν τάδε πάντα φέρῃσι,
91α [εἴ κε πίθῃ, μάλα περ μεμνημένος ἐν φρεσὶ σῇσι]
92 καί τε ἰδὼν μὴ ἰδὼν εἶναι καὶ κωφὸς ἀκούσας,
93 καὶ σιγᾶν ὅτε μή τι καταβλάπτῃ τὸ σὸν αὐτοῦ.

87 さてもここに、花咲く葡萄園を築かんとする翁ありて、目に留めたるは、かの神
88 急ぎ平原目指して、草生す所に建てる都市オンケーストスを通り抜けんとする姿なり。
89 輝けるマイアの御子は、先手を打って翁に声をかけ
90 「やぁ、肩ひしゃげさせ草木を掘り起こしている爺さまよ。
91 成程、葡萄がみんな実ったならば、さぞかし葡萄酒が取れるだろうな。
91α [得心したなら、そなたの心に刻んで、努努忘るることなかれ]
92 見ざる、聞かざる、
93 言わざるを守ればこそ、お前の財産が即座に損なわれずにすむのだぞ。」

さて、草が緑の床なすオンケーストスを抜けて、平原へと向かうこの神に
花咲いている葡萄畑の手入れをしている老人が目をとめた。
そこでマイアの誉れ高い息子が先に言葉をかけた。
「肩をこごめて葡萄の木を掘り返している爺さんよ、
この葡萄が実ったら、たんと葡萄酒ができような。
だが、見ても見ぬふりをして、聞いても聞かぬふりをして、
黙っているがいい。あまえ自身の財産が損なわれたりしないかぎりはな。」
--[ホメーロスの諸神讃歌] 訳註:沓掛良彦 (1990年 東京 平凡社) pp.169-232 [ヘルメース讃歌 (讃歌第四番)] p.174

    第87行
  • γέρων: 男性名詞「老人」単数主格。
  • ἐνόησε: 動詞「気づく」(νοέω) 能動相アオリスト直説法第3人称単数。
  • δέμων: 動詞「作り上げる、構築する」(δέμω) 能動相現在分詞男性単数主格。
  • ἀνθοῦσαν: 動詞「花咲く」(ἀνθέω) 能動相現在分詞女性単数対格。
  • ἀλωὴν: 女性名詞「果樹園、葡萄園」(ἀλωή) 単数対格。
    第88行
  • ἱέμενον: 動詞「解発する、放出する」(ἵημι) 中動相現在分詞男性単数対格。中動相なので、自動詞的に「先を急ぐ」ぐらいの意味になる。
  • πεδίονδε: 副詞「平原へ、平地へ」
  • δι': 前置詞。 δια
  • Ὀγχηστὸν: 男性名詞「オンケーストス」(Ὀγχηστόν) 単数対格。古代ギリシア北部のボイオティア地方(Boeotia) の都市。往事、ボイオティアには (Copais) と云う湖があり、オンケーストスは、その湖畔に築かれていた。ポセイドーンの神殿があったと云う。
  • λεχεποίην: 男性名詞「草生す所に建つもの」(λεχεποίης) 単数対格。(λέχος:床 + ποίᾱ:草)。都市の形容語として使われる。
    第89行
  • πρότερος: 副詞「先に」
  • προσέφη: 動詞「声をかける」(πρόσφημι) 能動相未完了過去直説法第3人称単数。
  • ἐρικυδέος: 形容詞「著名な、輝かしき」(ἐρικυδής) 女性単数属格。「属格」である以上、この言葉は Μαῖα に係っている。
    第90行
  • γέρον: 男性名詞 γέρων 呼格。
  • ὅστε: 関係代名詞男性主格。ὅςὅστις と同義。
  • φυτὰ: 中性名詞「植物」(φυτόν) 複数対格。
  • σκάπτεις: 動詞「掘りおこす」(σκάπτω) 能動相現在直説法第2人称単数。
  • ἐπικαμπύλος: 形容詞「曲がった、捻じれた」(ἐπικαμπύλος) 男性単数主格。
  • ὤμους: 男性名詞「肩(及び上腕)」(ὦμος) 複数対格。所謂「限定対格」(別名「ギリシア式対格」)で形容詞の意味を限定している。「肩において」。"ἐπικαμπύλος ὤμους" は、「重みに『肩をひしゃげさせて』耕している」含意だろう。
    第91行
  • : 副詞「確かに、成程、如何にも」。単純な確認・保証ばかりでなく、皮肉、譲歩の意を持ちうる。
  • πολυοινήσεις: 動詞「多量の葡萄酒に恵まれる」(πολυοινέω) 能動相未来直説法第2人称単数と、能動相アオリスト接続法第2人称単数とが同形だが、接続法だろう。「葡萄が採れなくなることもありうる(葡萄を採れなくさせることもできる)」と云う、ヘルメースの「脅し」。
  • εὖτ': 接続詞。後続の ἂν と組みになって "εὖτ' ἂν" として接続法を導いて、未来時へ言及する。εὖτε
  • ἂν: 小辞。所謂 modal particle
  • τάδε: 近称代名詞中性複数主格。集合的に捉えられて、単数扱いになっているため、下の φέρῃσι が単数形になっている。
  • πάντα: 形容詞「全て」(πᾶς) 男性複数対格。副詞として使用されている。
  • φέρῃσι: 動詞「実を結ぶ」(φέρω) 能動相現在接続法第3人称単数。
    第91α行 Oxford 版では、これは欠行になっている。
  • εἴ: 接続詞「もしも」
  • κε: 小辞。"ἄν" に同じ。
  • πίθῃ: 動詞「説得する」(πείθω) 中動相接続法アオリスト第2人称単数。中動相では「納得する」ぐらいの意味になる。
  • μάλα: 副詞「非常に」
  • περ: 小辞。後置されて意味を強める。
  • μεμνημένος: 動詞「思い出させる」(μιμνήσκω) 中動相現在完了分詞男性単数主格。中動相なら通常は「思い出す」の意だが、特に独立用法の場合は「憶えておく、忘れない」
  • ἐν: 前置詞。与格支配。
  • φρεσὶ: 女性名詞「(情意の座としての)心臓、心」(φρήν) 複数与格。
  • σῇσι: 形容詞「汝の」(σός) 女性複数与格。
    第92行
  • καί: 接続詞
  • τε: 小辞。
  • ἰδὼν: 動詞「見る」(εἶδον) 能動相アオリスト分詞男性単数対格。
  • εἶναι: 動詞 (εἰμί) 能動相現在不定形。命令を表わす。"ἰδὼν μὴ ἰδὼν εἶναι" は「見えても見ないでおれ、(そうすれば...)」ぐらいか。
  • κωφὸς: 形容詞「鈍感な」(κωφός) 男性単数主格。
  • ἀκούσας: 動詞「聞く」(ἀκούω) 能動相アオリスト分詞男性単数主格。"κωφὸς ἀκούσας" は「耳を鈍感にしておくなら」ぐらいの意か
    第93行
  • σιγᾶν: 動詞「黙っている、言わないでおく」(σιγάω) 能動相現在分詞男性主格。「言わないでおくなら」
  • ὅτε: 接続詞。
  • μή: 接続法の動詞と合わさって、その動詞の実現を防止する目的を標示する。
  • τι: 不定代名詞「何か」(τις) 中性単数対格。
  • καταβλάπτῃ: 動詞「大きく損なう、損害を与える」(καταβλάπτω) 接続法中動相現在第2人称単数。中動相なので「自分自身に損害を与える」の意。葡萄が採れなくなったとしても、それは「老人」自身の態度の所為だと、ヘルメースは恫喝しているのである。
  • σὸν: 形容詞「汝の」(σός) 男性単数対格。
  • αὐτοῦ: 副詞「将にここで」


火起こしの発明


108 σὺν δ' ἐφόρει ξύλα πολλά, πυρὸς δ' ἐπεμαίετο τέχνην.
109 δάφνης ἀγλαὸν ὄζον ἑλὼν ἀπέλεψε σιδήρῳ
110 ... ἄρμενον ἐν παλάμῃ: ἄμπνυτο δὲ θερμὸς ἀυτμή:
111 Ἑρμῆς τοι πρώτιστα πυρήια πῦρ τ' ἀνέδωκε.

108 そしてすぐさま、薪を多く運び来て、火の術を得んとて努めては
109 月桂樹の見事な枝一条を握り締め、鉄刀にて皮を剥ぎ、
110 ...掌に納めて...熱き煙は上がりたり。
111 ヘルメースこそ、木切れに火を付けし始めの者なりき。

さて今度は薪をたくさん拾い集めて、火を起す術に心を砕いたのだが、
月桂樹の美しい枝を折り取るとそれを固く手に握り、
ざくろの木に突き立てて回すと、熱い焔が生じた。
つまりは、火打ち道具で火を起こす術を最初に世にもたらしたのはヘルメースである。
--[ホメーロスの諸神讃歌] 訳註:沓掛良彦 (1990年 東京 平凡社) pp.169-232 [ヘルメース讃歌 (讃歌第四番)] p.175

    第108行
  • σὺν: 与格支配の前置詞だが、副詞として用いられいている。「すぐさま、そのまま引き続いて」。δέ 又は τε が後続することが多い。
  • ἐφόρει: 動詞「(何度も)運ぶ」(φορέω) 能動相未完了過去直説法第3人称単数。
  • ξύλα: 中性名詞「薪」(ξύλον) 複数対格。
  • πολλά: 形容詞「多くの」(πολύς) 中性複数対格。
  • πυρὸς: 中性名詞「火」(πῦρ) 属格単数。
  • ἐπεμαίετο: 動詞「探し求める」(ἐπιμαίομαι) deponentia 中動相未完了過去直説法第3人称単数。
  • τέχνην: 女性名詞単数対格。
    第109行
  • δάφνης: 女性名詞「月桂樹」(δάφνη) 単数属格。ダフネー
  • ἀγλαὸν: 形容詞「美しい、輝ける」(ἀγλαός) 男性単数対格。
  • ὄζον: 男性名詞 「杖」(ὄζος) 単数対格。
  • ἑλὼν: 動詞「握る」 (αἱρέω) 能動相アオリスト分詞男性単数主格。
  • ἀπέλεψε: 動詞「皮を剥ぐ」(ἀπολέπω) 能動相アオリスト直説法第3人称単数。
  • σιδήρῳ: 男性名詞「鉄器(ナイフ、鎌等)」(σίδηρος) 単数与格。
    第110行 Oxford 版では、この行の直前が欠行になっている。
  • ἄρμενον: 動詞「嵌め合わせる、備えつける」(ἀραρίσκω) 能動相アオリスト分詞男性単数対格。
  • παλάμῃ: 女性名詞「掌」(παλάμη) 単数与格。
  • ἄμπνυτο: 動詞「息を吹き出す」(ἀναπνέω) アオリスト直説法第3人称単数。
  • θερμὸς: 形容詞「熱い、暖かい」(θερμός) 女性単数主格。
  • ἀυτμή: 女性名詞「息、煙」(ἀυτμή) 単数主格。この段階では「焔」は上がっていないようだ。
    第111行
  • Ἑρμῆς: 男性名詞主格。
  • τοι: 小辞「確かに」
  • πρώτιστα: 形容詞「一番初めの」(πρώτιστος) 中性複数対格。副詞「一番始めに」として使われている。
  • πυρήια: 中性名詞「(火を起こすための)木片」(πυρεῖον) 複数対格。通常複数形で用いられる。日本古語の「火鑽杵」と「火鑽臼」のこと。ただし、対格であるので、道具を使って火を起こしたと言うより、木片としての火起こし道具に火を付けたと云う感じになっている。
  • πῦρ: 中性名詞対格
  • τ': 小辞。τε
  • ἀνέδωκε: 動詞「齎す」(ἀναδίδωμι) 能動相アオリスト直説法第3人称単数。


ヘルメースの足の速さ、巨大な歩幅


222 βήματα δ' οὔτ' ἀνδρὸς τάδε γίγνεται οὔτε γυναικὸς
223 οὔτε λύκων πολιῶν οὔτ' ἄρκτων οὔτε λεόντων:
224 οὔτε τι Κενταύρου λασιαύχενος ἔλπομαι εἶναι,
225 ὅς τις τοῖα πέλωρα βιβᾷ ποσὶ καρπαλίμοισιν:

222 人間の歩き方ではこのようになる訣がない。女の場合も含めてな。
223 灰毛の狼でも、熊でも、ライオンでもない。
224 鬣(たてがみ)荒荒しきケンタウロスでも無理だろう、
225 何者にせよ、かくの如き驚くべき歩幅で足速く歩むのは。

この歩き方は男のものでも女のものでもない、
灰色の狼のものでも、熊のものでも、獅子のものでもない。
思うに、たてがみをなびかせるケンタウロスのものでもない。
こんな巨大な歩幅で足速に歩いていくのは誰だろう。
--[ホメーロスの諸神讃歌] 訳註:沓掛良彦 (1990年 東京 平凡社) pp.169-232 [ヘルメース讃歌 (讃歌第四番)] p.181

    第222行
  • βήματα: 中性名詞「歩き方、歩幅」(βῆμα) 複数主格。
  • οὔτ': 副詞「決して....しない」。οὔτι
  • ἀνδρὸς: 男性名詞 「人間、男」(ἀνήρ) 単数属格。
  • τάδε: 代名詞「これ」(ὅδε) 中性複数主格。
  • γίγνεται: 動詞「(属格を伴って)...に由来する」(γίγνομαι) deponentia 中動相現在直説法第3人称単数。
  • οὔτε: 副詞「...もまた...でない」
  • γυναικὸς: 女性名詞「女」(γυνή) 単数属格。この行の前半は「人間の歩き方ではこのようになる訣がない」の意味なのだが、「男の歩き方ではこのようになる訣がない」と云うようにも受けとれるので、"οὔτε γυναικὸς" と付け加えている。可笑しみのある所なのだが、それを自然に日本語に移すのは難しい。
    第223行
  • λύκων: 男性名詞「狼」(λύκος) 複数属格。
  • πολιῶν: 形容詞「灰色の毛の」(πολιός) 男性複数属格
  • ἄρκτων: 女性名詞「熊」(ἄρκτος) 複数属格。
  • λεόντων: 男性名詞「ライオン」(λέων) 複数属格。
    第224行
  • τι: 不定代名詞中性単数対格。
  • Κενταύρου: 男性名詞「ケンタウロス」(Κένταυρος) 単数属格。
  • λασιαύχενος: 形容詞「鬣(たてがみ)が荒々しい」(λασιαύχην) 男性単数属格。
  • ἔλπομαι: 動詞「希望を持たせる」(ἔλπω) 中動相現在直説法第1人称単数。中動相として「希望を持つ、希望に縋る」。名詞形「希望」は ἡ ἐλπίς (属格:ἐλπίδος, 対格:ἐλπίδα)。このギリシア語に因んだ社名を有する DRAM 製造会社 (エルピーダメモリ) があるのは周知の通り。


    第225行
  • ὅς: 関係代名詞男性単数主格。

  • τις: 不定代名詞男性単数主格。"ὅστις" で「...する者は誰でも」の意。「疑問」と云うよりむしろ「譲歩」か。

  • τοῖα: 形容詞「こうした、そうした」(τοῖος) 中性複数対格。

  • πέλωρα: 形容詞「驚異的な、巨大な」(πέλωρος) 中性複数対格。"τοῖα πέλωρα" で副詞句を作る。

  • βιβᾷ: 動詞「大股で歩く」(βιβάω) 能動相現在直説法第3人称単数。

  • ποσὶ: 男性名詞「足」(πούς) 複数与格。

  • καρπαλίμοισιν: 形容詞「早い」(καρπάλιμος) 男性複数与格。



ゼウスの伝令としてのヘルメース (アポローンとヘルメースを前にしたゼウスの言葉)


330 φοῖβε, πόθεν ταύτην μενοεικέα ληίδ' ἐλαύνεις,
331 παῖδα νέον γεγαῶτα, φυὴν κήρυκος ἔχοντα;

330 フォイボスよ、全体何処からなら、その見事な獲物を狩り出せるのじゃ?
331 生まれたばかりの子供のくせに、布令役ばりの背丈をしておるのう。

フォイボスよ、どこからこのみごとな獲物を追い立ててきたのじゃ。
生まれたばかりの子供のくせに、使者の格好をしてとるな。
--[ホメーロスの諸神讃歌] 訳註:沓掛良彦 (1990年 東京 平凡社) pp.169-232 [ヘルメース讃歌 (讃歌第四番)] p.187

    第330行
  • φοῖβε: 形容詞「光り輝ける」(φοῖβος) 男性単数呼格。アポローンの通り名「フォイボス」
  • πόθεν: 疑問副詞「どこから」
  • ταύτην: 指示代名詞「その」(οὗτος) 女性単数対格。
  • μενοεικέα: 形容詞「満足すべき」(μενοεικής) 女性単数対格。
  • ληίδ': 女性名詞「獲物」(ληίς) 単数対格。ληίδα
  • ἐλαύνεις: 動詞「追い立てる」(ἐλαύνω) 能動相アオリスト接続法第2人称単数。アオリスト接続法と現在直説法とが同形だが、アポローンはヘルメースをゼウスの前に連れて来てしまっているので、「現在」ではなく「アオリスト」であると見なした方が順当。従って、接続法になり、ゼウスが戯れに訝しむ振りをしていると云うニュアンスが付く。これは、文脈にも合致する。
    第331行
  • παῖδα: 男性名詞 (παῖς) 単数対格。
  • νέον: 形容詞「若い、新しい」(νέος)。中性単数対格。副詞として用いられている。「新しく、最近」
  • γεγαῶτα: 動詞「生まれる」(γίγνομαι) 能動相現在完了分詞男性単数対格。
  • φυὴν: 女性名詞「成長、背丈」(φυή) 単数対格。
  • κήρυκος: 男性名詞「使者、伝令」。と云うより「布令役」か? (κῆρυξ) 単数属格。
  • ἔχοντα: 動詞「所有する」(ἔχω) 能動相現在分詞男性単数対格。


泥棒としてのヘルメス


336 παῖδά τιν' εὗρον τόνδε διαπρύσιον κεραϊστὴν
337 Κυλλήνης ἐν ὄρεσσι, πολὺν διὰ χῶρον ἀνύσσας,

336 あの紛れもない盗みを働いたのが子供だと分かったのは、
337 多くの地を経巡った後、キューレーネーの山中でのこと。

この子供ですが、こいつめは押しこみをはたらく盗人で、
わたしがあちこちを歩きまわった末に、キューレーネーの山の中で見つけたのです。
--[ホメーロスの諸神讃歌] 訳註:沓掛良彦 (1990年 東京 平凡社) pp.169-232 [ヘルメース讃歌 (讃歌第四番)] p.188

    第336行
  • παῖδά: 男性名詞 (παῖς) 単数対格。
  • τιν': 不定代名詞 (τις) 男性単数対格。τινᾰ
  • εὗρον 動詞「見つけ出す」(εὑρίσκω) 能動相アオリスト直説法第1人称単数。
  • τόνδε: 指示代名詞「この」(ὅδε) 男性単数対格。
  • διαπρύσιον: 形容詞「全くの、紛れもない(泥棒)」(διαπρύσιος) 男性単数対格。一般的には「突き抜ける」ぐらいの意味だが、κεραιστής に係る場合は「全くの、紛れもない」の意になる。
  • κεραϊστὴν: 男性名詞「泥棒、略奪者」(κεραιστής) 単数対格。
    第337行
  • Κυλλήνης: 女性名詞「キュレーネー」(Κυλλήνη) 単数属格。アルカディアの山。ἐν' を挟んで、ὄρεσσι に係る。なお、Κυλλήνιος はヘルメースの通り名。
  • ὄρεσσι: 中性名詞「山」(ὄρος) 複数与格。
  • πολὺν: 形容詞 (πολύς) 男性単数対格。δια を挟んで、χῶρον に係る。
  • χῶρον: 男性名詞「場所、土地」(χῶρος) 単数対格。
  • ἀνύσσας: 動詞「達成する、実行する、旅を終える」(ἀνύω) 能動相アオリスト分詞男性単数主格。


ヘルメースの詭弁


378 πείθεο: καὶ γὰρ ἐμεῖο πατὴρ φίλος εὔχεαι εἶναι,
379 ὡς οὐκ οἴκαδ' ἔλασσα βόας, ὣς ὄλβιος εἴην,
380 οὐδ' ὑπὲρ οὐδὸν ἔβην: τὸ δέ τ' ἀτρεκέως ἀγορεύω.

378 私に優しい父親でありたいと思っていらっしゃるなら、信じてくださいまし、
379 私が牛どもを、財産にしようと自分の家へと追い立てたことはありませぬ。
380 私は家の敷居を跨いだこともありませぬ。これは、本当の話なのでございます。

信じてください。[私の大事な父上だと称しておられるのですから。]
裕かになろうとて、牛を我が家へ追ってくるようなことはしていないし、
敷居から外に出てもいません。これは嘘偽りのないところを言っているのです。
--[ホメーロスの諸神讃歌] 訳註:沓掛良彦 (1990年 東京 平凡社) pp.169-232 [ヘルメース讃歌 (讃歌第四番)] p.190

    第378行
  • πείθεο: 動詞「説得する」(πείθω) 中動相現在命令法第2人称単数。中動相では「信じる」の意になる。
  • γὰρ: 小辞。「...であるなら」
  • ἐμεῖο: 代名詞。第1人称男性単数属格。ホメーロスにおける変異形。
  • πατὴρ: 男性名詞単数主格。
  • φίλος: 形容詞「魅力的な、愉快な、友好的な」(φίλος) 男性単数主格。名詞属格を伴って「(名詞属格)...にとって友好的な」の意。
  • εὔχεαι: 動詞「祈る、懇願する」(εὔχομαι) 中動相現在直説法第2人称単数。中動相なので自分自身に就いて願うことになる。
    第379行:ヘルメースの詭弁。実際、彼は、牛どもを「財産にしようと自分の家へと」ではなく、「燔祭にするためにピーエリアーの山あいへと」追い立てたのだった。
  • ὡς: 接続詞。名詞節を導く。前行の πείθεο に繋がる。
  • οἴκαδ': 副詞「自分の家まで」οἴκαδε
  • ἔλασσα: 動詞「(盗んだ家畜を)追い立てる」(ἐλαύνω) 能動相アオリスト直説法第1人称単数。
  • βόας: (男性/)女性名詞複数対格。
  • ὣς: 接続詞「...するために」。希求法とともに(先行する節は「過去」)。
  • ὄλβιος: 形容詞「(財貨に恵まれて)幸せな、祝福された」(ὄλβιος) 男性主格。
  • εἴην: 動詞 (εἰμί) 能動相現在希求法第1人称単数。
    第380行:ヘルメースの詭弁。家の敷居を「(歩いて)跨いだ」のではなく、「飛び越えた」のだ、と云うのが、ヘルメースの言い分だろう。
  • οὐδ': 接続詞「...もまたしない」οὐδε
  • οὐδὸν: 男性名詞「敷居」(οὐδός) 単数対格。
  • ἔβην: 動詞「歩く」(βαίνω) 能動相アオリスト直説法第3人称単数。ちなみに、第380行における表現は、"ὑπὲρ οὐδὸν ἔβην" であるのに対し、第23行では "οὐδὸν ὑπερβαίνων" であり、ὑπὲρ が前置詞になっているか、接頭辞になっているかぐらいの違いしかない。
  • ἀτρεκέως: 副詞「本当に」(ホメーロスで使われる)。 形容詞「本当の」ἀτρεκής から作られた副詞。動詞 ἀγορεύεινκαταλέξαι を伴う。
  • ἀγορεύω: 動詞「話す」(ἀγορεύω) 能動相現在直説法第1人称単数。


ゼウスがヘルメースの詭弁を嘉納する


389 Ζεὺς δὲ μέγ' ἐξεγέλασσεν ἰδὼν κακομηδέα παῖδα
390 εὖ καὶ ἐπισταμένως ἀρνεύμενον ἀμφὶ βόεσσιν.

389 ゼウス、大いに笑い給いき。詐欺師小僧が
390 牛のことを、言葉巧みに、しらきるを見そなわして。

この悪知恵に長けた子が、みごとにかつ言葉巧みに
牛の一件を否定するさまを見て、ゼウスは大声をあげて笑った。
--[ホメーロスの諸神讃歌] 訳註:沓掛良彦 (1990年 東京 平凡社) pp.169-232 [ヘルメース讃歌 (讃歌第四番)] p.191

    第389行
  • Ζεὺς: 男性名詞単数主格。
  • μέγ': 形容詞 (μέγας) 中性単数対格。副詞として用いられている。「大いに、非常に」μέγα
  • ἐξεγέλασσεν: 動詞「声を出して笑う」(ἐκγελάω) 能動相アオリスト直説法第3人称単数。
  • ἰδὼν: 動詞「見る」(εἶδον) 能動相アオリスト分詞男性単数主格
  • κακομηδέα: 形容詞「誤魔化し上手の、嘘つきの」(κακομηδής) 男性単数対格。
  • παῖδα: 男性名詞単数対格。
    第390行
  • εὖ: 副詞「よく、徹底的に、完全に」
  • ἐπισταμένως: 副詞「巧みに」
  • ἀρνεύμενον: 動詞「否定する」(ἀρνέομαι) deponentia 中動相現在分詞男性単数対格。
  • ἀμφὶ: 前置詞。与格支配の場合は「に就いて」
  • βόεσσιν: (男性/)女性名詞「牛」(βοῦς) 複数与格。

笛の音の工夫


511 αὐτὸς δ' αὖθ' ἑτέρης σοφίης ἐκμάσσατο τέχνην:
512 συρίγγων ἐνοπὴν ποιήσατο τηλόθ' ἀκουστήν.

511 次に、ヘルメースは、またもや智恵を働かせて工夫をなし
512 笛の音を遠くまで聞こえるようにしき。

さて、ヘルメース自身はまた別の技術を新たに工夫して、
遠くにまで音のよく通る葦の笛(シューリンクス)をこしられた。
--[ホメーロスの諸神讃歌] 訳註:沓掛良彦 (1990年 東京 平凡社) pp.169-232 [ヘルメース讃歌 (讃歌第四番)] p.198

    第511行
  • αὖθ': 副詞「再び、更に、次いで」(αὖτε)
  • ἑτέρης: 形容詞「もう一つの」(ἕτερος) 女性単数属格。
  • σοφίης: 女性名詞「智恵」(σοφία) 単数属格。
  • ἐκμάσσατο: 動詞「工夫した」(ἐκμάσσατο) アオリスト直説法第3人称単数。
    第512行
  • συρίγγων: 女性名詞「パイプ、笛」(σῦριγξ) 複数属格。
  • ἐνοπὴν: 女性名詞「声、音」単数対格。
  • ποιήσατο: 動詞「作る、にする」(ποιέω) アオリスト直説法第3人称単数。
  • τηλόθ': 副詞「遠くに、遠くから」(τηλόθι) 属格支配の場合は「遠くから」
  • ἀκουστήν: 形容詞「聞こえる」(ἀκουστής) 女性単数対格。笛 (σῡρίγγων) が複数であることに注意。笛と云う楽器 (単数) を発明したと云うより、笛一般 (複数) の音が遠くまで届くように改良したと云うように受けとれる。

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