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旅馴れてニタリと笑う

伊丹十三のエッセイは、今でも憶えている箇所が幾つもある。例えば、[ヨーロッパ退屈日記] の冒頭近く(文春文庫版 pp.15-18)にある [ハリーの話] なぞは、その内の一つだ。全文引用しないと無意味なジョークなのだが、[ヨーロッパ退屈日記] と同質の流れの中でのみ精彩を放つ文章なので、ここでは引用すまい。そうしても「長すぎる」だけだろう。しかも「本当はもっともっと長くて、ハリーが話し終るのに四十分もかかりました。」なのだそうだ。(実は、この注釈が「ネタ振り」になっている。そして、直後の締め括りのセンテンスが狙いすましたような効果をあげるのだ。)

次のようなところもある。まず、「去年の春、最初にパリの真中に立った時...非常な驚きに捕われたものでした」と書き出して、その所以を説明してから、こう続ける:

さて、今、八ヵ月ぶりにパリに帰って来ると、もうパリに入るのも五、六回目になることゆえ、さしたる感興もない。わたくしの友人に金山寿一という詩人がおりまして、その人の落首にいう。

  旅馴れて
  ニタリと笑う
  俺の心の
  ドン・ジョバンニ

まことにいい歌です。人生のさまざまな瞬間にふと口をついて出る、憶えておいていい歌だと思うのですが、わたくしの心境がこうであった。
--文春文庫版 pp.29-30

金山寿一と云う方に就いては、私は存じあげていない。

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