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「あるグロテスク・ジョーク (伊丹十三 [ヨーロッパ退屈日記] に関連して)」補足

[あるグロテスク・ジョーク (伊丹十三 [ヨーロッパ退屈日記] に関連して)] (2007年2月10日) では、[ヨーロッパ退屈日記] 中の [産婦の食慾] と云う段に紹介されたジョークの話をしたが、それを聞かせてくれたのがイギリス人の男性同性愛者であることを引き取って、話は次のように続く:

 一般に、というようなことはいいたくないが、わたくしの狭い経験の範囲では、彼らは、普通の外国人よりずっと細やかに動く、襞の多い心を持っている。礼儀作法ではなく、心の翳りから生まれた気がねや思いやりを持っているように思われる。人間関係において非常に我慢強く、赦すこと、諦めることを知っている。つまり、私小説的な精神風土に育ったわたしたち日本人には、たいへん近しく、親和力を感じさせる存在である。

 普通の西洋人は、わたくしには、何かずっと酷薄な、武装した存在に感じられる。友達づき合いをしていても、いつ、しらじらしいただの他人に変化してしまうかわからない。自分の権利が少しでも犯されそうになろうものなら、ただちに冷たい叱責をまなざしに浮かべて、激しく抗議してくるに違いない振幅の狭さが感じられて気が赦せない。

 あるいはまた、普段ひどく無口で、はにかみやの大男が、突然、われわれアメリカ南部の白人が、過去においていかに黒人と美しい協調をなしとげてきたか、いかに黒人が現状に満足しているか、黒人問題などというものは、実際問題として南部には存在しない、という驚くべき発言を、アメリカ人独特の、身についた正義の身振りで愚かしくしゃべりたてるのである。

 これは我慢がならない。屈託のない心、含羞のない心、これは我慢がならない。

 わたくしの外国の友人たちが、イタリー人を除いてほぼホモ・セクシャルである、というのはかかる理由による。

同性愛者の性格に関する記述に対する評言は、私には材料がないので控える。ただ、この文章が書かれた、1960年代前半は、アメリカ合衆国第34代大統領 Dwight D. Eisenhower が、同性愛者の連邦政府職員就業禁止を命じた条項(第8条a項1-3)を含む行政命令第10450号を発した1953年4月27日(多くの州・地方自治体・企業が、連邦政府の措置に追従し、また FBI による捜査が行なわれたと云う)と、言ってみればゲイたちが「人間関係において非常に我慢強く、赦すこと、諦めること」を止めた Stonewall riots が発生した1969年6月28日(この日の未明ニューヨーク市グレニッチ・ヴィレッジの gay bar "Stonewall Inn" に対してニューヨーク市警が行なった家宅捜索に対し、同性愛者たちが抵抗し、それが発端となって終焉まで数日間かかる「暴動」が起こった。これを契機にアメリカ合衆国において同性愛者たちの権利を求める運動が昂揚する)との間に挟まれていることは、一応指摘しておこう。

「普通の西洋人」の性格に就いても、"9.11" 以降のアメリカ合衆国の姿を思い起こして、つい何事かを言いたくなるのだが、情緒に対して情緒で反応しても仕方がない、多くは言うまい。ただ、かって南アフリカ共和国において、白人政権が倒れた前後(1994年)だと思うが、TV の報道番組で現地の白人が、彼らが「過去においていかに黒人と美しい協調をなしとげてきたか、いかに黒人が現状に満足しているか、黒人問題などというものは、実際問題として存在しない」と云ったたぐいの驚くべき発言をしていたと記憶する。これが「白人の性格」なのか、「『奴隷』利用者の性格」なのかは(勿論、両者は相関しているかもしれない)、軽軽に判断すべきではないのだろうが、こうした人物類型が存在することは確かだろう。

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