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メモ:岩波文庫「新科学対話(下)」

本来なら、岩波文庫「新科学対話(上)」に引き続いて「新科学対話(下)」(今野武雄・日田節次訳 1948年)に就いてメモを作るべきであろうが、どうも気分が乗らないので、一つだけ材料を記録して、作業を中断する。

その前に、背景を説明しておくと、話題になっているのは、無拘束の物体を上方に抛り上げた後の運動(暫く上昇した後落下する)で、サルヴィヤチが物体の速度が連続的に減少し後停止する(その後落下に転ずる)とするのに対し、シンプリチオは、速度が連続的(無段階的に)に減少するなら、それを経過するのに無限の時間がかかるだろうと反論する。つまり、シンプリチオは「ゼノンの逆理」(の変異例)を持ち出しているのだ。以下のサルヴィヤチの発言は、それに対するものである。

Salv. Accaderebbe cotesto, Sig. Simplicio, quando il mobile andasse per qualche tempo trattenendosi in ciaschedun grado; ma egli vi passa solamente, senza dimorarvi oltre a un instante; e perché in ogni tempo quanto, ancor che piccolissimo, sono infiniti instanti, però son bastanti a rispondere a gl'infiniti gradi di velocità diminuita. Che poi tal grave ascendente non persista per verun tempo quanto in alcun medesimo grado di velocità, si fa manifesto così: perché se, assegnato qualche tempo quanto, nel primo instante di tal tempo ed anco nell'ultimo il mobile si trovasse aver il medesimo grado di velocità, potrebbe da questo secondo grado esser parimente sospinto in su per altrettanto spazio, sì come dal primo fu portato al secondo, e per l'istessa ragione passerebbe dal secondo al terzo, e finalmente continuerebbe il suo moto uniforme in infinito.


SALV. This would happen, Simplicio, if the moving body were to maintain its speed for any length of time at each degree of velocity; but it merely passes each point without delaying more than an instant: and since each time-interval however small may be divided into an infinite number of instants, these will always be sufficient [in number] to correspond to the infinite degrees of diminished velocity.
That such a heavy rising body does not remain for any length of time at any given degree of velocity is evident from the following: because if, some time-interval having been assigned, the body moves with the same speed in the last as in the first instant of that time-interval, it could from this second degree of elevation be in like manner raised through an equal height, just as it was transferred from the first elevation to the second, and by the same reasoning would pass from the second to the third and would finally continue in uniform motion forever.

TNS Draft: Text and figures, through the end of the Third Day
(translated by Henry Crew and Alfonso de Salvio)

サルヴィヤチ: いやシムプリチオ君もし運動體がそれぞれの大きさの速さを任意の時間繼續するといふのでしたら、さういふことも起るでせう。しかし物體がその徑路上の各點を通過するのは只一瞬時に過ぎません。そしてその各の瞬間も尚ほ、小さい時間間隔に分割され、無限數の瞬間が生ずるのですから、それらは、まさしく減小しゆく速さの無限の程度に對應せしめるに十分です。かやうな抛上體が任意、有限の時間のあひだ、いかなる速さをもその儘保持するものではない、といふことは、次のことからみても明かです。即ちいま或る有限な時間間隔が與へられ、問題の物體がこの時間間隔の最初と最後の瞬間に於て同一の速さを持つてゐるとするならば、この第二の速度(最後の瞬間の速度)でもつて丁度、第一の高さから第二の高さに移つたのと同じやうにして、この第二段の高さから等しい高さだけ昇らせることができる。そして同じ理由に依つて、第二から(値は變らぬ)第三へと移り、結局、等速運動が無限に續け得ることになりませう。

岩波文庫「新科学対話(下)」(今野武雄・日田節次訳 岩波書店 1948年)

パラグラフの後半に就いて言えば、英文版自体がイタリア語からの逐語訳で意味がとりづらいから、岩波文庫版が変になっているのに同情すべき余地はあるのだが、前半は英文解釈上に取り立てて難しいところはないので、訳者が内容を理解していないことが目立ってしまっている。どこが悪いのかイチイチ指摘するのは面倒なので、以下に私の訳を示しておく。ただし、イタリア語から直接訳してあるので、英語版とは少し異なっている。

サルヴィヤチ: シンプリチオさん、そうした運動体が、速度の全ての値の一つ一つを、どのような長さにしろ或る時間維持するとするならば、そうしたことも起こりうるでしょうが、この運動体は、速度の夫々の値を正に瞬間に通り過ぎるのです。そして、どのように短い長さの時間であるにしろ、その中には無数の瞬間が含まれますから、低下していく速度の無数の値に十分対応できるのです。こうした上昇中の重い物体が、如何なる長さの時間にしろ、どの速度の値にも留まるものではないことは、以下のように明らかです。つまり、或る所定の長さの時間に対して、その最初の瞬間と最後の瞬間とで、こうした運動物体が同一の速度値を有するようなことがあるとするならば、当初の高度から次の高度に上昇したことが丁度繰り返されて、二番目の高度からも同じ高度差上昇することになるでしょう。同じことが、二番目の高度と三番目の高度についても言えるので、結局は一定速度の運動が永遠に続くことになってしまいます。

英語版や岩波文庫版の翻訳品質とは直接関わりのないことだが、ガリレオのこの議論は、時間軸及び/又は空間軸の平行移動に対して力学法則が変化しないことを前提にしている。

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