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メモ: 岩波文庫[オーウェル評論集]

岩波文庫の[オーウェル評論集](1982年 東京 岩波書店)を読んだ。訳者は[小野寺健]。意図したものではないが、「nouse: メモ:コナン・ドイルの恐怖小説一篇「サノックス卿夫人秘話」」で、翻訳品質に言及した訳者と同姓同名である。多分、同一人物なのだろう。しかし、今回は読んでいて、はっきりした「翻訳文としての違和感」を感じたのは1か所のみだった。

読みながら、頻りに魯迅の文章を思った。この二人が私の中で掻き立てるものは、奇妙に似ている。


「違和感」のことを書いておく。

集中最後の一篇である[出版の自由]に、こうある。

もっとも有名な例が、特許薬の騒ぎだが、このばあいもカトリック教会が新聞雑誌に相当の圧力をかけて、ある程度はその批判を封ずることができるのだ。--p.351

この「特許薬の騒ぎ」と云うのが、気に入らない。文脈に載っていないではないか。「誤訳」の臭いがする。

で、ネット上で原文を探すと、次のものが見つかった。

The best-known case is the patent medicine racket. Again, the Catholic Church has considerable influence in the press and can silence criticism of itself to some extent. --George Orwell: The Freedom of the Press

つまり "patent medicine" を安易に「特許薬」と訳してしまった訣だ。しかし、この言葉は、「特許薬」と云うより、いわゆる「処方薬」と異なる、薬局で一般に買える「売薬」を意味すると考えた方が良い(たとえば、英文版 Wikipedia の "Patent medicine" の項参照)。

Patent medicine is the term given to various medical compounds sold under a variety of names and labels, though they were for the most part actually trademarked medicines, not patented. In ancient times, such medicine was called nostrum remedium, "our remedy" in Latin, hence the name "nostrum"; it is a medicine whose efficacy is questionable and whose ingredients are usually kept secret. The name patent medicine has become particularly associated with the sale of drug compounds in the nineteenth century under cover of colourful names and even more colourful claims. The promotion of patent medicines was one of the first major products of the advertising industry, and many advertising and sales techniques were pioneered by patent medicine promoters. Patent medicine advertising often talked up exotic ingredients, even if their actual effects came from more prosaic drugs. One memorable group of patent medicines--liniments that allegedly contained snake oil, supposedly a universal panacea--made snake oil salesman a lasting synonym for a charlatan.--Patent medicine - Wikipedia, the free encyclopedia--03:55, 14 September 2006

残念ながら、オーウェルが言及している事件が何であったのか確定できなかった。従って、安易に「売薬」と云う訳語を使うべきか否かは判断できない。しかし、現代の日本における[薬事法違反]に類することに、カソリック教会が関係していたと、オーウェルは諷したと推測してよいと思う。

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