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メモ: John Lennon "Happy Christmas (War Is Over)"

時節柄で、クリスマス・ソングの話をする。John Lennon (ジョン・レノン) の "Happy Christmas (War Is Over)" (1971年) と云う曲のことだ(注:共同作詞家として Yoko Ono がクレジットされていることがある。それは、John 本人の意向でもある)。

原詞は、適宜ネットを検索してもらうとスグに出てくるが、例えば、次のようなところが参考になるだろう:

普通、この曲の日本語タイトルは「ハッピークリスマス(戦争は終わった)」である。これは、当然 "Happy Christmas (War Is Over)" の「翻訳」と考えられる。しかし、私は、"War Is Over" を「戦争は終わった」とすることに、違和感を憶える。

たしかに、英文ジャーナリズムのヘッドラインで "War Is Over" とあったら、「戦争は終わった」と訳して間違いない、と、私も思う。しかし、それらと、Lennon の歌とではコンテキストが違う。

私が見た範囲では、英文ジャーナリズムが "War Is Over" と書くコンテキストは、全て 「(戦争は終わった)そして、我々が勝った」と云うものだ(その後、ネット上をやや詳しく調べたところ、この記述は不正確であることが判った。最近の「イラク戦争」のコンテキストでは、「我々(米国)は負けた」と云うものが目立つ。まぁ、その勝ち負けへのこだわり方を見ると、標榜する政治的立場の相違を通底して「非關正義、とにかくに勝ちたいんだろう」と言いたくなるんだが... それはともかく、改めて英語ジャーナリズムに "War Is Over" に就いてまとめたものを発表したいとは思っている--2006-12-27)。しかし、Lennon の "Happy Xmas" のコンテキストは違う。ここで、安易に John Lennon の「反戦思想」に就いて云云する気はないが、この詩のコンテキスト自体は、明白だ。それは、「あらゆる戦争(当時の時代背景からいえば、具体的には --1964年トンキン湾事件、1975年サイゴン陥落の-- ベトナム戦争)に反対する」と云うものだ。ここにいる Lennon の立場からすれば、少しも戦争は終わっていない。

原詞の最終部にあるように、"War Is Over" と云うフレーズは、"if you want it" と相俟って、「あなたが望みさえすれば、戦争はすぐにでも終わる」と云う、確実に起こる筈の近い未来への言及、又は、それが「普遍的真理」である旨の主張だろう(どうしても、「戦争は終わった」と云う表現を使おうとするなら、「『あなたが望みさえすれば』すぐにでも『戦争は終わった』と云う状態が出現する」と云う、やや廻りくどい心理的操作が必要になる)。

"War is over, if you want it" と同じ構造を有する文例をネット上で探した所、次のようなものが見つかった。既に済んだことではなく、if 節の内容の時点以降に起こることに就いて "is over" と言っていることに注意:

*15. When offering a draw to your opponent, you should do so after moving but before you start your opponent's clock. The game is over if both players agree to a draw.
(米国チェス連盟公式ルール中のトーナメント様式及びルール)
15.対戦相手に引き分けの提案をする際には、プレーヤーは自分の駒を動かした後で、且つ、相手側の計時を始める前に提案しなければならない。両方のプレイヤーが引き分けに同意した場合にゲームは終了する。
--Tournament Format & Rules (The U.S. Chess Federation's Official Rules of Chess, 5th Edition)

*`The crisis is over, if you give hotels time to grow'
(これは、ベトナム・ハノイのホテル業界に就いて報じた2001年8月1日付経済記事の、見出し。)
ホテル業界は、成長のための時間的余裕が与えられるなら、危機を脱するだろう。
--Industry & Business Article - Research, News, Information, Contacts, Divisions, Subsidiaries, Business Associations

*The game is over if you cannot clear enough blocks to prevent the entire field from filling up with these blocks.
(Pokemon Puzzle League/Nintendo 64 と云うゲームの遊び方の解説の一節)
ブロックを消し切れずに画面全体がブロックで一杯になってしまったらゲームオーバー。
--Half.com / Video Games / Pokemon Puzzle League

実を言うと、「ハッピークリスマス(戦争は終わった)」に就いてオノ・ヨーコがどう考えているか、知りたい気が僅かながらある。

ついでに、歌詞の内容も、大雑把ながら書いておく。

クリスマスおめでとう(戦争は終わるんだ)

(クリスマスおめでとう、キョウコ。
クリスマスおめでとう、ジュリアン)

そう云う訣でクリスマス
君らの今年はどうだっただろう
また一年が終わってしまい
新しい年が始まるよ。
そう云う訳でクリスマス
楽しくやって欲しいんだ
親しい人、いとおしい人
お年寄りでも若くっても。

とても楽しいクリスマスと
幸せな新年とがくるように
みんなで、一緒に願おうよ
なにも脅えずにすむような

そう云う訣でクリスマス
負け組にも勝ち組にも
お金持ちでも貧乏でも。
この世はすごく変だから
その分、楽しいクリスマスを
白人にも黒人にも
アジア系にもネイチブにも。
喧嘩なんか止めようよ。

とても楽しいクリスマスと
幸せな新年とがくるように
みんなで、一緒に願おうよ
なにも脅えずにすむような

そう云う訣でクリスマス
僕らの今年はどうだっただろう
また一年が終わってしまい
新しい年が始まるよ。
そう云う訳でクリスマス
楽しくやって欲しいんだ
親しい人、いとおしい人
お年寄りでも若くっても。

とても楽しいクリスマスと
幸せな新年とがくるように
みんなで、一緒に願おうよ
なにも脅えずにすむような
戦争は終わるんだ。君が望みさえするならば。
戦争は終わるんだ。たった今すぐに。

クリスマスおめでとう

処理に困ったのが、第1スタンザのと第5スタンザの対照だった。並行していながら、相違点があるので、必要ならば、それを並行かつ対照するように表現し分けしなければならない。それも2点あって、一つは "And what have you done" と "And what have we done" と、もう一つは、"I hope you have fun" と "We hope you have fun" とだ。

"And what have you done" と "And what have we done" とは、それぞれ「君らの今年はどうだっただろう」と「僕らの今年はどうだっただろう」としたが、自分でも不満を持っている。更に、"I hope you have fun" と "We hope you have fun" とについては、旨い便法が見つからないので、取り敢えず、両方とも「楽しくやって欲しいんだ」としてある。

ごく瑣末なことだが、もう一つ書いておこう。「親しい人、いとおしい人」に対応する英文が、"The near and the dear one" となっているサイトが多い。しかし、英語としては "one" よりは --ones-- だろう。

問題は、John Lennon の歌声を聞くと、そこらへんが怪しいことだ。2回でてくる "The near and the dear..." で、1回目は、 "ones" と歌っているようにも聞こえるが、ハッキリしない。そして2回めは、"one" としか、私の耳には聞こえない。ただ、付言すれば、John 自筆の歌詞原稿では "ones" と書いてあるのが読める。また、Happy Christmas (War Is Over) - John Lennon and Yoko Ono (Lyrics and Chords) では、1回目を "ones" 2回目を "one" としている。

"For weak and for strong" は「負け組にも勝ち組にも」としてある。それなりに適切だろうと信じているが、しかし、こう云うところから表現が「古びていく」ことは承知している。

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