「小学館独和大辞典第2版」(コンパクト版)の誤植
私が、独和辞典として今一番良く使っているのが、この「小学館独和大辞典第2版」(コンパクト版 ISBN4-09-515032-7)。やや重大な不満が無いわけではないのだが、この「不満」は他人様に話せるよう纏めるのに時間がかかりそうなので、その話はしないでおく(ただし、現在書店店頭に出ている独和辞典の中で一冊だけを選ぶと云うなら、これが一番良いことを認めるのに、私は吝かではない)。
今回は、単に誤植の報告である。
私が持っているのは「コンパクト版」だけなので、それに沿って記載すると、"sich" の語義の説明中 "1.b.5" (p2119 右欄) の「3格支配の前置詞と」のコロケーションとしてあげられている "an sich" の訳語が、「そもそも, それ自体としては; [哲]アン-ジッヒ」と並べられた後、「即時」が続いている。勿論、これは「即自」の誤りである。
"1.a.6" では "an und für sich" の訳語として、正しく「即自かつ向自」が示されているから、これは単純な見落としだろう。「哲学に就いて初歩的な知識があれば、こんな間違いはしない筈だ」などと言う気は毛頭ない。ホメロスだってウトウトすることがあっただろう如く、カントやヘーゲルでもボンヤリしていることもあったろうから、個々のケアレスミスに、知識の初歩的とか深淵とかの詮索は、あまり意味がない。
ただし、初版では(これもコンパクト版での話だが)、対応箇所で "an sich" は、正しく「即自」と訳されている。この辺の経緯は分らない。私の「不満」と関係しているかもしれないし、していないかもしれない。しかし、それに就いて考えるには材料が少なすぎる。
それから、もう一つ。
"verlangen" 語義 "I:1" (p.2522 右欄) で示されている例文 "Wieviel verlangt et dafür? 彼はその代価としていくら要求しているのか" 中の "et" は、"er" の誤り。これも、初版本では正しくなっている。
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