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Duane Michals の詩 "All things mellow in the mind"

Duane Michals (デュアン・マイケルズ) と云う写真家がいる。この人は、単に写真を撮るだけでなく、そのプリントにちょっとした短文を添えることがあるようで、実際、私が少し気になって買った(数年前、或いは更に以前?) picture postcard (Sidney Janis gallery (閉鎖中) 及び Fotofolio (要登録)) がそれだった。

写真はモノクロ、裸体の男性上半身像で、左手は自らの頭にもたせかけ、右手は頭蓋骨を自分の顔と同じ高さに捧げ持っている。頭蓋骨と男性の顔は、両方とも正面向きだ。

私の持っている postcard ではマイケルズの詩が写真の左側に(恐らく自筆で)書かれているのだが、オリジナルでは、詩のタイトルが写真の上、本体が写真の下に書いてあるようだ(写真だけなら、もう少し大きい画像が、"Thomas Paul Fine Art: MICHALS, Duane (1932- ) All Things Mellow in the Mind" で見られる)。

そこに書かれているのは、こう云う詩である:


ALL THINGS MELLOW IN THE MIND

ALL THINGS MELLOW IN THE MIND,
A SLEIGHT OF HAND, A TRICK OF TIME.
AND EVEN OUR GREAT LOVE WILL FADE,
SOON WE'LL BE STRANGERS IN THE GRAVE.

THAT'S WHY THIS MOMENT IS SO DEAR.
I KISS YOUR LIPS, AND WE ARE HERE.
SO LET'S HOLD TIGHT, AND TOUCH AND FEEL,
FOR THIS QUICK INSTANT, WE ARE REAL.

心愉しかったことの全てや

心愉しかったことの全てや
手練手管も、物のはずみも
そして二人の素晴らしい愛さえも、消えていくのが「ものの運命(さだめ)」。
もうぢき、二人は土の下に行く。そうして二人は見ず知らずになる。

だからこそ、この今の愛おしさ。
君の唇にキスすれば、僕らは確かにここにいる。
そしてしっかり抱き合おう。互いに触れ合い、感じ合う
その時、その時にだけ、確かに僕らは生きている。

ここで、注意しておくと、写真との組み合わせから判断するなら、この詩の "GRAVE" は、「黄泉の国」とか「あの世」の隠喩としてではなく、「人間が骸骨になるところ」と云う直裁な含意があると云うことだ。

デュアン・マイケルズは同性愛者だと云う。そして、そのことを念頭に入れて彼の作品は理解されることがあるようだ。

例えば、ポール・アンソニー・ジョンストン (Paul Anthony Johnston) が、自ら製作した写真シリーズ "SERO-LOGUES" を題材にして、所謂 AIDS の写真表現に及ぼした影響や写真表現の HIV 抗体陽性者への役割を論じた ""SERO-LOGUES:" A COLLABORATIVE APPROACH TO AlDS PHOTOGRAPHIC REPRESENTATION" (YORK UNIVERSITY, NORTH YORK, ONTARIO. JULY 1997) において、マイケルズに HIV 抗体陽性者や AIDS 発症者を被写体にしたことがないと言われて意外に思った (p.68) と書いていることが逆に証明している。

また、米国におけるゲイの共同体である "Radical Faeries" (当初は男性同性愛者のみの共同体だった、現在はそうでもないらしい) に就いての報告記事 (1998 K. Mark Demma) には、シャボン玉を吹きつつ "All things mellow in the mind." と語る HIV 抗体陽性の男性 Dane (Wonder's wife) が登場する。仲間の一人 Elbow が、心臓の外科手術を控えていて不安で堪らないのだけれど、仲間と一緒にいると、それが和らぐと告白したのを受けた言葉らしい。

しかし、私はと言えば、見事に鈍感で、問題のポストカードを見たときは、Hamlet の一場面なぞを連想していた。

この "ALL THINGS MELLOW IN THE MIND" が、彼のどの写真集に収められているかは、確認できなかった。写真集に収められているかどうかも不明だ。ただ、作成年度が1986年/1987年ぐらいらしいことが分かっただけだ。そうすると、"Album : The Portraits of Duane Michals, 1958-1988" あたりか、あるいは素材としてなら "Eros and Thanatos" (発行:1993年4月。Amazon.co.jp では成人指定)かもしれないと云う気もするが、すべて未確認。



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