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[Blogger ストーリー]に就いて


ココログ以外でブログを開設するにはどうしたらよいのか知りたくなって、何となく記憶に残っていたブログ・サービスである Blogger のスタート・ページに行ってみた。

「3 つのステップで簡単/ブログ作成 」と書いてある。これは、取り敢えず受け流して、「概要」の所を読んだのだが、これが文章として可訝しい。その内容を再録すると:

Blogger ストーリー
Blogger は、ドットコム ブームのさなかの 1999 年 8 月にサンフランシスコの Pyra Labs という小さな会社で始まりましたが、 いわゆるベンチャー キャピタルやネットバブルの風潮とは無縁でした。

もともと友達であった我々は、大企業とのウェブ プロジェクトの契約を元手に会社を立ち上げ、インターネットの世界で独自の道を切り開こうと挑戦し続けてきました。 このような過程で ふとした思い付きから Blogger が生まれたのです。

当初、小さな規模から始まった Blogger は、数年のうちに数多くのユーザーに広まり、 ある程度の収益も上げられるまでになりましたが、 爆発的に広まった時点で収支はマイナスとなり、楽しさよりも大変さが上回るようになりました。 このような危機に直面しながら、なんとかサービスを提供できるよう努力してきましたが、同時に支援体制を構築するという道も模索し始めました。

状況の好転した 2002 年には 10 万人のユーザーに利用されるまでに成長した Blogger は、 Google に 買収されることになりました Google 。

blogs の可能性を信じる Google と協力してサービスを提供するというアイディアは成功を収めました。

現在、我々は Google で他のスタッフと協力しながら、ユーザーが自分の考えをウェブ上で発表し、世界中の情報を個々の観点で編成できるようサポートを続けており、 当初と変わらぬ姿勢で目標に取り組んでいます。

Google の詳細については、google.com をご覧ください (検索サービスもお勧めです)。

まず言っておくと「Google に 買収されることになりました Google」では意味不明だ。

この日本語版は、オリジナルが英語で、それを「翻訳」したものだろうから、そちらの方を見てチェックしたくなったのは当然の成り行きだろう。

と云う訣で、[言語]のページで設定を "English" にしたところ、英語版 (The Story of Blogger) が現われたので、それを読んでみたのだが・・・日本語版は、とても英語版の「翻訳」と言えるような代物ではなかった。「翻訳」ではないと言うならそれまでだが、だとしても、英文版と日本語版の内容が矛盾していたら「概要」にならないだろう(現に矛盾している)。それに、両者を見比べるなら、日本語版は英語版を「翻訳」しようとして失敗した跡が歴然として残っている。

さて、英語版は以下の通り:

The Story of Blogger
Blogger was started by a tiny company in San Francisco called Pyra Labs in August of 1999. This was in the midst of the dot-com boom. But we weren't exactly a VC-funded, party-throwing, foosball-in-the-lobby-playing, free-beer-drinking outfit. (Unless it was other people's free beer.)

We were three friends, funded by doing annoying contract web projects for big companies, trying to make our own grand entrance onto the Internet landscape. What we were originally trying to do doesn't matter so much now. But while doing it, we created Blogger, more or less on a whim, and thought -- Hmmm... that's kinda interesting.

Blogger took off, in a small way, and eventually a bigger way, over a couple years. We raised a little money (but stayed small). And then the bust happened, and we ran out of money, and our fun little journey got less fun. We narrowly survived, not all in one piece, but kept the service going the whole time (most days) and started building it back up.

Things were going well again in 2002. We had hundreds of thousands of users, though still just a few people. And then something no one expected happened: Google wanted to buy us. Yes, that Google

We liked Google a lot. And they liked blogs. So we were amenable to the idea. And it worked out nicely.

Now we're a small (but slightly bigger than before) team in Google focusing on helping people have their own voice on the web and organizing the world's information from the personal perspective. Which has pretty much always been our whole deal.

For more on Google, check google.com. (Also good for searching.)

日本語版での主な「誤訳」を挙げておくと:

  1. "funded by doing annoying contract web projects for big companies" は、日本語版では「大企業とのウェブ プロジェクトの契約を元手に会社を立ち上げ」となっている。実は、この部分は英文版もあっさりしすぎていて、意味がとりづらいのだが、恐らく、含意は、大企業にあっては契約書ウェブサイトの作成・管理が煩わしいものになるので、その為のアプリケーション・ソフトを作成販売することで資金を得たと云うことだろう。なお、この点に就いては英文版 Wikipedia の "Pyra Labs" の項を参照のこと。
  2. "the bust happened" を「爆発的に広まった時点で」としているが、これは「(資金繰りに)破綻が起こった」と云うこと。

  3. "We narrowly survived, not all in one piece, but kept the service going the whole time (most days) and started building it back up." を、日本語版は「このような危機に直面しながら、なんとかサービスを提供できるよう努力してきましたが、同時に支援体制を構築するという道も模索し始めました」はしているが、英文版と意味が(と言うか、文脈が)ずれてしまっている。「危機に直面」したのではなく「危機を辛うじて脱した」のであり、「サービスを提供できるよう努力」したと云うより「常時サービスを維持し続けた」のであり、「支援体制を構築するという道も模索し始め」たのではなく「サービスを再構築し始めた」のだ。ちなみに、"not all in one piece" は、「無傷に済んだ訣ではなかったが」ぐらいの意味。
  4. "hundreds of thousands" は、「数十万」とすべきなのに「10 万」とされている。

  5. この文章の眼目といえる "Yes, that Google" が訳されていない。

一応、私の訳も以下に示しておく。

Blogger のこと
Blogger は、1999 年 8 月にサンフランシスコのパイラ・ラブズ (Pyra Labs) と云う小さな会社で誕生しました。それは、丁度ドットコム・ブームの最中でしたが、パイラ・ラブズは、ヴェンチャーキャピタルが資本を出し、パーティを開き、ロビーではテーブルサッカーをし、(ビールをおごってくれる人が現われるのでもない限り)無料でビールが飲めると云った会社では全くありませんでした。

パイラ・ラブズは、友達三人からなる会社で、大企業用の契約書ウェブ・プロジェクトと云う面倒な仕事を行なうことで資金を調達して、インターネット世界に大いに打って出て行こうとしていたのです。しかし、今では当時私たちが何をしようとしていたのかは問題ではありません。そうこうしているうちに、ある程度は思いつきで Blogger を作り出してしまったからです。そして思いました。「えーっと、これは何だか面白いぞ」

Blogger はささやかな形で始まりましたが、二年ほど経つうちに成長しました。私たちは小額の資金を募集しました(それは小額のままでした)。しかし結局、破綻が起こり、私たちは資金を使い切ってしまったのです。私たちの楽しい「遠足」は、あまり楽しくないものになってしまいました。私たちは危ういところで事態を切り抜けましたが、全く無傷という訣には行きませんでした。それでも、常時(つまり殆どの日での)サービスを維持し続けていき、サービスを再構築し始めたのです。

2002年には事態は好転しました。ユーザー数が、まだまだ少ないとは言え、数十万人になったのです。そして、思いもかけないことが起こりました。グーグル (Google) が パイラ・ラブズ を買収したいというのです。そうです。あのグーグルがです。

私たちはグーグルが大好きでした。そしてグーグルはブログが好きだったのです。だから、私たちはこの提案に素直になれたのでした。そして、その結果は旨くいきました。

今では、私たちはグーグル内の小さな(まぁ、以前よりは少し大きいですが)専門チームとして、人々がウェブ上で個人として発言するのを助けたり、世界の情報を個人の視点から組み立てていったりしています。それが、私たちが大体ずっと取り組んできたことなのです。

グーグルに就いてもっと知りたければ、google.com を見てください(検索にも役立ちますよ)。


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